もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi

文字の大きさ
32 / 48

第32話:貴族会議の行方~ブラック視点~

しおりを挟む
ユリアが公爵家に来てから、1ヶ月が過ぎた。俺は貴族学院を休学し、毎日忙しい日々を過ごしている。魔術師たちも毎日の様にやって来てユリアの様子を見ていくが、一向に目覚める気配はない。

魔術師の話では、俺たちはもちろんユリアの魔力も、いたって普通だった様だ。

俺は時間が許す限り、ユリアの傍にいる。母上もしょっちゅうユリアの様子を見に来ては、話しかけている。

「ユリア、おはよう。今日はちょっと王宮に行ってくるね」

ユリアのおでこに口づけをし、父上と共に王宮へと向かった。ユリアをこんな目に合わせた張本人、伯爵家の人間を断罪するための準備をしているのだ。あの家宅捜索で、数々の証拠が明るみになった。

どうやらユリアは両親が亡くなった8歳から、月に1回ものペースで治癒魔法を掛けさせられていたという事が判明した。我が国では治癒魔法を使う場合、必ず医師の健康チェックが義務付けられている。また、最低でも一度治癒魔法を使ったら、1年以上は間を開けなければいかないと言う法律も存在するのだ。

ちなみに俺や母上、姉上がユリアに治癒魔法を掛けた件だが、一応医師がいたという事で、今回は大目に見てもらった。

どうやらユリアは両親が借金を残して死んだという、伯爵の大嘘に騙され、必死に命を削りながら伯爵家に大金を落としていた様だ。そのお金で豪遊していた伯爵たち。本当に腹ただしい。

さらに伯爵の執務室を徹底的に調べ上げた結果、ユリアの両親を事故に見せかけて殺した証拠も出て来た。本当にどうしようもない奴らだ。

王宮に着くと、既にたくさんの貴族が集まっていた。そう、今日は貴族たちに伯爵家が行った罪について説明する事になっているのだ。一応侯爵以上には話をしてあるが、今日は全貴族に話をする事になっているのだ。


「皆の者、今日集まってもらったのは他でもない。1ヶ月前、パラスティ伯爵家の一同が逮捕された件について説明したいと思っている。まずはこの資料に目を通してくれ」

貴族たちに事前に作っておいた資料を配った。

「これは…なんと恐ろしい。ユリア嬢は病気ではなく、伯爵によって命を吸い上げられていただと?」

「治癒魔法は命を削る魔法、それを当時8歳の子供に7年以上も強要していただなんて。なんて恐ろしい事なんだ。その上元伯爵夫妻を事故に見せかけて殺すだなんて…」

「それでユリア嬢は、大丈夫なのですか?」

「はい、今ギリギリのところで命を取り留めている状況です。ただ…意識が戻りませんが…」

貴族の問いかけに答えた。確か彼は、ユリアの友人の父親だったな…

「皆様、聞いて下さい。今回の件ですが、数ヶ月前からサンディオ公爵からユリア嬢の置かれている状況を含め、伯爵の悪事を聞いておりました。ただ…決定的な証拠がないからという理由で、私は公爵の訴えを退け続けました。公爵から訴えがあった時点で私が真剣に取り組んでいれば、ユリア嬢が命を落とすこともなかったはずです。全て私の責任です…」

王太子殿下がそう呟くと、頭を下げたのだ。

「殿下、どういう事ですか?ブラック殿の話では、ユリア嬢は生きているのですよね。でも、殿下の話では命を落としたとの事ですが」

「ユリア嬢は一度命を落としたんだ。そんな中、ブラック殿とサンディオ公爵夫人、さらに我妻王太子妃が治癒魔法を掛けたのです。それで再び心臓は動き出したのですが、予断を許さない状況で」

「そうだったのですね。それにしても一度命を落とした人間が、治癒魔法で生き返る事なんてあるのでしょうか?」

「王宮魔術師の話では、その様な事はないとの事です。ただ、何らの奇跡が起きたのだと考えています。とにかく今回の件は、私の責任でもあるのです。二度とこのような事が起こらないためにも、人命がかかっている時は、たとえ決定的証拠がなくても、家宅捜索を行う事が出来るという事にしたいと考えております。それで皆様の考えをお聞きしたいのですが」

どうやら王太子殿下は、今回の件を非常に反省している様で、今後に生かすべく貴族たちに真意を問う様だ。

「殿下の意見に賛成です。今回の件の一番の被害者はユリア嬢です。二度と彼女の様な人間を生み出さないためにも、人命優先で行くべきです」

「私もそう思います。実は私も、元伯爵夫妻の事故の件には、疑問を抱いていたのです」

「ユリア嬢の病気についても、私の娘はずっと疑問を抱いておりました」

「うちの娘もです。今もユリア嬢の事をとても心配しています。こういった小さな声を拾える様な機関があるといいですな」

ユリアの友人たちの家を中心に、どんどんとアイデアが出てくる。その後も活発に意見が飛び交い、最終的に貴族で構成された貴族たちの声を拾う機関を作るという事で話がまとまったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

全部私が悪いのです

久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。 姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。 世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。 *全18話完結となっています。 *大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。 *後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。 *この作品は他誌にも掲載中です。

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】殿下は私を溺愛してくれますが、あなたの“真実の愛”の相手は私ではありません

Rohdea
恋愛
──私は“彼女”の身代わり。 彼が今も愛しているのは亡くなった元婚約者の王女様だけだから──…… 公爵令嬢のユディットは、王太子バーナードの婚約者。 しかし、それは殿下の婚約者だった隣国の王女が亡くなってしまい、 国内の令嬢の中から一番身分が高い……それだけの理由で新たに選ばれただけ。 バーナード殿下はユディットの事をいつも優しく、大切にしてくれる。 だけど、その度にユディットの心は苦しくなっていく。 こんな自分が彼の婚約者でいていいのか。 自分のような理由で互いの気持ちを無視して決められた婚約者は、 バーナードが再び心惹かれる“真実の愛”の相手を見つける邪魔になっているだけなのでは? そんな心揺れる日々の中、 二人の前に、亡くなった王女とそっくりの女性が現れる。 実は、王女は襲撃の日、こっそり逃がされていて実は生きている…… なんて噂もあって────

3大公の姫君

ちゃこ
恋愛
多くの国が絶対君主制の中、3つの大公家が政治を担う公国が存在した。 ルベイン公国の中枢は、 ティセリウス家。 カーライル家。 エルフェ家。 この3家を筆頭に貴族院が存在し、それぞれの階級、役割に分かれていた。 この話はそんな公国で起きた珍事のお話。 7/24 完結致しました。 最後まで読んで頂きありがとうございます! サイドストーリーは一旦休憩させて頂いた後、ひっそりアップします。 ジオラルド達のその後など気になるところも多いかと思いますので…!

処理中です...