悲劇の公爵令嬢に転生したはずなのですが…なぜかヒーローでもある王太子殿下に溺愛されています

Karamimi

文字の大きさ
上 下
38 / 55

第38話:あの女とご対面です

しおりを挟む
「ここが私たちのクラスの様ですね。リリアナ様と同じクラスで、嬉しいですわ。さあ、入りましょう」

 カーラに腕を引かれ、教室へと入っていく。既にたくさんのクラスメイト達が、教室でおしゃべりしていた。

 多分この中に、イザベルがいるはず。そう思って辺りを見渡したのだが、あら?イザベルがいないわ。同じクラスのはずなのだけれど…

 その時だった。

「皆様、おはようございます。今日からどうぞよろしくお願いいたします」

 可愛らしい声が、教室中に響き渡ったのだ。こんな可愛らしい声の主は、誰かしら?ゆっくり後ろを振り返ると、そこにいたのは…

 間違いない、イザベルだ。この子、こんな可愛らしい声をしていたの?それに桃色の髪に水色の瞳、今まで二次元でしか見たことがなかったけれど、三次元で見ると、可愛さが爆発している。

 これがヒロインの力なの?なんて可愛らしい子なの?この美しさなら、男はイチコロだろう。

 きっとクリス様も、今頃頬を赤らめて…はいなさそうだ。

 そういえば漫画でも、イザベルの美しさになびく素振りは見せていなかった。ただ、イザベルの言う事(マーデンの嘘)を信じて、婚約者でもあるリリアナを責め立ててはいたけれどね。とはいえ、きっと最後は、イザベルと結婚して幸せに暮らしたのだろう。

 そう考えると、やっぱり私はこのままクリス様の傍にいてもいいのか悩んでしまう。この人は、結局リリアナを見捨てた人なのだ。でも…

 それでも私は、この3年クリス様と過ごしたことで、彼を愛してしまったのだ。そう簡単に切り替えられるほど、私の心は単純じゃない。

 こんな事なら、最初から婚約をしない方向で進めればよかったわ。リリアナはクリス様を好きだった。だからリリアナの為にクリス様と結ばれた方がいいだなんて、安易な考えを持っていたばかりに、今私自身が苦しむことになるだなんて…

「リリアナ、どうしたのだい?悲しそうな顔をして。リリアナの席はこっちだよ。さあ、座って」

 私の様子に気が付いたクリス様が、席に連れて行ってくれ、座らせてくれた。今は優しいクリス様も、いずれ親友の嘘に騙され、私を悪者にするのだろう…そう思うと、胸がずきずき痛む。

「リリアナ様、顔色がよろしくありませんわ。もしかして体調がすぐれないのですか?これは大変、すぐに医務室に向かいましょう」

「カーラ嬢、勝手な事はしないでくれ。リリアナ、体調が悪かったのだね。気が付かなくてごめんね。すぐに医務室へ…」

「お2人ともお気遣いいただき、ありがとうございます。私は平気ですわ。そろそろ先生もいらっしゃるでしょうから、席に着きましょう」

「ですが…」

「ありがとう、カーラ。本当に私は大丈夫よ。どうか気にしないで」

「分かりましたわ…」

 まだ心配そうなカーラだが、席に着いた。そのタイミングで、先生がやって来たのだ。私ったらダメね、これからイザベルとの戦いが始まるというのに。弱気になってどうするの?

 このままだと、あの女にまた出し抜かれてしまうわ。そう、あの女に…

 チラリとイザベルの方を見ると、物凄い形相で睨んでいたのだが、目が合った瞬間、すぐに笑顔を向けたのだ。あの女、既に私を敵として認定したのだろう。今の形相を見て、確信した。

 そう、もう既に戦いの火ぶたは切って落とされたのだ。あの女はきっと、近いうちに私の評判を下げるため、色々と仕掛けてくるはずだ。私だって、あんな女には絶対負けるつもりはない。

 私自身の幸せの為にも、まずはあの女を叩き潰すことに専念しないと。

 そんな事を考えているうちに、先生の話がいつの間にか終わっていた。

「リリアナ、帰ろう。今日は疲れただろう?王宮で昼食を食べた後、2人でのんびり過ごそう」

「クリス様、お気持ちは嬉しいのですが、今日は公爵家で母が私の帰りを待っております。ですので、今日はこのまま屋敷に帰りますわ」

 家に帰って、もう一度ストーリーを思い出したいのだ。それになんだか今は、クリス様と一緒にいたくない。

「でも…」

「お初に目にかかります。あなた様がこの国の王太子殿下のクリス様ですね。イザベル・ルミリオンと申します。私、ずっと領地で生活をしていて、あまり王都の事は詳しくないのです。どうか色々と教えてくださいね」

 私達の間に入り込んできたのは、イザベルだ。さすがイザベル、早速クリス様に取り入ろうと話しかけてきたわね。相変わらず非常識極まりない。クリス様は王太子だ、通常殿下呼びをするのが普通。それなのに、クリス様と呼ぶだなんて…

 あまりにも非常識っぷりを心配したリリアナが、漫画ではその点を指摘するのだが…もちろん私は、そんな事はしない。この女に関わると、ろくなことがないのだ。

 現にリリアナが指摘した瞬間、大げさなくらい泣いて周りに同情を求めていたものね…

 すっとイザベルから離れようとした時だった。

「ルミリオン侯爵家の令嬢、イザベル嬢だね。確か体が弱く、空気の綺麗な領地でずっと生活をしていたと聞いた。ただ…いくら領地で生活をしていたからと言って、貴族としての最低限の知識は身に着けなかったのかい?僕はこれでも、王太子なのだが…」

 困った顔のクリス様。あら?漫画では一度もイザベルに指摘しなかったクリス様が、今指摘した?もしかして、私が指摘しなかったからかしら?

 ビックリしてクリス様の方を見た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました

神村 月子
恋愛
 貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。  彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。  「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。  登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。   ※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

処理中です...