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第14話:絶対に許さない~クリス視点~
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「マーデン様、聞いて下さい。クリス様ったら、メイドにも優しくしろだなんておっしゃるのですよ。どうして私が、メイドに優しくしないといけないのですか?本当に面倒くさいです」
「クリスは誰にでも優しくという、面倒な男だからな。リリアナ嬢も、誰にでも優しかったし。クリスはなんだかんだ言って、リリアナ嬢を愛していたからね」
「メイドにまで優しいだなんて、リリアナ様は本当に頭がおかしい令嬢だったのですね。やっとリリアナ様を蹴落とせたのに…私、クリス様の婚約者がこんなに面倒だなんて思いませんでしたわ。王妃教育も面倒だし…リリアナ様を殺さない方がよかったかしら?」
そう言いながら、イザベルがマーデンに抱き着き、そして口づけをしている。どういうことだ?どうしてイザベルとマーデンが口づけを?
それに今、リリアナを殺さなければよかったと言っていた、一体どういうことだ?
「イザベルが嫌なら、俺が上手にクリスに話してやろうか?あいつ、俺の言う事なら何でも信じるぜ。リリアナ嬢の時みたいに」
クスクス笑っているマーデン。一体どういうことだ?こいつは何を言っているのだ?
「それなら、もっと私の言う事を聞いてくれる様に、クリス様に頼んでください。私、面倒な事は御免だわ。やっぱりリリアナ様を生かしておいた方がよかったかしら?あの人、無駄に真面目だから、面倒な公務はリリアナ様に押し付けて。そして楽しい事だけ私が頂く。そうすればよかったわ」
「今更そんな事を言っても、仕方がないだろう。それにしても、クリスの奴、本当にバカだよな。俺の嘘の報告書をまんまと信じてさ。結局あいつも、リリアナ嬢の事なんて、ろくに見ていなかったのだろうな」
「王太子殿下をバカと言うだなんて。誰かに聞かれたら大変よ。でも、あそこまでうまくいくだなんてね。私、リリアナ様みたいないい子ちゃん、嫌いだから消えてくれてよかったわよ。最期のリリアナ様、かなり苦しんで死んだのでしょう?」
「ああ、何度も血を吐きながら、もがき苦しみながら死んでいったよ。本当にイザベルは罪だよな。何の罪もないリリアナ嬢を、あんな残酷な殺し方で殺すだなんて」
「あら、殺し方を決めたのは私ではないわ。もう死んだ女の話なんてやめましょう。それよりも、クリス様に私の件、上手く話してよ」
「ああ、分かっているよ。可愛いイザベルためなら、俺は何でもするよ。今夜、イザベルの部屋に行ってもいいかな?今日もいっぱい愛し合いたい…」
「別に構わないけれど、妊娠したら困るから、ちゃんと避妊はしてよね」
そう言いながら、熱烈な口づけをする2人。そんな2人を見つめなら、僕は血が出るのではないかというくらい、強く拳を握った。
リリアナは何も悪い事などしていなかった。それなのに僕は、あいつらの言う事を鵜呑みして、リリアナを…
本来なら婚約者でもある僕が、リリアナを守らなければいけなかったのに、守るどころか、彼女を傷つけた。
何度も何度もリリアナは僕に“私はやっていない”そう訴えていたのに。僕は彼女の言う事を全く信じなかったのだ。そして、リリアナは無実の罪で殺された。
あいつらの欲望の餌食になったのだ。
そんな事って、許されるのか?リリアナはあの日、どんな思いで死んでいったのだろう。きっと全てに絶望し、それでも家族だけは!そんな思いで、僕に訴えたのだろう。それなのに僕は…
「リリアナ、ごめんね…僕が大バカ者のせいで、君を死なせてしまった。君を殺したのは、僕だ…」
ポロポロと溢れる涙を止める事が出来ずに、僕はその場で泣き崩れた。
リリアナ!リリアナ!
僕の大切な人、君が人を傷つける様な子じゃないという事を、僕が一番分かっていたはずなのに。それなのに僕は…
一番味方にならないといけない僕にまで裏切られて、絶望の中死んでいったのだね。本当にごめん。謝っても許される事ではない事は分かっている。
でも、僕は…
ふと顔を上げると、まだイチャイチャしているあいつらの姿が目に入った。
お前たちだけは、絶対に許さない!
今までに感じた事のない怒りが、僕を支配した。今すぐあいつらの元に駆けつけたい衝動を必死に抑え、僕は一旦部屋に戻った。
そして僕は、リリアナの無念を晴らすべく、あいつらの悪事を全て暴く事にしたのだ。
その日以降、僕は何かに憑りつかれた様に、イザベルとマーデンを監視した。その結果、イザベルは侯爵令嬢でもあるカーラとも友人関係である事を突き止めた。どうやらカーラは、イザベルに絶対的服従を誓っている様で、彼女の為なら自分の命をなげうっても構わないと考えている様だ。
そう、カーラが自分の命を懸けてまで、虚偽の証言をしたのは、そのためだったのだ。そしてリリアナのカバンに毒を仕込んだのも、メイドに嘘の証言をさせたのも、カーラだったのだ。
さらにイザベルとマーデンは、貴族学院に入学してすぐから、ずっと体の関係を持っていたらしい。完全にイザベルの虜になっていたマーデンは、イザベルの指示通り、僕に嘘の情報を流していたのだ。
そうとも知らずに、僕はあの男の事を信じ、リリアナを一方的に悪者にした。そう、リリアナはイザベルに酷い暴力も暴言を一切行っていなかったのだ。それどころか、リリアナはイザベルに恐怖を感じ、極力近づかない様にしていたことも分かった。
僕は本当に、何も見えていなかったのだ。
その事実が、僕の心に突き刺さる。それでも僕は、イザベル・マーデン・カーラを地獄に叩き落すことだけを糧に、必死に証拠を集めた。そして全ての証拠がそろったのだった。
「クリスは誰にでも優しくという、面倒な男だからな。リリアナ嬢も、誰にでも優しかったし。クリスはなんだかんだ言って、リリアナ嬢を愛していたからね」
「メイドにまで優しいだなんて、リリアナ様は本当に頭がおかしい令嬢だったのですね。やっとリリアナ様を蹴落とせたのに…私、クリス様の婚約者がこんなに面倒だなんて思いませんでしたわ。王妃教育も面倒だし…リリアナ様を殺さない方がよかったかしら?」
そう言いながら、イザベルがマーデンに抱き着き、そして口づけをしている。どういうことだ?どうしてイザベルとマーデンが口づけを?
それに今、リリアナを殺さなければよかったと言っていた、一体どういうことだ?
「イザベルが嫌なら、俺が上手にクリスに話してやろうか?あいつ、俺の言う事なら何でも信じるぜ。リリアナ嬢の時みたいに」
クスクス笑っているマーデン。一体どういうことだ?こいつは何を言っているのだ?
「それなら、もっと私の言う事を聞いてくれる様に、クリス様に頼んでください。私、面倒な事は御免だわ。やっぱりリリアナ様を生かしておいた方がよかったかしら?あの人、無駄に真面目だから、面倒な公務はリリアナ様に押し付けて。そして楽しい事だけ私が頂く。そうすればよかったわ」
「今更そんな事を言っても、仕方がないだろう。それにしても、クリスの奴、本当にバカだよな。俺の嘘の報告書をまんまと信じてさ。結局あいつも、リリアナ嬢の事なんて、ろくに見ていなかったのだろうな」
「王太子殿下をバカと言うだなんて。誰かに聞かれたら大変よ。でも、あそこまでうまくいくだなんてね。私、リリアナ様みたいないい子ちゃん、嫌いだから消えてくれてよかったわよ。最期のリリアナ様、かなり苦しんで死んだのでしょう?」
「ああ、何度も血を吐きながら、もがき苦しみながら死んでいったよ。本当にイザベルは罪だよな。何の罪もないリリアナ嬢を、あんな残酷な殺し方で殺すだなんて」
「あら、殺し方を決めたのは私ではないわ。もう死んだ女の話なんてやめましょう。それよりも、クリス様に私の件、上手く話してよ」
「ああ、分かっているよ。可愛いイザベルためなら、俺は何でもするよ。今夜、イザベルの部屋に行ってもいいかな?今日もいっぱい愛し合いたい…」
「別に構わないけれど、妊娠したら困るから、ちゃんと避妊はしてよね」
そう言いながら、熱烈な口づけをする2人。そんな2人を見つめなら、僕は血が出るのではないかというくらい、強く拳を握った。
リリアナは何も悪い事などしていなかった。それなのに僕は、あいつらの言う事を鵜呑みして、リリアナを…
本来なら婚約者でもある僕が、リリアナを守らなければいけなかったのに、守るどころか、彼女を傷つけた。
何度も何度もリリアナは僕に“私はやっていない”そう訴えていたのに。僕は彼女の言う事を全く信じなかったのだ。そして、リリアナは無実の罪で殺された。
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そんな事って、許されるのか?リリアナはあの日、どんな思いで死んでいったのだろう。きっと全てに絶望し、それでも家族だけは!そんな思いで、僕に訴えたのだろう。それなのに僕は…
「リリアナ、ごめんね…僕が大バカ者のせいで、君を死なせてしまった。君を殺したのは、僕だ…」
ポロポロと溢れる涙を止める事が出来ずに、僕はその場で泣き崩れた。
リリアナ!リリアナ!
僕の大切な人、君が人を傷つける様な子じゃないという事を、僕が一番分かっていたはずなのに。それなのに僕は…
一番味方にならないといけない僕にまで裏切られて、絶望の中死んでいったのだね。本当にごめん。謝っても許される事ではない事は分かっている。
でも、僕は…
ふと顔を上げると、まだイチャイチャしているあいつらの姿が目に入った。
お前たちだけは、絶対に許さない!
今までに感じた事のない怒りが、僕を支配した。今すぐあいつらの元に駆けつけたい衝動を必死に抑え、僕は一旦部屋に戻った。
そして僕は、リリアナの無念を晴らすべく、あいつらの悪事を全て暴く事にしたのだ。
その日以降、僕は何かに憑りつかれた様に、イザベルとマーデンを監視した。その結果、イザベルは侯爵令嬢でもあるカーラとも友人関係である事を突き止めた。どうやらカーラは、イザベルに絶対的服従を誓っている様で、彼女の為なら自分の命をなげうっても構わないと考えている様だ。
そう、カーラが自分の命を懸けてまで、虚偽の証言をしたのは、そのためだったのだ。そしてリリアナのカバンに毒を仕込んだのも、メイドに嘘の証言をさせたのも、カーラだったのだ。
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そうとも知らずに、僕はあの男の事を信じ、リリアナを一方的に悪者にした。そう、リリアナはイザベルに酷い暴力も暴言を一切行っていなかったのだ。それどころか、リリアナはイザベルに恐怖を感じ、極力近づかない様にしていたことも分かった。
僕は本当に、何も見えていなかったのだ。
その事実が、僕の心に突き刺さる。それでも僕は、イザベル・マーデン・カーラを地獄に叩き落すことだけを糧に、必死に証拠を集めた。そして全ての証拠がそろったのだった。
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