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第34話:すっかり忘れていました
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喜んでいるクリス様に、ゆっくり近づいたカーラ。
そして
「殿下、ありがとうございます。ですが私は、今後もリリアナ様との関係は変わりませんわ。それから私、公爵夫人になる事が決まりましたの。リリアナ様の右腕として、今後はリリアナ様を支えられる様に今まで以上に精進して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
そう言うと、クリス様に頭を下げたのだ。
「君にリリアナを支えてもらわなくても構わないよ。リリアナは、僕がしっかり守るからね」
「そうはおっしゃいましても、やはり女性ならではの悩みもあるでしょうし。それに来年からは、貴族学院もございます。学院内では殿下よりも、令嬢でもある私が傍にいた方が、リリアナ様も安心できるでしょう」
「貴族学院では、僕がずっとリリアナの傍にいるから、君は傍にいなくてもいいよ!あそこはとても危険な場所なんだ。君なんかに任せてはおけない」
「それはどういう意味ですか?貴族学院は、とても安全なところですわよ。ただ…嫉妬に狂った愚か者が現れないとも限りませんので、その時は私が全力でお守りいたしますわ」
「だから、リリアナを守るのは、僕の役目だと言っているだろう」
貴族学院か…
この2年、あまりにも平和すぎて忘れかけていたけれど、来年には私たちは、ついに貴族学院での生活が始まるのだ。そして悪役腹黒ヒロインのイザベルが登場するのだ。
きっと今のカーラなら、イザベルの誘惑に惑わされる事はないだろう。でも…
ちらりとクリス様の方を見る。今は私を大切にしてくれているクリス様も、物語が始まれば、私の言う事など信じてくれず、イザベルやマーデン様の言う事を信じてしまうのだろう。
そう考えると、胸がズキリと痛んだ。私はこの2年で、すっかりクリス様の事が好きになってしまった。少し嫉妬深いところはあるけれど、それでも私の事を大切にしてくれるクリス様。いつも当たり前の様に笑い合い、辛い王妃教育も彼が傍にいてくれるから耐えられる。
きっと漫画の世界のリリアナも、そんな思いでいたのだろう。この関係は、貴族学院に入ってからも変わらない。そう信じていたのだろう。
でも現実は…
リリアナはどんな思いで亡くなっていったのだろう…クリス様はある意味、誰よりも残酷だ。こんなにもリリアナを大切にしていたのに、イザベルが現れたらあっさりリリアナを捨ててしまわれるのだから…
私、本当にこの人といて、幸せになれるのかしら?一番の推しだったリリアナに転生して、私の手で私自身を幸せにする!漫画のリリアナの無念を晴らす、そう誓ったのだけれど…
「リリアナ、どうしてそんなに悲しそうな顔をしているのだい?何か辛い事があったのかい?」
「リリアナ様、申し訳ございません。リリアナ様は、私達の言い争いが苦手でしたね。私ったら、ついむきになってしまって」
「そうだったね、リリアナ。ごめんね。つい僕もむきになってしまったよ。もしかして貴族学院の話が出たから、不安になったのかい。大丈夫だよ、僕が必ず君を守るから。絶対に、何があっても」
クリス様がギュッと抱きしめてくれる。いつの間にか、この温もりが大好きになった。でも、今はなぜか、胸がチクリと痛む。
「リリアナ様が、まだ不安そうなお顔をしていらっしゃいますわ。殿下では不安ですわよね。大丈夫ですわ、私がリリアナ様を守りますから。私に任せて下さい」
「だから、君は出しゃばらなくてもいいのだよ!」
「クリス殿下こそ、少しお口を慎んだらいかがですか?」
「なんだと!」
また言い争いが始まった。この人たち、仲が良いのか悪いのかよくわからないわね。
でも…
なぜだろう、この2人のやり取りを見ていたら、心が落ち着く。
クリス様はともかく、今回はカーラが私の味方として付いていてくれている。正直カーラを巻き込みたくはないが、彼女はきっと私の味方でいてくれるだろう。
もちろん、私もただ見ている訳ではない。物語が始まり、イザベルが動き出し次第、私も応戦するつもりだ。漫画の世界の様に、あのような悲劇は絶対に起こさせない。
悲劇の公爵令嬢になんて、ならない。
でも今は、束の間の穏やかな時間を楽しみたい。
カーラやクリス様を見つめならが、そんな事を考えたのだった。
そして
「殿下、ありがとうございます。ですが私は、今後もリリアナ様との関係は変わりませんわ。それから私、公爵夫人になる事が決まりましたの。リリアナ様の右腕として、今後はリリアナ様を支えられる様に今まで以上に精進して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします」
そう言うと、クリス様に頭を下げたのだ。
「君にリリアナを支えてもらわなくても構わないよ。リリアナは、僕がしっかり守るからね」
「そうはおっしゃいましても、やはり女性ならではの悩みもあるでしょうし。それに来年からは、貴族学院もございます。学院内では殿下よりも、令嬢でもある私が傍にいた方が、リリアナ様も安心できるでしょう」
「貴族学院では、僕がずっとリリアナの傍にいるから、君は傍にいなくてもいいよ!あそこはとても危険な場所なんだ。君なんかに任せてはおけない」
「それはどういう意味ですか?貴族学院は、とても安全なところですわよ。ただ…嫉妬に狂った愚か者が現れないとも限りませんので、その時は私が全力でお守りいたしますわ」
「だから、リリアナを守るのは、僕の役目だと言っているだろう」
貴族学院か…
この2年、あまりにも平和すぎて忘れかけていたけれど、来年には私たちは、ついに貴族学院での生活が始まるのだ。そして悪役腹黒ヒロインのイザベルが登場するのだ。
きっと今のカーラなら、イザベルの誘惑に惑わされる事はないだろう。でも…
ちらりとクリス様の方を見る。今は私を大切にしてくれているクリス様も、物語が始まれば、私の言う事など信じてくれず、イザベルやマーデン様の言う事を信じてしまうのだろう。
そう考えると、胸がズキリと痛んだ。私はこの2年で、すっかりクリス様の事が好きになってしまった。少し嫉妬深いところはあるけれど、それでも私の事を大切にしてくれるクリス様。いつも当たり前の様に笑い合い、辛い王妃教育も彼が傍にいてくれるから耐えられる。
きっと漫画の世界のリリアナも、そんな思いでいたのだろう。この関係は、貴族学院に入ってからも変わらない。そう信じていたのだろう。
でも現実は…
リリアナはどんな思いで亡くなっていったのだろう…クリス様はある意味、誰よりも残酷だ。こんなにもリリアナを大切にしていたのに、イザベルが現れたらあっさりリリアナを捨ててしまわれるのだから…
私、本当にこの人といて、幸せになれるのかしら?一番の推しだったリリアナに転生して、私の手で私自身を幸せにする!漫画のリリアナの無念を晴らす、そう誓ったのだけれど…
「リリアナ、どうしてそんなに悲しそうな顔をしているのだい?何か辛い事があったのかい?」
「リリアナ様、申し訳ございません。リリアナ様は、私達の言い争いが苦手でしたね。私ったら、ついむきになってしまって」
「そうだったね、リリアナ。ごめんね。つい僕もむきになってしまったよ。もしかして貴族学院の話が出たから、不安になったのかい。大丈夫だよ、僕が必ず君を守るから。絶対に、何があっても」
クリス様がギュッと抱きしめてくれる。いつの間にか、この温もりが大好きになった。でも、今はなぜか、胸がチクリと痛む。
「リリアナ様が、まだ不安そうなお顔をしていらっしゃいますわ。殿下では不安ですわよね。大丈夫ですわ、私がリリアナ様を守りますから。私に任せて下さい」
「だから、君は出しゃばらなくてもいいのだよ!」
「クリス殿下こそ、少しお口を慎んだらいかがですか?」
「なんだと!」
また言い争いが始まった。この人たち、仲が良いのか悪いのかよくわからないわね。
でも…
なぜだろう、この2人のやり取りを見ていたら、心が落ち着く。
クリス様はともかく、今回はカーラが私の味方として付いていてくれている。正直カーラを巻き込みたくはないが、彼女はきっと私の味方でいてくれるだろう。
もちろん、私もただ見ている訳ではない。物語が始まり、イザベルが動き出し次第、私も応戦するつもりだ。漫画の世界の様に、あのような悲劇は絶対に起こさせない。
悲劇の公爵令嬢になんて、ならない。
でも今は、束の間の穏やかな時間を楽しみたい。
カーラやクリス様を見つめならが、そんな事を考えたのだった。
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