115 / 124
第115話:婚約披露パーティの日を迎えました
しおりを挟む
「ルージュ、準備は出来たかい?」
「ええ、バッチリよ」
紫色のドレスに身を包み、首にはブルーパールのネックレスを付けた。このネックレスは、叔母様が送ってくれたものだ。どうやらパレッサ王国では、好きな人の瞳の色に加工した真珠を身に付けると、ずっとその人と一緒にいられると言われているらしい。
わざわざこの日の為に、船で1ヶ月かけて運ばれてきたのだ。叔母様の思いがたっぷり詰まった真珠は、なんだか重みがある。
「その真珠、パレッサ王国から今日の日の為に運ばれてきたそうだね。とても綺麗だ。よく似合っているよ」
「本当に美しい真珠ですわ。まるでグレイソン様の瞳の色みたい。グレイソン様、どうかこの真珠の様に、いつも瞳を輝かせていてくださいね」
もう二度と、あんな絶望に満ちたグレイソン様の瞳は見たくない。これからはこの真珠の様に、希望に満ちた輝きを放ったグレイソン様の瞳を見ていたいのだ。
「この真珠の様にか。それは中々難しいな。でも、ルージュが望むのなら、頑張るよ。さあ、そろそろ行こう。今日はたくさんの人が、僕たちの為に集まってくれているよ」
差し出された手を握り、2人で今日の会場でもあるホールへと向かった。
「グレイソン、そのスーツ、よく似合っているぞ。亡くなった君の父親にそっくりだ」
「本当ね…今日のグレイソンの姿を見て、天国の2人もきっと喜んでいるわ」
なぜかお父様とお母様が、グレイソン様の姿を見て涙ぐんでいる。そういえば今日のグレイソン様のスーツ、少し古いものを着ているのよね。
「義父上、義母上、この5年、僕を大切に育てて下さり、ありがとうございました。そして、今日の日の為に、父が母と婚約した時に着ていたスーツを叔父から取り返してくださったのですね。父と同じスーツを着て、ルージュと婚約出来る事を、幸せに思っています」
「「グレイソン!」」
お父様とお母様が、グレイソン様に抱き着いている。ちょっと待って、なんだかグレイソン様がお嫁に行くみたいになっているじゃない。
それにしてもお父様ったら、まさかグレイソン様のお父様のスーツを取り寄せるだなんて。中々やるわね。
「グレイソン様、そのスーツ、とてもよく似合っておりますよ。もしかしたら今頃、ご両親が私たちの様子を見に来ていらっしゃるかもしれませんね。ご両親に安心して頂けるよう、目いっぱい幸せな姿を見せて差し上げましょう」
「ありがとう、ルージュ。そうだね、僕の幸せな姿を亡くなった両親はもちろん、今の両親にも見せないと。そうでしょう?義父上、義母上」
「グレイソン、お願い、これ以上私たちを泣かせないで」
何となく気が付いていた。お父様とお母様は、実の娘の私よりもグレイソン様の事を大切にしているという事を。正直娘としては複雑だが、まあいいか。
「お父様もお母様も、もうすぐお客様が来ますわ。いつまでもビービー泣いていないで、しゃきっとしてください」
「ルージュ、お前も私たちに感謝の言葉はないのかい?」
「そうよ、少しくらい感謝をしてくれてもいいじゃない」
「はいはい、お父様、お母様、私の事を大切に育ててくれて、ありがとうございました。これからもどうかよろしくお願いいたします。これでよろしいですか?」
「愛情がこもっていないぞ!」
「そうよ」
ブーブー文句を言う両親。
「私はお父様のこともお母様のことも、大切に思っておりますわ。どうかこれからは、心穏やかに生きて下さい。今まで沢山迷惑をかけた分、これからは私達が2人を幸せにしますわ。それが私たちの願いでもあるのです。そうでしょう、グレイソン様」
「もちろんです。今まで散々心配をかけ多分、これからは義両親には楽をしてもらうつもりでいますから」
グレイソン様も同意してくれた。
1度目の生では、壮絶な最期を遂げた両親。さぞ無念だっただろう。でも、今回の生では、どうか穏やかな日々を過ごして欲しい。
「「ルージュ!グレイソン」」
なぜか私まで巻き込んで、抱きしめられた。涙も止まるどころか、酷くなっている。でも、まあいいか。そっとお父様とお母様の背中に手を回した。
「旦那様、奥様、坊ちゃま、お嬢様、お取込み中のところ申し訳ございません。来賓の皆様が続々といらしております」
ふと入口の方を見ると、沢山の貴族たちがやって来ていた。いけない!
両親もスッと涙をぬぐうと、来賓の対応に向かう。それにしても凄い数ね。さすが公爵家の婚約披露パーティだわ。
「ルージュ、グレイソン様、今日はおめでとうございます」
「グレイソン、ルージュ嬢、おめでとう」
「皆、来てくれたのね。嬉しいわ」
私達の元にやって来たのは、友人達4人とアルフレッド様、さらにクラスメイト達だ。殿下の姿もある。さらに次々とやって来る来賓たちから、祝福の言葉を頂いた。
ふと周りを見ると、ファウスン侯爵夫妻の姿もある。ただ、特に挨拶もせずに、こちらを睨みつけると帰って行った。きっとヴァイオレットの件で、我が家に恨みでも抱いているのだろう。
それでも一応、侯爵家として顔を出したのだろう。別に祝いたくないなら、来てもらわなくてもよかったのだが…
ヴァイオレットか…
1ヶ月後には謹慎が解かれ、再び学院に戻って来る。きっとあの人の事だから、何かやらかすに決まっている。
ただ…
いつまでもヴァイオレットに付き合ってもいられない。そろそろケリをつけないと!
「ルージュ、怖い顔をしてどうしたのだい?今日は僕たちの為に、皆が集まってくれたのだよ。これから皆に挨拶に行こう。ついでに顔も覚えてもらいたいしね」
しまった、ついヴァイオレットの事を考えてしまったわ。今日は私達の婚約披露パーティなのだ。目いっぱい楽しまないと。
その後も時間が許す限り、挨拶回りを行った。たくさんの貴族たちに祝福され、グレイソン様もとても嬉しそうだった。この笑顔をずっと守っていきたい。
その為にも、そろそろ決着をつけないと!
「ええ、バッチリよ」
紫色のドレスに身を包み、首にはブルーパールのネックレスを付けた。このネックレスは、叔母様が送ってくれたものだ。どうやらパレッサ王国では、好きな人の瞳の色に加工した真珠を身に付けると、ずっとその人と一緒にいられると言われているらしい。
わざわざこの日の為に、船で1ヶ月かけて運ばれてきたのだ。叔母様の思いがたっぷり詰まった真珠は、なんだか重みがある。
「その真珠、パレッサ王国から今日の日の為に運ばれてきたそうだね。とても綺麗だ。よく似合っているよ」
「本当に美しい真珠ですわ。まるでグレイソン様の瞳の色みたい。グレイソン様、どうかこの真珠の様に、いつも瞳を輝かせていてくださいね」
もう二度と、あんな絶望に満ちたグレイソン様の瞳は見たくない。これからはこの真珠の様に、希望に満ちた輝きを放ったグレイソン様の瞳を見ていたいのだ。
「この真珠の様にか。それは中々難しいな。でも、ルージュが望むのなら、頑張るよ。さあ、そろそろ行こう。今日はたくさんの人が、僕たちの為に集まってくれているよ」
差し出された手を握り、2人で今日の会場でもあるホールへと向かった。
「グレイソン、そのスーツ、よく似合っているぞ。亡くなった君の父親にそっくりだ」
「本当ね…今日のグレイソンの姿を見て、天国の2人もきっと喜んでいるわ」
なぜかお父様とお母様が、グレイソン様の姿を見て涙ぐんでいる。そういえば今日のグレイソン様のスーツ、少し古いものを着ているのよね。
「義父上、義母上、この5年、僕を大切に育てて下さり、ありがとうございました。そして、今日の日の為に、父が母と婚約した時に着ていたスーツを叔父から取り返してくださったのですね。父と同じスーツを着て、ルージュと婚約出来る事を、幸せに思っています」
「「グレイソン!」」
お父様とお母様が、グレイソン様に抱き着いている。ちょっと待って、なんだかグレイソン様がお嫁に行くみたいになっているじゃない。
それにしてもお父様ったら、まさかグレイソン様のお父様のスーツを取り寄せるだなんて。中々やるわね。
「グレイソン様、そのスーツ、とてもよく似合っておりますよ。もしかしたら今頃、ご両親が私たちの様子を見に来ていらっしゃるかもしれませんね。ご両親に安心して頂けるよう、目いっぱい幸せな姿を見せて差し上げましょう」
「ありがとう、ルージュ。そうだね、僕の幸せな姿を亡くなった両親はもちろん、今の両親にも見せないと。そうでしょう?義父上、義母上」
「グレイソン、お願い、これ以上私たちを泣かせないで」
何となく気が付いていた。お父様とお母様は、実の娘の私よりもグレイソン様の事を大切にしているという事を。正直娘としては複雑だが、まあいいか。
「お父様もお母様も、もうすぐお客様が来ますわ。いつまでもビービー泣いていないで、しゃきっとしてください」
「ルージュ、お前も私たちに感謝の言葉はないのかい?」
「そうよ、少しくらい感謝をしてくれてもいいじゃない」
「はいはい、お父様、お母様、私の事を大切に育ててくれて、ありがとうございました。これからもどうかよろしくお願いいたします。これでよろしいですか?」
「愛情がこもっていないぞ!」
「そうよ」
ブーブー文句を言う両親。
「私はお父様のこともお母様のことも、大切に思っておりますわ。どうかこれからは、心穏やかに生きて下さい。今まで沢山迷惑をかけた分、これからは私達が2人を幸せにしますわ。それが私たちの願いでもあるのです。そうでしょう、グレイソン様」
「もちろんです。今まで散々心配をかけ多分、これからは義両親には楽をしてもらうつもりでいますから」
グレイソン様も同意してくれた。
1度目の生では、壮絶な最期を遂げた両親。さぞ無念だっただろう。でも、今回の生では、どうか穏やかな日々を過ごして欲しい。
「「ルージュ!グレイソン」」
なぜか私まで巻き込んで、抱きしめられた。涙も止まるどころか、酷くなっている。でも、まあいいか。そっとお父様とお母様の背中に手を回した。
「旦那様、奥様、坊ちゃま、お嬢様、お取込み中のところ申し訳ございません。来賓の皆様が続々といらしております」
ふと入口の方を見ると、沢山の貴族たちがやって来ていた。いけない!
両親もスッと涙をぬぐうと、来賓の対応に向かう。それにしても凄い数ね。さすが公爵家の婚約披露パーティだわ。
「ルージュ、グレイソン様、今日はおめでとうございます」
「グレイソン、ルージュ嬢、おめでとう」
「皆、来てくれたのね。嬉しいわ」
私達の元にやって来たのは、友人達4人とアルフレッド様、さらにクラスメイト達だ。殿下の姿もある。さらに次々とやって来る来賓たちから、祝福の言葉を頂いた。
ふと周りを見ると、ファウスン侯爵夫妻の姿もある。ただ、特に挨拶もせずに、こちらを睨みつけると帰って行った。きっとヴァイオレットの件で、我が家に恨みでも抱いているのだろう。
それでも一応、侯爵家として顔を出したのだろう。別に祝いたくないなら、来てもらわなくてもよかったのだが…
ヴァイオレットか…
1ヶ月後には謹慎が解かれ、再び学院に戻って来る。きっとあの人の事だから、何かやらかすに決まっている。
ただ…
いつまでもヴァイオレットに付き合ってもいられない。そろそろケリをつけないと!
「ルージュ、怖い顔をしてどうしたのだい?今日は僕たちの為に、皆が集まってくれたのだよ。これから皆に挨拶に行こう。ついでに顔も覚えてもらいたいしね」
しまった、ついヴァイオレットの事を考えてしまったわ。今日は私達の婚約披露パーティなのだ。目いっぱい楽しまないと。
その後も時間が許す限り、挨拶回りを行った。たくさんの貴族たちに祝福され、グレイソン様もとても嬉しそうだった。この笑顔をずっと守っていきたい。
その為にも、そろそろ決着をつけないと!
681
お気に入りに追加
3,023
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢、猛省中!!
***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」
――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。
処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。
今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!?
己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?!
襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、
誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、
誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。
今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。
一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。
そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。
【完結】伯爵令嬢の格差婚約のお相手は、王太子殿下でした ~王太子と伯爵令嬢の、とある格差婚約の裏事情~
瀬里
恋愛
【HOTランキング7位ありがとうございます!】
ここ最近、ティント王国では「婚約破棄」前提の「格差婚約」が流行っている。
爵位に差がある家同士で結ばれ、正式な婚約者が決まるまでの期間、仮の婚約者を立てるという格差婚約は、破棄された令嬢には明るくない未来をもたらしていた。
伯爵令嬢であるサリアは、高すぎず低すぎない爵位と、背後で睨みをきかせる公爵家の伯父や優しい父に守られそんな風潮と自分とは縁がないものだと思っていた。
まさか、我が家に格差婚約を申し渡せるたった一つの家門――「王家」が婚約を申し込んでくるなど、思いもしなかったのだ。
婚約破棄された令嬢の未来は明るくはないが、この格差婚約で、サリアは、絶望よりもむしろ期待に胸を膨らませることとなる。なぜなら婚約破棄後であれば、許されるかもしれないのだ。
――「結婚をしない」という選択肢が。
格差婚約において一番大切なことは、周りには格差婚約だと悟らせない事。
努力家で優しい王太子殿下のために、二年後の婚約破棄を見据えて「お互いを想い合う婚約者」のお役目をはたすべく努力をするサリアだが、現実はそう甘くなくて――。
他のサイトでも公開してます。全12話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる