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第24話:2人は仲が悪い様です
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「僕はリリアナを迎えに来たのだよ。ミュースト侯爵、夫人。せっかくリリアナの為に食事を準備して頂いたようですが、今日は連れて帰ります」
カーラの言葉に惑わされなかったのは、クリス様だ。私の腕を掴むと、そのまま引き寄せられた。
「クリス殿下、どうかその様な事はお気になさらないで下さい。殿下がわざわざお迎えにいらしたのです。それを殿下だけ帰らせようだなんて。カーラが申し訳ございません。ほら、カーラも謝りなさい」
「あら、私は何も悪い事はしておりませんわ。令嬢の家に勝手に押しかけて来た殿下が、非常識なのですわ」
カーラも負けじと、プイっとあちらの方向を向いている。この子、つい3ヶ月前まで、自信なさげに俯いていたのに。随分と強くなったわね。
ただ、ミュースト侯爵様は
「コラ、カーラ。本当に娘が申し訳ございません」
そう言って頭を下げていた。
「カーラ、その…今日はもう帰るわ。本当にごめんなさい。近いうちに必ず、埋め合わせをするわ。今度は我が家に遊びに来て。そうだわ、よかったら泊って行ってもらってもいいのよ。そうすれば、ゆっくり話が出来るでしょう?」
「それは本当ですか?夜通しリリアナ様と一緒に過ごせるだなんて、夢の様ですわ」
嬉しそうにカーラがほほ笑んだのだ。
「リリアナ、君は何を言っているのだい?ただでさえ忙しいのに、カーラ嬢をお泊りさせるだなんて。カーラ嬢、リリアナは毎日ハードな王妃教育を受けていて、クタクタなんだ。それなのに今日、時間を作って君に会いに来た。それだけで十分だろう?」
「お言葉ですがクリス殿下、王妃教育は、お昼で終わるときも多いと聞きましたわ。それをあなた様が、リリアナ様の傍にいたいからと言って、毎日夕食までリリアナ様に付き合わせているのですよね。それなら少しくらい、私に時間を譲って下さってもよろしいのではありませんか?独り占めはいけません、独り占めは!」
「何が独り占めはいけません!だ。リリアナは僕の婚約者なんだ。婚約者同士、仲を深めるのは当然だろう」
「確かに婚約者同士の交流は大切かもしれませんが、だからと言ってずっとリリアナ様を縛り付けるのはどうかと思いますわ。あまり束縛すると、リリアナ様に嫌われてしまいますわよ」
「僕のどこがリリアナを束縛しているというのだい?今日だって、君の家に行く事を許可したのに」
「それが束縛と言うのですわ。いくら婚約者だからといって、休みの日にまで口出ししてくるだなんて。それも令嬢でもある私の家にいらっしゃるだけですのに。王妃殿下になられるリリアナ様の場合、令嬢との繋がりは特に大切にするべきことです。違いますか?」
「確かに令嬢との繋がりは大切だが、それならお茶会で交流を深めれば十分だろう?それにリリアナは、王太子でもある僕の婚約者だ。リリアナを守るためにも、ある程度行動を制限するのは当然の事だ」
「それはどういう意味ですか?私がリリアナ様に、危害を加えるとでも思っていらっしゃるのですか?私はリリアナ様の為なら、この命を捧げてもいいと思っているほど、お慕いしております。万が一リリアナ様の身に何かありましたら、全力でお守りしますわ」
「リリアナは僕が守るから、君に守ってもらわなくても結構だ」
ものすごい勢いで言い争いを行う2人に、ミュースト侯爵も夫人も、口を開けて固まっている。私もあっけに取られてしまったが、そろそろ2人を止めないと。
「お2人とも落ち着いて下さい。とにかく、今日のところは帰りますわ」
“カーラ、本当にごめんなさい。今度必ず埋め合わせをするから。また手紙を書くわね”
これ以上2人を興奮させない様に、そっとカーラの耳元で呟いた。
“リリアナ様もお可哀そうに。殿下に縛り付けられて、身動きが取れにくいのですね。私が必ずリリアナ様をお助けいたしますわ”
“ありがとう、でも、私は大丈夫だから。クリス様には私から話しをしておくから。また今度、必ず家に遊びに来てね”
“ええ、もちろんですわ”
「さっきから何を2人でコソコソと話をしているのだい?さあ、リリアナ、もう帰ろう。ミュースト侯爵、夫人。お騒がせして申し訳ございませんでした。それでは失礼いたします」
「長い時間お世話になりました。とても楽しい時間を過ごせましたわ。カーラ、今日はありがとう。また今度ね」
「はい、また今度、殿下に邪魔されない様にこっそりと会いましょう」
「僕に邪魔されない様にとは、どういう意味かな?カーラ嬢、僕はこれでも王太子なのだが?」
「ええ、存じ上げておりますわ。でも、クリス殿下はとても心が広いとお伺いしております。私のちょっとした戯言など、お気になさらないでしょう」
そう言うと、満面の笑みを浮かべるカーラ。この子、強いわ…強すぎる。さすがのクリス様も、これ以上何も言えないだろう。
ただ、ミュースト侯爵夫妻は気が気ではない様で、カーラに怒っているが、当の本人はあまり気にしていない様だ。
「それでは失礼いたします」
気を取り直してミュースト侯爵夫妻とカーラに頭を下げると、そのまま部屋を出て行こうとしたのだが…
「私が門のところまでお見送りいたしますわ。さあ、行きましょう、リリアナ様」
私の腕をしっかり掴んだカーラが、嬉しそうに歩き出したのだ。隣でクリス様が何か言いたげだが、さっきカーラから言われた“クリス殿下はとても心が広い”の言葉を気にして、文句が言えないのだろう。
何とも気まずい空気の中、3人で門のところまでやって来た。
「カーラ、今日は本当にありがとう。とても楽しかったわ」
「私の方こそ、今日はお忙しい中遊びに来てくださり、ありがとうございます。この恋愛小説、ゆっくり読ませていただきますわ。それではまた今度、必ず私と会ってくださいね」
「ええ、もちろんよ。それじゃあね」
笑顔で手を振るカーラに挨拶をして、そのまま馬車に乗り込んだのだった。
カーラの言葉に惑わされなかったのは、クリス様だ。私の腕を掴むと、そのまま引き寄せられた。
「クリス殿下、どうかその様な事はお気になさらないで下さい。殿下がわざわざお迎えにいらしたのです。それを殿下だけ帰らせようだなんて。カーラが申し訳ございません。ほら、カーラも謝りなさい」
「あら、私は何も悪い事はしておりませんわ。令嬢の家に勝手に押しかけて来た殿下が、非常識なのですわ」
カーラも負けじと、プイっとあちらの方向を向いている。この子、つい3ヶ月前まで、自信なさげに俯いていたのに。随分と強くなったわね。
ただ、ミュースト侯爵様は
「コラ、カーラ。本当に娘が申し訳ございません」
そう言って頭を下げていた。
「カーラ、その…今日はもう帰るわ。本当にごめんなさい。近いうちに必ず、埋め合わせをするわ。今度は我が家に遊びに来て。そうだわ、よかったら泊って行ってもらってもいいのよ。そうすれば、ゆっくり話が出来るでしょう?」
「それは本当ですか?夜通しリリアナ様と一緒に過ごせるだなんて、夢の様ですわ」
嬉しそうにカーラがほほ笑んだのだ。
「リリアナ、君は何を言っているのだい?ただでさえ忙しいのに、カーラ嬢をお泊りさせるだなんて。カーラ嬢、リリアナは毎日ハードな王妃教育を受けていて、クタクタなんだ。それなのに今日、時間を作って君に会いに来た。それだけで十分だろう?」
「お言葉ですがクリス殿下、王妃教育は、お昼で終わるときも多いと聞きましたわ。それをあなた様が、リリアナ様の傍にいたいからと言って、毎日夕食までリリアナ様に付き合わせているのですよね。それなら少しくらい、私に時間を譲って下さってもよろしいのではありませんか?独り占めはいけません、独り占めは!」
「何が独り占めはいけません!だ。リリアナは僕の婚約者なんだ。婚約者同士、仲を深めるのは当然だろう」
「確かに婚約者同士の交流は大切かもしれませんが、だからと言ってずっとリリアナ様を縛り付けるのはどうかと思いますわ。あまり束縛すると、リリアナ様に嫌われてしまいますわよ」
「僕のどこがリリアナを束縛しているというのだい?今日だって、君の家に行く事を許可したのに」
「それが束縛と言うのですわ。いくら婚約者だからといって、休みの日にまで口出ししてくるだなんて。それも令嬢でもある私の家にいらっしゃるだけですのに。王妃殿下になられるリリアナ様の場合、令嬢との繋がりは特に大切にするべきことです。違いますか?」
「確かに令嬢との繋がりは大切だが、それならお茶会で交流を深めれば十分だろう?それにリリアナは、王太子でもある僕の婚約者だ。リリアナを守るためにも、ある程度行動を制限するのは当然の事だ」
「それはどういう意味ですか?私がリリアナ様に、危害を加えるとでも思っていらっしゃるのですか?私はリリアナ様の為なら、この命を捧げてもいいと思っているほど、お慕いしております。万が一リリアナ様の身に何かありましたら、全力でお守りしますわ」
「リリアナは僕が守るから、君に守ってもらわなくても結構だ」
ものすごい勢いで言い争いを行う2人に、ミュースト侯爵も夫人も、口を開けて固まっている。私もあっけに取られてしまったが、そろそろ2人を止めないと。
「お2人とも落ち着いて下さい。とにかく、今日のところは帰りますわ」
“カーラ、本当にごめんなさい。今度必ず埋め合わせをするから。また手紙を書くわね”
これ以上2人を興奮させない様に、そっとカーラの耳元で呟いた。
“リリアナ様もお可哀そうに。殿下に縛り付けられて、身動きが取れにくいのですね。私が必ずリリアナ様をお助けいたしますわ”
“ありがとう、でも、私は大丈夫だから。クリス様には私から話しをしておくから。また今度、必ず家に遊びに来てね”
“ええ、もちろんですわ”
「さっきから何を2人でコソコソと話をしているのだい?さあ、リリアナ、もう帰ろう。ミュースト侯爵、夫人。お騒がせして申し訳ございませんでした。それでは失礼いたします」
「長い時間お世話になりました。とても楽しい時間を過ごせましたわ。カーラ、今日はありがとう。また今度ね」
「はい、また今度、殿下に邪魔されない様にこっそりと会いましょう」
「僕に邪魔されない様にとは、どういう意味かな?カーラ嬢、僕はこれでも王太子なのだが?」
「ええ、存じ上げておりますわ。でも、クリス殿下はとても心が広いとお伺いしております。私のちょっとした戯言など、お気になさらないでしょう」
そう言うと、満面の笑みを浮かべるカーラ。この子、強いわ…強すぎる。さすがのクリス様も、これ以上何も言えないだろう。
ただ、ミュースト侯爵夫妻は気が気ではない様で、カーラに怒っているが、当の本人はあまり気にしていない様だ。
「それでは失礼いたします」
気を取り直してミュースト侯爵夫妻とカーラに頭を下げると、そのまま部屋を出て行こうとしたのだが…
「私が門のところまでお見送りいたしますわ。さあ、行きましょう、リリアナ様」
私の腕をしっかり掴んだカーラが、嬉しそうに歩き出したのだ。隣でクリス様が何か言いたげだが、さっきカーラから言われた“クリス殿下はとても心が広い”の言葉を気にして、文句が言えないのだろう。
何とも気まずい空気の中、3人で門のところまでやって来た。
「カーラ、今日は本当にありがとう。とても楽しかったわ」
「私の方こそ、今日はお忙しい中遊びに来てくださり、ありがとうございます。この恋愛小説、ゆっくり読ませていただきますわ。それではまた今度、必ず私と会ってくださいね」
「ええ、もちろんよ。それじゃあね」
笑顔で手を振るカーラに挨拶をして、そのまま馬車に乗り込んだのだった。
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