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第76話:前に進みたい
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「ルージュ、大丈夫かい?随分とうなされていたよ。それに凄い汗だ。一度湯あみをした方がいい。シーツも取り替えないと。すぐにアリーを呼んでくるね」
グレイソン様が部屋から出て行こうとしている。
「待って下さい、どうか…どうか今、私を1人にしないで下さい。お願いします」
恐怖でまだ体が震えている。あんな鮮明な夢を見るだなんて。きっと1度目の生の記憶が、私にあんな恐ろしい夢を見させたのだろう。
「1人にしようとしてごめんね。とにかく落ち着いて」
グレイソン様がギュッと抱きしめてくれる。温かくて落ち着く。でも…
「グレイソン様、私は酷い汗をかいております。どうか離れて下さい。あなたまで濡れてしまいますわ」
尋常ではない程の汗をかいているのだ。グレイソン様の寝間着が汚れてしまう。
「僕の寝間着の心配なんてしなくてもいいよ。よほど怖い夢を見たのだね。可哀そうに。ルージュが落ち着くまで、ずっと傍にいるから」
私の頭を撫でながら、何度も何度も“大丈夫だよ”そう声をかけてくれる。グレイソン様に抱きしめられ、温もりに触れたことで少し落ち着いて来た。私ったら、こんなに取り乱してしまうだなんて…
「もう大丈夫ですわ。ありがとうございます。すぐに湯あみをして、休みますわ。ですのでグレイソン様も、もうお部屋にお戻りください。私の汗が寝間着についてしまったでしょう。すぐに湯あみを済ませて下さい。それに明日は貴族学院もありますので」
きっとずっと私の傍にいて、手を握ってくれていたのだろう。これ以上グレイソン様に、心配をかける訳にはいかない。
「でも、また怖い夢を見たらどうするのだい?湯あみが終わったら、またルージュの部屋に来るよ。君が心配だ」
必死にグレイソン様が訴えてくる。でも、これ以上彼に迷惑をかける訳にはいかない。
「グレイソン様が私の事を真剣に心配してくれている事は、とても嬉しいです。でも、もう本当に大丈夫ですわ。どうかゆっくりお休みください。私も湯あみが終わったら、休みますので」
「…分かったよ。ただ、君が心配だ。今日は使用人たちを、必ずルージュの部屋で様子を見る様に手配するよ。もしまた悪夢を見たら、すぐに僕に知らせる様に伝えておくから」
「そんな事をしてもらわなくても、私は…」
「いいや、君の事が心配で、僕は寝られそうにない。お願いだ、そうさせてくれ」
グレイソン様の必死の訴えに、さすがに嫌とは言えない。
「分かりましたわ。本当にグレイソン様は」
「よかった、これで僕も心置きなく、自分の部屋に戻れるよ。何かあったら、すぐに駆け付けるからね。それじゃあ、お休み」
グレイソン様が部屋から出て行った。私もすぐに湯あみを済ませ、シーツを変えてもらった。そしてもう一度ベッドに入った。
あんな夢を見るだなんて。きっと昨日、殿下から1度目の生の話を聞いたからだろう。殿下に深く関われば関わるほど、1度目の生の時の辛かった記憶が蘇る。
もう二度とあんな思いはしたくないのだ。やはり殿下とは、距離を置いた方がいいだろう。それにヴァイオレット!あの女、きっとまた私に仕掛けてくる。
ふと1度目の生の時、地下牢で私を見下し、あざ笑っていたあの女の姿が脳裏に浮かんだ。その瞬間、背筋が凍り付くのを感じる。本当は関わりたくはない。でも、どうやらそんな事は不可能な様だ。私は再び、あの女に執拗に執着されてしまったのだから…
私たちはどちらかが消えるまで、戦い続ける運命なのかもしれない。でも、今度こそ私は、絶対に幸せになってみせる。その為にも、あの女は…
そうよ、2度目の生が始まった時に、私は誓ったのよ。今度こそ幸せになると!そのためにも、いつまでも1度目の生の呪縛に囚われ、苦しんでいる訳にはいかない。
前を向いて進まないと!
ただ、私は“幸せになりたい”という漠然とした夢を抱いていた。私はどんな風に幸せになりたいの?私が思う幸せとは?
自分に問いかける。
私の幸せは、大好きなお父様とお母様が傍にいてくれて、大切な友人たちが笑っていてくれて、そして…
ふとグレイソン様の顔が浮かんだ。グレイソン様がいつも笑顔で、ずっと私の傍にいてくれたら…
それが私の幸せ…
「私はこれからもずっと、グレイソン様の傍にいたい」
ポツリと呟いた。正直グレイソン様を異性として好きかと言われたら、よくわからない。ただ、彼の傍にいたい、彼の笑顔を守りたい。グレイソン様が傍にいて笑っていてくれることが、私の幸せなのだ。
なんだ、私、もう答えが出ているじゃない。私が幸せになるための答えが。
私が幸せになるために、やるべきこと。それは…
なんだか急に眠くなってきたわ。
ゆっくり瞳を閉じ、そのまま眠りについたのだった。
※次回、グレイソン視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
グレイソン様が部屋から出て行こうとしている。
「待って下さい、どうか…どうか今、私を1人にしないで下さい。お願いします」
恐怖でまだ体が震えている。あんな鮮明な夢を見るだなんて。きっと1度目の生の記憶が、私にあんな恐ろしい夢を見させたのだろう。
「1人にしようとしてごめんね。とにかく落ち着いて」
グレイソン様がギュッと抱きしめてくれる。温かくて落ち着く。でも…
「グレイソン様、私は酷い汗をかいております。どうか離れて下さい。あなたまで濡れてしまいますわ」
尋常ではない程の汗をかいているのだ。グレイソン様の寝間着が汚れてしまう。
「僕の寝間着の心配なんてしなくてもいいよ。よほど怖い夢を見たのだね。可哀そうに。ルージュが落ち着くまで、ずっと傍にいるから」
私の頭を撫でながら、何度も何度も“大丈夫だよ”そう声をかけてくれる。グレイソン様に抱きしめられ、温もりに触れたことで少し落ち着いて来た。私ったら、こんなに取り乱してしまうだなんて…
「もう大丈夫ですわ。ありがとうございます。すぐに湯あみをして、休みますわ。ですのでグレイソン様も、もうお部屋にお戻りください。私の汗が寝間着についてしまったでしょう。すぐに湯あみを済ませて下さい。それに明日は貴族学院もありますので」
きっとずっと私の傍にいて、手を握ってくれていたのだろう。これ以上グレイソン様に、心配をかける訳にはいかない。
「でも、また怖い夢を見たらどうするのだい?湯あみが終わったら、またルージュの部屋に来るよ。君が心配だ」
必死にグレイソン様が訴えてくる。でも、これ以上彼に迷惑をかける訳にはいかない。
「グレイソン様が私の事を真剣に心配してくれている事は、とても嬉しいです。でも、もう本当に大丈夫ですわ。どうかゆっくりお休みください。私も湯あみが終わったら、休みますので」
「…分かったよ。ただ、君が心配だ。今日は使用人たちを、必ずルージュの部屋で様子を見る様に手配するよ。もしまた悪夢を見たら、すぐに僕に知らせる様に伝えておくから」
「そんな事をしてもらわなくても、私は…」
「いいや、君の事が心配で、僕は寝られそうにない。お願いだ、そうさせてくれ」
グレイソン様の必死の訴えに、さすがに嫌とは言えない。
「分かりましたわ。本当にグレイソン様は」
「よかった、これで僕も心置きなく、自分の部屋に戻れるよ。何かあったら、すぐに駆け付けるからね。それじゃあ、お休み」
グレイソン様が部屋から出て行った。私もすぐに湯あみを済ませ、シーツを変えてもらった。そしてもう一度ベッドに入った。
あんな夢を見るだなんて。きっと昨日、殿下から1度目の生の話を聞いたからだろう。殿下に深く関われば関わるほど、1度目の生の時の辛かった記憶が蘇る。
もう二度とあんな思いはしたくないのだ。やはり殿下とは、距離を置いた方がいいだろう。それにヴァイオレット!あの女、きっとまた私に仕掛けてくる。
ふと1度目の生の時、地下牢で私を見下し、あざ笑っていたあの女の姿が脳裏に浮かんだ。その瞬間、背筋が凍り付くのを感じる。本当は関わりたくはない。でも、どうやらそんな事は不可能な様だ。私は再び、あの女に執拗に執着されてしまったのだから…
私たちはどちらかが消えるまで、戦い続ける運命なのかもしれない。でも、今度こそ私は、絶対に幸せになってみせる。その為にも、あの女は…
そうよ、2度目の生が始まった時に、私は誓ったのよ。今度こそ幸せになると!そのためにも、いつまでも1度目の生の呪縛に囚われ、苦しんでいる訳にはいかない。
前を向いて進まないと!
ただ、私は“幸せになりたい”という漠然とした夢を抱いていた。私はどんな風に幸せになりたいの?私が思う幸せとは?
自分に問いかける。
私の幸せは、大好きなお父様とお母様が傍にいてくれて、大切な友人たちが笑っていてくれて、そして…
ふとグレイソン様の顔が浮かんだ。グレイソン様がいつも笑顔で、ずっと私の傍にいてくれたら…
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「私はこれからもずっと、グレイソン様の傍にいたい」
ポツリと呟いた。正直グレイソン様を異性として好きかと言われたら、よくわからない。ただ、彼の傍にいたい、彼の笑顔を守りたい。グレイソン様が傍にいて笑っていてくれることが、私の幸せなのだ。
なんだ、私、もう答えが出ているじゃない。私が幸せになるための答えが。
私が幸せになるために、やるべきこと。それは…
なんだか急に眠くなってきたわ。
ゆっくり瞳を閉じ、そのまま眠りについたのだった。
※次回、グレイソン視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
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