悲劇の公爵令嬢に転生したはずなのですが…なぜかヒーローでもある王太子殿下に溺愛されています

Karamimi

文字の大きさ
上 下
27 / 55

第27話:リリアナ様がいれば私は何もいらないのだけれど…~カーラ視点~

しおりを挟む
「カーラ、今日も随分と令息たちに話し掛けられていたわね。さすが私の娘だわ」

「お母様、私が令息たちに声を掛けられるのは、リリアナ様のお陰ですわ。リリアナ様と仲良くさせていただいているからきっと、皆様私とも仲良くしてくださるのです」

 そう、全てはリリアナ様のお陰。王太子殿下の婚約者で、この国で3本の指に入るほどの大貴族、カルソル公爵家のご令嬢、リリアナ様。そんな彼女が私に目を掛けて下さっているからこそ、今私は貴族界で注目されているのだ。

 少し前までの私は、ろくでなしの兄から酷い暴力や暴言を受け、メイドたちに冷遇され、両親からも困った娘扱いをされていた。まさに、どん底の人生だったのだ。そんな私を救い出してくれたのが、リリアナ様なのだ。

 リリアナ様のお陰で私は、今とても幸せに生きている。ろくでなしの兄はいなくなり、意地悪だったメイドたちも皆クビになった。両親は私に優しくなったし、新しいメイドたちも私に尽くしてくれる。

 誰からも相手にされなかった根暗で小太りで、肌がボロボロだった私が、今や貴族界で注目されている令嬢になれたのは、全てリリアナ様のお陰なのだ。

 リリアナ様がいなかったら、きっと今頃私は、地を這う様な惨めな生活をしていただろう。本当にリリアナ様には感謝しかない。彼女の為ならたとえ火の中水の中!この命を捧げてもいいと考えているくらいだ。

 でも、なぜかリリアナ様は、私の幸せも願ってくれる心お優しい方なのだ。お茶会や夜会が不慣れな私を心配して、極力傍にいて下さるお優しいリリアナ様。

 今日もリリアナ様のドレス姿、本当に美しかったわ…

 でもリリアナ様の傍には、あの嫉妬深い男、クリス殿下がずっといるのだ。リリアナ様は本当に魅力的でお優しくて、非の打ち所がない程素敵な令嬢だ。そんな令嬢を放っておけないのも分かるが、いくら何でもベッタリ過ぎる。

 それになぜか、私に敵意をむき出しにしているのだ。王太子のくせに、器の小さな男で嫌になる。

 あんな器の小さな男、たとえ王太子でも私なら願い下げなのだが、心お優しいリリアナ様は、あんな男でも大切にしていらっしゃるのだ。

 なんて心が広くお優しい方なのだろう。まるで女神様の様なお方。

 私はそんなリリアナ様を一生支えたい、この命を懸けて!そう常々思っているのだ。リリアナ様の傍にいるためには、身分の高い男と結婚する必要がある。その為、興味のないお茶会や夜会に今、積極的に参加している。

 それもこれも、全てリリアナ様の為だ。

 でも、これといってよい男が見当たらない。どいつもこいつも子供臭くて嫌だ。それに何よりも、私は令息が苦手なのだ。きっとあのろくでなしの兄のせいだろう。兄とその友人たちに、日々酷い暴言と暴力を振るわれていたせいか、令息を見ると震えが止まらなくなるのだ。

 ダメよ、令息を見ただけで震えていては、リリアナ様をお守りする事なんて出来ないわ。そう常々思っているのだが、体が付いていかない。

「カーラ、今日も殿方から婚約申込書が届いているわよ。あなたもそろそろ婚約者を決めないといけないわね」

「そうだな、カーラはリリアナ嬢を支えたいのだろう?それなら、身分の高い令息の方がいいね。彼なんてどうかな?クラシックレス公爵家の嫡男、カシス殿だ。物腰柔らかで、とてもお優しい方だぞ」

 カシス様?そういえば最近、お茶会や夜会に行くと、必ず私に絡んでくる男がいたわ。確かその男が、カシス様だったわね。

 確かに優しそうな顔をしているが、やっぱり私は、令息が苦手なのだ。でも、この男なら身分的にも問題ないし。きっと向こうも、次期王太子妃でもあるリリアナ様と仲が良い私と結婚すれば、利益になると考えているのだろう。

「私、カシス様と婚約を…」

「見て、カーラ。カシス様がどうしてもカーラと2人で一度お会いしたいのですって。これはきっと、デートのお誘いね。あなた、一度デートに行ってみたら?」

「そうだな、カシス殿はクラシックレス公爵家の嫡男だ。クラシックレス公爵家といえば、リリアナ嬢の実家でもある、カルソル公爵家と肩を並べるほどの大貴族。直々にお誘いが来ているのなら、断る訳にはいかないな。よし、カーラ、行ってこい」

「お父様、そんな簡単におっしゃられないで下さい。私、殿方と2人でお出掛けだなんて、さすがに無理ですわ」

 私はまだ、殿方が怖いのだ。さすがに2人きりだなんて…

「大丈夫よ、カーラ。今のあなたは、とても可愛いのですもの。笑顔で相槌を打っていればいいのよ」

「そうだぞ、カーラ。早速クラシックレス公爵家に手紙を送っておこう。それにしても、クラシックレス公爵家といい、カルソル公爵家といい、カーラは随分身分の高い貴族に好かれるのだな」

「本当ね。さすが私の娘だわ」

 両親が呑気な事を言って笑っている。もう、他人事だと思って。

 どうしよう…殿方と2人きりで出かけるだなんて、私、大丈夫かしら?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました

神村 月子
恋愛
 貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。  彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。  「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。  登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。   ※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

処理中です...