2 / 48
第2話:待ちに待った貴族学院の入学式を迎えました
しおりを挟む
翌日、相変わらず体調が悪く、体中あちこちが痛い。それでも朝早く起きて、洗濯や掃除を済ませる。そして厨房に行き、食料を頂く。料理人たちも私の事を嫌っている為、極力短時間の滞在で済ませている。
少し多めの食料を頂き、具沢山のスープを作った。栄養満点なスープだ。両親が生きていた時は、伯爵令嬢として何不自由ない暮らしをしていた為、最初は着替えも出来ずに苦労したが、今では何でも自分で出来る様になった。
私ってやればできる子なのだ。
基本的に用事がない限り部屋から出る事は禁止されている為、最低限の家事を済ませると部屋で過ごす。というよりも、私の場合長年魔力を提供しすぎて、常に魔力不足。あまり激しく動く事が出来ない。
それでも本を読んだり、お勉強をして過ごす。私はこれでもお勉強をする事が好きなのだ。貴族学院では、沢山お勉強をしたいと考えている。さすがの叔父様も、あまりにも見すぼらしい格好だと伯爵家が恥をかくと考えたのか、制服やカバン、靴、教科書など、貴族学院で必要な物は一通りそろえてくれた。
“疫病神でしかないお前にこんな金を使うのは勿体ないが、致し方ない!”
そう言って怒ってはいたが…
あぁ、早く貴族学院の入学式にならないかしら?でも、この制服も、どれくらい袖を通せるかしら?私の命の灯は、すでに消えかかっているのだ。それでも私は、残された時間を目いっぱい楽しもうと思っている。もちろん、笑顔で。
そんな事を考えながら、指折り貴族学院の入学式の日を待つ。そしてついに、待ちに待った入学式の日を迎えた。
真新しい制服に袖を通し、真っ白になってしまった髪を丁寧にとく。髪が白くなってしまった以外は、見た目は普通…よね?よし、大丈夫だ。
部屋から出ると、鋭い目つきで私を睨みつけている従姉妹のカルディアが目に入った。彼女は私と同い年。一緒に入学する予定になっているのだ。
「相変わらずみすぼらしい女ね。いい、私とあなたは赤の他人なの!絶対に私に話し掛けないで頂戴よ。あなたみたいなのと従姉妹だなんて、本当に恥ずかしいわ!」
そう吐き捨て、さっさと歩いて行ってしまった。カルディアは私を毛嫌いしている。私もカルディアには随分と意地悪をされている為、頼まれても絡むつもりはない。
おっと、無駄な事を考えている時間はない。私も早く学院に行かないと!急いで門に向かうと、どうやら私の為に馬車が準備されている様だ。
「ユリア、お前は一応伯爵令嬢だ。本来ならお前なんかの為に馬車なんか出したくないところだが、致し方ない!いいか、絶対に貴族学院では要らぬことを言うなよ。貴族学院に入る前にくたばってしまえばよかったのに…」
「本当よね。でもこんな女でも、使い道があるのですから、いいではありませんか?ギリギリまでこき使いましょう」
私を虫けらでも見るような目で言葉を吐き捨てる、叔父様と叔母様。この家の人たちは、皆私の事を嫌っているのだ。それがやっぱり悲しくて、つい俯きそうになる。
ダメよ、笑顔でいないと。
「申し訳ございません。貴族学院に通わせていただけること、とても感謝しておりますわ。それでは行って参ります」
彼らに笑顔を作り、そのまま馬車に乗り込んだ。
「何なの、あの女!私の事をバカにして!」
なぜか顔を真っ赤にして怒っている叔母様。私は別にバカにしてはいないのだが…屋敷から帰ったら、また殴られるかしら?でも、もう殴られるのも慣れているし、問題ないわ。それよりも今日は、ブラック様に6年ぶりに会える日。楽しみだわ。
そもそも馬車なんて乗ったのは何年ぶりかしら?両親が亡くなってから1年くらいはお茶会などに参加させてもらっていたが、残りの6年はほとんど外に出してもらえなかったのだ。
その為久しぶりに見た王都の街並みが新鮮でたまらない。あら?あんなお店が出来たのね。あぁ、あのお店、お母様とよく通っていたわね。懐かしいわ。
つい昔の事を思い出してしまう。あの頃は本当に幸せだったな…
気が付くと涙が溢れそうになっていた。ダメよ!泣いては!必死に涙をぬぐい、笑顔を作る。どんな時でも笑顔で。それがお母様との約束なのだ。それになぜだか笑顔でいると、お母様が天国で喜んでくれている様な気がして、心が温かくなるのだ。
しばらく進むと、立派な学院が見えて来た。あそこが貴族学院なのね。
我が国では15歳からの2年間、貴族学院に通う事が、全貴族や王族に義務付けられている。ただ、家庭の事情(特にお金や結婚)などの理由で入学はしたが通わないという貴族もいる。私もきっと半年くらい通ったら、もう通わせてもらえなくなるだろう。あの人たちの性格上、いつも最初だけなのだ。
でもきっと後半年も生きられないだろうけれど。
少し多めの食料を頂き、具沢山のスープを作った。栄養満点なスープだ。両親が生きていた時は、伯爵令嬢として何不自由ない暮らしをしていた為、最初は着替えも出来ずに苦労したが、今では何でも自分で出来る様になった。
私ってやればできる子なのだ。
基本的に用事がない限り部屋から出る事は禁止されている為、最低限の家事を済ませると部屋で過ごす。というよりも、私の場合長年魔力を提供しすぎて、常に魔力不足。あまり激しく動く事が出来ない。
それでも本を読んだり、お勉強をして過ごす。私はこれでもお勉強をする事が好きなのだ。貴族学院では、沢山お勉強をしたいと考えている。さすがの叔父様も、あまりにも見すぼらしい格好だと伯爵家が恥をかくと考えたのか、制服やカバン、靴、教科書など、貴族学院で必要な物は一通りそろえてくれた。
“疫病神でしかないお前にこんな金を使うのは勿体ないが、致し方ない!”
そう言って怒ってはいたが…
あぁ、早く貴族学院の入学式にならないかしら?でも、この制服も、どれくらい袖を通せるかしら?私の命の灯は、すでに消えかかっているのだ。それでも私は、残された時間を目いっぱい楽しもうと思っている。もちろん、笑顔で。
そんな事を考えながら、指折り貴族学院の入学式の日を待つ。そしてついに、待ちに待った入学式の日を迎えた。
真新しい制服に袖を通し、真っ白になってしまった髪を丁寧にとく。髪が白くなってしまった以外は、見た目は普通…よね?よし、大丈夫だ。
部屋から出ると、鋭い目つきで私を睨みつけている従姉妹のカルディアが目に入った。彼女は私と同い年。一緒に入学する予定になっているのだ。
「相変わらずみすぼらしい女ね。いい、私とあなたは赤の他人なの!絶対に私に話し掛けないで頂戴よ。あなたみたいなのと従姉妹だなんて、本当に恥ずかしいわ!」
そう吐き捨て、さっさと歩いて行ってしまった。カルディアは私を毛嫌いしている。私もカルディアには随分と意地悪をされている為、頼まれても絡むつもりはない。
おっと、無駄な事を考えている時間はない。私も早く学院に行かないと!急いで門に向かうと、どうやら私の為に馬車が準備されている様だ。
「ユリア、お前は一応伯爵令嬢だ。本来ならお前なんかの為に馬車なんか出したくないところだが、致し方ない!いいか、絶対に貴族学院では要らぬことを言うなよ。貴族学院に入る前にくたばってしまえばよかったのに…」
「本当よね。でもこんな女でも、使い道があるのですから、いいではありませんか?ギリギリまでこき使いましょう」
私を虫けらでも見るような目で言葉を吐き捨てる、叔父様と叔母様。この家の人たちは、皆私の事を嫌っているのだ。それがやっぱり悲しくて、つい俯きそうになる。
ダメよ、笑顔でいないと。
「申し訳ございません。貴族学院に通わせていただけること、とても感謝しておりますわ。それでは行って参ります」
彼らに笑顔を作り、そのまま馬車に乗り込んだ。
「何なの、あの女!私の事をバカにして!」
なぜか顔を真っ赤にして怒っている叔母様。私は別にバカにしてはいないのだが…屋敷から帰ったら、また殴られるかしら?でも、もう殴られるのも慣れているし、問題ないわ。それよりも今日は、ブラック様に6年ぶりに会える日。楽しみだわ。
そもそも馬車なんて乗ったのは何年ぶりかしら?両親が亡くなってから1年くらいはお茶会などに参加させてもらっていたが、残りの6年はほとんど外に出してもらえなかったのだ。
その為久しぶりに見た王都の街並みが新鮮でたまらない。あら?あんなお店が出来たのね。あぁ、あのお店、お母様とよく通っていたわね。懐かしいわ。
つい昔の事を思い出してしまう。あの頃は本当に幸せだったな…
気が付くと涙が溢れそうになっていた。ダメよ!泣いては!必死に涙をぬぐい、笑顔を作る。どんな時でも笑顔で。それがお母様との約束なのだ。それになぜだか笑顔でいると、お母様が天国で喜んでくれている様な気がして、心が温かくなるのだ。
しばらく進むと、立派な学院が見えて来た。あそこが貴族学院なのね。
我が国では15歳からの2年間、貴族学院に通う事が、全貴族や王族に義務付けられている。ただ、家庭の事情(特にお金や結婚)などの理由で入学はしたが通わないという貴族もいる。私もきっと半年くらい通ったら、もう通わせてもらえなくなるだろう。あの人たちの性格上、いつも最初だけなのだ。
でもきっと後半年も生きられないだろうけれど。
129
あなたにおすすめの小説
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる