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第43話:あの女は狂っている【後編】~エヴァン視点~
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「ルーナ、待たせてごめんね。1人で大丈夫だったかい?」
さっきの毒蛇と毒クモを見た後だったため、急いでルーナの元に駆けつけたのだが。
「別に待っておりませんわ。私は1人でも大丈夫ですので、どうかエヴァン様はお好きな場所にいらしてください」
そう言われてしまった。
「それじゃあ僕は、ここにいるよ。ルーナの傍が僕にとって好きな場所だからね」
そう言ってルーナの方を見てほほ笑んだ。すると、プイっと反対方向を向いてしまった。ルーナはまだ、僕の事を許してくれていない様だ。とにかく、これからも極力ルーナの心に寄り添いつつ、彼女を守って行かないと。
その後も嬉しそうに友人たちと話をするルーナ。さっきの出来事が本当に公にならなくてよかった。ルーナがこうやって何も知らずに笑ってくれていたら、僕も嬉しい。
そして無事、誕生日パーティーは終わった。最後まで笑顔でルーナが過ごしてくれたことが、僕にとって一番の幸せだ。ただ、やはり今日の事が気になって、僕はルーナの家に残る事にした。すると家の両親も残り、久しぶりにルーナの家族と僕の家族で食事を楽しんだ。
食後はルーナ宛に届いたプレゼントを開けていく。中にはルーナに好意を抱いている令息からの手紙付きプレゼントもあった。本当に諦めの悪い男どもだ。
そんな中、ついにナタリー嬢のプレゼントを開ける番がやって来た。きっとろくでもないものが入っているのだろう。ルーナも同じことを思ったのか、顔をこわばらせ、固まっていた。
「ルーナ、僕が開けようか?何が入っているか分からないし」
そう声を掛けたのだが、大丈夫だと僕に笑顔を見せ、ゆっくりとリボンを外し、箱を開けた。中を取り出した瞬間、悲鳴を上げて僕に飛びついて来た。
中にはなんと、ルーナにそっくりな人形の首が切られた状態で入っていたのだ。ご丁寧に、服は血まみれ、人形の口からも血を流していた。それがやけにリアルで、僕ですら恐怖を抱いたくらいだ。
こんな人形を見せられたルーナは、恐怖で震え、泣きながら僕に
「私は、ナタリー様に殺されるのでしょうか?」
そう訴えている。とにかくルーナを落ち着かせるため、必死に宥める。そしてすぐに人形を閉まった。それでも恐怖から震えと涙が止まらないルーナを強く抱きしめる。
しばらくすると、落ち着いた様で、ゆっくり僕から離れた。
「急に抱き着いてしまい、申し訳ございませんでした。もう大丈夫です」
そう言って部屋からフラフラと出て行こうとするルーナを抱きかかえた。
「ルーナ、大丈夫じゃないだろう?一旦皆のいる場所に戻ろう」
そう伝え、皆がいる居間へと向かった。いつも僕が触れると暴れるルーナだが、今日は大人しく抱かれている。よほど怖い様だ。
部屋に入ると、ルーナの義理姉と母親、さらに僕の母上までもが飛んできた。
「ルーナちゃん、どうしたの?」
「エヴァン、一体何があったの?」
「ちょっとナタリー嬢の誕生日プレゼントが強烈で…僕は父上と侯爵に話しがあるので、ルーナの事を見ていてもらえますか?今は1人に出来る状態ではありませんので」
とりあえず、ソファーの真ん中にルーナを下ろした。すると、すかさず女性陣がルーナを囲う様に座る。
「エヴァン、ルーナちゃんは大丈夫よ。私達が見ているから」
「それではお願いします」
震えるルーナを優しく義姉が抱きしめている。母上やルーナの母親も心配そうに見つめているが、女性陣はもちろん、メイドや護衛もいるし、一旦ルーナの事は彼女たちに任せよう。
「父上、侯爵、行きましょうか?」
父上と侯爵と一緒に部屋から出ようとした時だった。
「待って下さい、俺も一緒に参加します」
ルーナの兄でもあるロイドも一緒に付いて来た。4人で別室に移る。
「それでエヴァン、ナタリー嬢はルーナ嬢に何を贈ったんだ?ルーナ嬢があんなに怯えるなんて。もしかして毒蛇か何かか?」
「いいえ…これをご覧ください」
僕はナタリー嬢から贈られた人形を机の上に置いた。
「これはルーナ嬢にそっくりな人形だ。でも…」
あまりにもリアルに作られている人形に、全員が固まっている。
「これはナタリー嬢がルーナを殺害すると言う予告でしょうか?それにしても酷い。こんなものを送り付けてくるだなんて、いくら何でもナタリー嬢は正気とは思えない」
ロイドが口を押えて呟く。確かにいくら憎い相手とはいえ、こんな人形を侯爵令嬢に贈ってくる時点で正常ではないだろう。さすがにこれは殺人予告と受け取られても仕方がない。
このままという訳にはいかないだろう…
「多分…正気ではないのだろう…こんな事をすれば、自分もただでは済まない。きっとこれを理由に、婚約破棄されることも念頭に…入れていないか…」
父上がため息を付く。確かに父上の言う通り、ナタリー嬢はこの件で婚約破棄になる可能性もあるとは、夢にも思っていないだろう。そもそも、この件を父親でもある公爵は知っているのか?
「とにかく、この件は兄上とハドソン、それから義姉上にも伝えておこう。さすがにこれは容認できない。ただ、この件でハドソンとナタリー嬢が婚約破棄になった場合、ナタリー嬢はルーナ嬢に何をしでかすか分からない。だから…婚約破棄はまだ様子を見た方がいいかもしれない…公爵が今回の件でさすがにまずいと感じ、ナタリー嬢を修道院にでも送ってくれたら別だが、今の公爵には、最愛の妻の忘れ形見でもあるナタリー嬢を修道院に送る何て事は絶対にしないだろうし…」
「何を父上は弱気な事を言っているのですか?侯爵令嬢でもあるルーナに殺人予告ともとれる人形を贈ったのですよ。それにルーナはあんなに怯えていた!ルーナの為にも、今回の件を厳しく追及して、ナタリー嬢を修道院に送るべきです」
「エヴァン、気持ちは分かるが、さすがに修道院に送るのは厳しいぞ。きっとヴィノーデル公爵が許さないだろうし。とにかく、慎重にいこう」
父上が僕の肩を叩いてそう呟いている。でも、そんな悠長な事は言っていられない気がする。ナタリー嬢がやっている事は、完全に狂っている。早く手を打たないと。
~あとがき~
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
そして先日から始まったエール機能に、早くもエールを送って下さっている方がいらっしゃり、嬉しく思っております(*^-^*)
読んでいただけるだけで嬉しいのですが、私の為に広告を見る時間を使って下さっている事が嬉しくて、あとがきに書かせていただきました!本当にありがとうございますm(__)m
このお話も終盤に差し掛かって参りましたが、もう少し続く予定ですので、引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m
さっきの毒蛇と毒クモを見た後だったため、急いでルーナの元に駆けつけたのだが。
「別に待っておりませんわ。私は1人でも大丈夫ですので、どうかエヴァン様はお好きな場所にいらしてください」
そう言われてしまった。
「それじゃあ僕は、ここにいるよ。ルーナの傍が僕にとって好きな場所だからね」
そう言ってルーナの方を見てほほ笑んだ。すると、プイっと反対方向を向いてしまった。ルーナはまだ、僕の事を許してくれていない様だ。とにかく、これからも極力ルーナの心に寄り添いつつ、彼女を守って行かないと。
その後も嬉しそうに友人たちと話をするルーナ。さっきの出来事が本当に公にならなくてよかった。ルーナがこうやって何も知らずに笑ってくれていたら、僕も嬉しい。
そして無事、誕生日パーティーは終わった。最後まで笑顔でルーナが過ごしてくれたことが、僕にとって一番の幸せだ。ただ、やはり今日の事が気になって、僕はルーナの家に残る事にした。すると家の両親も残り、久しぶりにルーナの家族と僕の家族で食事を楽しんだ。
食後はルーナ宛に届いたプレゼントを開けていく。中にはルーナに好意を抱いている令息からの手紙付きプレゼントもあった。本当に諦めの悪い男どもだ。
そんな中、ついにナタリー嬢のプレゼントを開ける番がやって来た。きっとろくでもないものが入っているのだろう。ルーナも同じことを思ったのか、顔をこわばらせ、固まっていた。
「ルーナ、僕が開けようか?何が入っているか分からないし」
そう声を掛けたのだが、大丈夫だと僕に笑顔を見せ、ゆっくりとリボンを外し、箱を開けた。中を取り出した瞬間、悲鳴を上げて僕に飛びついて来た。
中にはなんと、ルーナにそっくりな人形の首が切られた状態で入っていたのだ。ご丁寧に、服は血まみれ、人形の口からも血を流していた。それがやけにリアルで、僕ですら恐怖を抱いたくらいだ。
こんな人形を見せられたルーナは、恐怖で震え、泣きながら僕に
「私は、ナタリー様に殺されるのでしょうか?」
そう訴えている。とにかくルーナを落ち着かせるため、必死に宥める。そしてすぐに人形を閉まった。それでも恐怖から震えと涙が止まらないルーナを強く抱きしめる。
しばらくすると、落ち着いた様で、ゆっくり僕から離れた。
「急に抱き着いてしまい、申し訳ございませんでした。もう大丈夫です」
そう言って部屋からフラフラと出て行こうとするルーナを抱きかかえた。
「ルーナ、大丈夫じゃないだろう?一旦皆のいる場所に戻ろう」
そう伝え、皆がいる居間へと向かった。いつも僕が触れると暴れるルーナだが、今日は大人しく抱かれている。よほど怖い様だ。
部屋に入ると、ルーナの義理姉と母親、さらに僕の母上までもが飛んできた。
「ルーナちゃん、どうしたの?」
「エヴァン、一体何があったの?」
「ちょっとナタリー嬢の誕生日プレゼントが強烈で…僕は父上と侯爵に話しがあるので、ルーナの事を見ていてもらえますか?今は1人に出来る状態ではありませんので」
とりあえず、ソファーの真ん中にルーナを下ろした。すると、すかさず女性陣がルーナを囲う様に座る。
「エヴァン、ルーナちゃんは大丈夫よ。私達が見ているから」
「それではお願いします」
震えるルーナを優しく義姉が抱きしめている。母上やルーナの母親も心配そうに見つめているが、女性陣はもちろん、メイドや護衛もいるし、一旦ルーナの事は彼女たちに任せよう。
「父上、侯爵、行きましょうか?」
父上と侯爵と一緒に部屋から出ようとした時だった。
「待って下さい、俺も一緒に参加します」
ルーナの兄でもあるロイドも一緒に付いて来た。4人で別室に移る。
「それでエヴァン、ナタリー嬢はルーナ嬢に何を贈ったんだ?ルーナ嬢があんなに怯えるなんて。もしかして毒蛇か何かか?」
「いいえ…これをご覧ください」
僕はナタリー嬢から贈られた人形を机の上に置いた。
「これはルーナ嬢にそっくりな人形だ。でも…」
あまりにもリアルに作られている人形に、全員が固まっている。
「これはナタリー嬢がルーナを殺害すると言う予告でしょうか?それにしても酷い。こんなものを送り付けてくるだなんて、いくら何でもナタリー嬢は正気とは思えない」
ロイドが口を押えて呟く。確かにいくら憎い相手とはいえ、こんな人形を侯爵令嬢に贈ってくる時点で正常ではないだろう。さすがにこれは殺人予告と受け取られても仕方がない。
このままという訳にはいかないだろう…
「多分…正気ではないのだろう…こんな事をすれば、自分もただでは済まない。きっとこれを理由に、婚約破棄されることも念頭に…入れていないか…」
父上がため息を付く。確かに父上の言う通り、ナタリー嬢はこの件で婚約破棄になる可能性もあるとは、夢にも思っていないだろう。そもそも、この件を父親でもある公爵は知っているのか?
「とにかく、この件は兄上とハドソン、それから義姉上にも伝えておこう。さすがにこれは容認できない。ただ、この件でハドソンとナタリー嬢が婚約破棄になった場合、ナタリー嬢はルーナ嬢に何をしでかすか分からない。だから…婚約破棄はまだ様子を見た方がいいかもしれない…公爵が今回の件でさすがにまずいと感じ、ナタリー嬢を修道院にでも送ってくれたら別だが、今の公爵には、最愛の妻の忘れ形見でもあるナタリー嬢を修道院に送る何て事は絶対にしないだろうし…」
「何を父上は弱気な事を言っているのですか?侯爵令嬢でもあるルーナに殺人予告ともとれる人形を贈ったのですよ。それにルーナはあんなに怯えていた!ルーナの為にも、今回の件を厳しく追及して、ナタリー嬢を修道院に送るべきです」
「エヴァン、気持ちは分かるが、さすがに修道院に送るのは厳しいぞ。きっとヴィノーデル公爵が許さないだろうし。とにかく、慎重にいこう」
父上が僕の肩を叩いてそう呟いている。でも、そんな悠長な事は言っていられない気がする。ナタリー嬢がやっている事は、完全に狂っている。早く手を打たないと。
~あとがき~
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
そして先日から始まったエール機能に、早くもエールを送って下さっている方がいらっしゃり、嬉しく思っております(*^-^*)
読んでいただけるだけで嬉しいのですが、私の為に広告を見る時間を使って下さっている事が嬉しくて、あとがきに書かせていただきました!本当にありがとうございますm(__)m
このお話も終盤に差し掛かって参りましたが、もう少し続く予定ですので、引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m
応援ありがとうございます!
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