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第22話:どうか自分の為に生きて欲しい
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「私はお礼を言われる様なことはしておりませんわ。ミュースト侯爵様、夫人、カーラは今までずっと、辛い思いをして来たと思うのです。どうかこれからは、目いっぱいカーラに目を向けてあげてください。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた。すると、2人が顔を見合わせて、ニコリとほほ笑んだのだ。
「リリアナ様は、本当にカーラの事を大切に思って下さっているのですね。カーラには今まで辛い思いをさせてしまった分、今全力で愛情を注いでいるところですので、ご安心を」
そう言って侯爵様と夫人が笑っていた。私、ちょっと失礼な事を言ってしまったかしら?
「リリアナ様、私の為に本当にありがとうございます。あなた様のお陰で今、私は幸せでたまりませんわ。さあ、せっかく今日は我が家に来てくださったのです。どうぞ中に」
カーラに手を引かれ、そのままお屋敷に入っていく。
「カーラ、あなたまた一段と綺麗になったわね。きっと殿方たちが、あなたを放っておかないわよ」
「もう、リリアナ様ったら、私をからかって。正直私は、殿方には興味はありません。私は死ぬまでずっと、リリアナ様のお傍であなた様の為にこの命を捧げたいと考えております」
「もう、カーラったら…」
このセリフ、何度も聞いたことがある。漫画の世界で、イザベルに向かってカーラが何度も言っていた。
“私はイザベル様の為に、この命を捧げたいと考えております。どうか何でも言いつけて下さい”
と。
その言葉を鵜呑みにしたイザベルは、それこそカーラを奴隷の様にこき使っていた。いつでも切り捨てられる、都合の良い駒としか考えていなかったイザベル。そんなイザベルの要求を、喜んで聞き入れていたカーラ。
きっとカーラにとって、イザベルが全てだったのだろう。
そしてひょんなことから、今カーラにとって、私が全ての様だ。カーラを利用して、イザベルを陥れる事も出来るだろう。
でも私は…
「カーラ、何度も言っているけれど、どうか自分の幸せを考えて。私達は、友達でしょう?私は友達にも私と同じように、幸せになって欲しいの。だからあなたも素敵な殿方を見つけて、幸せになって頂戴。今のあなたなら、きっと素敵な殿方が現れるわ」
私の為に命を捧げるのではなく、自分の為に生きて欲しい。彼女にも幸せになる権利があるのだから。
「私は、リリアナ様の為に生きたいです。でも…リリアナ様が私の幸せを望んでくださるのなら、その方向で考えますわ」
少し恥ずかしそうに笑ったカーラ。なんだか嬉しそうな顔のカーラを見たら、何とも言えない気持ちになった。
漫画でのカーラは、こんな風に笑う事はなかった。いつも不敵な笑みを浮かべ、ただイザベルの言う通りに動いていた彼女。リリアナを殺した憎い女だと思っていたけれど、カーラと関わるうちに、少し行き過ぎたところはあるけれど、真っすぐで純粋な子なのだろうと今は思っている。
カーラを利用しようと考えた事もあったが、カーラにはイザベルの様な腹黒性悪女を近づかせてはいけない。私がイザベルから、カーラを守ろう。少なくとも、カーラには私とイザベルの戦いには巻き込まないようにしたい。
今はそう考えているのだ。
「リリアナ様、お茶にしましょう。今日は我が家の料理長が、沢山ヘルシーなお菓子を準備してくれたのです。それからこのクリーム、塗ると肌がとてもつるつるになるのですよ。メイドが教えてくれて。リリアナ様がおっしゃった通り、メイドは私の一番の味方なのですね。私、リリアナ様のお陰でやっと、侯爵令嬢になれましたわ」
「まあ、カーラったら大げさね。でも、カーラが幸せそうでよかったわ。私もお菓子を持ってきたのよ。一緒に食べましょう。このクリームを私に?ありがとう、早速塗ってみてもいいかしら?」
「ええ、もちろんです。香りもとてもいいですよ」
カーラがくれたクリームを、手に塗ってみる。すると、スーッと馴染んで消えていったのだ。塗ったところを触ってみると、プルプルになっている。
「このクリーム、塗ったそばから消えていったわ。それに肌がプルプルなったし。これはすごいわね。この香りは、バラかしら?」
「ええ、リリアナ様はバラがお好きだと伺ったので。気に入って頂けましたか?」
「ええ、もちろんよ。本当にありがとう。大切に使うわね」
私の言葉を聞いたカーラが、それはそれは嬉しそうに笑ったのだ。彼女が嬉しそうな顔をすると、なんだか私も嬉しい。
そうだわ、忘れていた!
「カーラ、あなた、恋愛小説が好きなのでしょう?隣国で今人気の恋愛小説を持ってきたの。私の兄は今、イライザ王国に留学していて。兄が令嬢たちに人気だからと、送ってくれたの。ぜひ読んでみて。私も読んだのだけれど、とても面白かったわ」
「まあ、リリアナ様のお兄様が送って下さった恋愛小説を、私が読んでもいいのですか?ありがとうございます。とても嬉しいですわ。リリアナ様、私とお友達になって下さり、本当にありがとうございます。私、今まで誰かに何かをする事も、して頂く事もなくて…だから、嬉しくて…」
ポロポロと泣きだしたカーラ。そんな彼女にそっと寄り添った。
「カーラは今まで、ろくでなしのせいでずっと我慢してきたのですものね。これからは、色々な事を沢山経験していきましょうね。もちろん、楽しい事や嬉しい事をね。あなたには、幸せになる権利があるのだから」
泣きじゃくるカーラの背中を、優しく撫でた。ずっとあの兄に虐げられてきたカーラ。そんな彼女だからこそ、幸せになって欲しい。彼女の真っすぐな思いを、あの女に悪用されたくはない。カーラはイザベルの為にいるのではない。カーラはカーラ自身のために、いるのだから…
どうかこの世界では、私と一緒に幸せになりましょうね、カーラ。
ペコリと頭を下げた。すると、2人が顔を見合わせて、ニコリとほほ笑んだのだ。
「リリアナ様は、本当にカーラの事を大切に思って下さっているのですね。カーラには今まで辛い思いをさせてしまった分、今全力で愛情を注いでいるところですので、ご安心を」
そう言って侯爵様と夫人が笑っていた。私、ちょっと失礼な事を言ってしまったかしら?
「リリアナ様、私の為に本当にありがとうございます。あなた様のお陰で今、私は幸せでたまりませんわ。さあ、せっかく今日は我が家に来てくださったのです。どうぞ中に」
カーラに手を引かれ、そのままお屋敷に入っていく。
「カーラ、あなたまた一段と綺麗になったわね。きっと殿方たちが、あなたを放っておかないわよ」
「もう、リリアナ様ったら、私をからかって。正直私は、殿方には興味はありません。私は死ぬまでずっと、リリアナ様のお傍であなた様の為にこの命を捧げたいと考えております」
「もう、カーラったら…」
このセリフ、何度も聞いたことがある。漫画の世界で、イザベルに向かってカーラが何度も言っていた。
“私はイザベル様の為に、この命を捧げたいと考えております。どうか何でも言いつけて下さい”
と。
その言葉を鵜呑みにしたイザベルは、それこそカーラを奴隷の様にこき使っていた。いつでも切り捨てられる、都合の良い駒としか考えていなかったイザベル。そんなイザベルの要求を、喜んで聞き入れていたカーラ。
きっとカーラにとって、イザベルが全てだったのだろう。
そしてひょんなことから、今カーラにとって、私が全ての様だ。カーラを利用して、イザベルを陥れる事も出来るだろう。
でも私は…
「カーラ、何度も言っているけれど、どうか自分の幸せを考えて。私達は、友達でしょう?私は友達にも私と同じように、幸せになって欲しいの。だからあなたも素敵な殿方を見つけて、幸せになって頂戴。今のあなたなら、きっと素敵な殿方が現れるわ」
私の為に命を捧げるのではなく、自分の為に生きて欲しい。彼女にも幸せになる権利があるのだから。
「私は、リリアナ様の為に生きたいです。でも…リリアナ様が私の幸せを望んでくださるのなら、その方向で考えますわ」
少し恥ずかしそうに笑ったカーラ。なんだか嬉しそうな顔のカーラを見たら、何とも言えない気持ちになった。
漫画でのカーラは、こんな風に笑う事はなかった。いつも不敵な笑みを浮かべ、ただイザベルの言う通りに動いていた彼女。リリアナを殺した憎い女だと思っていたけれど、カーラと関わるうちに、少し行き過ぎたところはあるけれど、真っすぐで純粋な子なのだろうと今は思っている。
カーラを利用しようと考えた事もあったが、カーラにはイザベルの様な腹黒性悪女を近づかせてはいけない。私がイザベルから、カーラを守ろう。少なくとも、カーラには私とイザベルの戦いには巻き込まないようにしたい。
今はそう考えているのだ。
「リリアナ様、お茶にしましょう。今日は我が家の料理長が、沢山ヘルシーなお菓子を準備してくれたのです。それからこのクリーム、塗ると肌がとてもつるつるになるのですよ。メイドが教えてくれて。リリアナ様がおっしゃった通り、メイドは私の一番の味方なのですね。私、リリアナ様のお陰でやっと、侯爵令嬢になれましたわ」
「まあ、カーラったら大げさね。でも、カーラが幸せそうでよかったわ。私もお菓子を持ってきたのよ。一緒に食べましょう。このクリームを私に?ありがとう、早速塗ってみてもいいかしら?」
「ええ、もちろんです。香りもとてもいいですよ」
カーラがくれたクリームを、手に塗ってみる。すると、スーッと馴染んで消えていったのだ。塗ったところを触ってみると、プルプルになっている。
「このクリーム、塗ったそばから消えていったわ。それに肌がプルプルなったし。これはすごいわね。この香りは、バラかしら?」
「ええ、リリアナ様はバラがお好きだと伺ったので。気に入って頂けましたか?」
「ええ、もちろんよ。本当にありがとう。大切に使うわね」
私の言葉を聞いたカーラが、それはそれは嬉しそうに笑ったのだ。彼女が嬉しそうな顔をすると、なんだか私も嬉しい。
そうだわ、忘れていた!
「カーラ、あなた、恋愛小説が好きなのでしょう?隣国で今人気の恋愛小説を持ってきたの。私の兄は今、イライザ王国に留学していて。兄が令嬢たちに人気だからと、送ってくれたの。ぜひ読んでみて。私も読んだのだけれど、とても面白かったわ」
「まあ、リリアナ様のお兄様が送って下さった恋愛小説を、私が読んでもいいのですか?ありがとうございます。とても嬉しいですわ。リリアナ様、私とお友達になって下さり、本当にありがとうございます。私、今まで誰かに何かをする事も、して頂く事もなくて…だから、嬉しくて…」
ポロポロと泣きだしたカーラ。そんな彼女にそっと寄り添った。
「カーラは今まで、ろくでなしのせいでずっと我慢してきたのですものね。これからは、色々な事を沢山経験していきましょうね。もちろん、楽しい事や嬉しい事をね。あなたには、幸せになる権利があるのだから」
泣きじゃくるカーラの背中を、優しく撫でた。ずっとあの兄に虐げられてきたカーラ。そんな彼女だからこそ、幸せになって欲しい。彼女の真っすぐな思いを、あの女に悪用されたくはない。カーラはイザベルの為にいるのではない。カーラはカーラ自身のために、いるのだから…
どうかこの世界では、私と一緒に幸せになりましょうね、カーラ。
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