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第36話:楽しいひと時を過ごしました
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「せっかくだから、お茶にしましょう。このお茶はね、パレッソ王国から持ってきた物なのよ。とても体にいいの。ぜひ飲んでみて」
「はい、早速頂きますわ」
ミレー殿下に勧められ、お茶を飲む。
「このお茶、とても風味があって美味しいですわ。こんなにも美味しいお茶、初めて飲みました」
深いコクのあるとても美味しいお茶だ。あまりの美味しさに、一気に飲み干してしまった。
「喜んで頂けて良かったわ。このお茶は山岳部で育てられたお茶なの。よかったらこの国でも広めてもらえると嬉しいわ」
美しい微笑で、すかさず自国のお茶を進めるなんてさすがね。それに、やはり次期女王様だけの事はある。1つ1つのしぐさがものすごく美しい。同性の私が見とれるほどに。
「そういえばクリスティロソン公爵家のエヴァン様、ルーナ様の元婚約者なのですってね。実は私、エヴァン様から今回の話を受けた時、どうしようか迷ったの。クラークからはエヴァン様の事、視野が狭く思い込みの激しい最低なクズだって聞いていたから」
そう言って笑っているミレー殿下。クラーク殿下ったら、エヴァン様の事をそんな風にミレー殿下に吹き込むだなんて!でも…クラーク殿下はエヴァン様の悪い部分しか見ていなかったから、仕方ないか…
「でもね、そんなクズなら、是非会ってみたいと思ったの。でも、会ってみたら非常に優秀な人ね。ルーナ様の事もすぐに庇っていたし。ただ、少し腹黒そうなところがあるけれど…でもナタリー様のいう事を鵜呑みにしたあたりは、やっぱりおバカなのかしら?」
コテンと首をかしげる姿、本当に美しいのだが、言っていることがかなりかなり過激だ。
「あの…確かにエヴァン様は思い込みが激しいところがありますが、普段は聡明な方でございます。確かに少し強引なところがありますが…」
「エヴァン様はルーナ様と婚約を結び直したいらしいわね。アイザック殿下が詳しく教えてくれたのよ。あの人、あなたを手に入れるために、エヴァン様に嘘を吹き込んだと聞いたわ。わざわざ私にそんな事を暴露するだなんて、本当にアイザック殿下は抜けているのね。それで、ルーナ様はどうするつもりなの?婚約を結び直すとか?」
ニヤニヤしながら聞いてくるミレー殿下。
「いえ…たとえナタリー様に騙されていたとしても、1年間もの間辛く悲しい思いをしてまいりました。あの1年は私にとって本当に辛く、もう二度とあんな思いはしたくはありません。ですから、たとえエヴァン様がどれほど私に良くしてくださっても、婚約は結び直したくないと考えております。それに、私よりナタリー様を信じた事も、どうしても許せなくて…」
「そうよね、そう簡単には許せないわよね。私だったら、数発はぶん殴って、山に行ってクマでも仕留めてきてもらうわ。私の事を好きなら、それくらい出来るでしょってね」
「ミレー殿下は随分と勇ましい事をおっしゃるのですね」
あまりの衝撃的な言葉に、ついそんな事を言ってしまった。
「ごめんなさい、私、子供の頃から体を鍛えているのよ。ほら、私は次期女王になる身でしょう。自分の身は自分で守りたいと思って。そのお陰で、そこら辺の騎士よりもずっと強いのよ。板はもちろん、クマも素手で倒せるのだから」
「クマを素手でですか!」
こんなに華奢でお美しいお方が、クマを素手で…
「私、見た目がこんなんだから、襲われたりすることもって。もちろん、全員ボコボコにして、監獄送りにしてあげるけれどね」
そう言って力こぶを見せてくれた。なんて…なんてカッコいいのかしら?私もミレー殿下みたいな女性、憧れるわ。
「ルーナ様、そんな尊敬の眼差しで見ないで頂戴。なんだか恥ずかしいわ。だから夫となる人には、強さとかは求めていないの。とにかく、私に従順な人がいいのよね。もちろん、従順になる様に、教育はするつもりだけれど」
そう言ってミレー殿下が、それはそれは嬉しそうに笑った。ただ…その笑いが恐ろしい…
「だからアイザック殿下が選ばれたのですね…なんだか納得が出来ましたわ」
でもアイザック殿下、ミレー殿下の真の姿を見て怖気づかないかしら。まあ、怖気づいたところで、もう逃げられないでしょうけれど…
「とにかく私は、男に頼らずに生きていきたいの。男に守られている女王なんて、情けないじゃない。ルーナ様も爵位等の関係で妥協しないといけない事もあるでしょうけれど、自分の気持ちに正直に生きたらいいわ。エヴァン様が許せないなら、許さなくていいのよ。ただ…許せないと言う気持ちが独り歩きをしてしまって、本当の自分の気持ちを見失う事だけはしない方がいいわ。自分がどうすれば幸せになれるのかを、一番に考えて欲しいと私は思っているの」
「ミレー殿下、ありがとうございます。はい、私はたとえエヴァン様が周りを囲って来たとしても、決して屈しません」
なんだか最近、皆がエヴァン様の事を良く言うから、流されそうになっていたのだ。でも、ミレー殿下の言葉で、改めて自分の気持ちを大切にしようと実感した。
「…ルーナ様…だからその…許せない!周りに屈しない!と思うのは良いのですが、その感情が独り歩きしない様にと私は申し上げたのですが…時に過ちを許し、自分の気持ちに正直になる事も…て、聞いていないわね…」
苦笑いしているミレー殿下を他所に、私は改めてエヴァン様に取り入られない様に気を付けようと心に決めたのだった。
「はい、早速頂きますわ」
ミレー殿下に勧められ、お茶を飲む。
「このお茶、とても風味があって美味しいですわ。こんなにも美味しいお茶、初めて飲みました」
深いコクのあるとても美味しいお茶だ。あまりの美味しさに、一気に飲み干してしまった。
「喜んで頂けて良かったわ。このお茶は山岳部で育てられたお茶なの。よかったらこの国でも広めてもらえると嬉しいわ」
美しい微笑で、すかさず自国のお茶を進めるなんてさすがね。それに、やはり次期女王様だけの事はある。1つ1つのしぐさがものすごく美しい。同性の私が見とれるほどに。
「そういえばクリスティロソン公爵家のエヴァン様、ルーナ様の元婚約者なのですってね。実は私、エヴァン様から今回の話を受けた時、どうしようか迷ったの。クラークからはエヴァン様の事、視野が狭く思い込みの激しい最低なクズだって聞いていたから」
そう言って笑っているミレー殿下。クラーク殿下ったら、エヴァン様の事をそんな風にミレー殿下に吹き込むだなんて!でも…クラーク殿下はエヴァン様の悪い部分しか見ていなかったから、仕方ないか…
「でもね、そんなクズなら、是非会ってみたいと思ったの。でも、会ってみたら非常に優秀な人ね。ルーナ様の事もすぐに庇っていたし。ただ、少し腹黒そうなところがあるけれど…でもナタリー様のいう事を鵜呑みにしたあたりは、やっぱりおバカなのかしら?」
コテンと首をかしげる姿、本当に美しいのだが、言っていることがかなりかなり過激だ。
「あの…確かにエヴァン様は思い込みが激しいところがありますが、普段は聡明な方でございます。確かに少し強引なところがありますが…」
「エヴァン様はルーナ様と婚約を結び直したいらしいわね。アイザック殿下が詳しく教えてくれたのよ。あの人、あなたを手に入れるために、エヴァン様に嘘を吹き込んだと聞いたわ。わざわざ私にそんな事を暴露するだなんて、本当にアイザック殿下は抜けているのね。それで、ルーナ様はどうするつもりなの?婚約を結び直すとか?」
ニヤニヤしながら聞いてくるミレー殿下。
「いえ…たとえナタリー様に騙されていたとしても、1年間もの間辛く悲しい思いをしてまいりました。あの1年は私にとって本当に辛く、もう二度とあんな思いはしたくはありません。ですから、たとえエヴァン様がどれほど私に良くしてくださっても、婚約は結び直したくないと考えております。それに、私よりナタリー様を信じた事も、どうしても許せなくて…」
「そうよね、そう簡単には許せないわよね。私だったら、数発はぶん殴って、山に行ってクマでも仕留めてきてもらうわ。私の事を好きなら、それくらい出来るでしょってね」
「ミレー殿下は随分と勇ましい事をおっしゃるのですね」
あまりの衝撃的な言葉に、ついそんな事を言ってしまった。
「ごめんなさい、私、子供の頃から体を鍛えているのよ。ほら、私は次期女王になる身でしょう。自分の身は自分で守りたいと思って。そのお陰で、そこら辺の騎士よりもずっと強いのよ。板はもちろん、クマも素手で倒せるのだから」
「クマを素手でですか!」
こんなに華奢でお美しいお方が、クマを素手で…
「私、見た目がこんなんだから、襲われたりすることもって。もちろん、全員ボコボコにして、監獄送りにしてあげるけれどね」
そう言って力こぶを見せてくれた。なんて…なんてカッコいいのかしら?私もミレー殿下みたいな女性、憧れるわ。
「ルーナ様、そんな尊敬の眼差しで見ないで頂戴。なんだか恥ずかしいわ。だから夫となる人には、強さとかは求めていないの。とにかく、私に従順な人がいいのよね。もちろん、従順になる様に、教育はするつもりだけれど」
そう言ってミレー殿下が、それはそれは嬉しそうに笑った。ただ…その笑いが恐ろしい…
「だからアイザック殿下が選ばれたのですね…なんだか納得が出来ましたわ」
でもアイザック殿下、ミレー殿下の真の姿を見て怖気づかないかしら。まあ、怖気づいたところで、もう逃げられないでしょうけれど…
「とにかく私は、男に頼らずに生きていきたいの。男に守られている女王なんて、情けないじゃない。ルーナ様も爵位等の関係で妥協しないといけない事もあるでしょうけれど、自分の気持ちに正直に生きたらいいわ。エヴァン様が許せないなら、許さなくていいのよ。ただ…許せないと言う気持ちが独り歩きをしてしまって、本当の自分の気持ちを見失う事だけはしない方がいいわ。自分がどうすれば幸せになれるのかを、一番に考えて欲しいと私は思っているの」
「ミレー殿下、ありがとうございます。はい、私はたとえエヴァン様が周りを囲って来たとしても、決して屈しません」
なんだか最近、皆がエヴァン様の事を良く言うから、流されそうになっていたのだ。でも、ミレー殿下の言葉で、改めて自分の気持ちを大切にしようと実感した。
「…ルーナ様…だからその…許せない!周りに屈しない!と思うのは良いのですが、その感情が独り歩きしない様にと私は申し上げたのですが…時に過ちを許し、自分の気持ちに正直になる事も…て、聞いていないわね…」
苦笑いしているミレー殿下を他所に、私は改めてエヴァン様に取り入られない様に気を付けようと心に決めたのだった。
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