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第100話:アン殿下を助けたいのに…
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アリーと入れ違いに、話しを聞きつけた陛下が戻ってきた。
「アンが原因不明の病気にかかったと聞いた。頼む、部屋に入れてくれ。もしアンの身に何かあれったら、私は…」
「陛下、落ち着いて下さい!」
「落ち着いてなんていられるか!私の可愛いアンが、今苦しんでいるのだぞ。私の命などどうでもいい。アンの傍にいてやりたいのだ」
「お願い、アンの傍にいさせて」
「僕もお願いします。アンは僕の大切な妹です。アンがこのまま1人寂しく死んでしまうだなんて、僕は…」
「私からもお願いします。そもそも、感染率が高い病気なら、とっくに蔓延しておりますわ。もしかしたら人から人には移らない病気かもしれません。それに何よりも、7歳の女の子を1人にしておくだなんて、可哀そうすぎます」
私も必死に医者に訴えた。
「お嬢様の言う通り、人から人に感染する事はありません。とにかく、一度症状を見せて下さい」
私達の元にやって来たのは、私が連れて来た医者だ。医者と一緒に私たちもアン殿下の部屋に入った。
「アン、可哀そうに。辛そうじゃないか」
「アン、しっかりして。お母様はここにいるわよ」
「お兄様もいるよ。アン、僕が変われるなら変わってあげたい」
「アン殿下」
私を含め、一斉に皆アン殿下を囲った。苦しそうにしているが、それでも私たちの顔を見た殿下が、嬉しそうに微笑んだのだ。
そして小さな手を、私たちに向かって伸ばしてきたのだ。皆が一斉にアン殿下の手を握る。
「これは…クリアナ病ですね。カリモスという果物を食べると、稀に感染する病気です。免疫力が下がっている時や、小さな子供、お年寄りが感染しやすいと言われています。我が国でも昔、カリモスが輸入されるとともに、この病気も流行しました。症状を見る限り間違いありません。殿下はカリモスを食べましたか?」
カリモスですって?確かにあの果物は甘くて美味しいのよね。でも、最近では我が国では全く見かけなくなった果物だ。
「確かに2ヶ月くらい前から、カリモスの輸入を開始した。アンはカリモスが大好きで、よく食べていたよ。まさかそれが原因だなんて」
「そういえばその様な話を、聞いたことがあるわ。でも、確か特効薬があったわよね。お願い、すぐに薬を処方して頂戴」
「分かっております。いくつかの薬草を混ぜて作るのですが、ただ…」
「ただ、何なの。早く作って頂戴」
「ソーシーの葉が必要なのです。この様な葉っぱなのですが」
医者が図鑑を見せてくれた。
「ソーシーの葉はこの国には生えておりません。それ以外の薬草ではダメなのですか?」
「ソーシーの葉でないと、解毒できないのです。すぐにアラカル王国から取り寄せる手配をいたしますが、アン殿下の命が持つかどうか…」
「そんな…イヤよ、アン!」
叔母様が泣き崩れている。陛下やデイズ殿下も泣いている。このまま殿下が命を落としたら…
そんなのは、絶対に嫌!
図鑑を医者から奪い取ると、そのまま部屋の外に出た。
「お嬢様、一体どこに向かわれるのですか?」
「山に向かうのよ。もしかしたら、生えているかもしれないじゃない。だって、アラカル王国には生えているのでしょう?探さずに諦めるなんて、私には出来ないわ」
このままじっとしているだなんて、出来ない。馬車に乗り込み、森に向かおうとした時だった。
「私も行こう」
「私もよ」
「僕も」
陛下や叔母様、デイズ殿下まで乗り込んできたのだ。さらに護衛や使用人たちも一緒に、山に向かう。
「確かソーシーの葉は、山の奥に生えていると聞いたことがあります。奥を中心に探しましょう」
皆で手分けして、山を探す。私も必死に探した。
「お嬢様、どうかあまり奥に行かないで下さい。それに、泥だらけです。公爵令嬢のあなた様が…」
「今は公爵令嬢なんて関係ないわ。私の従姉妹が今、まさに生きるか死ぬかなのよ。泥なんて気にしていられるものですか!」
必死にソーシーの葉を探す。
お願い、1本でもいい。生えていて。そんな思いで、必死に山を駆けずり回った。でも、いくら探しても、やはりソーシーの葉は見つからない。気が付くと、日が沈みかけていた。
「お嬢様、さすがにこれ以上探すのは危険です。一度王宮に戻りましょう」
確かにこれ以上、暗い森を探すのは危険だ。仕方なく皆で王宮に戻ってきた。
「お嬢様、手も足も泥だらけです。それに小さな切り傷が無数にありますわ。とにかく手当てを」
アリーが私を浴槽に連れて行くと、体を綺麗にしてくれた。こんなところで湯あみをしている間に、アン殿下は今も苦しんでいる。そう思うと、胸が張り裂けそうになり、涙が止まらない。
「申し訳ございません。傷が染みるのですね」
そうアリーが謝っているが、傷が染みて泣いているのではない。アン殿下の事が心配で泣いているのだ。もしこのまま、アン殿下が亡くなってしまったら…
考えただけで、胸が潰れそうになる。
「アンが原因不明の病気にかかったと聞いた。頼む、部屋に入れてくれ。もしアンの身に何かあれったら、私は…」
「陛下、落ち着いて下さい!」
「落ち着いてなんていられるか!私の可愛いアンが、今苦しんでいるのだぞ。私の命などどうでもいい。アンの傍にいてやりたいのだ」
「お願い、アンの傍にいさせて」
「僕もお願いします。アンは僕の大切な妹です。アンがこのまま1人寂しく死んでしまうだなんて、僕は…」
「私からもお願いします。そもそも、感染率が高い病気なら、とっくに蔓延しておりますわ。もしかしたら人から人には移らない病気かもしれません。それに何よりも、7歳の女の子を1人にしておくだなんて、可哀そうすぎます」
私も必死に医者に訴えた。
「お嬢様の言う通り、人から人に感染する事はありません。とにかく、一度症状を見せて下さい」
私達の元にやって来たのは、私が連れて来た医者だ。医者と一緒に私たちもアン殿下の部屋に入った。
「アン、可哀そうに。辛そうじゃないか」
「アン、しっかりして。お母様はここにいるわよ」
「お兄様もいるよ。アン、僕が変われるなら変わってあげたい」
「アン殿下」
私を含め、一斉に皆アン殿下を囲った。苦しそうにしているが、それでも私たちの顔を見た殿下が、嬉しそうに微笑んだのだ。
そして小さな手を、私たちに向かって伸ばしてきたのだ。皆が一斉にアン殿下の手を握る。
「これは…クリアナ病ですね。カリモスという果物を食べると、稀に感染する病気です。免疫力が下がっている時や、小さな子供、お年寄りが感染しやすいと言われています。我が国でも昔、カリモスが輸入されるとともに、この病気も流行しました。症状を見る限り間違いありません。殿下はカリモスを食べましたか?」
カリモスですって?確かにあの果物は甘くて美味しいのよね。でも、最近では我が国では全く見かけなくなった果物だ。
「確かに2ヶ月くらい前から、カリモスの輸入を開始した。アンはカリモスが大好きで、よく食べていたよ。まさかそれが原因だなんて」
「そういえばその様な話を、聞いたことがあるわ。でも、確か特効薬があったわよね。お願い、すぐに薬を処方して頂戴」
「分かっております。いくつかの薬草を混ぜて作るのですが、ただ…」
「ただ、何なの。早く作って頂戴」
「ソーシーの葉が必要なのです。この様な葉っぱなのですが」
医者が図鑑を見せてくれた。
「ソーシーの葉はこの国には生えておりません。それ以外の薬草ではダメなのですか?」
「ソーシーの葉でないと、解毒できないのです。すぐにアラカル王国から取り寄せる手配をいたしますが、アン殿下の命が持つかどうか…」
「そんな…イヤよ、アン!」
叔母様が泣き崩れている。陛下やデイズ殿下も泣いている。このまま殿下が命を落としたら…
そんなのは、絶対に嫌!
図鑑を医者から奪い取ると、そのまま部屋の外に出た。
「お嬢様、一体どこに向かわれるのですか?」
「山に向かうのよ。もしかしたら、生えているかもしれないじゃない。だって、アラカル王国には生えているのでしょう?探さずに諦めるなんて、私には出来ないわ」
このままじっとしているだなんて、出来ない。馬車に乗り込み、森に向かおうとした時だった。
「私も行こう」
「私もよ」
「僕も」
陛下や叔母様、デイズ殿下まで乗り込んできたのだ。さらに護衛や使用人たちも一緒に、山に向かう。
「確かソーシーの葉は、山の奥に生えていると聞いたことがあります。奥を中心に探しましょう」
皆で手分けして、山を探す。私も必死に探した。
「お嬢様、どうかあまり奥に行かないで下さい。それに、泥だらけです。公爵令嬢のあなた様が…」
「今は公爵令嬢なんて関係ないわ。私の従姉妹が今、まさに生きるか死ぬかなのよ。泥なんて気にしていられるものですか!」
必死にソーシーの葉を探す。
お願い、1本でもいい。生えていて。そんな思いで、必死に山を駆けずり回った。でも、いくら探しても、やはりソーシーの葉は見つからない。気が付くと、日が沈みかけていた。
「お嬢様、さすがにこれ以上探すのは危険です。一度王宮に戻りましょう」
確かにこれ以上、暗い森を探すのは危険だ。仕方なく皆で王宮に戻ってきた。
「お嬢様、手も足も泥だらけです。それに小さな切り傷が無数にありますわ。とにかく手当てを」
アリーが私を浴槽に連れて行くと、体を綺麗にしてくれた。こんなところで湯あみをしている間に、アン殿下は今も苦しんでいる。そう思うと、胸が張り裂けそうになり、涙が止まらない。
「申し訳ございません。傷が染みるのですね」
そうアリーが謝っているが、傷が染みて泣いているのではない。アン殿下の事が心配で泣いているのだ。もしこのまま、アン殿下が亡くなってしまったら…
考えただけで、胸が潰れそうになる。
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