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第16話:2度目の生が始まりました~クリス視点~
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「殿下、起きて下さい。殿下!」
うるさいな…誰だ?僕を呼んでいるのは…
ゆっくり瞼を上げると、そこには怖い顔をした執事の顔が。
「わぁ、びっくりした!そんな怖い顔で、覗き込まないでくれ。て、どうして君がここにいるのだい?」
僕は毒を飲んで死んだはずだ。もしかして、死に損ねたのか?
「何を訳の分からない事を、おっしゃっているのです。今日は殿下主催のお茶会が行われる日でしょう?それなのに、殿下が寝坊なさるだなんて。今日は婚約者の最終決定を行うための、大切なお茶会なのです。分かっていらっしゃるのですか?」
僕主催のお茶会?婚約者の最終決定?
ふと自分の手を見つめた。
「僕の手…なんだか小さい…ねえ、僕って今いくつ?」
「はぁ~、殿下、いい加減にしてくださいませ!殿下は今、10歳でしょう。もしかして私をからかっていらっしゃるのですか?とにかく、すぐにお着替えを」
10歳だって?一体どうなっているのだ?僕は確かにあの日、毒を飲んで地下牢で死んだはずだ。でも次に目覚めたら…
急いで鏡の前に立った。やっぱり僕、小さい。もしかしてこれは、夢なのか?あの頃に戻りたい、そんな僕の強い希望が、夢になって表れているのか?
おもいっきりほっぺたをつねってみた。
「痛い…」
「殿下、何をなさっているのですか?ご自分の体を傷つけるような事をなさってはいけません。さあ、早く殿下にお着替えを」
執事の指示で、使用人たちが手際よく着替えさせてくれた。
再び鏡を見る。やっぱり僕、小さい…これはやはり夢なのか?でも、さっきつねった時、痛かったし。もしかして僕は、過去に戻ったのか?そんな事が、現実に起こる事なのか?
でも、実際僕は今、10歳に戻っている。という事は…
きっと神様が、僕にもう一度チャンスをくれたのだ。僕がやり直すチャンスを。またリリアナに会える。僕が不甲斐ないばかりに、絶望の中苦しみながら死んでいったリリアナ…
「リリアナ、会いたい。でも…」
リリアナはもう、僕なんかの婚約者は御免だよね。あんなに優しい子が、無実の罪で無残にも殺されてしまったのだから。唯一の味方であるべき僕にまで裏切られて。僕はリリアナの為に、身を引いた方がいいのかもしれない。
でも…
僕はやっぱり、僕の手でリリアナを幸せにしたい。それにあいつら!
イザベル・ルミリオン、マーデン・カラッソル、カーラ・ミュースト、あの3人だけは絶対に許さない。特にイザベル!あいつらにはもう二度と、リリアナを傷つけさせない。その為にも、やっぱり1度目の生の記憶を持った僕が、リリアナの傍にいて守らないと。
て、僕は結局、自分の事しか考えていないのだな…リリアナの平和な暮らしの為には、僕が身を引くのが一番なのに…
もしもリリアナが僕との婚約を望まないのなら、その時は素直に受け入れよう。そして、リリアナの幸せを全力で応援しよう。もしかしたら、僕に1度目の生の時の記憶が残っている様に、リリアナにも残っているかもしれないし。
そうだ、僕がやらなければいけない事は、リリアナの幸せを願う事。その為にも、彼女にとってどの方法が一番いいのか見つけないと。
ただ、リリアナは公爵令嬢で、僕との婚約がほぼ内定している令嬢だ。今更僕から、彼女との婚約はしないなんて言ったら、リリアナが傷つくかもしれない。とにかくリリアナがどう考えているのか、見極めないと。
せっかく神様が与えてくれたチャンス、僕は今度こそリリアナを幸せにしたい。たとえ僕と結ばれなかったとしても。
そんな思いで、お茶会に参加した。母上と共に、今日の会場でもある中庭に向かう。辺りを見渡すと、いた。リリアナだ。あの頃と変わらない、美しいリリアナの姿がそこにはあった。
すると、僕に向かってにっこり微笑んでくれたのだ。あれほどまでに酷い仕打ちをした僕に、こんな風にほほ笑んでくれるだなんて。僕はあの優しい微笑を奪った、最低な男なのに…
リリアナの笑顔を見た瞬間、涙が溢れそうになるのを必死に堪えた。
ただリリアナの笑顔を見て、僕は心底ほっとしたのも事実だ。リリアナはきっと、僕の様に1度目の生の記憶を持っている訳ではないのだろう。もし僕と同じように記憶を持っているなら、こんな酷い男との婚約なんて、まっぴらごめんだ。きっと僕と目が合った瞬間、スッとそらすはず。
今のリリアナは、いつも通りほほ笑んでくれた。でも、まだ確信が持てた訳ではない。とにかく一度、リリアナと話がしたい。そう思っていたのだが、いつも通り令嬢に囲まれてしまった。
既に世間では、僕の婚約者はリリアナという噂が広まっているのに、この後に及んでまだ僕にすり寄ってくるだなんて。適当に令嬢たちの相手をしつつ、辺りを見渡すと。
いた!イスに座りお茶とお菓子を堪能していた。あの頃とちっとも変っていないリリアナの姿に、熱いものがこみ上げてくる。リリアナ、今すぐ君の元に行きたい。
リリアナの元に向かおうとした時、令嬢たちがリリアナを囲ったのだ。今僕が行くべきではないな。リリアナが1人になったタイミングで、話しかけよう。
そう思っていたのだが…
うるさいな…誰だ?僕を呼んでいるのは…
ゆっくり瞼を上げると、そこには怖い顔をした執事の顔が。
「わぁ、びっくりした!そんな怖い顔で、覗き込まないでくれ。て、どうして君がここにいるのだい?」
僕は毒を飲んで死んだはずだ。もしかして、死に損ねたのか?
「何を訳の分からない事を、おっしゃっているのです。今日は殿下主催のお茶会が行われる日でしょう?それなのに、殿下が寝坊なさるだなんて。今日は婚約者の最終決定を行うための、大切なお茶会なのです。分かっていらっしゃるのですか?」
僕主催のお茶会?婚約者の最終決定?
ふと自分の手を見つめた。
「僕の手…なんだか小さい…ねえ、僕って今いくつ?」
「はぁ~、殿下、いい加減にしてくださいませ!殿下は今、10歳でしょう。もしかして私をからかっていらっしゃるのですか?とにかく、すぐにお着替えを」
10歳だって?一体どうなっているのだ?僕は確かにあの日、毒を飲んで地下牢で死んだはずだ。でも次に目覚めたら…
急いで鏡の前に立った。やっぱり僕、小さい。もしかしてこれは、夢なのか?あの頃に戻りたい、そんな僕の強い希望が、夢になって表れているのか?
おもいっきりほっぺたをつねってみた。
「痛い…」
「殿下、何をなさっているのですか?ご自分の体を傷つけるような事をなさってはいけません。さあ、早く殿下にお着替えを」
執事の指示で、使用人たちが手際よく着替えさせてくれた。
再び鏡を見る。やっぱり僕、小さい…これはやはり夢なのか?でも、さっきつねった時、痛かったし。もしかして僕は、過去に戻ったのか?そんな事が、現実に起こる事なのか?
でも、実際僕は今、10歳に戻っている。という事は…
きっと神様が、僕にもう一度チャンスをくれたのだ。僕がやり直すチャンスを。またリリアナに会える。僕が不甲斐ないばかりに、絶望の中苦しみながら死んでいったリリアナ…
「リリアナ、会いたい。でも…」
リリアナはもう、僕なんかの婚約者は御免だよね。あんなに優しい子が、無実の罪で無残にも殺されてしまったのだから。唯一の味方であるべき僕にまで裏切られて。僕はリリアナの為に、身を引いた方がいいのかもしれない。
でも…
僕はやっぱり、僕の手でリリアナを幸せにしたい。それにあいつら!
イザベル・ルミリオン、マーデン・カラッソル、カーラ・ミュースト、あの3人だけは絶対に許さない。特にイザベル!あいつらにはもう二度と、リリアナを傷つけさせない。その為にも、やっぱり1度目の生の記憶を持った僕が、リリアナの傍にいて守らないと。
て、僕は結局、自分の事しか考えていないのだな…リリアナの平和な暮らしの為には、僕が身を引くのが一番なのに…
もしもリリアナが僕との婚約を望まないのなら、その時は素直に受け入れよう。そして、リリアナの幸せを全力で応援しよう。もしかしたら、僕に1度目の生の時の記憶が残っている様に、リリアナにも残っているかもしれないし。
そうだ、僕がやらなければいけない事は、リリアナの幸せを願う事。その為にも、彼女にとってどの方法が一番いいのか見つけないと。
ただ、リリアナは公爵令嬢で、僕との婚約がほぼ内定している令嬢だ。今更僕から、彼女との婚約はしないなんて言ったら、リリアナが傷つくかもしれない。とにかくリリアナがどう考えているのか、見極めないと。
せっかく神様が与えてくれたチャンス、僕は今度こそリリアナを幸せにしたい。たとえ僕と結ばれなかったとしても。
そんな思いで、お茶会に参加した。母上と共に、今日の会場でもある中庭に向かう。辺りを見渡すと、いた。リリアナだ。あの頃と変わらない、美しいリリアナの姿がそこにはあった。
すると、僕に向かってにっこり微笑んでくれたのだ。あれほどまでに酷い仕打ちをした僕に、こんな風にほほ笑んでくれるだなんて。僕はあの優しい微笑を奪った、最低な男なのに…
リリアナの笑顔を見た瞬間、涙が溢れそうになるのを必死に堪えた。
ただリリアナの笑顔を見て、僕は心底ほっとしたのも事実だ。リリアナはきっと、僕の様に1度目の生の記憶を持っている訳ではないのだろう。もし僕と同じように記憶を持っているなら、こんな酷い男との婚約なんて、まっぴらごめんだ。きっと僕と目が合った瞬間、スッとそらすはず。
今のリリアナは、いつも通りほほ笑んでくれた。でも、まだ確信が持てた訳ではない。とにかく一度、リリアナと話がしたい。そう思っていたのだが、いつも通り令嬢に囲まれてしまった。
既に世間では、僕の婚約者はリリアナという噂が広まっているのに、この後に及んでまだ僕にすり寄ってくるだなんて。適当に令嬢たちの相手をしつつ、辺りを見渡すと。
いた!イスに座りお茶とお菓子を堪能していた。あの頃とちっとも変っていないリリアナの姿に、熱いものがこみ上げてくる。リリアナ、今すぐ君の元に行きたい。
リリアナの元に向かおうとした時、令嬢たちがリリアナを囲ったのだ。今僕が行くべきではないな。リリアナが1人になったタイミングで、話しかけよう。
そう思っていたのだが…
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