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第23話:クリス様が迎えに来ました
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「すっかり話し込んでしまったわ。私、そろそろ帰るわね」
気が付くと、もう日も暮れかけている。さすがに帰らないと。
「あら、もう少しよろしいではありませんか?夕食も我が家で食べて行ってください」
「でも、昼食も頂いたし。さすがに悪いわ。今度はぜひ私の家に遊びに来て。またお休みの日に、連絡を入れるわね」
「ですが、リリアナ様は王妃教育でお忙しいでしょう?次はいつお休みを頂けるか…リリアナ様さえよければ、どうか夕食を食べて行ってください」
確かにいつ次のお休みを頂けるか分からない。せっかくカーラと仲良くなったのだ。今日くらい少し遅くなってもいいか。
「分かったわ。それじゃあお言葉に甘えて、夕食も頂いていこうかしら」
「それは本当ですか?嬉しいですわ。それでは、夕食までゆっくりお話しを…」
「カーラお嬢様、お取込み中のところ、申し訳ございません。クリス殿下がお見えです」
「えっ?クリス殿下が?どうして我が家に?もしかして殿下…」
カーラが私の顔を見た。きっとクリス様は、私を迎えに来たのだろう…
「カーラ、ごめんなさい。きっとクリス様は、私を迎えに来たのだと思うわ…」
「私もそう思いますわ…それにしても、わざわざ令嬢の家に押しかけてくるだなんて…」
さすがのカーラもあきれ顔だ。
「クリス殿下がいらしているとの事だから、とりあえず行きましょう。もしかしたら、何か重大な事件でも起こったのかもしれないし」
重大な事件か…あまり考えられないが、とりあえずカーラと一緒に、クリス様がいらっしゃる客間へと向かった。
すると
「リリアナ、こんな遅くまでお邪魔するだなんて、ダメじゃないか。今日はずっと、カルソル公爵家で君の帰りを待っていたのに。待てど暮らせど帰ってこないから、心配で迎えに来たんだ!」
部屋に入るなり、物凄い勢いで駆け寄ってきたクリス様に、おもいっきり抱きしめられた。どうやら重大な事件は起こっていなかった様だ。
「クリス様、ご心配をおかけしてごめんなさい。ですが、いくら心配だからと言って、令嬢のお屋敷に事前に連絡もなくお越しになられるのは、いかがなものかと。ミュースト侯爵様、夫人、申し訳ございませんでした」
近くにいた2人に頭を下げた。
「私たちの事は、気にして頂かなくても大丈夫ですよ。それにしてもクリス殿下は、リリアナ嬢の事をとても大切に思っていらっしゃるのですね。わざわざ迎えにいらっしゃるだなんて」
「本当ですわ。こうやって心配してくださる婚約者がいらっしゃるだなんて、羨ましいですわ。カーラにも、そんな素敵な殿方が現れると良いのだけれど」
「きっとカーラにも、素敵な令息が現れますわ。だって、こんなにも魅力的な令嬢なのですもの。ねえ、カーラ」
つい私も、夫人に釣られてしまった。でも、今のカーラならきっと、素敵な殿方が見つかるだろう。私はそう思っている。
「もう、リリアナ様ったら。私はリリアナ様さえいらっしゃれば、殿方なんて必要ありませんわ」
「カーラ嬢、何を言っているのかな?リリアナは僕の婚約者だ。あまり執着してもらっては困る。君は素敵な殿方を見つけ、幸せになってくれ」
「あら、リリアナ様はいずれ、王妃殿下になられるお方。王妃殿下に掛かる重圧は、相当なものですわ。やはり同じ女性が、リリアナ様をお支えする必要があるのです。クリス殿下には分からない苦労も、今後出てくるでしょうし。私がリリアナ様の右腕となり、しっかりお支えしたいと考えておりますわ」
笑顔で応戦するカーラ。
「僕は確かに男だが、リリアナをしっかり支えて行くつもりだ。それに通常王妃を支える役割を担っているのは、侯爵以上の夫人と決まっている。君は結婚するつもりがないなら、リリアナを支える事は出来ないと思うが」
「そうなのですか?それでは、リリアナ様の傍にいるためには、侯爵以上の殿方との結婚が必須…」
「カーラ、落ち着いて。別に私の為に、侯爵以上の殿方と結婚する必要はないのよ。それにあなたが誰と結婚しようが、私たちはずっとお友達だから」
今のカーラなら、私の為に身分の高い殿方を適当に見繕って、結婚してしまうかもしれない。カーラは漫画の世界では、イザベルに利用されて自分の幸せなんて、一切考えずに生きて来たのだ。
どうかカーラの事を幸せにしてくれる殿方と、結婚して欲しいと私は思っている。
「リリアナ様は、なんてお優しいのでしょう。でも私は、リリアナ様を傍で支えたいのです。クリス殿下、良い情報を教えていただき、ありがとうございました。それではリリアナ様は、私と一緒にご夕食を召し上がってから帰られますので、どうかお帰り下さい」
出口はこちらです!と言わんばかりに、満面の笑みで扉の方に誘導するカーラ。あまりにも自然な動きに、私もついクリス様に道を譲ってしまった。
ただ…
気が付くと、もう日も暮れかけている。さすがに帰らないと。
「あら、もう少しよろしいではありませんか?夕食も我が家で食べて行ってください」
「でも、昼食も頂いたし。さすがに悪いわ。今度はぜひ私の家に遊びに来て。またお休みの日に、連絡を入れるわね」
「ですが、リリアナ様は王妃教育でお忙しいでしょう?次はいつお休みを頂けるか…リリアナ様さえよければ、どうか夕食を食べて行ってください」
確かにいつ次のお休みを頂けるか分からない。せっかくカーラと仲良くなったのだ。今日くらい少し遅くなってもいいか。
「分かったわ。それじゃあお言葉に甘えて、夕食も頂いていこうかしら」
「それは本当ですか?嬉しいですわ。それでは、夕食までゆっくりお話しを…」
「カーラお嬢様、お取込み中のところ、申し訳ございません。クリス殿下がお見えです」
「えっ?クリス殿下が?どうして我が家に?もしかして殿下…」
カーラが私の顔を見た。きっとクリス様は、私を迎えに来たのだろう…
「カーラ、ごめんなさい。きっとクリス様は、私を迎えに来たのだと思うわ…」
「私もそう思いますわ…それにしても、わざわざ令嬢の家に押しかけてくるだなんて…」
さすがのカーラもあきれ顔だ。
「クリス殿下がいらしているとの事だから、とりあえず行きましょう。もしかしたら、何か重大な事件でも起こったのかもしれないし」
重大な事件か…あまり考えられないが、とりあえずカーラと一緒に、クリス様がいらっしゃる客間へと向かった。
すると
「リリアナ、こんな遅くまでお邪魔するだなんて、ダメじゃないか。今日はずっと、カルソル公爵家で君の帰りを待っていたのに。待てど暮らせど帰ってこないから、心配で迎えに来たんだ!」
部屋に入るなり、物凄い勢いで駆け寄ってきたクリス様に、おもいっきり抱きしめられた。どうやら重大な事件は起こっていなかった様だ。
「クリス様、ご心配をおかけしてごめんなさい。ですが、いくら心配だからと言って、令嬢のお屋敷に事前に連絡もなくお越しになられるのは、いかがなものかと。ミュースト侯爵様、夫人、申し訳ございませんでした」
近くにいた2人に頭を下げた。
「私たちの事は、気にして頂かなくても大丈夫ですよ。それにしてもクリス殿下は、リリアナ嬢の事をとても大切に思っていらっしゃるのですね。わざわざ迎えにいらっしゃるだなんて」
「本当ですわ。こうやって心配してくださる婚約者がいらっしゃるだなんて、羨ましいですわ。カーラにも、そんな素敵な殿方が現れると良いのだけれど」
「きっとカーラにも、素敵な令息が現れますわ。だって、こんなにも魅力的な令嬢なのですもの。ねえ、カーラ」
つい私も、夫人に釣られてしまった。でも、今のカーラならきっと、素敵な殿方が見つかるだろう。私はそう思っている。
「もう、リリアナ様ったら。私はリリアナ様さえいらっしゃれば、殿方なんて必要ありませんわ」
「カーラ嬢、何を言っているのかな?リリアナは僕の婚約者だ。あまり執着してもらっては困る。君は素敵な殿方を見つけ、幸せになってくれ」
「あら、リリアナ様はいずれ、王妃殿下になられるお方。王妃殿下に掛かる重圧は、相当なものですわ。やはり同じ女性が、リリアナ様をお支えする必要があるのです。クリス殿下には分からない苦労も、今後出てくるでしょうし。私がリリアナ様の右腕となり、しっかりお支えしたいと考えておりますわ」
笑顔で応戦するカーラ。
「僕は確かに男だが、リリアナをしっかり支えて行くつもりだ。それに通常王妃を支える役割を担っているのは、侯爵以上の夫人と決まっている。君は結婚するつもりがないなら、リリアナを支える事は出来ないと思うが」
「そうなのですか?それでは、リリアナ様の傍にいるためには、侯爵以上の殿方との結婚が必須…」
「カーラ、落ち着いて。別に私の為に、侯爵以上の殿方と結婚する必要はないのよ。それにあなたが誰と結婚しようが、私たちはずっとお友達だから」
今のカーラなら、私の為に身分の高い殿方を適当に見繕って、結婚してしまうかもしれない。カーラは漫画の世界では、イザベルに利用されて自分の幸せなんて、一切考えずに生きて来たのだ。
どうかカーラの事を幸せにしてくれる殿方と、結婚して欲しいと私は思っている。
「リリアナ様は、なんてお優しいのでしょう。でも私は、リリアナ様を傍で支えたいのです。クリス殿下、良い情報を教えていただき、ありがとうございました。それではリリアナ様は、私と一緒にご夕食を召し上がってから帰られますので、どうかお帰り下さい」
出口はこちらです!と言わんばかりに、満面の笑みで扉の方に誘導するカーラ。あまりにも自然な動きに、私もついクリス様に道を譲ってしまった。
ただ…
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