37 / 62
第37話:ミレー殿下のファンになりました
しおりを挟む
楽しいお茶の後、わざわざ門までお見送りに来てくれたミレー殿下。他の王族やエヴァン様達まで集まってきている。
「今日は楽しい時間をありがとう。私とアイザック殿下の結婚式には、ぜひパレッソ王国に来てね。その時にはきっと、クラークも来てくれるだろうから」
「こちらこそ、とても素敵な時間をありがとうございました。クラーク殿下とクラーク殿下の最愛の人に会えるのも、楽しみですわ」
「本当にあの2人は、こっちが見ていて恥ずかしくなるくらい、仲睦まじいから。それにしても、あなたとクラークが恋仲だなんて信じちゃう人がいるなんてね」
クスクス笑いながら、エヴァン様の方を見ている。何とも言えない顔のエヴァン様。
「私はもう少しこの国にいる予定なのだけれど、色々と忙しくてもう会えないわね。ルーナ様、今日あなたにお会いできてよかったわ。どうかナタリー様とエヴァン様に負けないようにね」
「はい、ありがとうございます。私、頑張りますわ!」
「ミレー殿下、ナタリー嬢は分かるが、どうして僕に負けない様にとおっしゃるのですか?僕はルーナの敵ではありませんよ!」
すかさずエヴァン様が反論している。
「あら、1年も大切な婚約者を傷つけ悲しませたのだから、十分敵でしょう。と言っても、私はルーナ様は結局、エヴァン様と婚約を結ぶと思うけれどね」
「な…ミレー殿下、なんて事を言うのですか?私は…」
「ルーナ様、さっきも言いましたが、どうかエヴァン様を許せないと言う気持ちが独り歩きしてしまい、自分の本当の気持ちを見失ってはいけないわ。それだけは忘れないでね」
そう言うと、それはそれは美しい微笑を浮かべたミレー殿下。許せないと言う気持ちが独り歩き…か。それでも私はやっぱり、エヴァン様が許せないのだ。
「それでは、我々は失礼いたします」
お父様に促され、ミレー殿下たちに頭を下げ、馬車に乗り込む。こちらに手を振ってくれているミレー殿下。急いで窓を開ける。すると
「ルーナ様、必ずパレッソ王国に来て頂戴ね。それから、私とクラークは何があってもあなたの味方よ。もしナタリー様に虐められたら、私が締め上げ…正式に公爵家に抗議をするから」
そう言ってミレー殿下が笑っていた。今締め上げると言いかけていたわね…きっとミレー殿下に締め上げられたら、さすがのナタリー様も反省…しないか。
「ありがとうございます、ミレー殿下。どうかクラーク殿下にもよろしくお伝えください」
私も手を振りながら叫んだ。その後も姿が見えなくなるまで、ずっとミレー殿下が手を振り続けてくれた。本当に素敵な女性だ。きっと彼女なら、アイザック殿下をうまくお尻に敷いて、立派な女王様になるだろう。
「ルーナは随分と、パレッソ王国の王女殿下と仲良くなったのだね。それにメルソニア王国の王太子殿下とも仲良しだったようだし。ただ、あまり貴族が他国の王族の仲がいいのも良くないぞ。陛下やハドソン殿下の顔もあるだろうし、何よりヴィノーデル公爵がうるさいからな…」
「分かっておりますわ。気を付けます。もしかしてお父様にまで、ヴィノーデル公爵が文句を言ってきているのですか?」
「…ああ…ただ、すぐにクリスティロソン公爵が間に入ってくれているから、問題はないよ。それにしても、ヴィノーデル公爵は夫人が亡くなってから、本当に人が変わってしまった。夫人がいらっしゃったときは、心優しい人だったのに…」
ポツリと呟くお父様。やっぱりヴィノーデル公爵夫人が亡くなった事で、公爵家は歯車が狂ってしまったのだろう。もし夫人が生きていらしたら、ナタリー様ももしかしたら心お優しい方だったのかもしれない…
でも、ナタリー様が心お優しい方だなんて、想像が出来ないわ…
「とにかく今はクリスティロソン公爵家が気にかけてくれているが、ルーナとエヴァン殿が婚約破棄をしている以上、世間一般的には正式な後ろ盾とはみなされていない。ルーナ、ナタリー嬢には十分気を付けろよ。いいな」
「…ええ、分かっておりますわ」
クリスティロソン公爵家も今は我が家を気にかけてくれているけれど、私がもし正式に別の家の殿方と婚約を結んだら、もう気に掛けてくれることもなくなるかもしれない。そうなったらヴィノーデル公爵は、さらにお父様やお兄様への風当たりを強くしないかしら?
「ルーナ、だからと言って、君が無理してエヴァン殿と婚約を結び直さなくてもいいんだよ。元々クリスティロソン公爵夫人と母さんは親友だし、それに何より、公爵が“たとえエヴァンとルーナ嬢が婚約を結び直さなくても、出来るだけの事はさせてもらう”と言ってくれているからね。だから、安心して自分の事だけ考えなさい」
そう言ってほほ笑んでくれた。確かにそうなのだが…
「さあ、屋敷に着いたよ。今日は疲れただろう?ゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます、お父様」
馬車から降りると、心配そうな顔のお義姉様が待っていた。
「ルーナちゃん、大丈夫だった?パレッソ王国のミレー殿下に呼び出されたと聞いて、私、心配で…」
「お義姉様、わざわざ待っていて下さったのですか?ええ、大丈夫でしたわ。どうやらミレー殿下は、メルソニア王国のクラーク殿下と従兄妹だそうで、クラーク殿下の件でお礼とお詫びをしたかったそうなのです。ミレー殿下はとても素敵な女性でしたわ。あのナタリー様を言い負かしたのですから」
「あのナタリー様を!それはすごいわね」
「それに、武術にも優れている様で、クマを素手で倒せるのですって」
「まあ、そんな勇ましい方なの?とても美しい女性と聞いたけれど…」
「ええ、とても美しい女性でしたわ。それはもう、女神さまの様に…そんな美しい女性が強さと聡明さも兼ね備えているだなんて、素敵すぎて私、ミレー殿下のファンになってしまいました」
本当にミレー殿下は素敵だった。私もあんな強い女性になれたら…
「2人とも話なら家の中でしなさい。それから、ミレー殿下が勇ましい事、アイザック殿下はご存じないのだ。あまり公にしてはいけないよ」
お父様から注意を受けた。その後屋敷に入った私は、お義姉様と、なぜかお母様も混ざり、いかにミレー殿下が素敵な女性かを話し続けたのだった。
「今日は楽しい時間をありがとう。私とアイザック殿下の結婚式には、ぜひパレッソ王国に来てね。その時にはきっと、クラークも来てくれるだろうから」
「こちらこそ、とても素敵な時間をありがとうございました。クラーク殿下とクラーク殿下の最愛の人に会えるのも、楽しみですわ」
「本当にあの2人は、こっちが見ていて恥ずかしくなるくらい、仲睦まじいから。それにしても、あなたとクラークが恋仲だなんて信じちゃう人がいるなんてね」
クスクス笑いながら、エヴァン様の方を見ている。何とも言えない顔のエヴァン様。
「私はもう少しこの国にいる予定なのだけれど、色々と忙しくてもう会えないわね。ルーナ様、今日あなたにお会いできてよかったわ。どうかナタリー様とエヴァン様に負けないようにね」
「はい、ありがとうございます。私、頑張りますわ!」
「ミレー殿下、ナタリー嬢は分かるが、どうして僕に負けない様にとおっしゃるのですか?僕はルーナの敵ではありませんよ!」
すかさずエヴァン様が反論している。
「あら、1年も大切な婚約者を傷つけ悲しませたのだから、十分敵でしょう。と言っても、私はルーナ様は結局、エヴァン様と婚約を結ぶと思うけれどね」
「な…ミレー殿下、なんて事を言うのですか?私は…」
「ルーナ様、さっきも言いましたが、どうかエヴァン様を許せないと言う気持ちが独り歩きしてしまい、自分の本当の気持ちを見失ってはいけないわ。それだけは忘れないでね」
そう言うと、それはそれは美しい微笑を浮かべたミレー殿下。許せないと言う気持ちが独り歩き…か。それでも私はやっぱり、エヴァン様が許せないのだ。
「それでは、我々は失礼いたします」
お父様に促され、ミレー殿下たちに頭を下げ、馬車に乗り込む。こちらに手を振ってくれているミレー殿下。急いで窓を開ける。すると
「ルーナ様、必ずパレッソ王国に来て頂戴ね。それから、私とクラークは何があってもあなたの味方よ。もしナタリー様に虐められたら、私が締め上げ…正式に公爵家に抗議をするから」
そう言ってミレー殿下が笑っていた。今締め上げると言いかけていたわね…きっとミレー殿下に締め上げられたら、さすがのナタリー様も反省…しないか。
「ありがとうございます、ミレー殿下。どうかクラーク殿下にもよろしくお伝えください」
私も手を振りながら叫んだ。その後も姿が見えなくなるまで、ずっとミレー殿下が手を振り続けてくれた。本当に素敵な女性だ。きっと彼女なら、アイザック殿下をうまくお尻に敷いて、立派な女王様になるだろう。
「ルーナは随分と、パレッソ王国の王女殿下と仲良くなったのだね。それにメルソニア王国の王太子殿下とも仲良しだったようだし。ただ、あまり貴族が他国の王族の仲がいいのも良くないぞ。陛下やハドソン殿下の顔もあるだろうし、何よりヴィノーデル公爵がうるさいからな…」
「分かっておりますわ。気を付けます。もしかしてお父様にまで、ヴィノーデル公爵が文句を言ってきているのですか?」
「…ああ…ただ、すぐにクリスティロソン公爵が間に入ってくれているから、問題はないよ。それにしても、ヴィノーデル公爵は夫人が亡くなってから、本当に人が変わってしまった。夫人がいらっしゃったときは、心優しい人だったのに…」
ポツリと呟くお父様。やっぱりヴィノーデル公爵夫人が亡くなった事で、公爵家は歯車が狂ってしまったのだろう。もし夫人が生きていらしたら、ナタリー様ももしかしたら心お優しい方だったのかもしれない…
でも、ナタリー様が心お優しい方だなんて、想像が出来ないわ…
「とにかく今はクリスティロソン公爵家が気にかけてくれているが、ルーナとエヴァン殿が婚約破棄をしている以上、世間一般的には正式な後ろ盾とはみなされていない。ルーナ、ナタリー嬢には十分気を付けろよ。いいな」
「…ええ、分かっておりますわ」
クリスティロソン公爵家も今は我が家を気にかけてくれているけれど、私がもし正式に別の家の殿方と婚約を結んだら、もう気に掛けてくれることもなくなるかもしれない。そうなったらヴィノーデル公爵は、さらにお父様やお兄様への風当たりを強くしないかしら?
「ルーナ、だからと言って、君が無理してエヴァン殿と婚約を結び直さなくてもいいんだよ。元々クリスティロソン公爵夫人と母さんは親友だし、それに何より、公爵が“たとえエヴァンとルーナ嬢が婚約を結び直さなくても、出来るだけの事はさせてもらう”と言ってくれているからね。だから、安心して自分の事だけ考えなさい」
そう言ってほほ笑んでくれた。確かにそうなのだが…
「さあ、屋敷に着いたよ。今日は疲れただろう?ゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます、お父様」
馬車から降りると、心配そうな顔のお義姉様が待っていた。
「ルーナちゃん、大丈夫だった?パレッソ王国のミレー殿下に呼び出されたと聞いて、私、心配で…」
「お義姉様、わざわざ待っていて下さったのですか?ええ、大丈夫でしたわ。どうやらミレー殿下は、メルソニア王国のクラーク殿下と従兄妹だそうで、クラーク殿下の件でお礼とお詫びをしたかったそうなのです。ミレー殿下はとても素敵な女性でしたわ。あのナタリー様を言い負かしたのですから」
「あのナタリー様を!それはすごいわね」
「それに、武術にも優れている様で、クマを素手で倒せるのですって」
「まあ、そんな勇ましい方なの?とても美しい女性と聞いたけれど…」
「ええ、とても美しい女性でしたわ。それはもう、女神さまの様に…そんな美しい女性が強さと聡明さも兼ね備えているだなんて、素敵すぎて私、ミレー殿下のファンになってしまいました」
本当にミレー殿下は素敵だった。私もあんな強い女性になれたら…
「2人とも話なら家の中でしなさい。それから、ミレー殿下が勇ましい事、アイザック殿下はご存じないのだ。あまり公にしてはいけないよ」
お父様から注意を受けた。その後屋敷に入った私は、お義姉様と、なぜかお母様も混ざり、いかにミレー殿下が素敵な女性かを話し続けたのだった。
応援ありがとうございます!
11
お気に入りに追加
2,916
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる