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第29話:やっぱり私はダメな人間です~カーラ視点~
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翌日、いつもより早く起きた私は、メイドたちに磨き上げられ、お母様が準備してくださったドレスに着替えた。
「そのドレス、とてもよくお似合いですよ。今日のお嬢様は、一段とお綺麗ですわ」
「私、本当に綺麗かしら?」
「ええ、もちろんですわ。お嬢様はとてもお美しいです」
笑顔で答えるメイドたち。鏡に映る自分を見る。すらりとした体、プルプルの肌にサラサラの髪の毛。一昔前までは、鏡に映る自分の姿を見るのが嫌で仕方がなかった。でも今は!
大丈夫よ、リリアナ様のお陰で、私は変われたのだ。きっと今日も、大丈夫。そう何度も自分に言い聞かせた。きっとリリアナ様は、私の事をとても心配してくださっているだろう。忙しい中、昨日わざわざ訪ねて来てくださったのだから。
リリアナ様を安心させるためにも、私がしっかりしないと。
「お嬢様、カシス様がいらっしゃいました」
「分かったわ、すぐに行くわね」
さあ、気合を入れていきましょう。
部屋から出ると、カシス様の元へと向かった。
「おはようございます、カシス様。本日はお誘いいただき、ありがとうございます」
令嬢らしく、カーテシーを決める。
「おはよう、カーラ嬢。僕の方こそ、今日は誘いに答えてくれてありがとう。早速行こうか」
穏やかで優しい表情のカシス様。とてもお優しそうな方なのだが、やはり男性と2人で出かけると思うと、なんだか怖い。
それでも怖がっている訳にはいかない、気を取り直して、2人で馬車に乗り込んだ。
まず向かった先は、宝石商のお店だ。立派な個室に通され、品のよさそうなマダムが対応してくれた。
「クラシックレス公爵令息様、よくいらっしゃいました。わざわざ足を運んでいただかなくても、私共が公爵家に参りましたのに」
「今日は彼女と一緒に、街を回りたくて来たんだ。ここの宝石は、品質もいいからね」
「まあ、あなた様は…」
「カーラ・ミューストと申します。よろしくお願いいたします」
「まあ、ミュースト侯爵家のご令嬢でしたか!失礼いたしました。夫人にはご贔屓にして頂いておりまして。ぜひ今後とも、よろしくお願いいたします」
私はあまり宝石に詳しくないため、アクセサリーなどはお母様が選んでいくれている。その為、マダムが私を知らなくて当然だ。
「早速宝石を見せてもらうよ。カーラ嬢、君はどんなものが好みなのだい?好きな物を選んでいいよ」
好きな物を選んでもいいと言われても…正直私は、宝石などにあまり興味がない。どれがいいかしら?
あら、このアクセサリー、とても素敵だわ。
「私、これがいいですわ。とても可愛らしいデザインで、気に入りました」
私が手に取ったのは、赤色の宝石があしらわれた、ネックレスだ。
「さすがカーラ様、お目が高いですわ。でも、どうしてルビーなのですか?あなた様の瞳の色に合わせて、サファイアなんていかがですか?それともクラシックレス公爵令息様の瞳の色に合わせて、エメラルドも素敵ですよ」
マダムが他の宝石を勧めてくれた。でも私は…
「この真っ赤なルビー、リリアナ様の瞳の色と同じですし、とてもお可愛らしいデザインなので、リリアナ様にプレゼントしたくて…」
「リリアナ様とは、カルソル公爵家のリリアナ様ですか?カーラ様は、お知り合いなのですか?」
「はい、私の大切なお友達なのです」
お友達、その言葉がなんだか嬉しい。
「まあ、そうだったのですね。お友達の分を先にお選びになるだなんて、なんてお優しい方なのでしょう。それでしたら、こちらにも沢山ルビーをあしらったものがございますよ」
なぜかマダムが、次々とルビーがあしらわれたアクセサリーを準備してくれた。なんて素敵なのかしら?結局リリアナ様へのプレゼント用に、いくつか購入し、その場を後にした。
て…私は何をしているのかしら?今日はカシス様とお出掛けをしていたのに。リリアナ様のものばかり買うだなんて。きっとカシス様は、気分が悪かった事だろう。
「あの…カシス様、先ほどはリリアナ様のものばかり買ってしまい、申し訳ございませんでした。せっかくあのような素敵なお店に連れてきていただいたのに…その…」
「僕の事は気にしなくていいよ。君が楽しんでくれたのだから。さあ、次は食事に行こう」
気を取り直して向かったお店は、上級貴族が利用するホテルでの食事だ。最上階の景色が奇麗な場所を、抑えてくれていた様だ。
さすが公爵令息様だ。お料理もどれもこれもとても美味しかった。ただ…緊張してしまい、何を話していいか分からないのだ。カシス様が色々と気を使って話を振ってくれるが、中々会話が続かない。
こんな時、リリアナ様なら色々と話題を振って話を盛り上げて下さるのだろう。でも、私は口下手で、リリアナ様の様に話をする事が出来ない。
せっかく綺麗な景色と美味しい食事を準備してくださったのに…私って本当にダメな人間ね。
きっとカシス様も、呆れている事だろう。
「そのドレス、とてもよくお似合いですよ。今日のお嬢様は、一段とお綺麗ですわ」
「私、本当に綺麗かしら?」
「ええ、もちろんですわ。お嬢様はとてもお美しいです」
笑顔で答えるメイドたち。鏡に映る自分を見る。すらりとした体、プルプルの肌にサラサラの髪の毛。一昔前までは、鏡に映る自分の姿を見るのが嫌で仕方がなかった。でも今は!
大丈夫よ、リリアナ様のお陰で、私は変われたのだ。きっと今日も、大丈夫。そう何度も自分に言い聞かせた。きっとリリアナ様は、私の事をとても心配してくださっているだろう。忙しい中、昨日わざわざ訪ねて来てくださったのだから。
リリアナ様を安心させるためにも、私がしっかりしないと。
「お嬢様、カシス様がいらっしゃいました」
「分かったわ、すぐに行くわね」
さあ、気合を入れていきましょう。
部屋から出ると、カシス様の元へと向かった。
「おはようございます、カシス様。本日はお誘いいただき、ありがとうございます」
令嬢らしく、カーテシーを決める。
「おはよう、カーラ嬢。僕の方こそ、今日は誘いに答えてくれてありがとう。早速行こうか」
穏やかで優しい表情のカシス様。とてもお優しそうな方なのだが、やはり男性と2人で出かけると思うと、なんだか怖い。
それでも怖がっている訳にはいかない、気を取り直して、2人で馬車に乗り込んだ。
まず向かった先は、宝石商のお店だ。立派な個室に通され、品のよさそうなマダムが対応してくれた。
「クラシックレス公爵令息様、よくいらっしゃいました。わざわざ足を運んでいただかなくても、私共が公爵家に参りましたのに」
「今日は彼女と一緒に、街を回りたくて来たんだ。ここの宝石は、品質もいいからね」
「まあ、あなた様は…」
「カーラ・ミューストと申します。よろしくお願いいたします」
「まあ、ミュースト侯爵家のご令嬢でしたか!失礼いたしました。夫人にはご贔屓にして頂いておりまして。ぜひ今後とも、よろしくお願いいたします」
私はあまり宝石に詳しくないため、アクセサリーなどはお母様が選んでいくれている。その為、マダムが私を知らなくて当然だ。
「早速宝石を見せてもらうよ。カーラ嬢、君はどんなものが好みなのだい?好きな物を選んでいいよ」
好きな物を選んでもいいと言われても…正直私は、宝石などにあまり興味がない。どれがいいかしら?
あら、このアクセサリー、とても素敵だわ。
「私、これがいいですわ。とても可愛らしいデザインで、気に入りました」
私が手に取ったのは、赤色の宝石があしらわれた、ネックレスだ。
「さすがカーラ様、お目が高いですわ。でも、どうしてルビーなのですか?あなた様の瞳の色に合わせて、サファイアなんていかがですか?それともクラシックレス公爵令息様の瞳の色に合わせて、エメラルドも素敵ですよ」
マダムが他の宝石を勧めてくれた。でも私は…
「この真っ赤なルビー、リリアナ様の瞳の色と同じですし、とてもお可愛らしいデザインなので、リリアナ様にプレゼントしたくて…」
「リリアナ様とは、カルソル公爵家のリリアナ様ですか?カーラ様は、お知り合いなのですか?」
「はい、私の大切なお友達なのです」
お友達、その言葉がなんだか嬉しい。
「まあ、そうだったのですね。お友達の分を先にお選びになるだなんて、なんてお優しい方なのでしょう。それでしたら、こちらにも沢山ルビーをあしらったものがございますよ」
なぜかマダムが、次々とルビーがあしらわれたアクセサリーを準備してくれた。なんて素敵なのかしら?結局リリアナ様へのプレゼント用に、いくつか購入し、その場を後にした。
て…私は何をしているのかしら?今日はカシス様とお出掛けをしていたのに。リリアナ様のものばかり買うだなんて。きっとカシス様は、気分が悪かった事だろう。
「あの…カシス様、先ほどはリリアナ様のものばかり買ってしまい、申し訳ございませんでした。せっかくあのような素敵なお店に連れてきていただいたのに…その…」
「僕の事は気にしなくていいよ。君が楽しんでくれたのだから。さあ、次は食事に行こう」
気を取り直して向かったお店は、上級貴族が利用するホテルでの食事だ。最上階の景色が奇麗な場所を、抑えてくれていた様だ。
さすが公爵令息様だ。お料理もどれもこれもとても美味しかった。ただ…緊張してしまい、何を話していいか分からないのだ。カシス様が色々と気を使って話を振ってくれるが、中々会話が続かない。
こんな時、リリアナ様なら色々と話題を振って話を盛り上げて下さるのだろう。でも、私は口下手で、リリアナ様の様に話をする事が出来ない。
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きっとカシス様も、呆れている事だろう。
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