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第34話:解毒剤のおかげでソフィー様を助ける事が出来ました

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「それにしても、ポレスティレイ王国の毒がなぜわが国で使われたのだ。そもそもあの国は、今から25年前に滅亡したはずだぞ!」

「滅亡した国?」

一体どういう事かしら?そもそも、ポレスティレイ王国なんて聞いたことも無いわ!

「ミレニアやクラウド殿下は知らないかもしれないが、昔ファーム王国の隣に、ポレスティレイ王国という国があったんだ。でも、グレム王国という国との戦争に敗れてしまってね。25年前に滅亡したんだ。グレム王国はその後、ファーム王国をも攻め入り、長い長い戦争の末、3年前やっとファーム王国が勝利した。幸い我がパルメラーネ王国は島国だから戦争には巻き込まれなかったが、ファーム王国周辺の国は、随分と痛手を負った様だよ。今ファーム王国を中心に、急ピッチで復興が行われている」

そう言えば、小説でもファーム王国が長きにわたり戦争をしており、ちょうどソフィー様が産まれた時は、ファーム王国が劣勢だったとき。ソフィー様だけでも、そう思った国王が家臣に頼み、国外に逃がしたのだが、その家臣がこの国に赤ちゃんだったソフィー様を捨てたのよね。

それでたまたま見つけた男爵に拾われ、育てられたって訳。ただ、高級そうな産着を着ていたから、きっと高貴な身分の子供だろう、いつか本当の親が現れたら、たっぷりお礼を貰おうと言う最低な理由で拾ったらしい。

おっと話はそれてしまった。という事は、ポレスティレイ王国は既に滅んでいるのよね?

「お父様、それならどうして滅亡したはずのポレスティレイ王国の毒が、ソフィー様に使われたのですか?」

「それは分からない。もしかしたら、ポレスティレイ王国の生き残りが、この国に紛れ込んでいるのかもしれないな!」

「公爵、この毒はポレスティレイ王国でも、上流貴族や王族にのみ受け継がれていたもの様ですよ。そのため、解毒剤の作り方は乗っていても、毒自体の作り方はどの本にも一切乗っておりません。それに、グレム王国に敗北した時に、王族や上流貴族たちは皆処刑されたか自害した様です。この毒を作り出すなんて、不可能なはずでは…」

「確かに学院長殿の言う通りだ。でも、実際その毒が使われたという事は、この毒を作る事が出来る人間が存在すると言う訳だ」

そう言うと、座り込んでしまったお父様。陛下も学院長先生も難しい顔をしている。

「とにかく、男爵家の使用人を徹底的に調べろ。この毒をソフィー嬢に飲ませられるのは、男爵家の使用人以外考えられないだろう。それから、焼け跡も引き続き調査を行う様、徹底させよう」

「そうだな!まさかこんな不可解な事件が起こるなんて…」

お父様と陛下がまた頭を抱えている。

その時だった。
「解毒剤が出来たぞ。これを早くソフィー嬢に飲ませるんだ!」

グラディス先生が、解毒剤を持ってこちらにやって来た。

「それでは、私たちは解毒剤を持ってソフィー様の元に向かいます!」

急いでソフィー様の元へと向かおうとしたのだが

「待てミレニア。私たちも一緒に行くよ。学院長殿、グラディス殿、君たちも一緒に来て欲しい」

お父様の指示で、なぜか全員でソフィー様の元に向かう事になった。

病院に着くと、一目散にソフィー様の元へと向かう。私達だけでなく、お父様や陛下まで来た事に、かなり驚いているソフィー様の家族たち。

彼らを無視し、ソフィー様の元へと急いだ。

「父上、なぜあなたがここにいるのですか?」

陛下の登場に、驚いている王太子。そりゃそうだ、本来なら男爵令嬢の病室に、陛下がいるなんて考えられない。

「マシュー、話しは後だ。とにかく、ソフィー嬢に解毒剤を飲ませよう」

陛下の指示で、早速注射器で解毒剤を流し込む。これで目覚めてくれたら良いのだけれど…

祈るような気持ちで待つ。どれくらい待っただろう。すると、ゆっくりと瞼が上がり、意識を取り戻したソフィー様。

「あら?ここは?」

周りから歓喜の声が上がる。嬉しくてソフィー様に抱き着こうとしたのだが、王太子に先を越されてしまった。

「ソフィー、目が覚めたんだね!本当に良かった!」

ギューギューソフィー様を抱きしめる王太子。

「マシュー様、ここは何処ですか?まあ、陛下や公爵様まで!」

完全にパニックになっているソフィー様をよそに、全くソフィー様から離れようとしない王太子。

「解毒剤が効いたという事は、やっぱりグラディス殿が言った通り、ポレスティレイ王国の毒が使われていたという事で間違いはなさそうだな…」

ぽつりと呟いたお父様。その後、落ち着いたソフィーから、昨日の状況を聞きだす事にした。ソフィーの話では、いつも通り家族で食事をした後、自室で本を読んでいたのだが、急に眠気に襲われたのでそのままベッドに入って休んだとの事。そして気が付いたら、病室だったらしい。

「なるほど、それじゃあ眠気に襲われた以外、特に変わった様子はなかったという事だね」

「はい、ありませんでした」

「とにかく後はこちらで調査をするから、特にミレニア、お前はこれ以上首を突っ込む事を禁止する。いいな」

そう言い切ったお父様。まるで私が勝手に暴走して、色々と調べるとでも言いたそうね。でも、そうするつもりだったのだけれど…

「聞いているのかミレニア」

返事をしない私に、再度確認してくるお父様。

「わかったわ。でも、情報は共有したいから、何かわかったら教えてくれるかしら?」

「ああ、出来る限り報告しよう」

この出来る限りが気になるのよね…

「それじゃあ、私たちはそろそろ王宮に戻るよ。陛下がいつまでも王宮を離れる訳にはいかないからね」

お父様と陛下、さらに学院長先生とグラディス先生も病室を出て行った。

「ミレニア様が、私が毒を飲まされたと気づいて下さったのね。ありがとうございます!ミレニア様は私の命の恩人ですわ」

私の手をがっちり握ってお礼を言うソフィー様。

「いいえ、私だけの力ではありませんわ。色々な人が協力してくれたから、事なきを得たのです。それに、王太子殿下がずっとソフィー様に付き添っていたのよ。この病室を準備してくれたのも、王太子殿下ですし」

「まあ、マシュー様が。マシュー様、私の為に色々とありがとうございます!」

「別に大したことはしていない。とにかく、今はゆっくり休んで早く元気になって欲しい」

頬を赤らめながらお礼を言うソフィー様に、これまた頬を赤らめている王太子。これはまたいい感じね。

「それじゃあ、ソフィー様の意識も戻った事だし、私たちは帰るわ。あなた達、しっかりソフィー様の護衛をお願いね」

「はい、お任せください、お嬢様」

護衛騎士に声を掛け、私とクラウド様も病室を後にした。ちなみに軽傷だったソフィー様の義家族たちは、ホテルに滞在する事になったとの事で、既に姿はなかった。

「ソフィー様の意識が戻ってよかったですわ」

「本当にね。でも、ポレスティレイ王国という国が気になるね。25年前に滅んだ国の毒が、なぜソフィー嬢に使われていたのか…」

確かにクラウド様の言う通りだ。そもそも、小説にはそんな王国は出てこなかったはずだ。とにかくソフィー様が王女だと分かるまで後3ヶ月!それまでは何としても、ソフィー様を守らないと!
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