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第14話:僕が犯した最大の過ち【中編】~エヴァン視点~
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ナタリー嬢の話を聞いた僕は、そのまま家に帰って来た。やっぱりクラーク殿下とルーナは…
そう思ったら、どうしようもない気持ちになった。僕はこのままいけば、きっとルーナをクラーク殿下に取られてしまうだろう…
でも、もしもナタリー嬢が嘘を付いているとしたら…
ナタリー嬢の耳にまでその話が入っているのなら、王族たちも知っているはずだろう。王太子でもあるハドソン殿下はナタリー嬢の婚約者だからな。となると、第二王子のアイザック殿下か…
実は僕の父親は現陛下の実の弟、そう、ハドソン殿下もアイザック殿下も、従兄弟になるのだ。早速明日にでも、アイザック殿下に事実確認をしよう。
そう思った僕は、翌日アイザック殿下を呼び出した。
「エヴァン、急に呼び出してどうしたんだい?」
「殿下、急に呼び出して申し訳ございません。実は確認したことがございまして」
「僕たちは従兄弟なんだ、殿下なんて寂しい事を言わないで欲しい」
クールで堅物なハドソン殿下に比べ、人懐っこく末っ子気質の強いアイザック殿下。本当に対照的な2人だ。
「わかったよ、それじゃあ、アイザック。ちょっと聞きたい事があるんだ。昨日ナタリー嬢から、クラーク殿下がルーナと結婚したがっていると聞いたんだが、本当だろうか?」
僕の言葉に一瞬固まったアイザック。しばらく考えた後
「…ああ…本当だよ。クラーク殿下、すっかりルーナ嬢を気に入ったみたいだね。エヴァン、ここに来て最強のライバル登場だね。でも、ちょっと勝ち目はないかな…」
やっぱり、ナタリー嬢の言った事は本当だったんだ…
クラーク殿下は大国の王太子殿下、彼が本気を出せば簡単に僕からルーナを奪える…
僕は近いうちに、ルーナを奪われるんだ…
その日から、僕はルーナを避ける様になった。嬉しそうに僕に話しかけてくるルーナを見ると“本当はクラーク殿下が好きなくせに!”と、歪んだ感情が生まれた。
僕が無視をすると、ルーナが悲しそうに俯く。その姿を見ると、胸が痛んだ。それでも僕は、どうしてもルーナに優しくすることが出来なかったのだ。それと同時に、いつ婚約破棄を言い渡されるのか、不安な日々を送った。
その間も、ナタリー嬢は僕に色々な情報をくれた。
「クラーク殿下はついに陛下に、強くルーナ様との婚約話を進めて欲しいと訴えたみたいよ。さすがの陛下も、あなた達の婚約破棄を進める様に動き出したみたい」
だの
「昨日クラーク殿下とルーナ様は街に買い物に行った様よ。本当に幸せそうだったわ」
だの、報告してくれるのだ。さらに僕に
「もうあなたから、婚約破棄を申し出た方がよろしいのでは?その方が、あなたの傷も浅いかと」
と、僕にルーナとの婚約破棄を進める様になったのだ。きっといつかクラーク殿下にルーナを奪われる、分かっていても、どうしても自分から婚約破棄は出来なかった。すでにルーナを無視し始めてから、1年近く経っていた。
ルーナももう、僕にあまり近づかなくなっていた。それでも僕は、ルーナを誰よりも愛していたのだ。だから僕は、ルーナと形だけでも繋がっていたいと思っていたのだ。
そんなある日、またナタリー嬢に呼び出された。
「クラーク殿下のお父上でもあるメルソニア王国の国王陛下が体調を崩していて、近々クラーク殿下が国に帰るみたい。その時、ルーナ様も連れて。ねえ、エヴァン様、悪い事は言わないわ。どうかご自分から婚約破棄をなさって。その方が、あなたへのダメージも少なく済むはずよ」
そう教えてくれたナタリー嬢。そうか、ついにルーナは、僕の元を去ってしまうのか。それなら、僕から解放してあげた方がいいな…それに僕も、これ以上不安な気持ちでい続けるのも疲れたし…
「分かったよ。それじゃあ、すぐに婚約破棄をするよ…教えてくれてありがとう」
「いいのよ、私はあなたの味方だから」
そう言ってニヤリと笑ったナタリー嬢。
家に帰ると、早速両親を呼び出し、ルーナと婚約破棄をしたい旨を伝えた。
「エヴァン、あなたどうしちゃったの?最近変よ。ルーナちゃんと何があったの?どうして婚約破棄したいだなんていいだすの?あれほどまでに、仲睦まじかったじゃないの?」
そう言って泣き出した母上。
「申し訳ございません…でも、どうしてもルーナとは結婚できたのです…どうか婚約破棄をさせて下さい…」
どうせ僕は、ルーナをあの王太子に奪われるんだ。そう叫びたいが、そんな事は言えない。
「…最近ずっとエヴァンが悩んでいたのも知っている。なあ、エヴァン、どうして急にルーナ嬢と婚約破棄したいなんていいだすんだ?あれほど大切に思っていただろう?」
必死に父上が僕に話しかけてくる。
「それは言えません。ただ…僕はルーナの幸せだけを考えているのです。だから、どうかルーナの為にも、婚約破棄をさせて下さい。お願いします」
何度も両親に頭を下げた。
「…分かったよ…それじゃあ、侯爵とルーナ嬢に話しをしよう」
その日のうちに婚約破棄届を書く事にした。この紙を書いたら、本当にルーナとは全てが終わる。そう思ったら、涙が止まらなかった。泣きながら婚約破棄届を書く僕を見た父上が
「エヴァン、本当に婚約破棄をしてもいいのか?私に出来る事があれば、何でも話して欲しい」
そう言ったが
「これでいいのです…だから、どうかサインを」
そう伝えた。翌日、僕とルーナの婚約が正式に破棄された。
そう思ったら、どうしようもない気持ちになった。僕はこのままいけば、きっとルーナをクラーク殿下に取られてしまうだろう…
でも、もしもナタリー嬢が嘘を付いているとしたら…
ナタリー嬢の耳にまでその話が入っているのなら、王族たちも知っているはずだろう。王太子でもあるハドソン殿下はナタリー嬢の婚約者だからな。となると、第二王子のアイザック殿下か…
実は僕の父親は現陛下の実の弟、そう、ハドソン殿下もアイザック殿下も、従兄弟になるのだ。早速明日にでも、アイザック殿下に事実確認をしよう。
そう思った僕は、翌日アイザック殿下を呼び出した。
「エヴァン、急に呼び出してどうしたんだい?」
「殿下、急に呼び出して申し訳ございません。実は確認したことがございまして」
「僕たちは従兄弟なんだ、殿下なんて寂しい事を言わないで欲しい」
クールで堅物なハドソン殿下に比べ、人懐っこく末っ子気質の強いアイザック殿下。本当に対照的な2人だ。
「わかったよ、それじゃあ、アイザック。ちょっと聞きたい事があるんだ。昨日ナタリー嬢から、クラーク殿下がルーナと結婚したがっていると聞いたんだが、本当だろうか?」
僕の言葉に一瞬固まったアイザック。しばらく考えた後
「…ああ…本当だよ。クラーク殿下、すっかりルーナ嬢を気に入ったみたいだね。エヴァン、ここに来て最強のライバル登場だね。でも、ちょっと勝ち目はないかな…」
やっぱり、ナタリー嬢の言った事は本当だったんだ…
クラーク殿下は大国の王太子殿下、彼が本気を出せば簡単に僕からルーナを奪える…
僕は近いうちに、ルーナを奪われるんだ…
その日から、僕はルーナを避ける様になった。嬉しそうに僕に話しかけてくるルーナを見ると“本当はクラーク殿下が好きなくせに!”と、歪んだ感情が生まれた。
僕が無視をすると、ルーナが悲しそうに俯く。その姿を見ると、胸が痛んだ。それでも僕は、どうしてもルーナに優しくすることが出来なかったのだ。それと同時に、いつ婚約破棄を言い渡されるのか、不安な日々を送った。
その間も、ナタリー嬢は僕に色々な情報をくれた。
「クラーク殿下はついに陛下に、強くルーナ様との婚約話を進めて欲しいと訴えたみたいよ。さすがの陛下も、あなた達の婚約破棄を進める様に動き出したみたい」
だの
「昨日クラーク殿下とルーナ様は街に買い物に行った様よ。本当に幸せそうだったわ」
だの、報告してくれるのだ。さらに僕に
「もうあなたから、婚約破棄を申し出た方がよろしいのでは?その方が、あなたの傷も浅いかと」
と、僕にルーナとの婚約破棄を進める様になったのだ。きっといつかクラーク殿下にルーナを奪われる、分かっていても、どうしても自分から婚約破棄は出来なかった。すでにルーナを無視し始めてから、1年近く経っていた。
ルーナももう、僕にあまり近づかなくなっていた。それでも僕は、ルーナを誰よりも愛していたのだ。だから僕は、ルーナと形だけでも繋がっていたいと思っていたのだ。
そんなある日、またナタリー嬢に呼び出された。
「クラーク殿下のお父上でもあるメルソニア王国の国王陛下が体調を崩していて、近々クラーク殿下が国に帰るみたい。その時、ルーナ様も連れて。ねえ、エヴァン様、悪い事は言わないわ。どうかご自分から婚約破棄をなさって。その方が、あなたへのダメージも少なく済むはずよ」
そう教えてくれたナタリー嬢。そうか、ついにルーナは、僕の元を去ってしまうのか。それなら、僕から解放してあげた方がいいな…それに僕も、これ以上不安な気持ちでい続けるのも疲れたし…
「分かったよ。それじゃあ、すぐに婚約破棄をするよ…教えてくれてありがとう」
「いいのよ、私はあなたの味方だから」
そう言ってニヤリと笑ったナタリー嬢。
家に帰ると、早速両親を呼び出し、ルーナと婚約破棄をしたい旨を伝えた。
「エヴァン、あなたどうしちゃったの?最近変よ。ルーナちゃんと何があったの?どうして婚約破棄したいだなんていいだすの?あれほどまでに、仲睦まじかったじゃないの?」
そう言って泣き出した母上。
「申し訳ございません…でも、どうしてもルーナとは結婚できたのです…どうか婚約破棄をさせて下さい…」
どうせ僕は、ルーナをあの王太子に奪われるんだ。そう叫びたいが、そんな事は言えない。
「…最近ずっとエヴァンが悩んでいたのも知っている。なあ、エヴァン、どうして急にルーナ嬢と婚約破棄したいなんていいだすんだ?あれほど大切に思っていただろう?」
必死に父上が僕に話しかけてくる。
「それは言えません。ただ…僕はルーナの幸せだけを考えているのです。だから、どうかルーナの為にも、婚約破棄をさせて下さい。お願いします」
何度も両親に頭を下げた。
「…分かったよ…それじゃあ、侯爵とルーナ嬢に話しをしよう」
その日のうちに婚約破棄届を書く事にした。この紙を書いたら、本当にルーナとは全てが終わる。そう思ったら、涙が止まらなかった。泣きながら婚約破棄届を書く僕を見た父上が
「エヴァン、本当に婚約破棄をしてもいいのか?私に出来る事があれば、何でも話して欲しい」
そう言ったが
「これでいいのです…だから、どうかサインを」
そう伝えた。翌日、僕とルーナの婚約が正式に破棄された。
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