45 / 124
第45話:どこまで性悪なのでしょうか
しおりを挟む
その後2人は、それぞれ別々に教室を出て行った。
「全ての真実が映像に残っていましたね。さて、真犯人が分かった様だけれど、何か言い分はあるかい?」
グレイソン様が、にっこりと笑って3人に詰め寄っている。これは相当怒っている様だ。後ろには怖い顔をしたアルフレッド様と殿下の姿も。
「これは違うのです。きっと何かの間違いですわ」
「このカメラは、王宮でも採用されている最新のものだ。そもそも映像としてバッチリ撮れているのだから、間違いの訳がないだろう。まさか学院でこんなふしだらな行為を行っていただなんて。君たちは学院を何だと思っているのだい?」
クリストファー殿下が、3人に問いかけている。さすがに映像が残っている以上、言い逃れは出来ないだろう。
「皆さん、落ち着いて下さい。君たち、詳しい話を聞きたいので、職員室に来ていただけますか?それから、ルージュ嬢も一緒に」
どうやら私も一緒に連れて行かれる様だ。
「先生、僕も同行してもいいでしょうか?今回の被害者は、我がヴァレスティナ公爵家のメイドです。公爵家のメイドが、あらぬ疑いを掛けられたのですから。このまま黙っている事は出来ません」
「分かりました。それではグレイソン殿も、一緒に来てください。他の人たちは、自習という事でお願いします。それでは行きましょう」
先生と一緒に教室を出ていく。ヴァイオレットはものすごくふてくされた顔をしているが、令息たちは既に真っ青な顔をしている。まあ、そうでしょうね。公爵家の人間に喧嘩を売っただけでなく、クラスの皆に自分のふしだらな映像を見られたのだ。
普通の感性なら、恥ずかしくてたまらないだろう。ただ…あの女のメンタルは本当に尊敬するわ。さて、どんな風に言い訳をするのかしら?
職員室に着くと、奥の部屋へと案内された。
「しばらくここでお待ちください。すぐに戻ります」
急いで先生が部屋から出て行った。
すると…
「ルージュ嬢、グレイソン殿、本当に申し訳ございませんでした。謝っても許してもらえるとは思っておりませんが、まずは謝罪をさせて下さい。それにしても、僕以外の令息ともあのような行為を行っていただなんて…」
「僕からも謝罪させてください。僕は本当に愚かでした。ヴァイオレット嬢の言葉を間に受けて、ルージュ嬢を陥れる手助けをしてしまった事。ただ、これは言い訳になるのですが、僕はヴァイオレット嬢に騙されていたのです。ヴァイオレット嬢が“ルージュ様に酷い暴言と暴力に悩まされている”というので、何とか助けてあげたいと思って。でも、よく考えたら、ルージュ嬢がそんな事をする訳ないのに…」
「それ、僕も同じことを言われたよ。泣いて必死に訴えてくるから、つい信じちゃったけれど…よく考えたら、いつも穏やかで優しいルージュ嬢がそんな事をする訳ないのにね…その上、他の令息とも関係を持っていただなんて…」
なぜか令息たちが盛り上がっている。それにしても、どうしてみんなこの女の嘘を、まんまと信じてしまうのかしら?本当に理解できないわ…
「ちょっと、黙って聞いていれば好き勝手言って。あなた達が私の為なら何でもしてくれるとおっしゃったのじゃない。どうして私だけを、悪者にするのですか?」
「だって本当の事だろう?」
「そうだよ。君が全て悪いんだ」
「何ですって」
何なの、この人たち。ヴァイオレットが非常に性格が悪いのは分かっているが、令息たちだって大概の性格をしている。はっきり言って、3人とも私に言わせれば同罪よ。さすがにいい加減にして欲しいと叫ぼうとした時だった。
「いい加減にしてくれ。どんな理由があろうと、君たちが家のメイドを犯人に仕立て上げようとした事は事実です。もしこのまま家のメイドが犯人にされたら、彼女の運命はどうなっていたか、考えたことはあるのですか?己の欲望の為に、何の罪もない人間を巻き込むことが、どれほどの罪か!とにかく僕は、君たちを絶対に許さない。義父上や義母上、ルージュが許すと言ったとしてもね!」
「あら、私も許すつもりはありませんわ。私の大切な専属メイド、アリーを傷つけようとしたあなた達を、絶対に許さない!グレイソン様が言った通り、もしこのままアリーが犯人にされていたら、アリーだけでなくその家族にだって、甚大な被害が及ぶのよ。その事を考えたら、絶対に許すことなんて出来ないわ」
アリーは男爵令嬢だが、家は貧しく幼い弟や妹の為に、必死にメイドの仕事をしている。そんな彼女を犯人に仕立て上げるだなんて、許せる道理がない。
「たかがメイドごときに、そんなにむきになって」
ポツリとそう呟いたのは、ヴァイオレットだ。たかがメイドですって!
「今なんて言った?たかがメイド?ふざけないで。アリーは私の大切な家族よ。そしてアリーの後ろには、アリーの大切な家族がいるのよ」
「アリーは大切な家族?あなた、バカなの?使用人は所詮使用人よ。別にその使用人がどうなろうが、知ったこっちゃないじゃない。また新しい使用人を雇えばいいだけ。いつでも替りの効く駒よ」
そう言い放ったヴァイオレット。こいつ、どこまで腐っているのよ。今までに感じた事のない怒りがこみあげてくる。
そんな私の手をギュッと握ったのは、グレイソン様だ。その時だった、ちょうど先生が学院長先生と数名の先生を連れて部屋に入って来たのだ。
「皆様、お待たせいたしました。さあ、話し合いを始めましょう」
「全ての真実が映像に残っていましたね。さて、真犯人が分かった様だけれど、何か言い分はあるかい?」
グレイソン様が、にっこりと笑って3人に詰め寄っている。これは相当怒っている様だ。後ろには怖い顔をしたアルフレッド様と殿下の姿も。
「これは違うのです。きっと何かの間違いですわ」
「このカメラは、王宮でも採用されている最新のものだ。そもそも映像としてバッチリ撮れているのだから、間違いの訳がないだろう。まさか学院でこんなふしだらな行為を行っていただなんて。君たちは学院を何だと思っているのだい?」
クリストファー殿下が、3人に問いかけている。さすがに映像が残っている以上、言い逃れは出来ないだろう。
「皆さん、落ち着いて下さい。君たち、詳しい話を聞きたいので、職員室に来ていただけますか?それから、ルージュ嬢も一緒に」
どうやら私も一緒に連れて行かれる様だ。
「先生、僕も同行してもいいでしょうか?今回の被害者は、我がヴァレスティナ公爵家のメイドです。公爵家のメイドが、あらぬ疑いを掛けられたのですから。このまま黙っている事は出来ません」
「分かりました。それではグレイソン殿も、一緒に来てください。他の人たちは、自習という事でお願いします。それでは行きましょう」
先生と一緒に教室を出ていく。ヴァイオレットはものすごくふてくされた顔をしているが、令息たちは既に真っ青な顔をしている。まあ、そうでしょうね。公爵家の人間に喧嘩を売っただけでなく、クラスの皆に自分のふしだらな映像を見られたのだ。
普通の感性なら、恥ずかしくてたまらないだろう。ただ…あの女のメンタルは本当に尊敬するわ。さて、どんな風に言い訳をするのかしら?
職員室に着くと、奥の部屋へと案内された。
「しばらくここでお待ちください。すぐに戻ります」
急いで先生が部屋から出て行った。
すると…
「ルージュ嬢、グレイソン殿、本当に申し訳ございませんでした。謝っても許してもらえるとは思っておりませんが、まずは謝罪をさせて下さい。それにしても、僕以外の令息ともあのような行為を行っていただなんて…」
「僕からも謝罪させてください。僕は本当に愚かでした。ヴァイオレット嬢の言葉を間に受けて、ルージュ嬢を陥れる手助けをしてしまった事。ただ、これは言い訳になるのですが、僕はヴァイオレット嬢に騙されていたのです。ヴァイオレット嬢が“ルージュ様に酷い暴言と暴力に悩まされている”というので、何とか助けてあげたいと思って。でも、よく考えたら、ルージュ嬢がそんな事をする訳ないのに…」
「それ、僕も同じことを言われたよ。泣いて必死に訴えてくるから、つい信じちゃったけれど…よく考えたら、いつも穏やかで優しいルージュ嬢がそんな事をする訳ないのにね…その上、他の令息とも関係を持っていただなんて…」
なぜか令息たちが盛り上がっている。それにしても、どうしてみんなこの女の嘘を、まんまと信じてしまうのかしら?本当に理解できないわ…
「ちょっと、黙って聞いていれば好き勝手言って。あなた達が私の為なら何でもしてくれるとおっしゃったのじゃない。どうして私だけを、悪者にするのですか?」
「だって本当の事だろう?」
「そうだよ。君が全て悪いんだ」
「何ですって」
何なの、この人たち。ヴァイオレットが非常に性格が悪いのは分かっているが、令息たちだって大概の性格をしている。はっきり言って、3人とも私に言わせれば同罪よ。さすがにいい加減にして欲しいと叫ぼうとした時だった。
「いい加減にしてくれ。どんな理由があろうと、君たちが家のメイドを犯人に仕立て上げようとした事は事実です。もしこのまま家のメイドが犯人にされたら、彼女の運命はどうなっていたか、考えたことはあるのですか?己の欲望の為に、何の罪もない人間を巻き込むことが、どれほどの罪か!とにかく僕は、君たちを絶対に許さない。義父上や義母上、ルージュが許すと言ったとしてもね!」
「あら、私も許すつもりはありませんわ。私の大切な専属メイド、アリーを傷つけようとしたあなた達を、絶対に許さない!グレイソン様が言った通り、もしこのままアリーが犯人にされていたら、アリーだけでなくその家族にだって、甚大な被害が及ぶのよ。その事を考えたら、絶対に許すことなんて出来ないわ」
アリーは男爵令嬢だが、家は貧しく幼い弟や妹の為に、必死にメイドの仕事をしている。そんな彼女を犯人に仕立て上げるだなんて、許せる道理がない。
「たかがメイドごときに、そんなにむきになって」
ポツリとそう呟いたのは、ヴァイオレットだ。たかがメイドですって!
「今なんて言った?たかがメイド?ふざけないで。アリーは私の大切な家族よ。そしてアリーの後ろには、アリーの大切な家族がいるのよ」
「アリーは大切な家族?あなた、バカなの?使用人は所詮使用人よ。別にその使用人がどうなろうが、知ったこっちゃないじゃない。また新しい使用人を雇えばいいだけ。いつでも替りの効く駒よ」
そう言い放ったヴァイオレット。こいつ、どこまで腐っているのよ。今までに感じた事のない怒りがこみあげてくる。
そんな私の手をギュッと握ったのは、グレイソン様だ。その時だった、ちょうど先生が学院長先生と数名の先生を連れて部屋に入って来たのだ。
「皆様、お待たせいたしました。さあ、話し合いを始めましょう」
1,599
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
夫は家族を捨てたのです。
クロユキ
恋愛
私達家族は幸せだった…夫が出稼ぎに行かなければ…行くのを止めなかった私の後悔……今何処で何をしているのかも生きているのかも分からない……
夫の帰りを待っ家族の話しです。
誤字脱字があります。更新が不定期ですがよろしくお願いします。
幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。
クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。
そんなある日クラスに転校生が入って来た。
幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。
誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。
更新不定期です。
よろしくお願いします。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる