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第37話:物語スタートです
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翌日、真新しい制服に袖を通し、鏡の前に立つ。そこにはリリアナが映っていた。何一つ悪い事をしていないのに、地獄に叩き落された悲劇の公爵令嬢、リリアナ。漫画の世界では、いつも悲しそうな顔をしていた彼女。
どうかこの世界では、幸せになって欲しい。私が前世で大好きだったキャラ。今日から物語がスタートすると思うと、涙が込みあげてくる。
「大丈夫よ、リリアナ。あなたは私が必ず幸せにして見せるから…だからもう、悲しそうな顔はしないで」
鏡に映るリリアナに向かって、話し掛けた。まあ、リリアナは私なのだが、どうしても自分の顔を見ると、あの悲劇的な運命を背負ったリリアナを思い出してしまうのだ。
どこかリリアナという人物が別の人物に感じてしまう自分がいる。この何とも不思議な気持ちは、前世の記憶が蘇って3年経った今も、時々感じるのだ。
「お嬢様、そろそろ貴族学院に向かわないと、遅刻してしまいますわ」
いけない、私ったらまた物思いにふけってしまったわ。急いで、部屋を出て馬車に乗り込んだ。見慣れた街並みを進んでいく馬車。
きっと漫画のリリアナも、胸弾ませながら貴族学院に向かったのだろう。それが悲劇の始まりとも知らずに…
しばらく進むと、立派な貴族学院が見えて来た。間違いないわ、物語の舞台にもなった、貴族学院。今日から本当に、物語が始まるのね。
漫画で何度も見た貴族学院を目の前にしたことで、実感がかなり湧いて来た。私、本当にあの悪女、イザベルと戦えるのかしら?
“リリアナ、さっさと私の為に消えなさい”
ニヤリと笑ったイザベルの顔と共に、このセリフが脳裏をよぎった。よくイザベルが呟いていたセリフだ。このセリフを聞くたびに、私はものすごく腹を立てていたのよね。
あまりにもリリアナが可哀そうで、何度涙したか…
今日、いよいよその悪女と対面する、そう思うと、急に足がすくんでしまったのだ。御者がドアを開けてくれたのだが、体が動かない。どうしよう…
その時だった。
「リリアナ、おはよう。どうしたのだい?馬車から降りてこないから、心配で様子を見に来たんだけれど…」
馬車に乗り込んできたのは、クリス様だ。
「何でもありませんわ。ちょっと考え事をしておりまして。クリス様、おはようございます。もしかして、私の事を待っていて下さっていたのですか?」
「ああ、もちろんだよ。君は僕の婚約者だ。貴族学院には色々な人間がいる。君に嫉妬心を向ける者もいるかもしれないからね。リリアナ、歩けるかい?僕が抱っこして、ホールに連れて行ってあげようか?」
抱っこしてホールまで連れて行くですって?さすがにそれは恥ずかしすぎる。
「大丈夫ですわ。さあ、参りましょう」
急いで立ち上がると、馬車から降りた。
そして2人でホールへと向かう。すると…
「おはようございます、リリアナ様。今日からよろしくお願いいたしますわ」
私の元にやって来たのは、カーラだ。すっかり明るくなったカーラが、元気に挨拶をしてくれた。
「カーラ、急に走り出さないでくれ。おはようございます、クリス殿下、リリアナ嬢、今日からよろしくお願いします」
後ろからやって来たのは、カシス様だ。カシス様はカーラの事を、本当に大切に思ってくれている様で、婚約を結んでからは、時間が許す限りカーラと一緒にいるらしい。カーラもそんなカシス様を、なんだかんだ言って受け入れている。
「おはようございます、カーラ、カシス様。今日からよろしくお願いします」
ちなみにカシス様は、漫画には一切出てこなかったキャラだ。まさかそんなキャラが、私たちの輪の中にいるのだから、人生どうなるか分からない。きっと私だって、このストーリーを変える事が出来るはず。
そう思っている。
なんだかんだ言って、4人で仲良くホール向かい、それぞれ席に着く。右隣にはクリス様、左隣にはカーラが座っている。このホールのどこかにイザベルがいるはずなのだが…
一体どこにいるのかしら?
キョロキョロと辺りを見渡すが、イザベルらしき人物は見当たらない。
「リリアナ様、誰か探しているのですか?」
「いいえ、何でもないわ」
どうやら近くにはいない様ね。でも、イザベルと私、クリス様、カーラ、それにマーデン様は皆同じクラス。多分爵位的に考えて、カシス様も同じクラスだろう。そう、主要の登場人物は、皆同じクラスなのだ。
「リリアナ様、入学式が終わりましたわよ。リリアナ様」
「リリアナ、どうしたのだい?ずっと何か考え事をしていただろう?僕の新入生の挨拶だって、聞いていなかった様だし」
「ごめんなさい、もう式が終わったのですね。それでは、教室に向かいましょう」
私ったら、また考え事をしてしまったわ。
気を取り直して、皆で教室へと向かう。きっと教室には、イザベルがいるだろう。
そう思うと、なんだか緊張してきた。
どうかこの世界では、幸せになって欲しい。私が前世で大好きだったキャラ。今日から物語がスタートすると思うと、涙が込みあげてくる。
「大丈夫よ、リリアナ。あなたは私が必ず幸せにして見せるから…だからもう、悲しそうな顔はしないで」
鏡に映るリリアナに向かって、話し掛けた。まあ、リリアナは私なのだが、どうしても自分の顔を見ると、あの悲劇的な運命を背負ったリリアナを思い出してしまうのだ。
どこかリリアナという人物が別の人物に感じてしまう自分がいる。この何とも不思議な気持ちは、前世の記憶が蘇って3年経った今も、時々感じるのだ。
「お嬢様、そろそろ貴族学院に向かわないと、遅刻してしまいますわ」
いけない、私ったらまた物思いにふけってしまったわ。急いで、部屋を出て馬車に乗り込んだ。見慣れた街並みを進んでいく馬車。
きっと漫画のリリアナも、胸弾ませながら貴族学院に向かったのだろう。それが悲劇の始まりとも知らずに…
しばらく進むと、立派な貴族学院が見えて来た。間違いないわ、物語の舞台にもなった、貴族学院。今日から本当に、物語が始まるのね。
漫画で何度も見た貴族学院を目の前にしたことで、実感がかなり湧いて来た。私、本当にあの悪女、イザベルと戦えるのかしら?
“リリアナ、さっさと私の為に消えなさい”
ニヤリと笑ったイザベルの顔と共に、このセリフが脳裏をよぎった。よくイザベルが呟いていたセリフだ。このセリフを聞くたびに、私はものすごく腹を立てていたのよね。
あまりにもリリアナが可哀そうで、何度涙したか…
今日、いよいよその悪女と対面する、そう思うと、急に足がすくんでしまったのだ。御者がドアを開けてくれたのだが、体が動かない。どうしよう…
その時だった。
「リリアナ、おはよう。どうしたのだい?馬車から降りてこないから、心配で様子を見に来たんだけれど…」
馬車に乗り込んできたのは、クリス様だ。
「何でもありませんわ。ちょっと考え事をしておりまして。クリス様、おはようございます。もしかして、私の事を待っていて下さっていたのですか?」
「ああ、もちろんだよ。君は僕の婚約者だ。貴族学院には色々な人間がいる。君に嫉妬心を向ける者もいるかもしれないからね。リリアナ、歩けるかい?僕が抱っこして、ホールに連れて行ってあげようか?」
抱っこしてホールまで連れて行くですって?さすがにそれは恥ずかしすぎる。
「大丈夫ですわ。さあ、参りましょう」
急いで立ち上がると、馬車から降りた。
そして2人でホールへと向かう。すると…
「おはようございます、リリアナ様。今日からよろしくお願いいたしますわ」
私の元にやって来たのは、カーラだ。すっかり明るくなったカーラが、元気に挨拶をしてくれた。
「カーラ、急に走り出さないでくれ。おはようございます、クリス殿下、リリアナ嬢、今日からよろしくお願いします」
後ろからやって来たのは、カシス様だ。カシス様はカーラの事を、本当に大切に思ってくれている様で、婚約を結んでからは、時間が許す限りカーラと一緒にいるらしい。カーラもそんなカシス様を、なんだかんだ言って受け入れている。
「おはようございます、カーラ、カシス様。今日からよろしくお願いします」
ちなみにカシス様は、漫画には一切出てこなかったキャラだ。まさかそんなキャラが、私たちの輪の中にいるのだから、人生どうなるか分からない。きっと私だって、このストーリーを変える事が出来るはず。
そう思っている。
なんだかんだ言って、4人で仲良くホール向かい、それぞれ席に着く。右隣にはクリス様、左隣にはカーラが座っている。このホールのどこかにイザベルがいるはずなのだが…
一体どこにいるのかしら?
キョロキョロと辺りを見渡すが、イザベルらしき人物は見当たらない。
「リリアナ様、誰か探しているのですか?」
「いいえ、何でもないわ」
どうやら近くにはいない様ね。でも、イザベルと私、クリス様、カーラ、それにマーデン様は皆同じクラス。多分爵位的に考えて、カシス様も同じクラスだろう。そう、主要の登場人物は、皆同じクラスなのだ。
「リリアナ様、入学式が終わりましたわよ。リリアナ様」
「リリアナ、どうしたのだい?ずっと何か考え事をしていただろう?僕の新入生の挨拶だって、聞いていなかった様だし」
「ごめんなさい、もう式が終わったのですね。それでは、教室に向かいましょう」
私ったら、また考え事をしてしまったわ。
気を取り直して、皆で教室へと向かう。きっと教室には、イザベルがいるだろう。
そう思うと、なんだか緊張してきた。
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