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第30話:リリアナ様は本当に…~カーラ視点~
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食後2人で街を見て回ったが、やはり会話が弾むことはない。気まずい空気が流れる中
「次はどこに行こうか?カーラ嬢は、どこか行きたいところはあるかい?」
「えっと…私は、その…」
急にカシス様から話しを振られてしまった。
私はあまり王都の街に出たことがない。そもそも私は、リリアナ様と出会うまでは、屋敷からほとんど出たことがなかったのだ。そんな私が、行きたいところなんて提案できるわけがない。
きっとこんな私に、カシス様も呆れているだろう。
その時だった。
「リリアナ、いい加減にしないか。この様に盗み見など、悪趣味にもほどがある。いくらカーラ嬢が心配だからと言って、公爵令嬢の君が、尾行をするだなんて!」
“クリス様、静かにしてください。カーラに気づかれますわ。クリス様は王宮にいて下さいと、何度も申し上げたでしょう。それなのに、勝手についていらしたのはクリス様でしょう。せめて静かにしていてください”
「君を1人で街に行かせる訳にはいかないだろう。万が一何かあったら…て、カーラ嬢にカシス殿…」
私達の視線に気が付いたクリス殿下が、ポツリと呟いたのだ。どうやらリリアナ様は、私が心配すぎて私の様子をわざわざ見に来てくださった様だ。
「あの…違うのよ。今日は少し時間があったから、私たちも王都の街に出ようという話になって…その…」
申し訳なさそうに、リリアナ様が俯いている。
「リリアナ様、私の事を心配して来てくださったのですね。申し訳ございません。リリアナ様にまで心配をかけて…私、本当に駄目で…カシス様と何を話していいか分からなくて…きっとカシス様も、呆れていらっしゃっておりますわ」
「ぼ…僕は呆れてなんていないよ。僕の方こそ、カーラ嬢を楽しませられなくてごめんね。僕はその、口下手でうまく話しが出来なくて。令嬢が好きな物もわからなくて、どこに連れ行ったら喜ぶかもわからなくて。僕はカーラ嬢に、こんな顔をして欲しい訳ではないんだ」
「カシス様…」
唇を噛み、カシス様が俯いてしまった。彼なりに私を楽しませようと一生懸命考えて下さったのに、私は…申し訳なさから、私も俯いてしまう。
「カーラもカシス様も、元気を出してください。そうですわ、この先を少し進んだところに、丘があるのですが、そこから海が一望できるのですって。夕日に照らされた海は、とても綺麗だそうですわ。ぜひ2人で行ってみてください」
「その場所は、僕がリリアナだけに教えた秘密の場所なのに…」
「クリス様、けち臭い事を言わないで下さい!それからカシス様、カーラはその…色々とあって令息が苦手で…でも、根はとても優しくていい子なのです。どうかカーラの事を、よろしくお願いします」
「リリアナ嬢は、随分とカーラ嬢の事を大切に思っているのですね。あなた様の気持ちを踏みにじる様な事は、しませんから。カーラ嬢、せっかくリリアナ嬢が教えて下さったのです。僕と一緒に、丘に行きましょう」
「はい、あの…私でよければ喜んで」
「それでは、邪魔者は消えますわ。お2人とも、気を付けて行ってらっしゃいませ」
笑顔で手を振りながら去っていくリリアナ様。お忙しいのに、私の為に様子を見に来てくださるだなんて…
「リリアナ嬢は、よほどカーラ嬢の事を大切に思っているのだね。僕もリリアナ嬢に負けないくらい、カーラ嬢を大切に出来る様に頑張らないと…」
「えっ?今なんとおっしゃいましたか?」
「いや、何でもないよ。せっかくリリアナ嬢が教えてくれたのだ。早速行ってみよう。距離がある様だから、馬車で行こう」
「はい」
2人で馬車に乗り込み、丘を目指した。
「見て下さい、カシス様。お空が真っ赤に染まっていますわ。なんて綺麗なのでしょう。今日の昼食を頂いたホテルから見る景色も、とても綺麗でしたわね」
馬車の外から見える美しい夕日を見て、ついカシス様に声をかけてしまった。なぜだろう、リリアナ様の顔を見たら、なんだか勇気が出てきたのだ。
「本当に綺麗な夕日だね。今日の昼食の時のホテルの景色も、気に入ってくれていた様で嬉しいよ。カーラ嬢はその…そうやって笑っている姿、とても可愛いよ」
えっ?今私の事を、可愛いとおっしゃった?びっくりしてカシス様の方を見ると、恥ずかしそうに俯いていた。
なんだか私も恥ずかしくなって、俯いてしまう。ダメよ、せっかくリリアナ様が心配して様子を見に来てくださったのですもの。その上、お勧めの場所まで教えて下さって。
リリアナ様の為にも、勇気を出さないと。
そう思って顔を上げた時だった。ちょうど目的地の丘に着いたのだ。
「足元が少し不安定だから、ゆっくり降りた方がいいよ」
先に降りていたカシス様が、すっと私を支えてくれた。初めて握る殿方の手。大きくて温かい。以前の私なら、恐怖から震えていたはずなのに、なぜだろう…カシス様の手を握っても、恐怖を感じない。どれどころか、なんだか胸がドキドキするわ。
「きゃぁぁ」
「大丈夫かい?カーラ嬢」
「ええ、つまずいただけですので。お助けいただき、ありがとうございます」
変に緊張してしまっていたせいで、躓いて転びそうになったところを、カシス様に受け止めていただいたのだ。近い…近いわ、殿方とこんな至近距離で触れ合ったのは、初めてだわ。
増々心臓の音がうるさくなる。私の心臓、一体どうしてしまったのかしら?
「次はどこに行こうか?カーラ嬢は、どこか行きたいところはあるかい?」
「えっと…私は、その…」
急にカシス様から話しを振られてしまった。
私はあまり王都の街に出たことがない。そもそも私は、リリアナ様と出会うまでは、屋敷からほとんど出たことがなかったのだ。そんな私が、行きたいところなんて提案できるわけがない。
きっとこんな私に、カシス様も呆れているだろう。
その時だった。
「リリアナ、いい加減にしないか。この様に盗み見など、悪趣味にもほどがある。いくらカーラ嬢が心配だからと言って、公爵令嬢の君が、尾行をするだなんて!」
“クリス様、静かにしてください。カーラに気づかれますわ。クリス様は王宮にいて下さいと、何度も申し上げたでしょう。それなのに、勝手についていらしたのはクリス様でしょう。せめて静かにしていてください”
「君を1人で街に行かせる訳にはいかないだろう。万が一何かあったら…て、カーラ嬢にカシス殿…」
私達の視線に気が付いたクリス殿下が、ポツリと呟いたのだ。どうやらリリアナ様は、私が心配すぎて私の様子をわざわざ見に来てくださった様だ。
「あの…違うのよ。今日は少し時間があったから、私たちも王都の街に出ようという話になって…その…」
申し訳なさそうに、リリアナ様が俯いている。
「リリアナ様、私の事を心配して来てくださったのですね。申し訳ございません。リリアナ様にまで心配をかけて…私、本当に駄目で…カシス様と何を話していいか分からなくて…きっとカシス様も、呆れていらっしゃっておりますわ」
「ぼ…僕は呆れてなんていないよ。僕の方こそ、カーラ嬢を楽しませられなくてごめんね。僕はその、口下手でうまく話しが出来なくて。令嬢が好きな物もわからなくて、どこに連れ行ったら喜ぶかもわからなくて。僕はカーラ嬢に、こんな顔をして欲しい訳ではないんだ」
「カシス様…」
唇を噛み、カシス様が俯いてしまった。彼なりに私を楽しませようと一生懸命考えて下さったのに、私は…申し訳なさから、私も俯いてしまう。
「カーラもカシス様も、元気を出してください。そうですわ、この先を少し進んだところに、丘があるのですが、そこから海が一望できるのですって。夕日に照らされた海は、とても綺麗だそうですわ。ぜひ2人で行ってみてください」
「その場所は、僕がリリアナだけに教えた秘密の場所なのに…」
「クリス様、けち臭い事を言わないで下さい!それからカシス様、カーラはその…色々とあって令息が苦手で…でも、根はとても優しくていい子なのです。どうかカーラの事を、よろしくお願いします」
「リリアナ嬢は、随分とカーラ嬢の事を大切に思っているのですね。あなた様の気持ちを踏みにじる様な事は、しませんから。カーラ嬢、せっかくリリアナ嬢が教えて下さったのです。僕と一緒に、丘に行きましょう」
「はい、あの…私でよければ喜んで」
「それでは、邪魔者は消えますわ。お2人とも、気を付けて行ってらっしゃいませ」
笑顔で手を振りながら去っていくリリアナ様。お忙しいのに、私の為に様子を見に来てくださるだなんて…
「リリアナ嬢は、よほどカーラ嬢の事を大切に思っているのだね。僕もリリアナ嬢に負けないくらい、カーラ嬢を大切に出来る様に頑張らないと…」
「えっ?今なんとおっしゃいましたか?」
「いや、何でもないよ。せっかくリリアナ嬢が教えてくれたのだ。早速行ってみよう。距離がある様だから、馬車で行こう」
「はい」
2人で馬車に乗り込み、丘を目指した。
「見て下さい、カシス様。お空が真っ赤に染まっていますわ。なんて綺麗なのでしょう。今日の昼食を頂いたホテルから見る景色も、とても綺麗でしたわね」
馬車の外から見える美しい夕日を見て、ついカシス様に声をかけてしまった。なぜだろう、リリアナ様の顔を見たら、なんだか勇気が出てきたのだ。
「本当に綺麗な夕日だね。今日の昼食の時のホテルの景色も、気に入ってくれていた様で嬉しいよ。カーラ嬢はその…そうやって笑っている姿、とても可愛いよ」
えっ?今私の事を、可愛いとおっしゃった?びっくりしてカシス様の方を見ると、恥ずかしそうに俯いていた。
なんだか私も恥ずかしくなって、俯いてしまう。ダメよ、せっかくリリアナ様が心配して様子を見に来てくださったのですもの。その上、お勧めの場所まで教えて下さって。
リリアナ様の為にも、勇気を出さないと。
そう思って顔を上げた時だった。ちょうど目的地の丘に着いたのだ。
「足元が少し不安定だから、ゆっくり降りた方がいいよ」
先に降りていたカシス様が、すっと私を支えてくれた。初めて握る殿方の手。大きくて温かい。以前の私なら、恐怖から震えていたはずなのに、なぜだろう…カシス様の手を握っても、恐怖を感じない。どれどころか、なんだか胸がドキドキするわ。
「きゃぁぁ」
「大丈夫かい?カーラ嬢」
「ええ、つまずいただけですので。お助けいただき、ありがとうございます」
変に緊張してしまっていたせいで、躓いて転びそうになったところを、カシス様に受け止めていただいたのだ。近い…近いわ、殿方とこんな至近距離で触れ合ったのは、初めてだわ。
増々心臓の音がうるさくなる。私の心臓、一体どうしてしまったのかしら?
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