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第73話:どうしても殿下を受け入れられません
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「殿下、今日あなたとお話しが出来て、本当によかったですわ。1度目の生の時、本当に絶望しかありませんでした。でも、私が居なくなった後、沢山の人が動いて下さった事が分かって、なんだか心がほっこりしました。ちなみに殿下は、いつ2度目の生が始まったのですか?」
「僕は12歳、初めて君に会ったお茶会の日だよ。ルージュに会ったあの日に戻っていた時、本当に嬉しかったんだ。もう二度とルージュを悲しませない、あの女から必ずルージュを守ると。そして今度こそ、僕の手でルージュを幸せにしたいと。ルージュ、君にとって僕は、憎い相手だろう。それでも僕は、ルージュを愛している。失って初めて君の大切さに気が付いたんだ。どうか僕に、もう一度チャンスを下さい」
お願いします!と言わんばかりに、殿下が頭を下げている。
「殿下のお気持ちは分かりましたわ。あなた様も、1度目の生の時苦労なされたのですね。ですが…正直ご自分でまかれた種でしょう?それでもあなた様が、ご自分の行いを反省し、今ヴァイオレット様と一線を置いている事は分かりました。ただ…やはり私は、あなた様を受け入れる事は出来ません。あなた様といると、1度目の生の時の辛く悲しい日々を思い出すのです。婚約を解消された後だけではありません。あなた様と婚約していた3年間の内、2年は辛い時間でしたので…」
12歳で婚約してから、13歳で貴族学院に入るまでは確かに幸せだった。でも、貴族学院に入り、ヴァイオレットが現れてからの2年は、私にとって苦痛でしかなかったのだ。殿下といると、どうしてもあの時の辛かった記憶が蘇る。私はやはり、殿下を受け入れる事は出来ない。
「ルージュの言う事は最もだ。僕がどれほど君に酷い事をしたか…ルージュ、覚えているかい?僕の14歳の誕生日の時、時計をくれたよね?」
「ええ、覚えておりますわ。私の14歳のお誕生日の時に、殿下が贈って下さった時計とそっくりな物を私は贈ったのですが…あれはやっぱり」
「ああ、そうだよ。あの時ルージュは“これからも僕と共に同じ時間を生きたい”と言って贈ってくれたよね。それなのに僕は、君の気持ちを裏切り、死なせてしまった。君が亡くなった後、ルージュから貰った贈り物を1つ1つ見ていったんだよ。その時、初めてあの時計を見た。そしてルージュの言葉を思い出したんだ。ルージュの気持ちを思うと、本当に申し訳なくて…あの時ルージュが教えてくれた言葉を、今度は僕がルージュに送りたいと思って、あの時計を贈ったんだ」
「そうだったのですね…でも、私は…」
「僕がルージュにした仕打ちを思えば、君が僕を受け入れられない事も十分に分かっている。それでも僕は、ルージュが大好きだ。もしまたヴァイオレットに君を傷つけられるかと思うと、気が気ではない。君に振り向いてもらえなくても、仕方がないと思っている。ただ、ヴァイオレットにだけは、君を傷つけられたくない。だから、どうか僕に、君を守らせてほしい」
「私を守るですか?でも…」
「ヴァイオレットは恐ろしい女だ。きっとまた、何か仕掛けてくる。もしかしたら、君の命を狙ってくるかもしれない。僕はもう、あの女にルージュを奪われたくはないんだよ」
「確かにヴァイオレット様ならきっと、何かして来るでしょう。ですが私は、殿下に守ってもらわなくても、自分で何とかいたしますわ」
「そうは言っても、あの女は恐ろしい女だ。それに僕は王太子だ、もし何かあったとき、きっと君の役に立てると思う。ただ…君を守るという言い方が良くなかったかな。これからも、ルージュの傍にいさせて欲しい。それでもしあの女が何かして来たら、その時は僕も手助けをするというのはどうだい?」
必死に殿下が訴えてくる。
「分かりましたわ。ただ、私は殿下の事を受け入れる事は出来ません。その事をしっかりご理解いただいたうえで、友人としてお付き合いしていくという事なら、構いません」
「本当かい?ありがとう、ルージュ。僕は君の傍にいられるだけで、十分幸せだよ」
そう言うと、それはそれは嬉しそうに殿下が笑ったのだ。その笑顔を見た瞬間、なぜか胸が痛んだ。
この人、本当に変わったのね。きっと1度目の生の時、よほど苦労したのだろう。
だからと言って、やはり殿下を受け入れる事は考えられない。それだけは変わらない事実だ。
「そろそろ日も暮れるし、帰ろうか」
2人で門を目指して歩き始めた。こんな風に殿下と2人で歩くだなんて、何だか不思議ね。そんな事を考えているうちに、門までやって来た。
「今日は本当にありがとうございました。それではまた明日」
「こっちこそ、ルージュと話が出来てよかったよ。気を付けて帰ってね」
殿下に挨拶を済ませ、馬車に乗り込む。すると、なぜか殿下がずっと手を振ってくれているのだ。その姿を見た瞬間、婚約したころの事を思いだした。あの人は本当に変わったのかもしれない。いいえ、昔の優しかったころの殿下に戻ったのだろう。
1度目の生の時、何度も何度も昔の優しかった殿下に戻って欲しい、そう願った。でも、その願いは叶わなかった。まさか2度目の生で、あの時の願いが叶うだなんて…
なんだか複雑な気持ちのまま、殿下に手を振り返したのだった。
「僕は12歳、初めて君に会ったお茶会の日だよ。ルージュに会ったあの日に戻っていた時、本当に嬉しかったんだ。もう二度とルージュを悲しませない、あの女から必ずルージュを守ると。そして今度こそ、僕の手でルージュを幸せにしたいと。ルージュ、君にとって僕は、憎い相手だろう。それでも僕は、ルージュを愛している。失って初めて君の大切さに気が付いたんだ。どうか僕に、もう一度チャンスを下さい」
お願いします!と言わんばかりに、殿下が頭を下げている。
「殿下のお気持ちは分かりましたわ。あなた様も、1度目の生の時苦労なされたのですね。ですが…正直ご自分でまかれた種でしょう?それでもあなた様が、ご自分の行いを反省し、今ヴァイオレット様と一線を置いている事は分かりました。ただ…やはり私は、あなた様を受け入れる事は出来ません。あなた様といると、1度目の生の時の辛く悲しい日々を思い出すのです。婚約を解消された後だけではありません。あなた様と婚約していた3年間の内、2年は辛い時間でしたので…」
12歳で婚約してから、13歳で貴族学院に入るまでは確かに幸せだった。でも、貴族学院に入り、ヴァイオレットが現れてからの2年は、私にとって苦痛でしかなかったのだ。殿下といると、どうしてもあの時の辛かった記憶が蘇る。私はやはり、殿下を受け入れる事は出来ない。
「ルージュの言う事は最もだ。僕がどれほど君に酷い事をしたか…ルージュ、覚えているかい?僕の14歳の誕生日の時、時計をくれたよね?」
「ええ、覚えておりますわ。私の14歳のお誕生日の時に、殿下が贈って下さった時計とそっくりな物を私は贈ったのですが…あれはやっぱり」
「ああ、そうだよ。あの時ルージュは“これからも僕と共に同じ時間を生きたい”と言って贈ってくれたよね。それなのに僕は、君の気持ちを裏切り、死なせてしまった。君が亡くなった後、ルージュから貰った贈り物を1つ1つ見ていったんだよ。その時、初めてあの時計を見た。そしてルージュの言葉を思い出したんだ。ルージュの気持ちを思うと、本当に申し訳なくて…あの時ルージュが教えてくれた言葉を、今度は僕がルージュに送りたいと思って、あの時計を贈ったんだ」
「そうだったのですね…でも、私は…」
「僕がルージュにした仕打ちを思えば、君が僕を受け入れられない事も十分に分かっている。それでも僕は、ルージュが大好きだ。もしまたヴァイオレットに君を傷つけられるかと思うと、気が気ではない。君に振り向いてもらえなくても、仕方がないと思っている。ただ、ヴァイオレットにだけは、君を傷つけられたくない。だから、どうか僕に、君を守らせてほしい」
「私を守るですか?でも…」
「ヴァイオレットは恐ろしい女だ。きっとまた、何か仕掛けてくる。もしかしたら、君の命を狙ってくるかもしれない。僕はもう、あの女にルージュを奪われたくはないんだよ」
「確かにヴァイオレット様ならきっと、何かして来るでしょう。ですが私は、殿下に守ってもらわなくても、自分で何とかいたしますわ」
「そうは言っても、あの女は恐ろしい女だ。それに僕は王太子だ、もし何かあったとき、きっと君の役に立てると思う。ただ…君を守るという言い方が良くなかったかな。これからも、ルージュの傍にいさせて欲しい。それでもしあの女が何かして来たら、その時は僕も手助けをするというのはどうだい?」
必死に殿下が訴えてくる。
「分かりましたわ。ただ、私は殿下の事を受け入れる事は出来ません。その事をしっかりご理解いただいたうえで、友人としてお付き合いしていくという事なら、構いません」
「本当かい?ありがとう、ルージュ。僕は君の傍にいられるだけで、十分幸せだよ」
そう言うと、それはそれは嬉しそうに殿下が笑ったのだ。その笑顔を見た瞬間、なぜか胸が痛んだ。
この人、本当に変わったのね。きっと1度目の生の時、よほど苦労したのだろう。
だからと言って、やはり殿下を受け入れる事は考えられない。それだけは変わらない事実だ。
「そろそろ日も暮れるし、帰ろうか」
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「今日は本当にありがとうございました。それではまた明日」
「こっちこそ、ルージュと話が出来てよかったよ。気を付けて帰ってね」
殿下に挨拶を済ませ、馬車に乗り込む。すると、なぜか殿下がずっと手を振ってくれているのだ。その姿を見た瞬間、婚約したころの事を思いだした。あの人は本当に変わったのかもしれない。いいえ、昔の優しかったころの殿下に戻ったのだろう。
1度目の生の時、何度も何度も昔の優しかった殿下に戻って欲しい、そう願った。でも、その願いは叶わなかった。まさか2度目の生で、あの時の願いが叶うだなんて…
なんだか複雑な気持ちのまま、殿下に手を振り返したのだった。
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