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第54話:エヴァン様が…
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「ふざけないでよ!どうして?どうしてお父様が謝るの?悪いのはあの女でしょう?」
興奮気味のナタリー様が、お父様でもある公爵に迫っている。
「ナタリー、落ち着きなさい。私はお前可愛さに、間違った道に進んでしまった。お前の母親は、慈悲深く誰にでも優しい女性だったのに…私の育て方が間違えたばかりに。ナタリー、すまなかった。亡くなったお前の母親にも、もう顔向けできない…」
「どうして?私のどこが育て方を間違えたのよ!どうしてお父様までそんな事を言うの?どうしてよ!そうか…あの女が悪いのね…あの女さえいなければ…」
クルリと私の方を見るナタリー様。するとすごい勢いでこちらに走ってくる。どこから取り出したのか、手には短刀が。
「止めなさい!ナタリー」
公爵の叫びも空しく、私の方に真っすぐ向かってくる。
「あの人形の様に、あなたの首、掻き切ってやるわ!」
もうダメ、切られる!
でもその瞬間、エヴァン様が私を庇う様に覆いかぶさった。そして、ザクっという音が…
「エヴァン様!なんて事を」
背中を切りつけられたエヴァン様は、服が破れ、血が出ていた。
「ルーナ、僕は大丈夫だ…それよりも、ナタリー嬢を今すぐ捕まえて…」
エヴァン様の声にハッとなった護衛たちが、急いでナタリー様を捕まえた。
「どうして…どうしてそこまでしてあの女を庇うのよ!あの女はあなたなんか愛していないわ。あなたは惨めに捨てられるのに…どうして皆あんな女を庇うの?どうしてよ!!!」
訳の分からない事を叫びながら、ナタリー様が退場していく。
「エヴァン様、しっかりしてください。出血が酷いですわ。すぐにお医者様に…」
「大したことはない。ちょっと切られただけだ。それよりルーナ、また泣かせてしまったね…ごねんね…」
そう言うと、私の頬をそっと触れ、力なく笑ったエヴァン様。そしてゆっくりと瞳を閉じた。
「どうして目を閉じるの?いやよ…逝かないで。私を1人にしないで!」
泣いて縋る私を、なぜかお父様がエヴァン様から引き離そうとする。
「放して、エヴァン様が…」
「落ち着きなさい。さあ、早くエヴァン殿を病院に!」
すぐに騎士たちによって、エヴァン様がどこかに運ばれていく。
「待って、私も行くわ。お願い、私も一緒に連れて行って!お父様、放して!」
お父様を振り払い、エヴァン様に付いて行く。そのままエヴァン様が乗せられた馬車に乗り込もうとしたが
「ルーナ嬢、申し訳ございませんが、定員オーバーです。一刻も早くエヴァン殿を病院に運びたいので、どうかこれ以上邪魔はしないで下さい!」
近くにいた騎士に怒られてしまった。邪魔だなんて、そんな…私はただ、エヴァン様が心配なだけなのに…て、ショックを受けている暇はないわ。
「お願い、あの馬車を追って。今すぐに」
近くに停めてあったどこかの貴族の馬車に乗り込んだのだが…
「ルーナ、お前は何をしているのだ。よそ様の馬車に乗り込むだなんて!」
怖い顔のお父様に、馬車から引きずりおろされた。もう、そんな悠長な事を言っている場合ではないのに…こんな事をしている間に、エヴァン様のお命が…
「ルーナ、こっちよ。家の馬車に乗って頂戴!」
近くにいたエマが声を掛けてくれた。
「あぁ、エマ。ありがとう、すぐにあの馬車を…て、もう馬車がいないわ。どうしましょう」
「大丈夫よ、きっと王都で一番大きな貴族病院に運ばれているはずだから。さあ、行きましょう」
すぐに馬車を走らせるエマ。
「ねえ、エマ。エヴァン様は大丈夫かしら?エヴァン様の背中からたくさんの血が出ていたわ。もしエヴァン様がいなくなったら、私…これからどうやって生きていけばいいの?私はエヴァン様のいない生活なんて、もう考えられないのに…」
「ルーナ、大丈夫よ。出血量は多かったけれど、大したことないわ。それよりもルーナ、あなたエヴァン様と共に生きる事に決めたのね。まあ、遅かれ早かれそうなるとは思ったけれど…あの男の作戦勝ちね…もしかしたらナタリー様に切りつけられたのも、わざとかしら?あの男なら、ナタリー様を止める事も出来ただろうに…」
エマがブツブツとふざけたことを言っている。
「ちょっと、エマ。あなたがエヴァン様を嫌っている事は知っているけれど、そんな風に言わなくてもいいじゃない!エヴァン様は私を庇う為に、怪我をしたのよ。それなのに、そんな酷い事を言うなんて…」
「ごめんね、ルーナ。そんなに怒らないでよ。そうよね、どんな理由があれ、ルーナを守ってくれたのは確かだものね。それに、今回の件もエヴァン様がいなかったら、今頃あなたはどうなっていたか。素直に感謝しないとね」
エマの言う通りだ。私はいつもエヴァン様に助けてもらいっぱなしだ。いつもどんな時も、私を助けてくれるエヴァン様。これからは私がエヴァン様を支えられる存在になりたい。
でも…もう手遅れかもしれない。
エヴァン様、お願い。どうか私を残して逝かないで…
興奮気味のナタリー様が、お父様でもある公爵に迫っている。
「ナタリー、落ち着きなさい。私はお前可愛さに、間違った道に進んでしまった。お前の母親は、慈悲深く誰にでも優しい女性だったのに…私の育て方が間違えたばかりに。ナタリー、すまなかった。亡くなったお前の母親にも、もう顔向けできない…」
「どうして?私のどこが育て方を間違えたのよ!どうしてお父様までそんな事を言うの?どうしてよ!そうか…あの女が悪いのね…あの女さえいなければ…」
クルリと私の方を見るナタリー様。するとすごい勢いでこちらに走ってくる。どこから取り出したのか、手には短刀が。
「止めなさい!ナタリー」
公爵の叫びも空しく、私の方に真っすぐ向かってくる。
「あの人形の様に、あなたの首、掻き切ってやるわ!」
もうダメ、切られる!
でもその瞬間、エヴァン様が私を庇う様に覆いかぶさった。そして、ザクっという音が…
「エヴァン様!なんて事を」
背中を切りつけられたエヴァン様は、服が破れ、血が出ていた。
「ルーナ、僕は大丈夫だ…それよりも、ナタリー嬢を今すぐ捕まえて…」
エヴァン様の声にハッとなった護衛たちが、急いでナタリー様を捕まえた。
「どうして…どうしてそこまでしてあの女を庇うのよ!あの女はあなたなんか愛していないわ。あなたは惨めに捨てられるのに…どうして皆あんな女を庇うの?どうしてよ!!!」
訳の分からない事を叫びながら、ナタリー様が退場していく。
「エヴァン様、しっかりしてください。出血が酷いですわ。すぐにお医者様に…」
「大したことはない。ちょっと切られただけだ。それよりルーナ、また泣かせてしまったね…ごねんね…」
そう言うと、私の頬をそっと触れ、力なく笑ったエヴァン様。そしてゆっくりと瞳を閉じた。
「どうして目を閉じるの?いやよ…逝かないで。私を1人にしないで!」
泣いて縋る私を、なぜかお父様がエヴァン様から引き離そうとする。
「放して、エヴァン様が…」
「落ち着きなさい。さあ、早くエヴァン殿を病院に!」
すぐに騎士たちによって、エヴァン様がどこかに運ばれていく。
「待って、私も行くわ。お願い、私も一緒に連れて行って!お父様、放して!」
お父様を振り払い、エヴァン様に付いて行く。そのままエヴァン様が乗せられた馬車に乗り込もうとしたが
「ルーナ嬢、申し訳ございませんが、定員オーバーです。一刻も早くエヴァン殿を病院に運びたいので、どうかこれ以上邪魔はしないで下さい!」
近くにいた騎士に怒られてしまった。邪魔だなんて、そんな…私はただ、エヴァン様が心配なだけなのに…て、ショックを受けている暇はないわ。
「お願い、あの馬車を追って。今すぐに」
近くに停めてあったどこかの貴族の馬車に乗り込んだのだが…
「ルーナ、お前は何をしているのだ。よそ様の馬車に乗り込むだなんて!」
怖い顔のお父様に、馬車から引きずりおろされた。もう、そんな悠長な事を言っている場合ではないのに…こんな事をしている間に、エヴァン様のお命が…
「ルーナ、こっちよ。家の馬車に乗って頂戴!」
近くにいたエマが声を掛けてくれた。
「あぁ、エマ。ありがとう、すぐにあの馬車を…て、もう馬車がいないわ。どうしましょう」
「大丈夫よ、きっと王都で一番大きな貴族病院に運ばれているはずだから。さあ、行きましょう」
すぐに馬車を走らせるエマ。
「ねえ、エマ。エヴァン様は大丈夫かしら?エヴァン様の背中からたくさんの血が出ていたわ。もしエヴァン様がいなくなったら、私…これからどうやって生きていけばいいの?私はエヴァン様のいない生活なんて、もう考えられないのに…」
「ルーナ、大丈夫よ。出血量は多かったけれど、大したことないわ。それよりもルーナ、あなたエヴァン様と共に生きる事に決めたのね。まあ、遅かれ早かれそうなるとは思ったけれど…あの男の作戦勝ちね…もしかしたらナタリー様に切りつけられたのも、わざとかしら?あの男なら、ナタリー様を止める事も出来ただろうに…」
エマがブツブツとふざけたことを言っている。
「ちょっと、エマ。あなたがエヴァン様を嫌っている事は知っているけれど、そんな風に言わなくてもいいじゃない!エヴァン様は私を庇う為に、怪我をしたのよ。それなのに、そんな酷い事を言うなんて…」
「ごめんね、ルーナ。そんなに怒らないでよ。そうよね、どんな理由があれ、ルーナを守ってくれたのは確かだものね。それに、今回の件もエヴァン様がいなかったら、今頃あなたはどうなっていたか。素直に感謝しないとね」
エマの言う通りだ。私はいつもエヴァン様に助けてもらいっぱなしだ。いつもどんな時も、私を助けてくれるエヴァン様。これからは私がエヴァン様を支えられる存在になりたい。
でも…もう手遅れかもしれない。
エヴァン様、お願い。どうか私を残して逝かないで…
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