上 下
104 / 124

第104話:何ですって!

しおりを挟む
「ルージュはその…パレッサ王国に行っていたのかい?確かあそこは、義叔母上が嫁いでいる国と聞いているが…」

「ええ、そうですわ。私は国を出て、パレッサ王国に向かいましたの。パレッサ王国までは、往復2ヶ月かかるので、すぐには帰れませんとお父様に伝えたはずですが?お父様、グレイソン様に私がパレッサ王国に行く事を、伝えていなかったのですか?」

「いや…それは、その…」

「まあ、立ち話も何だし、屋敷に入りましょう。ルージュも長旅で疲れているでしょう。それに、グレイソンも色々と話したい事があるみたいだし」

よくわからないが、お母様に促されて屋敷に入っていく。ただ、私はすぐにまた、パレッサ王国に向かうつもりでいるが…

「とにかく今日はもう遅いし、明日ゆっくり話しましょう。さあ、ルージュ。お部屋に戻ってゆっくり休んで」

お母様に促され、部屋へと戻ってきた。懐かしい私の部屋。やっぱり自分の家は、落ち着くわ…て、落ち着いている場合じゃないのよ。ただ…さすがに今日は疲れた。明日グレイソン様としっかり話をして、彼にはこの家に残ってもらい、私が出ていく事を伝えないと。

湯あみを済ませ、ベッドに横になろうとした時だった。

ノックする音が聞こえたと思ったら

「ルージュ、少し話がしたいんだけれど、いいかな?」

どうやらグレイソン様が、お部屋まで訪ねてきてくれた様だ。きっと早くケリをつけたいのだろう。正直疲れているが、グレイソン様が今日中に話しをしたいというのなら、聞くしかない。

「ええ、かまいませんわ。どうぞ」

グレイソン様を、部屋に案内したのだが…

あれ?グレイソン様、随分とやつれていない?こんなんだったかしら?それになんだか、悲しそうな顔をしているし。まるでグレイソン様が、初めてこの家に来た時の様な瞳をしているわ。

やっぱり私に会いたくなかったのかしら?彼の為に、すぐにでも国を出ないと。

「ルージュ、僕は…」

「グレイソン様、申し訳ございません。あなたが私の顔なんて見たくないとおっしゃっていらっしゃっているのに、帰って来てしまって。でも大丈夫です。私はすぐにパレッサ王国に戻るつもりです。私、すっかりパレッサ王国に魅了されてしまって。今すぐにでも、戻りたいくらいですの。ですから、どうかこの家に大きな顔をして残ってください。あなたの好きな令嬢を迎え入れてもらっても構いませんわ。とにかく、私の事は気にしないで下さい。明日にでもまた、パレッサ王国に向かいますので」

だからどうか、もう私の事は気にしないで下さい、そんな意味を込めて、必死に訴えたのだが…

「ルージュはそんなに、パレッサ王国が気に入ったのかい?そうだよね…あんな酷い事を言った僕になんて、愛想が尽きたよね…義父上に言われて、仕方なく帰ってきたのだよね…」

なぜかグレイソン様が、悲しそうに呟いている。ただ、次の瞬間、まっすぐ私を見つめると

「ルージュ、本当にすまなかった。僕はルージュの事が、今でも大好きだ。ルージュが傍にいてくれるだけで、僕は笑っていられる。ルージュがいなくなったこの3ヶ月、本当に寂しくて苦して…気が狂いそうだった。もう二度と、ルージュに会えないと思ったら、僕は…」

よくわからないが、ポロポロと涙を流すグレイソン様に、私も大慌てで

「グレイソン様、落ち着いて下さい。とにかく、涙を拭いて下さい。あの…あなたは私の事が大嫌いで、もう二度と顔なんて見たくないと思っていたのではないのですか?」

「あれは君と距離をとるための嘘だったんだ。本当は僕は、ルージュに出会ったあの日から、ずっとルージュが好きだ。もちろん今も。でも、僕は…君を愛する権利なんてないと思って…僕は君と義両親を死に追いやった人間だから…ルージュも心のどこかで、僕を恨んでいる。ルージュをこれ以上苦しめたくなくて、ルージュを解放してあげたくて。あんな嘘を…でも僕の嘘のせいで、君を傷つけてしまって、本当にごめんなさい」

泣きながら床に頭をこすりつけ、必死に謝るグレイソン様。

「お願いです、そんな事はしないでください。とにかく落ち着いて。一旦ソファに座ってください。アリー、申し訳ないのだけれど、グレイソン様と2人で話をしたいから、出て行ってくれるかしら?何かあったらすぐに呼ぶから」

「承知いたしました」

アリーが外に出ていくのを見送った。そして改めて、グレイソン様の方を向き直る。

「グレイソン様、どうして私がグレイソン様を恨んでいると、思ったのですか?私にわかるように、説明してください」

グレイソン様に問いかけた。すると

「ルージュが殿下と話をした翌日、僕はどうしても気になって、殿下に色々と話を聞いたんだ。ルージュと殿下は、その…1度目の生というものの記憶があるのだよね?そこで僕が1度目の生の時に、ヴァイオレット嬢にうつつを抜かしたせいで、ルージュと義両親が殺される羽目になった事を聞いて…」

何ですって!殿下め、なんて話をグレイソン様にしてくれたのよ!て、今は殿下に怒っている場合ではない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」 ――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。 処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。 今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!? 己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?! 襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、 誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、  誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。 今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。  一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。  そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。

【完結】伯爵令嬢の格差婚約のお相手は、王太子殿下でした ~王太子と伯爵令嬢の、とある格差婚約の裏事情~

瀬里
恋愛
【HOTランキング7位ありがとうございます!】  ここ最近、ティント王国では「婚約破棄」前提の「格差婚約」が流行っている。  爵位に差がある家同士で結ばれ、正式な婚約者が決まるまでの期間、仮の婚約者を立てるという格差婚約は、破棄された令嬢には明るくない未来をもたらしていた。  伯爵令嬢であるサリアは、高すぎず低すぎない爵位と、背後で睨みをきかせる公爵家の伯父や優しい父に守られそんな風潮と自分とは縁がないものだと思っていた。  まさか、我が家に格差婚約を申し渡せるたった一つの家門――「王家」が婚約を申し込んでくるなど、思いもしなかったのだ。  婚約破棄された令嬢の未来は明るくはないが、この格差婚約で、サリアは、絶望よりもむしろ期待に胸を膨らませることとなる。なぜなら婚約破棄後であれば、許されるかもしれないのだ。  ――「結婚をしない」という選択肢が。  格差婚約において一番大切なことは、周りには格差婚約だと悟らせない事。  努力家で優しい王太子殿下のために、二年後の婚約破棄を見据えて「お互いを想い合う婚約者」のお役目をはたすべく努力をするサリアだが、現実はそう甘くなくて――。  他のサイトでも公開してます。全12話です。

処理中です...