38 / 124
第38話:結局目を付けられた様です
しおりを挟む
ホームルームの後、私達4人は先生に連れられ、職員室に向かった。貴族学院は生徒と先生が、ゆっくり話が出来るよう、職員室の奥には個室がいくつか準備されているのだ。そのうちの1つに通された。
「それで一体何があったのですか?詳しく話してください」
「先生、私はただ、席が前と後ろのクリストファー殿下とグレイソン様に挨拶をしただけです。それなのに…」
再び涙を浮かべ、先生に訴えているヴァイオレット。相変わらず上目使いが得意な様だ。
「僕はただ、馴れ馴れしく僕の手を握ろうとしてきたので、初対面の男の手を軽々しく握るのは良くないよと、教えてあげただけです。それに対し義妹のルージュが、なぜか僕が失礼な事を言ったと、ヴァイオレット嬢に謝り出して…」
「必死に謝るルージュ嬢をなぜか凄い形相でヴァイオレット嬢が睨んでいたので、僕も令嬢が令息にあまり色目を使うのは良くないと注意しました。そうしたら、ヴァイオレット嬢が泣きだして。僕たちに怒りをぶつけるならわかるけれど、どうしてルージュ嬢を悪者にしようとしたのか、僕たちにはさっぱりわかりません」
「ヴァイオレット嬢、どうしてルージュ嬢を悪者にしようとしたのですか?彼らの話を聞いていると、ルージュ嬢はどちらかと言えば、グレイソン殿の発言に対し、謝罪していただけの様に感じますが」
「あら?そうでしたか?私はてっきり、私の行いを指摘されたと思ったのですが」
「“グレイソン様が失礼な事を申してしまい、申し訳ございませんでした”のどこが指摘なのだい?誰が聞いても、謝罪じゃないか!君の耳、少しおかしいのじゃないのかい?」
怖い顔でクリストファー殿下が、ヴァイオレットに詰め寄っている。
「そんな…私はただ…」
「クリストファー殿下、落ち着いて。確かに私にもルージュ嬢の言った言葉は、謝罪に聞こえますね。違いますか?」
「そう言われてみれば、謝罪だったかもしれません。私の勘違いでしたわ…」
ヴァイオレットが、ポツリと呟いたのだ。
「そうですか、分かりました。それではヴァイオレット嬢の勘違いと言う事で、よろしいですね。ただ、クリストファー殿下、あなたのヴァイオレット嬢に対する言葉は、さすがに酷すぎます。その点に関しては、今後改善をして下さい。これから一緒に勉強をしていく、仲間なのですから」
「はい、申し訳ございませんでした。あまりにもヴァイオレット嬢がルージュ嬢に理不尽な事を言っていたので、頭に血が上ってしまって…その点は僕の落ち度です」
「ヴァイオレット嬢は、ずっと領地で生活していたと聞きます。まだ貴族社会になれていないのかもしれませんが、あまり令息に誤解を与える様な行動は慎んでください。それから、もう13歳なのです。すぐに泣くのもよくありません。貴族たるもの、よほどのことがない限り、涙を流さないものです。分かりましたね」
「はい…以後気を付けます」
きっと気を付ける事はないだろう。1度目の生の時、私は何度も同じことを注意した。でも、全く聞いてくれないどころか、逆恨みして嫌われ、最終的に殺されたのだ。この人に何を言っても無駄なのだ。関わらないのが一番。
現に不満そうな顔をしているし、なぜか私を睨んでいるわ。私、ここに来てから一度も言葉を発していないのだけれど…
結局私は、何をしてもこの女に嫌われる運命なのね。
ついため息が出そうになるのを、ぐっと堪えた。
「今日はもう帰ってもいいです。気を付けて帰ってくださいね」
どうやらもう帰ってもいいらしい。なんだかとても疲れたわ。今日は帰ってゆっくり休もう。そう思い、職員室を出る。
「ルージュ、グレイソン様も大丈夫だった?」
「皆、わざわざ待っていてくれたの?ありがとう。ええ、大丈夫だったわよ」
職員室の前で、友人たちが待っていてくれたのだ。
「それなら良かったわ。ただ、ヴァイオレット様、どうしてあの場でルージュに泣かされたと嘘を付いたのですか?」
近くにいたヴァイオレットを問い詰めるのは、セレーナだ。
「セレーナ、もういいのよ。既に話は済んだから」
「でも…」
「ただヴァイオレット嬢は、ルージュに謝っていないよね。それも勘違いしただなんて、白々しい嘘を付いて!」
話しにはいって来たのは、クリストファー殿下だ。
「謝っていない?一体どういう事?あなたは悪い事をしたのに、謝る事も出来ないの?」
「わ…私は謝りましたわ。とにかく、私はただ勘違いしただけです。寄ってたかって私を虐めるのはお止めください」
そう言うと、ヴァイオレットは走ってどこかに行ってしまったのだった。
「それで一体何があったのですか?詳しく話してください」
「先生、私はただ、席が前と後ろのクリストファー殿下とグレイソン様に挨拶をしただけです。それなのに…」
再び涙を浮かべ、先生に訴えているヴァイオレット。相変わらず上目使いが得意な様だ。
「僕はただ、馴れ馴れしく僕の手を握ろうとしてきたので、初対面の男の手を軽々しく握るのは良くないよと、教えてあげただけです。それに対し義妹のルージュが、なぜか僕が失礼な事を言ったと、ヴァイオレット嬢に謝り出して…」
「必死に謝るルージュ嬢をなぜか凄い形相でヴァイオレット嬢が睨んでいたので、僕も令嬢が令息にあまり色目を使うのは良くないと注意しました。そうしたら、ヴァイオレット嬢が泣きだして。僕たちに怒りをぶつけるならわかるけれど、どうしてルージュ嬢を悪者にしようとしたのか、僕たちにはさっぱりわかりません」
「ヴァイオレット嬢、どうしてルージュ嬢を悪者にしようとしたのですか?彼らの話を聞いていると、ルージュ嬢はどちらかと言えば、グレイソン殿の発言に対し、謝罪していただけの様に感じますが」
「あら?そうでしたか?私はてっきり、私の行いを指摘されたと思ったのですが」
「“グレイソン様が失礼な事を申してしまい、申し訳ございませんでした”のどこが指摘なのだい?誰が聞いても、謝罪じゃないか!君の耳、少しおかしいのじゃないのかい?」
怖い顔でクリストファー殿下が、ヴァイオレットに詰め寄っている。
「そんな…私はただ…」
「クリストファー殿下、落ち着いて。確かに私にもルージュ嬢の言った言葉は、謝罪に聞こえますね。違いますか?」
「そう言われてみれば、謝罪だったかもしれません。私の勘違いでしたわ…」
ヴァイオレットが、ポツリと呟いたのだ。
「そうですか、分かりました。それではヴァイオレット嬢の勘違いと言う事で、よろしいですね。ただ、クリストファー殿下、あなたのヴァイオレット嬢に対する言葉は、さすがに酷すぎます。その点に関しては、今後改善をして下さい。これから一緒に勉強をしていく、仲間なのですから」
「はい、申し訳ございませんでした。あまりにもヴァイオレット嬢がルージュ嬢に理不尽な事を言っていたので、頭に血が上ってしまって…その点は僕の落ち度です」
「ヴァイオレット嬢は、ずっと領地で生活していたと聞きます。まだ貴族社会になれていないのかもしれませんが、あまり令息に誤解を与える様な行動は慎んでください。それから、もう13歳なのです。すぐに泣くのもよくありません。貴族たるもの、よほどのことがない限り、涙を流さないものです。分かりましたね」
「はい…以後気を付けます」
きっと気を付ける事はないだろう。1度目の生の時、私は何度も同じことを注意した。でも、全く聞いてくれないどころか、逆恨みして嫌われ、最終的に殺されたのだ。この人に何を言っても無駄なのだ。関わらないのが一番。
現に不満そうな顔をしているし、なぜか私を睨んでいるわ。私、ここに来てから一度も言葉を発していないのだけれど…
結局私は、何をしてもこの女に嫌われる運命なのね。
ついため息が出そうになるのを、ぐっと堪えた。
「今日はもう帰ってもいいです。気を付けて帰ってくださいね」
どうやらもう帰ってもいいらしい。なんだかとても疲れたわ。今日は帰ってゆっくり休もう。そう思い、職員室を出る。
「ルージュ、グレイソン様も大丈夫だった?」
「皆、わざわざ待っていてくれたの?ありがとう。ええ、大丈夫だったわよ」
職員室の前で、友人たちが待っていてくれたのだ。
「それなら良かったわ。ただ、ヴァイオレット様、どうしてあの場でルージュに泣かされたと嘘を付いたのですか?」
近くにいたヴァイオレットを問い詰めるのは、セレーナだ。
「セレーナ、もういいのよ。既に話は済んだから」
「でも…」
「ただヴァイオレット嬢は、ルージュに謝っていないよね。それも勘違いしただなんて、白々しい嘘を付いて!」
話しにはいって来たのは、クリストファー殿下だ。
「謝っていない?一体どういう事?あなたは悪い事をしたのに、謝る事も出来ないの?」
「わ…私は謝りましたわ。とにかく、私はただ勘違いしただけです。寄ってたかって私を虐めるのはお止めください」
そう言うと、ヴァイオレットは走ってどこかに行ってしまったのだった。
1,478
お気に入りに追加
3,023
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢、猛省中!!
***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」
――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。
処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。
今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!?
己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?!
襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、
誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、
誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。
今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。
一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。
そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる