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第88話:僕はなんて事を…~グレイソン視点~
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間違いない、ルージュの字だ。
ゆっくりと手紙を広げる。そこには便箋2枚分、びっちり文字が書かれていた。僕との出会いの時から始まり、1つ1つの思い出話が丁寧につづられていた。
僕と出会えて楽しかった事、嬉しかった事、幸せだったことがつづられている。
そして最後に
“グレイソン様と出会えて、私は本当に幸せでした。私にこんなにも幸せな時間を与えて下さった事、心より感謝いたします。あなた様と共に未来を歩めたら、そんな淡い期待を抱いた事もありました。でも…グレイソン様に嫌われていると知った今、私にできる事はあなた様の傍から消える事です。
決して誤解しないで下さい。あなた様が原因で消えるのではありません。私はあなた様が笑っていてくれることが、私の幸せでもあるのです。だから私は、私の幸せを守るために、屋敷を出ていくのです。
私は私の為に、この家を出る事を決めました。
それから、両親はグレイソン様を本当の息子の様に思っております。もしグレイソン様が私の事がお嫌いで、この家を出て行こうとしていらっしゃるのでしたら、どうか今一度考え直してください。
できれば私の代わりに、両親を支えてあげて欲しい。そして素敵なパートナーを見つけ、幸せになってください。
ただ…
ヴァイオレット様は止めた方がよろしいかもしれません。
長くなりましたが、どうかいつも笑顔を忘れずにいて下さい。あなた様の幸せとご活躍を、遠くから見守っております。
ルージュ“
「ルージュ…どうして?君は僕を恨んでいたのではなかったのかい?それなのに、どうして?」
手紙を握りしめながら、溢れる涙を止める事が出来ない。僕は何を間違ってしまったのだろう。僕はただ、ルージュの幸せを願って、傍を離れようとしていたのに…
それなのに、どうしてこんな事に?
「お坊ちゃま、その手紙を読まれたのですね…」
僕の傍にやって来たのは、アリーと一緒にルージュのお世話をしているメイドの1人だ。
「そのお手紙は、もしお坊ちゃまがお嬢様のお部屋にいらしたら…その時は読んで欲しいとお嬢様が昨日の夜書いていったお手紙です。早速読んで頂けただなんて、きっとお嬢様も喜んでいらっしゃる事でしょう」
そう言うと寂しそうに微笑んだメイド。
「ルージュは一体どこに行ったのだい?頼む、教えてくれ」
「私にもわかりません。申し訳ございません」
そんな…
ルージュに会いたい。会ってきちんと話がしたい。君は僕を恨んでいるのではないのかい?殿下やヴァイオレット嬢と同じように、僕は君と君の家族を死に追いやったのだから。
それなのに、どうしてこんな手紙を残して、僕の前から姿を消したのだい?僕はただ、ルージュに幸せになって欲しかっただけなのに…
とにかくルージュを探さないと。ルージュが行きそうな場所と言えば…友人たちの家か?いいや、友人たちの家に長期間滞在する事は難しいだろう。となると、やはり領地だな。
「すぐに馬を手配してくれ。僕は領地に向かうから」
きっと領地にルージュはいるはずだ。早馬で飛ばせば、領地までは丸1日で行ける。一刻も早くルージュを迎えに行かないと。
すぐに準備を整え、馬にまたがったところで義両親がやって来た。
「グレイソン、こんな時間にどこに向かうつもりだい?」
「領地です。きっとルージュは、領地にいるはずです。今すぐ迎えに行ってきます」
「待ちなさい、グレイソン。ルージュは領地にはいない。多分もう、この国にはいないよ。領地に行っても無駄だ」
「この国にいないとは、どういうことですか?ルージュは一体どこに行ったのですか?どうして義父上も義母上も、ルージュを探さないのですか?彼女は公爵令嬢なのですよ!」
「グレイソン、落ち着いて。ルージュの傍には、公爵家の護衛もメイドたちもいるから大丈夫よ。だからあなたは何も心配しないで。ルージュの事はもう考えないで、自分の事だけを考えて。それがルージュの願いでもあるのだから」
「そうだぞ。ルージュはグレイソンの幸せを願い、この国を出たのだよ。どうかルージュの気持ちを少しでも思ってくれるのなら、自分の幸せだけを考えてくれ」
僕の幸せだけを考えるだって?そんなの、決まっている。僕はルージュの傍にずっといたい。ルージュが僕の傍にいてくれるだけで、幸せなのだから。
でも、そのルージュが僕のせいで屋敷を出て行ってしまったのだ。公爵令嬢の彼女が、いくら護衛やメイドを連れているとはいえ、異国で暮らすだなんて。
僕のせいだ、僕がきちんとルージュと話し合わずに、勝手に結論を出してルージュから離れようとしたから。結局僕は、ルージュを幸せにするどころか、深く傷つけ、挙句の果てに家から追い出してしまったのだ。
「グレイソン、とにかく一度屋敷に入ろう。ルージュなら大丈夫だから」
義両親に説得され、再び屋敷に戻ってきた。でも…
「頼む、ルージュを探してくれ。今ルージュはどこにいるのだい?彼女を連れ戻したいのだよ…」
専属執事に、ルージュを探すように依頼するが
「申し訳ございません。それは出来かねます。お嬢様は旦那様がおっしゃられた通り、既に国を出ていらっしゃいます。他国に出ているお嬢様を探し出すのは、至難の業かと…」
そう言われてしまったのだ。どうしてみんな、ルージュが居なくなったのに平気な顔をしていられるのだ?もしこのまま、ルージュが帰って来なかったら、僕は…
ゆっくりと手紙を広げる。そこには便箋2枚分、びっちり文字が書かれていた。僕との出会いの時から始まり、1つ1つの思い出話が丁寧につづられていた。
僕と出会えて楽しかった事、嬉しかった事、幸せだったことがつづられている。
そして最後に
“グレイソン様と出会えて、私は本当に幸せでした。私にこんなにも幸せな時間を与えて下さった事、心より感謝いたします。あなた様と共に未来を歩めたら、そんな淡い期待を抱いた事もありました。でも…グレイソン様に嫌われていると知った今、私にできる事はあなた様の傍から消える事です。
決して誤解しないで下さい。あなた様が原因で消えるのではありません。私はあなた様が笑っていてくれることが、私の幸せでもあるのです。だから私は、私の幸せを守るために、屋敷を出ていくのです。
私は私の為に、この家を出る事を決めました。
それから、両親はグレイソン様を本当の息子の様に思っております。もしグレイソン様が私の事がお嫌いで、この家を出て行こうとしていらっしゃるのでしたら、どうか今一度考え直してください。
できれば私の代わりに、両親を支えてあげて欲しい。そして素敵なパートナーを見つけ、幸せになってください。
ただ…
ヴァイオレット様は止めた方がよろしいかもしれません。
長くなりましたが、どうかいつも笑顔を忘れずにいて下さい。あなた様の幸せとご活躍を、遠くから見守っております。
ルージュ“
「ルージュ…どうして?君は僕を恨んでいたのではなかったのかい?それなのに、どうして?」
手紙を握りしめながら、溢れる涙を止める事が出来ない。僕は何を間違ってしまったのだろう。僕はただ、ルージュの幸せを願って、傍を離れようとしていたのに…
それなのに、どうしてこんな事に?
「お坊ちゃま、その手紙を読まれたのですね…」
僕の傍にやって来たのは、アリーと一緒にルージュのお世話をしているメイドの1人だ。
「そのお手紙は、もしお坊ちゃまがお嬢様のお部屋にいらしたら…その時は読んで欲しいとお嬢様が昨日の夜書いていったお手紙です。早速読んで頂けただなんて、きっとお嬢様も喜んでいらっしゃる事でしょう」
そう言うと寂しそうに微笑んだメイド。
「ルージュは一体どこに行ったのだい?頼む、教えてくれ」
「私にもわかりません。申し訳ございません」
そんな…
ルージュに会いたい。会ってきちんと話がしたい。君は僕を恨んでいるのではないのかい?殿下やヴァイオレット嬢と同じように、僕は君と君の家族を死に追いやったのだから。
それなのに、どうしてこんな手紙を残して、僕の前から姿を消したのだい?僕はただ、ルージュに幸せになって欲しかっただけなのに…
とにかくルージュを探さないと。ルージュが行きそうな場所と言えば…友人たちの家か?いいや、友人たちの家に長期間滞在する事は難しいだろう。となると、やはり領地だな。
「すぐに馬を手配してくれ。僕は領地に向かうから」
きっと領地にルージュはいるはずだ。早馬で飛ばせば、領地までは丸1日で行ける。一刻も早くルージュを迎えに行かないと。
すぐに準備を整え、馬にまたがったところで義両親がやって来た。
「グレイソン、こんな時間にどこに向かうつもりだい?」
「領地です。きっとルージュは、領地にいるはずです。今すぐ迎えに行ってきます」
「待ちなさい、グレイソン。ルージュは領地にはいない。多分もう、この国にはいないよ。領地に行っても無駄だ」
「この国にいないとは、どういうことですか?ルージュは一体どこに行ったのですか?どうして義父上も義母上も、ルージュを探さないのですか?彼女は公爵令嬢なのですよ!」
「グレイソン、落ち着いて。ルージュの傍には、公爵家の護衛もメイドたちもいるから大丈夫よ。だからあなたは何も心配しないで。ルージュの事はもう考えないで、自分の事だけを考えて。それがルージュの願いでもあるのだから」
「そうだぞ。ルージュはグレイソンの幸せを願い、この国を出たのだよ。どうかルージュの気持ちを少しでも思ってくれるのなら、自分の幸せだけを考えてくれ」
僕の幸せだけを考えるだって?そんなの、決まっている。僕はルージュの傍にずっといたい。ルージュが僕の傍にいてくれるだけで、幸せなのだから。
でも、そのルージュが僕のせいで屋敷を出て行ってしまったのだ。公爵令嬢の彼女が、いくら護衛やメイドを連れているとはいえ、異国で暮らすだなんて。
僕のせいだ、僕がきちんとルージュと話し合わずに、勝手に結論を出してルージュから離れようとしたから。結局僕は、ルージュを幸せにするどころか、深く傷つけ、挙句の果てに家から追い出してしまったのだ。
「グレイソン、とにかく一度屋敷に入ろう。ルージュなら大丈夫だから」
義両親に説得され、再び屋敷に戻ってきた。でも…
「頼む、ルージュを探してくれ。今ルージュはどこにいるのだい?彼女を連れ戻したいのだよ…」
専属執事に、ルージュを探すように依頼するが
「申し訳ございません。それは出来かねます。お嬢様は旦那様がおっしゃられた通り、既に国を出ていらっしゃいます。他国に出ているお嬢様を探し出すのは、至難の業かと…」
そう言われてしまったのだ。どうしてみんな、ルージュが居なくなったのに平気な顔をしていられるのだ?もしこのまま、ルージュが帰って来なかったら、僕は…
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