今度こそ穏やかに暮らしたいのに!どうして執着してくるのですか?

Karamimi

文字の大きさ
上 下
57 / 124

第57話:デビュータントの日を迎えました

しおりを挟む
ヴァイオレット様たちが停学処分になってから、2ヶ月が過ぎた。今日は私のお誕生日兼、デビュータントの日だ。今日の為に、私の瞳の色をイメージしたオレンジ色のドレスを準備した。

1度目の生の時は、殿下の婚約者だったこともあり、王宮でデビュータントを迎えた。一応殿下にエスコートしてもらったけれど、すぐにどこかに行ってしまったのよね。あの時は既に、ヴァイオレット様に夢中だったもの。

私にとってデビュータントは、悲しい思い出だ。でも、今回の生では目いっぱい楽しみたい。そう思い、準備を進めた。ちなみに今日私をエスコートしてくれるのは、グレイソン様だ。まだ婚約者がいない私は、義兄でもあるグレイソン様にお願いしたのだ。

別に1人で入場してもいいのだが、なんだかそれも寂しいものね。

「準備が整いましたよ。今日のお嬢様、とてもお美しいです。本当によく似合っておりますわ」

「そう?ありがとう」

アリーが笑顔で見送ってくれる。あの後アリーには多額の慰謝料が渡され、男爵家はかなり裕福になったらしい。さらにそのお金で、領地の立て直しも進めているらしい。ただアリーは、メイドの仕事が好きだからと言って、私の傍に今でもいてくれているのだ。

正直アリーが居なくなったら寂しいと思っていたので、私としてはとても嬉しいのが本音だ。

部屋から出ると、グレイソン様が待っていた。青い髪をしっかりセットしているグレイソン様、今日もとても男前ね。

「ルージュ、お誕生日おめでとう。そのドレス、とてもよく似合っているよ。まるでキンシバイの花の様だ。こんな美しいルージュのデビュータントを、僕がエスコートできるだなんて、本当に幸せだよ」

「もう、グレイソン様ったら。大げさなのですから。今日はよろしくお願いいたしますわ」

「ああ、もちろんだ。さあ、行こうか」

2人で今日の会場でもある、公爵家のホールへと向かった。

「それじゃあ行こう」

「ええ」

2人で腕を組み、ゆっくりとホールに入っていく。私の歩調に合わせて進んでくれるグレイソン様。本当に優しいわね。1度目の生の時は、さっさと私から離れたい殿下がスタスタと歩いてしまうから、付いていくのに必死だったのよね。

それでも入場後は、友人たちがずっと傍にいてくれた。彼女たちはどんな時でも、私の傍にいてくれた大切な友人なのだ。

「ルージュ、お誕生日おめでとう。今日からあなたも大人ね」

「皆、来てくれたの?ありがとう」

私の傍にやって来たのは、友人達だ。あの頃は殿下の態度に激怒してくれていたけれど、今日は皆笑顔だ。やっぱり彼女たちには、笑顔でいて欲しい。これからもずっと。

「せっかくだから、ファーストダンスをグレイソン様と踊ってきたら?」

ファーストダンスか…

1度目の生の時、ファーストダンスの時に殿下とスムーズに踊れるようにと、それこそ足に豆が出来るくらい、必死に練習をしたのだった。でも、結局誰とも踊らずに終わってしまった。殿下はすぐにヴァイオレット様のところに行ってしまったし、皆さすがに王太子殿下の婚約者のファーストダンスを奪ってはいけないと思ったのか、誰からも誘われなかったのだ。

あの時は本当に惨めだった。でも今回は…

「グレイソン様、一緒に踊ってくださいますか?」

「もちろんだよ、君のファーストダンスを僕が貰ってもいいのかい?嬉しいな」

そう言って私の手を引き、ホールの真ん中に連れてきてくれたグレイソン様。音楽に合わせ、ゆっくり踊り出す。

「ルージュはとてもダンスが上手だね。実は僕、こうやって夜会で令嬢と踊るの、初めてなんだ」

「まあ、グレイソン様のデビュータントの時に、令嬢と踊らなかったのですか?」

「ああ、僕はファーストダンスを、どうしてもルージュと踊りたくてね」

少し恥ずかしそうにそう教えてくれた。グレイソン様ったら。でも、私の為にファーストダンスを取っておいてくれた事が、嬉しくてたまらない。

1度目の生の時、誰とも踊ってもらえなくて、悲しくて辛くて惨めだった。あの時の気持ちが今、少しずつ晴れていく気がして、心が温かくなった。

「グレイソン様、私の為にファーストダンスを取っておいてくれて、ありがとうございます。私、とても幸せですわ」

1度目の生の時、必死にダンスを練習した甲斐があった。2度目の生で、あの時の努力が報われたのだから。

終始和やかな空気の中、グレイソン様とのダンスが終わった。

「グレイソン様、私の初めてのダンスのパートナーまで勤めて下さり、ありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとう」

2人で仲良く皆の元に戻ろうとしたのだが、今日の主役でもある私は、色々な貴族からお祝いの言葉を頂いた。それがなんだか嬉しい。ただ、中にはあの女の事件について聞いてくる貴族もいた。

やはりまだあの時の事は、話題に上っている様だ。幸い、ファウスン侯爵家の人間はだれ一人来ていない。さすがに来られないだろう。

やっと貴族たちとの挨拶が終わり、一息つける。そう思った時だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜

凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】  公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。  だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。  ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。  嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。  ──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。  王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。  カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。 (記憶を取り戻したい) (どうかこのままで……)  だが、それも長くは続かず──。 【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】 ※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。 ※中編版、短編版はpixivに移動させています。 ※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。 ※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...