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第28話:あの男を味方につけよう~エヴァン視点~
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準備が整った翌日、いつもの様に僕はルーナを屋敷まで送って行った。
「それじゃあ、ルーナ。また明日。また悪い奴らが襲ってくるかもしれないから、屋敷から出てはいけないよ」
「はい、ありがとうございます、エヴァン様。あの…もう随分気持ちも落ち着きましたので、そろそろ自分で学院に向かいますわ。ですから…」
「何を言っているのだい?震えているではないか。大丈夫だよ、僕が送り迎えをしたことで、婚約を結び直せ!なんて迫らないから。僕は君を傷つけた償いをしているんだ。だからルーナも、大きな顔をして僕をこき使って欲しい」
「こき使うだなんて。でも、ありがとうございます」
にっこり微笑むと、そのまま屋敷に入って行ったルーナ。やっぱり彼女は可愛いな。つい見とれてしまう。おっといけない、この後約束があるのだった。
急いで馬車に乗り込み、ある場所へと向かった。
「よく来たね、エヴァン。僕に何か用かい?」
「急にお時間を頂き、申し訳ございません、ハドソン殿下。今日は折り入ってお願いがあって参りました」
そう、僕が向かった先は王宮、ハドソン殿下の元だ。
「エヴァン、僕たちは従兄弟同士だ、2人の時は、そんなに改まらなくてもいいよ」
そう言ってほほ笑むハドソン。疲れているのか、少しやつれている。こいつ、無駄に真面目だから、婚約者があんなんで頭を抱えているのだろう。
「それじゃあハドソン、先日ルーナが何者かに襲われた事件を知っているだろう?」
「ああ、知っているよ。結局犯人からは、黒幕の情報を得られなかったらしいね。もしかして君は、ナタリーが犯人だと思っているのかい?」
「ああ、もちろんだ。君が一番あの女の性格を分かっているだろう。きっとこれからも、ルーナに異常なほどの執着を見せ、何が何でも潰しにかかるだろう」
「そうか…でも、どうしてナタリーは、そこまでルーナ嬢に執着するんだろう。確かに彼女は美しく聡明で、令息はもちろん令嬢からも人気が高い。ナタリーが自分より目立つ存在の彼女を憎らしく思うのも理解できるが…そこまで執着するなんて。それもこのままの行動が続けば、僕たちの婚約破棄だってあり得るのに…」
そう呟くハドソン。
「ハドソン、1つ質問をしてもいいかい?君はナタリー嬢を愛していないね」
まっすぐハドソンの方を向いて、そう伝えた。そんな僕を見て、ハドソンが悲しそうに笑った。
「エヴァン、そんな当たり前の事を聞かないでくれ。ただ僕は、長年一緒にいたナタリーを見捨てる事は出来ない。だから僕から婚約破棄を言い渡すことはないよ」
「なるほど、一見義理を貫いているように見せかけて、実は面倒な事から逃げているだけだな。ハドソン、僕は君の事を、正義感が強く真面目な人間だと思っていたけれど、がっかりだな」
僕の言葉に、ハドソンの目の色が変わった。
「君に何が分かるんだ!僕だって何とかナタリーをまともな人間にしたくて、必死に動いて来た。でもあの女、僕の言葉なんて聞きもしない!本当にどうしようもない女なんだ。母上も、いくら親友の忘れ形見だとしても、あんな女を僕に押し付けるなんて!僕だってあんな女、さっさと婚約破棄したいよ。でも、そう簡単には出来ない事は、君にだって分かっているだろう?」
いつも冷静なハドソンが、珍しく声を荒げ、僕に訴えかけている。
「それがハドソンの本音だな。君の本音が聞けて良かったよ。ねえ、ハドソン、どうしてナタリー嬢がルーナに執着するか知っているかい?それは君にも原因があるんだよ」
「どういう事だ?」
訳が分からないと言った表情で、僕を見てくるハドソン。そりゃそうだろう、自分に原因があったなんて、これっぽっちも考えていないだろう。
「ナタリー嬢はね、君がルーナに惚れていると思っているんだよ。現にナタリー嬢は“ハドソン様ったら、すっかりルーナに魅了されて、私を見てくれないのよ。あの尻軽女、まさかハドソン様を虜にするなんて、許せないわ”と言っていたし」
「僕はルーナ嬢など見ていない!誤解だ」
必死にハドソンが、僕に訴えかけてくる。
「ああ、知っているよ。君が見ていたのは、ルーナではなく、エマ嬢だね。ナタリー嬢に“ハドソン様はずっとルーナを見ている”と言われたとき、気になって僕は君を観察したんだ。確かにルーナの方を見ていたが、少し視線がずれていた。ハドソン、君はエマ嬢に好意を抱いているね」
僕の言葉に大きく目を見開いたハドソン。俯き、ゆっくり深呼吸をすると
「ああ、そうだよ。僕は彼女の全てが大好きだ。でもまさか、君にその事を見破られるだなんて…」
そう言って苦笑いをしている。やっぱりそうだったか。でも…
「1つ聞きたいのだが、どうしてエマ嬢なんだ?エマ嬢とハドソンには、全く接点がない様に感じるが」
なぜエマ嬢なのだろう。ずっと疑問を抱いていたのだ。
「いいよ、話してあげる、僕とエマがどうやって出会って、惹かれて行ったかを」
※次回、ハドソンとエマのお話です。
ハドソン視点になります。
よろしくお願いしますm(__)m
「それじゃあ、ルーナ。また明日。また悪い奴らが襲ってくるかもしれないから、屋敷から出てはいけないよ」
「はい、ありがとうございます、エヴァン様。あの…もう随分気持ちも落ち着きましたので、そろそろ自分で学院に向かいますわ。ですから…」
「何を言っているのだい?震えているではないか。大丈夫だよ、僕が送り迎えをしたことで、婚約を結び直せ!なんて迫らないから。僕は君を傷つけた償いをしているんだ。だからルーナも、大きな顔をして僕をこき使って欲しい」
「こき使うだなんて。でも、ありがとうございます」
にっこり微笑むと、そのまま屋敷に入って行ったルーナ。やっぱり彼女は可愛いな。つい見とれてしまう。おっといけない、この後約束があるのだった。
急いで馬車に乗り込み、ある場所へと向かった。
「よく来たね、エヴァン。僕に何か用かい?」
「急にお時間を頂き、申し訳ございません、ハドソン殿下。今日は折り入ってお願いがあって参りました」
そう、僕が向かった先は王宮、ハドソン殿下の元だ。
「エヴァン、僕たちは従兄弟同士だ、2人の時は、そんなに改まらなくてもいいよ」
そう言ってほほ笑むハドソン。疲れているのか、少しやつれている。こいつ、無駄に真面目だから、婚約者があんなんで頭を抱えているのだろう。
「それじゃあハドソン、先日ルーナが何者かに襲われた事件を知っているだろう?」
「ああ、知っているよ。結局犯人からは、黒幕の情報を得られなかったらしいね。もしかして君は、ナタリーが犯人だと思っているのかい?」
「ああ、もちろんだ。君が一番あの女の性格を分かっているだろう。きっとこれからも、ルーナに異常なほどの執着を見せ、何が何でも潰しにかかるだろう」
「そうか…でも、どうしてナタリーは、そこまでルーナ嬢に執着するんだろう。確かに彼女は美しく聡明で、令息はもちろん令嬢からも人気が高い。ナタリーが自分より目立つ存在の彼女を憎らしく思うのも理解できるが…そこまで執着するなんて。それもこのままの行動が続けば、僕たちの婚約破棄だってあり得るのに…」
そう呟くハドソン。
「ハドソン、1つ質問をしてもいいかい?君はナタリー嬢を愛していないね」
まっすぐハドソンの方を向いて、そう伝えた。そんな僕を見て、ハドソンが悲しそうに笑った。
「エヴァン、そんな当たり前の事を聞かないでくれ。ただ僕は、長年一緒にいたナタリーを見捨てる事は出来ない。だから僕から婚約破棄を言い渡すことはないよ」
「なるほど、一見義理を貫いているように見せかけて、実は面倒な事から逃げているだけだな。ハドソン、僕は君の事を、正義感が強く真面目な人間だと思っていたけれど、がっかりだな」
僕の言葉に、ハドソンの目の色が変わった。
「君に何が分かるんだ!僕だって何とかナタリーをまともな人間にしたくて、必死に動いて来た。でもあの女、僕の言葉なんて聞きもしない!本当にどうしようもない女なんだ。母上も、いくら親友の忘れ形見だとしても、あんな女を僕に押し付けるなんて!僕だってあんな女、さっさと婚約破棄したいよ。でも、そう簡単には出来ない事は、君にだって分かっているだろう?」
いつも冷静なハドソンが、珍しく声を荒げ、僕に訴えかけている。
「それがハドソンの本音だな。君の本音が聞けて良かったよ。ねえ、ハドソン、どうしてナタリー嬢がルーナに執着するか知っているかい?それは君にも原因があるんだよ」
「どういう事だ?」
訳が分からないと言った表情で、僕を見てくるハドソン。そりゃそうだろう、自分に原因があったなんて、これっぽっちも考えていないだろう。
「ナタリー嬢はね、君がルーナに惚れていると思っているんだよ。現にナタリー嬢は“ハドソン様ったら、すっかりルーナに魅了されて、私を見てくれないのよ。あの尻軽女、まさかハドソン様を虜にするなんて、許せないわ”と言っていたし」
「僕はルーナ嬢など見ていない!誤解だ」
必死にハドソンが、僕に訴えかけてくる。
「ああ、知っているよ。君が見ていたのは、ルーナではなく、エマ嬢だね。ナタリー嬢に“ハドソン様はずっとルーナを見ている”と言われたとき、気になって僕は君を観察したんだ。確かにルーナの方を見ていたが、少し視線がずれていた。ハドソン、君はエマ嬢に好意を抱いているね」
僕の言葉に大きく目を見開いたハドソン。俯き、ゆっくり深呼吸をすると
「ああ、そうだよ。僕は彼女の全てが大好きだ。でもまさか、君にその事を見破られるだなんて…」
そう言って苦笑いをしている。やっぱりそうだったか。でも…
「1つ聞きたいのだが、どうしてエマ嬢なんだ?エマ嬢とハドソンには、全く接点がない様に感じるが」
なぜエマ嬢なのだろう。ずっと疑問を抱いていたのだ。
「いいよ、話してあげる、僕とエマがどうやって出会って、惹かれて行ったかを」
※次回、ハドソンとエマのお話です。
ハドソン視点になります。
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