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第31話:ずっと私の事を気にかけてくれていただなんて~カーラ視点~
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「あそこがリリアナ嬢が言っていた場所かな?海と街が夕日に照らされて、本当に綺麗だね」
丘の上まで来ると、目の前には王都の街と奥には海が広がっていた。そしてちょうど夕日で真っ赤に照らされている。
「本当にお綺麗ですね。王都にこんな素敵な場所があっただなんて…私、今まであまり屋敷から出たことがありませんでしたの。ですからこのような美しい景色があるだなんて、知りませんでしたわ」
「カーラ嬢はずっと、カルロス殿から酷い暴力や暴言を受けていたのだよね…ごめんね、あの時助けてあげられなくて…」
ポツリとカシス様が呟いたのだ。一体どういう意味だろう。
「実は僕、以前君が兄君から酷い暴言を吐かれているところを目撃したんだ。いてもたってもいられなくて、すぐに君たちの元に駆けつけたのだが…カルロス殿は、ただの兄妹喧嘩だと言ってね。でも、あの時のカーラ嬢の悲しそうな顔が、ずっと頭から離れなくて…」
そういえば昔、親切な殿方が助けてくれたことがあったわ。あの時の殿方は、カシス様だったのね。
「あの日以降、ずっと君の事が気になっていて。お茶会に参加すれば君に会えるかと思って参加していたのだけれど、中々会えなくてね。そんな中、カルロス殿が急に勉強の為、しばらく領地で暮すという話を聞いたんだ。それと同時に、今までほとんど公の場に姿を現さなかったカーラ嬢が、頻繁にお茶会などに現れる様になった。もしかして、リリアナ嬢が、君を助けてくれたのかい?」
「はい、王宮で行われていたお茶会で、私は兄とその友人たちに酷い事をされているところを、リリアナ様に助けていただきました。リリアナ様は、両親に兄の悪事を全て報告してくださったのです。その上、私と友達になって下さって…リリアナ様がいらっしゃるから、今の幸せがあるのです」
「やはり、リリアナ嬢が君を変えたのだね…僕はあのお茶会に、どうしても参加できなくて…カーラ嬢、僕は君が兄上から酷い事をされているのを目撃したにもかかわらず、助けられなくて本当に申し訳なく思っている。あの時僕が動いていたら、君はもっと早く、兄上から解放されたのに…」
「そんな…私、今思い出したのです。リリアナ様以外に、私を助けてくれた殿方の存在を。皆私が兄から虐められていても、見て見ぬふりをする人たちばかり。そんな中、あなた様は兄に抗議をして下さいましたね。私、あの時とても嬉しかったのです。ありがとうございました」
私が酷い事をされているのを見ていた令嬢や令息たちは、何人もいた。でも、誰もお兄様に苦言を呈してくれる人はいなかったのだ。そんな中、カシス様はお兄様に抗議をしてくれたのだ。
あの時の私には、それが嬉しくてたまらなかったのだ。私の為に、こうやって抗議をしてくれる人がいる、それだけで心が温かくなった。ただ、昔の事だったから、忘れてしまっていたが…
「いいや、僕はあの日、カーラ嬢を守る事が出来なかった。それが今でも悔しくてね。それになぜかあの日以降、僕は君が気になって仕方がなかったのだよ。君が社交界に積極的に出てきてくれる様になり、ミュースト侯爵夫妻が君の婚約者を探していると聞いて、居てもたってもいられなくて。それで、僕も立候補させてもらったんだ」
「それではカシス様は、私が兄に虐められているのを目撃してから、ずっと私の事を気にかけて下さっていたのですか?こんな私を?」
「こんな私だなんて、悲しい事を言わないでくれ。君はあの日から変わらず、可愛くてとても魅力的な令嬢だよ」
「カシス様、お世辞は結構ですわ。あの頃の私は、太っておりましたし、肌もボロボロで、お世辞にも可愛いとは言えませんでしたわ」
「そうかい?僕にはとても可愛らしい令嬢に見えたけれど。そんな令嬢が、あんなに悲しそうな顔をしていたのだから、胸が痛まない訳がない。僕の手で、彼女を笑顔にしたい、僕が守ってあげたい、ずっとそう思っていたのだよ。でも、リリアナ嬢に先を越されてしまったようだけれどね」
まさかカシス様が、私の事をそんな風に思って下さっていただなんて…なぜだろう、心の奥が、温かいもので包まれる様な、そんな感覚に襲われた。
「カーラ嬢、僕は口下手で、令嬢が何をすれば喜ぶのかもわからない、君が一番助けてほしかった時に、助けられなかった愚かな男だ。でも、カーラ嬢に対する想いだけは、誰にも負けない。どうかこれからは、僕に君を守らせてほしい。君の傍で、君の笑顔を守らせてほしいんだ。もし君さえよかったら、これからも僕とこうやって会ってくれるかい?」
そう言うと、ポケットから何かを取り出し、私に渡してきたのだ。これは一体何かしら?中を開けると…
丘の上まで来ると、目の前には王都の街と奥には海が広がっていた。そしてちょうど夕日で真っ赤に照らされている。
「本当にお綺麗ですね。王都にこんな素敵な場所があっただなんて…私、今まであまり屋敷から出たことがありませんでしたの。ですからこのような美しい景色があるだなんて、知りませんでしたわ」
「カーラ嬢はずっと、カルロス殿から酷い暴力や暴言を受けていたのだよね…ごめんね、あの時助けてあげられなくて…」
ポツリとカシス様が呟いたのだ。一体どういう意味だろう。
「実は僕、以前君が兄君から酷い暴言を吐かれているところを目撃したんだ。いてもたってもいられなくて、すぐに君たちの元に駆けつけたのだが…カルロス殿は、ただの兄妹喧嘩だと言ってね。でも、あの時のカーラ嬢の悲しそうな顔が、ずっと頭から離れなくて…」
そういえば昔、親切な殿方が助けてくれたことがあったわ。あの時の殿方は、カシス様だったのね。
「あの日以降、ずっと君の事が気になっていて。お茶会に参加すれば君に会えるかと思って参加していたのだけれど、中々会えなくてね。そんな中、カルロス殿が急に勉強の為、しばらく領地で暮すという話を聞いたんだ。それと同時に、今までほとんど公の場に姿を現さなかったカーラ嬢が、頻繁にお茶会などに現れる様になった。もしかして、リリアナ嬢が、君を助けてくれたのかい?」
「はい、王宮で行われていたお茶会で、私は兄とその友人たちに酷い事をされているところを、リリアナ様に助けていただきました。リリアナ様は、両親に兄の悪事を全て報告してくださったのです。その上、私と友達になって下さって…リリアナ様がいらっしゃるから、今の幸せがあるのです」
「やはり、リリアナ嬢が君を変えたのだね…僕はあのお茶会に、どうしても参加できなくて…カーラ嬢、僕は君が兄上から酷い事をされているのを目撃したにもかかわらず、助けられなくて本当に申し訳なく思っている。あの時僕が動いていたら、君はもっと早く、兄上から解放されたのに…」
「そんな…私、今思い出したのです。リリアナ様以外に、私を助けてくれた殿方の存在を。皆私が兄から虐められていても、見て見ぬふりをする人たちばかり。そんな中、あなた様は兄に抗議をして下さいましたね。私、あの時とても嬉しかったのです。ありがとうございました」
私が酷い事をされているのを見ていた令嬢や令息たちは、何人もいた。でも、誰もお兄様に苦言を呈してくれる人はいなかったのだ。そんな中、カシス様はお兄様に抗議をしてくれたのだ。
あの時の私には、それが嬉しくてたまらなかったのだ。私の為に、こうやって抗議をしてくれる人がいる、それだけで心が温かくなった。ただ、昔の事だったから、忘れてしまっていたが…
「いいや、僕はあの日、カーラ嬢を守る事が出来なかった。それが今でも悔しくてね。それになぜかあの日以降、僕は君が気になって仕方がなかったのだよ。君が社交界に積極的に出てきてくれる様になり、ミュースト侯爵夫妻が君の婚約者を探していると聞いて、居てもたってもいられなくて。それで、僕も立候補させてもらったんだ」
「それではカシス様は、私が兄に虐められているのを目撃してから、ずっと私の事を気にかけて下さっていたのですか?こんな私を?」
「こんな私だなんて、悲しい事を言わないでくれ。君はあの日から変わらず、可愛くてとても魅力的な令嬢だよ」
「カシス様、お世辞は結構ですわ。あの頃の私は、太っておりましたし、肌もボロボロで、お世辞にも可愛いとは言えませんでしたわ」
「そうかい?僕にはとても可愛らしい令嬢に見えたけれど。そんな令嬢が、あんなに悲しそうな顔をしていたのだから、胸が痛まない訳がない。僕の手で、彼女を笑顔にしたい、僕が守ってあげたい、ずっとそう思っていたのだよ。でも、リリアナ嬢に先を越されてしまったようだけれどね」
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そう言うと、ポケットから何かを取り出し、私に渡してきたのだ。これは一体何かしら?中を開けると…
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