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第60話:私はどうしたらいいのかしら?
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箱を開けると、可愛らしい女の子が乗ったオルゴールが。女の子は私と同じ銀色の髪にオレンジ色の瞳をしている。
「素敵なオルゴールですね。この子は私ですか?」
「ああ、そうだよ。ルージュをイメージして作ってもらったんだ。それからこの音色はね、僕の両親が好きだった曲なんだ」
そう言うと、グレイソン様がオルゴールのねじを回した。そこから心地よい音色が響き渡る。
「なんて素敵な音色なのでしょう。私もこの曲、好きになりましたわ」
聞いただけで幸せになれる様な、優しい曲。何だか心が温かい気持ちになれるのだ。
「ルージュが喜んでくれてよかった。それじゃあ、そろそろ屋敷に戻ろう」
すっと私の手を握ったグレイソン様。さっきの告白は嘘のように、いつも通りの笑顔を向けてくれている。
ただ、少しだけ手が震えていた。きっととても勇気がいったのだろう。人に気持ちを伝えるという事は、そう言う事だ。
まさかグレイソン様からも、告白を受けるだなんて…
「それじゃあルージュ、今日はゆっくり休んで。お休み」
「おやすみなさい、グレイソン様。今日はその…色々とありがとうございました」
さっきのグレイソン様の告白を思い出し、つい俯いてしまう。
「ルージュ、混乱させて本当にごめんね。気持ちを伝えたのにこんな事を言うのも気が引けるのだが、どうか今まで通り、僕と接して欲しい。急にルージュに避けられたりしたら、悲しいからね」
「そんな、私はグレイソン様を避けたりなんてしませんわ。ただ、今は少し混乱していて」
「分かっているよ。そんなに思い詰めないで。君の中で結論が出るまで、僕はずっと待っているから。だからゆっくり考えて。とはいえ、貴族学院を卒院するまでに返事が聞けたら嬉しいな」
貴族学院を卒院するまでか。まだ2年以上ある。そんなに待ってもらうのは、さすがに申し訳ない気がする。ただ、グレイソン様らしいわね。
「分かりましたわ。ただ、あまりお待たせするも申し訳ないので、出来るだけ早く結論を…」
「ルージュ、早まらないで。慌てて結論を出そうとして、断られることが一番怖いんだよ。それに僕は、これからルージュにアピールしようと思っているのだから。それじゃあ、お休み」
グレイソン様が、そのまま自室へと戻って行った。そんなグレイソン様の部屋を、見つめる。
どうしよう、まさかクリストファー殿下とグレイソン様から、同タイミングで気持ちを伝えられるだなんて…
ふと殿下から貰った時計を取り出した。この時計を見ると、胸が締め付けられる。殿下が何を思い、この時計を贈ったのかは私にはわからない。
でも…
見れば見るほど、私が贈った時計によく似ているのだ。そっと机の上に時計を置いた。やっぱり一度、殿下ときちんと話をする必要があるかもしれない。でも、2人きりで話をするのは、なんだか気が引ける。
それにやっぱり私は、殿下には深く関わりたくはない。殿下に関われが関わるほど、心がざわつくのだ。2度目の生は、穏やかに生きたい、そのために今まで動いて来たのだ。
ただ…
殿下の時折見せる、優しい眼差しを見ると、どうしても楽しかったころの記憶が蘇るのだ。あの時は間違いなく私は、殿下の事が好きだった。その時の気持ちが、蘇ってくるのだ。
でも…
考えれば考えるほど、頭が混乱してくる。
ダメだ、一旦殿下の事は置いておこう。
今度はグレイソン様に貰ったオルゴールを、机の上に飾った。ねじを回すと、女の子がゆっくり回り、美しい音色が響き渡る。
この音色を聞いていると、なんだか幸せな気持ちになる。
ふとグレイソン様の事を考える。ここに来た頃は、本当に絶望に満ちた目をしていた。1度目の生で処刑される寸前に見たあの目と同じ目を見た時、無意識に体が動いてしまった。
彼のせいで、私たち家族は殺された。そんな思いも最初はあった。でもグレイソン様と過ごすうちに、どんどん彼の事が好きになった。グレイソン様には、もっともっと楽しいという感情や嬉しいという感情を感じて欲しい。
友人というかけがえのない存在を、手に入れて欲しい。そしていつも笑っていて欲しい。ずっとそう思っていた。そして彼は、私が望む通りどんどん明るくなり、今ではあの時の絶望に満ちた目をしていたのが嘘のように、生き生きとした目をしている。
辛い思いをしたからこそ、何が何でもグレイソン様には幸せになって欲しい。
ただ…
この気持ちは、ずっと家族としての感情だと思っていた。グレイソン様は、どちらかというと、異性と言うよりも大切な兄妹という気持ちが強いのだ。
グレイソン様の気持ちは何となくわかっていたけれど、あえて気が付かないふりをしていた。気が付いた時、今の関係が壊れてしまうのではないか、それが一番怖かったのだ。きっとグレイソン様も、今の関係が壊れる事を一番恐れていただろう。
それでも私の気持ちをぶつけてくれたグレイソン様を思うと、私も真剣に将来の事を考えないと!そう思う。
ただ…
考えれば考えるほど、どうすればいいのか分からなくなるのだ。1度目の生の時から考えても、こんなに令息にモテた事なんて一度もない。
そんな私が、2人の令息から気持ちを伝えられるだなんて…
本当に私は、これからどうすればいいのだろう…
次回、クリストファー視点です。
よろしくお願いします。
「素敵なオルゴールですね。この子は私ですか?」
「ああ、そうだよ。ルージュをイメージして作ってもらったんだ。それからこの音色はね、僕の両親が好きだった曲なんだ」
そう言うと、グレイソン様がオルゴールのねじを回した。そこから心地よい音色が響き渡る。
「なんて素敵な音色なのでしょう。私もこの曲、好きになりましたわ」
聞いただけで幸せになれる様な、優しい曲。何だか心が温かい気持ちになれるのだ。
「ルージュが喜んでくれてよかった。それじゃあ、そろそろ屋敷に戻ろう」
すっと私の手を握ったグレイソン様。さっきの告白は嘘のように、いつも通りの笑顔を向けてくれている。
ただ、少しだけ手が震えていた。きっととても勇気がいったのだろう。人に気持ちを伝えるという事は、そう言う事だ。
まさかグレイソン様からも、告白を受けるだなんて…
「それじゃあルージュ、今日はゆっくり休んで。お休み」
「おやすみなさい、グレイソン様。今日はその…色々とありがとうございました」
さっきのグレイソン様の告白を思い出し、つい俯いてしまう。
「ルージュ、混乱させて本当にごめんね。気持ちを伝えたのにこんな事を言うのも気が引けるのだが、どうか今まで通り、僕と接して欲しい。急にルージュに避けられたりしたら、悲しいからね」
「そんな、私はグレイソン様を避けたりなんてしませんわ。ただ、今は少し混乱していて」
「分かっているよ。そんなに思い詰めないで。君の中で結論が出るまで、僕はずっと待っているから。だからゆっくり考えて。とはいえ、貴族学院を卒院するまでに返事が聞けたら嬉しいな」
貴族学院を卒院するまでか。まだ2年以上ある。そんなに待ってもらうのは、さすがに申し訳ない気がする。ただ、グレイソン様らしいわね。
「分かりましたわ。ただ、あまりお待たせするも申し訳ないので、出来るだけ早く結論を…」
「ルージュ、早まらないで。慌てて結論を出そうとして、断られることが一番怖いんだよ。それに僕は、これからルージュにアピールしようと思っているのだから。それじゃあ、お休み」
グレイソン様が、そのまま自室へと戻って行った。そんなグレイソン様の部屋を、見つめる。
どうしよう、まさかクリストファー殿下とグレイソン様から、同タイミングで気持ちを伝えられるだなんて…
ふと殿下から貰った時計を取り出した。この時計を見ると、胸が締め付けられる。殿下が何を思い、この時計を贈ったのかは私にはわからない。
でも…
見れば見るほど、私が贈った時計によく似ているのだ。そっと机の上に時計を置いた。やっぱり一度、殿下ときちんと話をする必要があるかもしれない。でも、2人きりで話をするのは、なんだか気が引ける。
それにやっぱり私は、殿下には深く関わりたくはない。殿下に関われが関わるほど、心がざわつくのだ。2度目の生は、穏やかに生きたい、そのために今まで動いて来たのだ。
ただ…
殿下の時折見せる、優しい眼差しを見ると、どうしても楽しかったころの記憶が蘇るのだ。あの時は間違いなく私は、殿下の事が好きだった。その時の気持ちが、蘇ってくるのだ。
でも…
考えれば考えるほど、頭が混乱してくる。
ダメだ、一旦殿下の事は置いておこう。
今度はグレイソン様に貰ったオルゴールを、机の上に飾った。ねじを回すと、女の子がゆっくり回り、美しい音色が響き渡る。
この音色を聞いていると、なんだか幸せな気持ちになる。
ふとグレイソン様の事を考える。ここに来た頃は、本当に絶望に満ちた目をしていた。1度目の生で処刑される寸前に見たあの目と同じ目を見た時、無意識に体が動いてしまった。
彼のせいで、私たち家族は殺された。そんな思いも最初はあった。でもグレイソン様と過ごすうちに、どんどん彼の事が好きになった。グレイソン様には、もっともっと楽しいという感情や嬉しいという感情を感じて欲しい。
友人というかけがえのない存在を、手に入れて欲しい。そしていつも笑っていて欲しい。ずっとそう思っていた。そして彼は、私が望む通りどんどん明るくなり、今ではあの時の絶望に満ちた目をしていたのが嘘のように、生き生きとした目をしている。
辛い思いをしたからこそ、何が何でもグレイソン様には幸せになって欲しい。
ただ…
この気持ちは、ずっと家族としての感情だと思っていた。グレイソン様は、どちらかというと、異性と言うよりも大切な兄妹という気持ちが強いのだ。
グレイソン様の気持ちは何となくわかっていたけれど、あえて気が付かないふりをしていた。気が付いた時、今の関係が壊れてしまうのではないか、それが一番怖かったのだ。きっとグレイソン様も、今の関係が壊れる事を一番恐れていただろう。
それでも私の気持ちをぶつけてくれたグレイソン様を思うと、私も真剣に将来の事を考えないと!そう思う。
ただ…
考えれば考えるほど、どうすればいいのか分からなくなるのだ。1度目の生の時から考えても、こんなに令息にモテた事なんて一度もない。
そんな私が、2人の令息から気持ちを伝えられるだなんて…
本当に私は、これからどうすればいいのだろう…
次回、クリストファー視点です。
よろしくお願いします。
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