悲劇の公爵令嬢に転生したはずなのですが…なぜかヒーローでもある王太子殿下に溺愛されています

Karamimi

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第32話:初めて感じる気持ち~カーラ視点~

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「これは、私がリリアナ様に似合うと思い、買ったネックレスと同じデザインのものですわ」

 そう、リリアナ様の為に買ったネックレスと、同じデザインのものが入っていたのだ。ただ、宝石は私の瞳をイメージしてか、オレンジ色の物が付いている。

「このデザイン、とても気に入っていただろう?だから、君の瞳をイメージした、オレンジ色の宝石の物を買ったんだ。カーラ嬢の喜ぶ顔が見たくて」

 そう言って恥ずかしそうに笑ったカシス様。

 私の喜ぶ顔が見たい…その言葉が、胸に響き渡る。

 殿方なんて、皆一緒だと思っていた。リリアナ様の傍にいるために、適当な殿方と結婚しようと考えていた。

 でも…

「カシス様、こんな素敵なプレゼントを、ありがとうございます。私の宝物にしますわ。それから、私でよろしければ、今後ともよろしくお願いします」

 なぜだろう、緊張して何を話していいか分からなかったのに、今はすらすらと言葉が出る。それに、なぜだかカシス様といると、居心地がいい。

「ありがとう、カーラ嬢。日も暮れかけて来たし、そろそろ帰ろう。また転ぶといけないから、手を繋いでもいいかな?その…カーラ嬢はずっと兄上から酷い仕打ちを受けていたせいか、令息が苦手なのだろう?お茶会や夜会の時も、令息の前ではかすかに震えていたし」

 不安そうに私の方を見つめるカシス様。まさか私が震えていた事も、ご存じだっただなんて。本当に私の事を、よく見て下さっていたのね。

「正直申しますと、カシス様のおっしゃった通り、私は令息が苦手です。ですが、なぜでしょう。カシス様は、大丈夫ですわ」

 すっとカシス様の手を握った。温かくて大きな手。あんなに怖いと感じていた殿方の手なのに、なぜかとても心地いい。

「それは本当かい?よかった。正直今日、僕と出掛けるのが嫌なのではないかと、ずっと心配していたのだよ。僕は公爵令息だから、無理してきてくれたのだとしたら、申し訳ないなって。ずっとそう思っていて…」

「まあ、そんな心配をして下さっていたのですか?確かに最初は緊張してうまく話せませんでしたが、今はもう平気ですわ。今日はお誘いいただき、ありがとうございます。とても楽しかったですわ」

 最初はどうなるかと思ったが、今はなぜか心が温かいもので包まれているのだ。

 まさか私にも、こんな風に思える殿方が現れるだなんて。人生、何が起こるか分からないものだ。

 今後はカシス様との時間も、大切にしていきたい。そしていつか、カシス様と婚約出来たら。

 ついさっきまで心が重かったはずなのに、180度気持ちが変わるだなんて。きっとリリアナ様が、背中を押してくれたお陰だわ。

 リリアナ様も、私とカシス様の仲が上手くいった事を知れば、喜んでくださるだろう。もしかして、今頃こっそりどこから見ていたりして…

「カーラ嬢、なんだか嬉しそうな顔をしているね。君が嬉しそうだと、僕も嬉しいよ」

「何でもありませんわ。さあ、早く帰りましょう」

「そうだね。もう随分と薄暗くなってきたし。あの…もしカーラ嬢さえよかったら、昼食を摂ったホテルで、ディナーも食べていかないかい?もちろん、無理強いはしないけれど」

 少し恥ずかしそうにそう言ったカシス様。

「まあ、ディナーをですか?ぜひお供させていただきますわ。せっかくこうやって仲良くなれたのですから、もっとカシス様と、お話しがしたいと思っておりましたの」

「それは本当かい?嬉しいな。それじゃあ、早速行こうか」

 お昼はあんなにぎこちなかったのに、夜は時間が許す限り、めいっぱい話に花を咲かせたのだった。


 ※次回、リリアナ視点に戻ります。
 よろしくお願いします。
 ちなみに…
 心配性のリリアナは、丘の上でもしっかり2人の様子を見守っておりましたとさ(*^-^*)
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