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第22話:全てを明らかにしましょう

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翌朝、いつもより早く目覚めた私は、窓から王都の街を眺める。そう言えばあのお店、昔お母様とお姉様と行った事があるわ。ショーウィンドウに大きなクマのぬいぐるみが飾ってあって、欲しくてお母様におねだりしたのよね。

でも売り物じゃないからと断られて、それでお父様が特別にクマのぬいぐるみを手配してくれたのだったわ…それからあのお店、お兄様がお気に入りだったお店だわ。

なぜだろう…昨日とは打って変わって、急に楽しかった時の記憶が蘇って来た…でも、もう私の大切な家族はこの世にいない…

「フローラ、そろそろ出発しよう」

「はい、分かりましたわ」

アダム様の言葉にハッとし、急いで立ち上がった。もちろん、首にはお母様から貰ったネックレスをぶら下げている。ただし、まだ見られてはいけないので服の中にそっとしまった。

ホテルを出ると、既にワードレィズ侯爵ともう1人、若い男性が待っていた。

「デーヴィド、久しぶりだな!元気そうでよかった。フローラ、紹介するよ!こちら、ワードレィズ侯爵家の嫡男、デーヴィドだ」

「フローラ嬢、お初にお目にかかります。デーヴィド・ワードレィズと申します。どうぞお見知りおきを」

「初めまして。フローラです。よろしくお願いいたします」

お互い簡単な挨拶を交わした後、馬車に乗り込んだ。もちろん向かった先は、王宮だ。

「今日の予定ですが、まずはハリソン殿下とダリア嬢の断罪から行いましょう。アダム殿下から頂いた音声がありますので、それを証拠の品として提出いたします。その後、フェザー公爵の断罪、それに伴い、ダィーサウ元公爵家の無罪も主張いたします!フローラ嬢、あの時もっときちんと調査をしておけば、あなた様の家族を死なせることも、あなた様が苦しい生活を強いられることも無かったはずです。同じ貴族として、謝罪させて下さい!申し訳ございませんでした!」

そう言うと、ワードレィズ侯爵とデーヴィド様が頭を下げた。

「お2人に頭を下げて頂く必要はございませんわ!それどころか、今回ここまで調べて頂いた事を感謝しているくらいです。これで家族の無念も…少しは晴れるかと…それからアダム様も、私の言った事を信じてくれて、ありがとうございます」

「フローラは嘘を付くような人じゃない事くらい分かっていたよ。それよりも、本当に俺の父親がすまなかった…」

深々と頭を下げるアダム様。

「アダム様、頭を上げて下さい。先ほども言いましたが、あなた様には感謝しておりますから」

そう伝えた。確かにアダム様は王族だ。それでも私の味方になってくれたのだ。こんなにも心強い事はない。

「さあ、王宮が見えてきましたよ。気を引き締めていきましょう。それからフローラ嬢、あなたはダィーサウ元公爵夫人によく似ています。貴族の中にはあなたの正体に気が付いてしまう人もいるかもしれない。ですので、このストールを被って下さい」

ワードレィズ侯爵にストールを渡された。これを被ればいいのね。顔や髪があまり見えない様に、ストールを被る。

「それでは参りましょう」

ワードレィズ侯爵とデーヴィド様の後ろを付いて行く。初めて入る王宮は、物凄く立派だ。そう言えば6歳の誕生日の1ヶ月後に、王宮で行われるお茶会に参加する予定だったのよね。

まさかこんな形で王宮に来る事になるなんて…

しばらく進むと、立派な扉の前にやって来た。

「それでは行きますよ。心の準備はよろしいですか?」

「ああ、大丈夫だ」

アダム様の返事を確認した後、ゆっくりと扉を開けるワードレィズ侯爵。

「皆様、お待たせして申し訳ございません。今日集まってもらったのは他でもありません。半年以上前に起こったアダム殿下死亡事件の全貌が明らかになりました。詳しくはご本人からお話をして頂きます。アダム殿下、どうぞお入りください」

ワードレィズ侯爵の合図と同時に、ゆっくりと部屋に入ってくアダム様。私もデーヴィド様と一緒に、後ろから付いて行く。

「おお!アダム殿下は生きておられたのですね!」

「アダム殿下!ご無事で何よりです!」

周りから歓喜の声が上がる。ふと王妃様の方を見ると、涙を流しながら嬉しそうに微笑んでいた。初めて見る王妃様は、ワードレィズ侯爵と同じ様に、優しい瞳をしていた。

ふと隣を見ると、アダム様と同じ黒い髪の男性が、アダム様を凄い形相で睨んでいた。あの人がハリソン殿下ね。

「皆の者!あの日、私に何が起こったのか私の口から説明しよう。あの日、ダリアと共に森にピクニックに行った帰り道、俺はそこにいるハリソンと今地下牢にいるダリア、ハリソンの護衛騎士たちに襲われた!そして命からがら逃げた俺は、ここに居る彼女に助けられて事なきを得たのだ!」

アダム様の言葉を聞き、明らかに動揺する貴族たち。

「嘘だ!兄さんは出鱈目を言っている!どうしてそんな酷い嘘を言うのだい?そんなに僕が嫌いなのかい?」

そう言ってわざとらしく涙を流すのは、ハリソン殿下だ。

「ハリソン殿下の言う通りです。アダム殿下、そこまでおっしゃられるなら、証拠はあるのですよね?証拠は!」

小太りの男性が、アダム様に詰め寄った。もしかして、この人がフェザー公爵かしら?

「フェザー公爵、それからハリソン、証拠ならここにある。俺はあの日、密かに録音機を使って全てを録音していたのだ!」

アダム様が録音機を再生すると、当時のやり取りが流れ出す。その内容は耳を塞ぎたくなる程、残酷な内容だった。アダム様は、信じていた弟と婚約者に裏切られた時、どんな気持ちだったのだろう…

アダム様を助けたあの日、絶望に満ちた目をしていたのも頷ける。それくらい、酷い内容だったのだ。

「嘘だ!こんなのは出鱈目だ!」

再生後は、顔を真っ赤にして叫ぶハリソン殿下の声だけが響き渡った。

「いい加減にしなさい、ハリソン!まさか実の兄を殺そうとするなんて…私の教育が間違っていたのね。ハリソンをすぐに地下牢に連れて行きなさい!」

そう叫んだのは王妃様だ。騎士たちによって連行されていくハリソン殿下。

「おい、いくら何でも地下牢なんてかわいそうだろう。せめて自室に閉じ込めておくくらいの方が…」

そう言ったのは陛下だ。この男、自分の息子が殺されそうになったと言うのに、何を言っているのかしら?あっ、でも犯人も自分の息子か…

「陛下、あなたは何を言っているのですか?王太子でもある兄を殺そうとしたのですよ!これは立派な犯罪です!それに王族だからと甘やかしていては、他の貴族に示しが付きません」

泣きながらそう訴える王妃様。王妃様にとって、ハリソン殿下も大切な息子。そんな息子を地下牢に閉じ込めないといけないと言うのは、とても辛い事だろう。

とりあえず、アダム様の方は終わった。次はいよいよフェザー公爵を断罪する番だ。
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