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第15話:全て終わった~クリス視点~
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証拠がそろったところで、僕は両親や貴族たちを呼び出した。そしてあの3人の悪事を、証拠の書類を提示しながら全て洗いざらい話したのだ。
「僕は本当に何も見えていませんでした。大切な元婚約者だったリリアナが、無実の罪を着せられていたにもかかわらず、彼らの言う事を鵜呑みにしました。その結果、リリアナは無念の死を遂げたのです。本来なら、決して許されない事です!」
リリアナの無念を考えると、涙が止まらない。それでも僕は、必死に皆に訴えたのだ。
「裏でこんな恐ろしい事実が隠されていただなんて…陛下、これはかなり悪質ですぞ」
「このような恐ろしい事が、貴族社会で起きるだなんて…今後の為にも、3人には厳罰に処すべきですな」
「カルソル公爵家がこの国に絶望し、イライザ王国に行ってしまった理由がよく分かりました。もし自分の娘が、この様な被害にあったらと考えると…」
「その上、イザベル嬢とマーデン殿は、関係を持っていたとの事。なんてふしだらな奴らなんだ。こんなふしだらな人間が、今後この国を支えて行こうとしていただなんて…考えただけで虫唾が走る」
「王太子殿下、よくぞこのような悪事を調べ上げて下さいました。すぐにあいつらを裁きましょう」
さすが王太子殿下だ。そんな声が上がる。でも、僕は何もすごくはない。現に大切な婚約者を死なせてしまったのだから…僕はどうしようもないダメな人間なんだ。
悔しくて涙が込みあげてくるのを、ぐっと堪えた。あいつらを地獄に突き落とすまでは。
そして僕は、3人を貴族裁判にかけた。そして…
「イザベル・ルミリオン、マーデン・カラッソル、カーラ・ミューストを元公爵令嬢、リリアナ・カルソルに対する殺人罪で、極刑に処する」
3人は異例中の異例でもある“殺人罪”で、極刑に処される事になったのだ。
「そんな…極刑だなんて。どうして私が殺されないといけないの。私は何も悪くないわ」
「そうですわ、イザベル様は悪くはありません。全て私が行った事です」
ここにきて、まだイザベルを庇うのは、カーラだ。この女、どこまでイザベルを庇うつもりなのだろう。
「クリス…頼む、助けてくれ。俺はただ、イザベル嬢に騙されていただけなんだ。それに俺は、リリアナ嬢の毒殺未遂については、ノータッチだったんだ。だから…」
「マーデン、これ以上僕に話し掛けないでくれ。まさか君に裏切られていただなんてね…確かに君の言う通り、あんなにも優しいリリアナの事を疑い、君の言うことを鵜呑みにした僕は、本当に大バカ者だよ…」
そう、僕はこんな男の言う事を信じ、最愛の人の言う事を無視したのだ。本当に僕は、最低な男だ。
「とにかく、証拠はそろっていますし、判決も今出ました。すぐに3人を連れて行ってくれ」
「待って下さい、お願い、殺さないで」
「せめてイザベル様だけでも」
「クリス、頼む、話しを聞いてくれ」
3人がそれぞれ好き勝手な事を叫んでいるが、僕には全く響く事はない。そしてその日、彼らはリリアナが飲んだ毒を飲み、命を落としたのだった。
これで全てが終わった…訳ではない。まだ僕にはやらなければいけない事がある。
再び僕は、両親と貴族たちを呼び出した。
「皆様、急にお呼びだてして申し訳ございません。僕は今日を持ちまして、王太子の座を退く所存でございます」
「クリス、一体何を言っているのだい?」
「僕はあの3人の悪事を見破る事が出来ず、その結果、無実のリリアナを死に追いやってしまいました。そんな僕が、このまま王太子になんていられる訳がありません。何よりも、僕の心が付いていかないのです。どうか王太子の座は、弟のイカロスに」
全てが解決したら、弟のイカロスに、王太子の座を譲ろうと決めていたのだ。
「ですが殿下、あなた様は今回、3人の悪事をしっかり暴いたではありませんか?そしてリリアナ嬢の無念を晴らすことが出来たのです。あなた様は、立派な王太子殿下です」
「そうですよ、殿下。あなた様ならきっと、立派な王になれます」
「僕は立派な王なんかにはなれません。大切な婚約者を、殺してしまったのですから…どんなに後悔しても、もう二度とリリアナは戻って来ません。それに何より、僕はもう心が付いていかないのです。残りの人生、どうか静かに暮らさせてください。お願いします」
必死に頭を下げた。その後も何度も何度も貴族たちを説得した。
そして…
「クリス殿下に代わり、イカロス殿下が新たに王太子殿下に就任する事が決定いたしました」
僕の説得の甲斐があり、貴族たちも納得してくれたのだ。まだ幼いイカロスに王太子という重い任務を背負わせてしまった事は、申し訳なく思っている。でも、もう僕には王太子も次期国王も、とても無理なのだ。
こうして僕は、皇太子の座を退いたのだった。
自由になった僕は、リリアナが最期に命を落とした、地下牢へと向かった。ここでリリアナは毒を飲み、命を落としたのだ。
「リリアナ、僕が愚かなばかりに、本当にごめんね。今から僕も、君の元にいくからね」
ポケットから毒を出す。そう、僕もこの毒を飲んで、リリアナの元に向かうつもりだ。ゆっくりと毒を口に含む。
すると、喉が焼ける様な激痛と共に、体中猛烈な痛みが僕を襲った。
「グ…ぐるじい…」
リリアナはこんな苦しい思いをして死んでいったのか…リリアナ、本当にごめんね。君と同じ苦しみを、僕も味わうからね。
こうして僕は、人生の幕をひっそりと下ろしたのだった。
~あとがき~
※ちょっとした小話です。興味がない人は、スルーしてもらっても大丈夫です。
リリアナは転生した漫画のラストを知りませんが、漫画のラストもクリスの1度目の生と同じ内容です。
主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの漫画の世界に転生してしまった訳ですね。
以上、ちょっとした小話でした。
「僕は本当に何も見えていませんでした。大切な元婚約者だったリリアナが、無実の罪を着せられていたにもかかわらず、彼らの言う事を鵜呑みにしました。その結果、リリアナは無念の死を遂げたのです。本来なら、決して許されない事です!」
リリアナの無念を考えると、涙が止まらない。それでも僕は、必死に皆に訴えたのだ。
「裏でこんな恐ろしい事実が隠されていただなんて…陛下、これはかなり悪質ですぞ」
「このような恐ろしい事が、貴族社会で起きるだなんて…今後の為にも、3人には厳罰に処すべきですな」
「カルソル公爵家がこの国に絶望し、イライザ王国に行ってしまった理由がよく分かりました。もし自分の娘が、この様な被害にあったらと考えると…」
「その上、イザベル嬢とマーデン殿は、関係を持っていたとの事。なんてふしだらな奴らなんだ。こんなふしだらな人間が、今後この国を支えて行こうとしていただなんて…考えただけで虫唾が走る」
「王太子殿下、よくぞこのような悪事を調べ上げて下さいました。すぐにあいつらを裁きましょう」
さすが王太子殿下だ。そんな声が上がる。でも、僕は何もすごくはない。現に大切な婚約者を死なせてしまったのだから…僕はどうしようもないダメな人間なんだ。
悔しくて涙が込みあげてくるのを、ぐっと堪えた。あいつらを地獄に突き落とすまでは。
そして僕は、3人を貴族裁判にかけた。そして…
「イザベル・ルミリオン、マーデン・カラッソル、カーラ・ミューストを元公爵令嬢、リリアナ・カルソルに対する殺人罪で、極刑に処する」
3人は異例中の異例でもある“殺人罪”で、極刑に処される事になったのだ。
「そんな…極刑だなんて。どうして私が殺されないといけないの。私は何も悪くないわ」
「そうですわ、イザベル様は悪くはありません。全て私が行った事です」
ここにきて、まだイザベルを庇うのは、カーラだ。この女、どこまでイザベルを庇うつもりなのだろう。
「クリス…頼む、助けてくれ。俺はただ、イザベル嬢に騙されていただけなんだ。それに俺は、リリアナ嬢の毒殺未遂については、ノータッチだったんだ。だから…」
「マーデン、これ以上僕に話し掛けないでくれ。まさか君に裏切られていただなんてね…確かに君の言う通り、あんなにも優しいリリアナの事を疑い、君の言うことを鵜呑みにした僕は、本当に大バカ者だよ…」
そう、僕はこんな男の言う事を信じ、最愛の人の言う事を無視したのだ。本当に僕は、最低な男だ。
「とにかく、証拠はそろっていますし、判決も今出ました。すぐに3人を連れて行ってくれ」
「待って下さい、お願い、殺さないで」
「せめてイザベル様だけでも」
「クリス、頼む、話しを聞いてくれ」
3人がそれぞれ好き勝手な事を叫んでいるが、僕には全く響く事はない。そしてその日、彼らはリリアナが飲んだ毒を飲み、命を落としたのだった。
これで全てが終わった…訳ではない。まだ僕にはやらなければいけない事がある。
再び僕は、両親と貴族たちを呼び出した。
「皆様、急にお呼びだてして申し訳ございません。僕は今日を持ちまして、王太子の座を退く所存でございます」
「クリス、一体何を言っているのだい?」
「僕はあの3人の悪事を見破る事が出来ず、その結果、無実のリリアナを死に追いやってしまいました。そんな僕が、このまま王太子になんていられる訳がありません。何よりも、僕の心が付いていかないのです。どうか王太子の座は、弟のイカロスに」
全てが解決したら、弟のイカロスに、王太子の座を譲ろうと決めていたのだ。
「ですが殿下、あなた様は今回、3人の悪事をしっかり暴いたではありませんか?そしてリリアナ嬢の無念を晴らすことが出来たのです。あなた様は、立派な王太子殿下です」
「そうですよ、殿下。あなた様ならきっと、立派な王になれます」
「僕は立派な王なんかにはなれません。大切な婚約者を、殺してしまったのですから…どんなに後悔しても、もう二度とリリアナは戻って来ません。それに何より、僕はもう心が付いていかないのです。残りの人生、どうか静かに暮らさせてください。お願いします」
必死に頭を下げた。その後も何度も何度も貴族たちを説得した。
そして…
「クリス殿下に代わり、イカロス殿下が新たに王太子殿下に就任する事が決定いたしました」
僕の説得の甲斐があり、貴族たちも納得してくれたのだ。まだ幼いイカロスに王太子という重い任務を背負わせてしまった事は、申し訳なく思っている。でも、もう僕には王太子も次期国王も、とても無理なのだ。
こうして僕は、皇太子の座を退いたのだった。
自由になった僕は、リリアナが最期に命を落とした、地下牢へと向かった。ここでリリアナは毒を飲み、命を落としたのだ。
「リリアナ、僕が愚かなばかりに、本当にごめんね。今から僕も、君の元にいくからね」
ポケットから毒を出す。そう、僕もこの毒を飲んで、リリアナの元に向かうつもりだ。ゆっくりと毒を口に含む。
すると、喉が焼ける様な激痛と共に、体中猛烈な痛みが僕を襲った。
「グ…ぐるじい…」
リリアナはこんな苦しい思いをして死んでいったのか…リリアナ、本当にごめんね。君と同じ苦しみを、僕も味わうからね。
こうして僕は、人生の幕をひっそりと下ろしたのだった。
~あとがき~
※ちょっとした小話です。興味がない人は、スルーしてもらっても大丈夫です。
リリアナは転生した漫画のラストを知りませんが、漫画のラストもクリスの1度目の生と同じ内容です。
主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの漫画の世界に転生してしまった訳ですね。
以上、ちょっとした小話でした。
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