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第17話:こんなに幸せでいいのかしら?
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「ブラック様、ありがとうございます。もうお腹いっぱいですわ」
「もう食べないのかい?ゼリーもあるよ。とにかくたくさん食べて」
「本当にもうお腹がいっぱいで。ごめんなさい、私、病気のせいで食が細くなっていて…」
「病気か…分かったよ。あまり無理して食べるのも良くないからね。さあ、そろそろ教室に戻ろうか。俺が送っていくよ」
そう言うと、私を抱きかかえたブラック様。さすがに申し訳ない。
「ブラック様、教室には1人で…」
「俺がこうしたいんだ。頼む、どうか俺に出来る事をさせてくれ。それから、その…君の事をユリアと呼んでもいいかな?ユリア嬢だと、なんだか距離がある様な気がしていやなんだ」
「もちろんですわ。ぜひ呼んでください!」
「ありがとう、ユリア」
ブラック様がそう呟くと、それはそれは嬉しそうに笑ったのだ。その瞬間、鼓動が早くなるのを感じた。私、やっぱりブラック様の事が好きなのね。でも…決して結ばれる事のない恋。
それでももう少しだけ、ブラック様の傍にいたい…ついそんな事を考えてしまう。
「ブラック様、送って頂きありがとうございました」
「礼なんていらないよ。帰りも迎えに来るから、教室で待っていて欲しい」
「帰りは…」
「ドリンクも飲んで欲しいし。それじゃあ」
さすがに申し訳ないから断ろうと思ったのだが、断る前に去って行ってしまった。
「ユリア、よかったわね。ブラック様に送ってもらって。それにしてもブラック様、昨日から随分と積極的ね。何かあったのかしら?」
友人たちが私たちの元にやって来たのだ。
「みんな、さっきはごめんね。今日はあなた達と食事をする番だったのに」
「いいのよ、よく考えてみたら、私たちはクラスが一緒なのだから、休み時間に話しも出来るし。だから昼食の時は、ブラック様に譲る事にしようって、さっきも皆で話していたの」
「そうだったのね。色々と気にかけてくれてありがとう。あなた達は、私の最高の友人よ。私、本当に貴族学院に入学出来てよかったって思っているの。たとえ私の命が尽きても、ずっと私の友達でいてくれる?」
「当たり前じゃない!ずっと友達よ」
そう言って抱きしめてくれる友人達。温かくて柔らかい。ブラック様とはまた違った温もりがある。学院に入院するまでは、本当に1人ぼっちだった。でも今は、沢山の大切な人たちが私の周りにいてくれる。それが嬉しくてたまらない。
望んではダメだと分かっている、それでもあと少しだけ皆と一緒に過ごしたいと願ってしまうのだ。少し前までは、死ぬことなんて怖くない、むしろ早く両親に会いたいと思っていたのに、今は少しでも生きたいと思ってしまうのだ。
人間というものは、色々と欲が出てくるものだ。でも、あまり望みすぎるのも良くないわよね。今はただ、今ある幸せがこの命が尽きるまでずっと続く事を祈る事にしよう。
放課後、約束通りブラック様が教室までお迎えに来てくださった。
「ユリア、お待たせ。さあ、行こうか?歩けるかい?」
「はい、ブラック様の作って下さったドリンクのお陰で、少し体が軽いのです。それじゃあ皆、また明日」
「ええ、明日。ブラック様、ユリアの事、よろしくお願いします」
私を心配して待っていてくれた友人たちが、ブラック様に頭を下げている。本当に優しい友人達だ。
そんな友人たちに会釈をすると、私の手を握りゆっくり歩きだしたブラック様。私の歩調に合わせて、ゆっくり歩いてくれる。
テラスに着くと、すぐにジュースを準備してくれた。
「ブラック様、いつもいつもありがとうございます」
「何度も言っているが、礼を言われることは何もしていない。それよりも、家では食事を摂れているのかい?その…もし困っていることがあるなら、どうか俺に話して欲しい」
真っすぐ私を見つめるブラック様。困っている事?
「特に困っている事はありませんわ。むしろ学院に通わせていただいている事を、感謝しているくらいです。私は居候の身…厄介者でしかありませんから。それでも学院にこれば、こうやってブラック様や友人たちが私を支えて下さいます。それが嬉しくてたまらないのです」
本来なら私は何も望んではいけない存在。両親が残した借金も、きっとまだ返しきれていないだろう。それでも私をあの屋敷に置いて下さった叔父様や叔母様には、感謝している。まあ、扱いは酷いけれどね…
「君って子は…」
なぜか今にも泣きそうな顔のブラック様に、強く抱きしめられたのだ。一体どうしたのだろう?よくわからず、首をコテンとかしげた。
「ごめん、急に抱きしめたりして。ちょっと急用を思い出したんだ。そろそろ帰ろう。馬車まで送るよ。やはり君は、あまり歩かない方がいいからね」
ブラック様が私を抱きかかえ、馬車へと向かう。私、自分で歩けるのだけれど。それでもこうやって気を使って抱っこしてくれるブラック様の優しさが嬉しくて、つい甘えてしまう。ブラック様の腕の中は、温かくて気持ちいい。
子供の頃、お父様に抱っこされていた時の事を思い出すわ。もしかしたら、ブラック様にお父様が乗り移って…て、そんな訳ないわよね。
「もう食べないのかい?ゼリーもあるよ。とにかくたくさん食べて」
「本当にもうお腹がいっぱいで。ごめんなさい、私、病気のせいで食が細くなっていて…」
「病気か…分かったよ。あまり無理して食べるのも良くないからね。さあ、そろそろ教室に戻ろうか。俺が送っていくよ」
そう言うと、私を抱きかかえたブラック様。さすがに申し訳ない。
「ブラック様、教室には1人で…」
「俺がこうしたいんだ。頼む、どうか俺に出来る事をさせてくれ。それから、その…君の事をユリアと呼んでもいいかな?ユリア嬢だと、なんだか距離がある様な気がしていやなんだ」
「もちろんですわ。ぜひ呼んでください!」
「ありがとう、ユリア」
ブラック様がそう呟くと、それはそれは嬉しそうに笑ったのだ。その瞬間、鼓動が早くなるのを感じた。私、やっぱりブラック様の事が好きなのね。でも…決して結ばれる事のない恋。
それでももう少しだけ、ブラック様の傍にいたい…ついそんな事を考えてしまう。
「ブラック様、送って頂きありがとうございました」
「礼なんていらないよ。帰りも迎えに来るから、教室で待っていて欲しい」
「帰りは…」
「ドリンクも飲んで欲しいし。それじゃあ」
さすがに申し訳ないから断ろうと思ったのだが、断る前に去って行ってしまった。
「ユリア、よかったわね。ブラック様に送ってもらって。それにしてもブラック様、昨日から随分と積極的ね。何かあったのかしら?」
友人たちが私たちの元にやって来たのだ。
「みんな、さっきはごめんね。今日はあなた達と食事をする番だったのに」
「いいのよ、よく考えてみたら、私たちはクラスが一緒なのだから、休み時間に話しも出来るし。だから昼食の時は、ブラック様に譲る事にしようって、さっきも皆で話していたの」
「そうだったのね。色々と気にかけてくれてありがとう。あなた達は、私の最高の友人よ。私、本当に貴族学院に入学出来てよかったって思っているの。たとえ私の命が尽きても、ずっと私の友達でいてくれる?」
「当たり前じゃない!ずっと友達よ」
そう言って抱きしめてくれる友人達。温かくて柔らかい。ブラック様とはまた違った温もりがある。学院に入院するまでは、本当に1人ぼっちだった。でも今は、沢山の大切な人たちが私の周りにいてくれる。それが嬉しくてたまらない。
望んではダメだと分かっている、それでもあと少しだけ皆と一緒に過ごしたいと願ってしまうのだ。少し前までは、死ぬことなんて怖くない、むしろ早く両親に会いたいと思っていたのに、今は少しでも生きたいと思ってしまうのだ。
人間というものは、色々と欲が出てくるものだ。でも、あまり望みすぎるのも良くないわよね。今はただ、今ある幸せがこの命が尽きるまでずっと続く事を祈る事にしよう。
放課後、約束通りブラック様が教室までお迎えに来てくださった。
「ユリア、お待たせ。さあ、行こうか?歩けるかい?」
「はい、ブラック様の作って下さったドリンクのお陰で、少し体が軽いのです。それじゃあ皆、また明日」
「ええ、明日。ブラック様、ユリアの事、よろしくお願いします」
私を心配して待っていてくれた友人たちが、ブラック様に頭を下げている。本当に優しい友人達だ。
そんな友人たちに会釈をすると、私の手を握りゆっくり歩きだしたブラック様。私の歩調に合わせて、ゆっくり歩いてくれる。
テラスに着くと、すぐにジュースを準備してくれた。
「ブラック様、いつもいつもありがとうございます」
「何度も言っているが、礼を言われることは何もしていない。それよりも、家では食事を摂れているのかい?その…もし困っていることがあるなら、どうか俺に話して欲しい」
真っすぐ私を見つめるブラック様。困っている事?
「特に困っている事はありませんわ。むしろ学院に通わせていただいている事を、感謝しているくらいです。私は居候の身…厄介者でしかありませんから。それでも学院にこれば、こうやってブラック様や友人たちが私を支えて下さいます。それが嬉しくてたまらないのです」
本来なら私は何も望んではいけない存在。両親が残した借金も、きっとまだ返しきれていないだろう。それでも私をあの屋敷に置いて下さった叔父様や叔母様には、感謝している。まあ、扱いは酷いけれどね…
「君って子は…」
なぜか今にも泣きそうな顔のブラック様に、強く抱きしめられたのだ。一体どうしたのだろう?よくわからず、首をコテンとかしげた。
「ごめん、急に抱きしめたりして。ちょっと急用を思い出したんだ。そろそろ帰ろう。馬車まで送るよ。やはり君は、あまり歩かない方がいいからね」
ブラック様が私を抱きかかえ、馬車へと向かう。私、自分で歩けるのだけれど。それでもこうやって気を使って抱っこしてくれるブラック様の優しさが嬉しくて、つい甘えてしまう。ブラック様の腕の中は、温かくて気持ちいい。
子供の頃、お父様に抱っこされていた時の事を思い出すわ。もしかしたら、ブラック様にお父様が乗り移って…て、そんな訳ないわよね。
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