11 / 55
第11話:幸せだったはずなのに…~クリス視点~
しおりを挟む
「クリス殿下、勝手にカルソル公爵家に行ったそうですね。何をお考えになっているのですか?あなた様とリリアナ様は、まだ正式に婚約を結んでいないのですよ。それなのに、婚約者でもない令嬢の家に行くだなんて。その上、事前に許可を取っていなかったと聞きます。その様な無礼な事をなさるだなんて。大体あなた様は…」
「悪いがお説教なら後で聞くよ。今は、1人にしてくれるかい?」
「クリス殿下!話はまだ…」
怒り狂う執事を部屋から追い出した。そして、ソファに座った。
「リリアナ…僕の大切なリリアナ。あんなに素敵な令嬢を、僕は…」
昨日のお茶会で、リリアナとろくに話が出来なかった僕は、居てもたってもいられず、今日貴族の掟を破り、リリアナに会いに行った。
もしリリアナに拒まれたら…その事も覚悟していた。でも彼女は、僕を受け入れてくれたのだ。
今度こそ僕の手で、リリアナを幸せにしたい。もう二度と、リリアナを苦しませたくはない。もう二度と、あんな思いはしたくない。もう二度と、僕は過ちを繰り返さない。絶対に!
そんな思いで僕は、2度目の生を生きているのだ。そう、僕には1度目の生の時の記憶がある。あの頃の僕は、本当に愚かだった。そのせいで、大切なリリアナを殺してしまったのだから…
~1度目の生の時の記憶~
10歳で僕は、リリアナと婚約を結んだ。周りからは政略結婚と言われていたが、僕は密かにリリアナに恋心を抱いていた。リリアナは昔から、一歩引いた性格で、あえて僕のところに来たりしない。
彼女はいつも、テーブルでお菓子とお茶を楽しんでいるマイペースな子だった。初めて彼女に会った時も、皆がおしゃべりをしている中、1人イスに座り、優雅にお茶を楽しんでいたのだ。
その姿が逆に目立っていて、僕は彼女に興味を抱き、話しかけた。すると
「殿下もお茶をどうぞ。お茶会なのに、皆おしゃべりに夢中で、ちっともお茶を楽しまないのですよ。せっかく使用人たちが一生懸命準備してくださったのに。こんなに美味しいお茶とお菓子を楽しまないなんて、おかしいですわよね」
そう言って笑ったのだ。その笑顔が、とても可愛らしくて、僕の鼓動が一気に早くなるのを感じた。それと同時に、彼女は本来の目的を遂行するべく、こうやってお茶を楽しんでいた様だ。
準備してくれた使用人たちの事も考えられる、優しい子。それがリリアナだ。そんなリリアナに興味を持った僕は、頻繁に色々な催しを開催した。時には皆でピクニックにも行った。
令嬢たちが
“野蛮な動物がいる”だの、“虫が近くにいて気持ち悪い”だの騒いでいる中、リリアナは1人、嬉しそうに野山を見て回っていた。綺麗な花を見つけては微笑、小動物を見ては笑顔になる。しまいには怪我をしていた子ウサギを見つけ、手当てまでしていた。
そんなリリアナに、僕はどんどん惹かれていった。そして僕たちが10歳の時、僕の念願叶い、晴れて婚約者同士になったのだ。僕の婚約者になったリリアナは、毎日王宮に通い、厳しい王妃教育も文句ひとつ言わずにこなしていった。
リリアナは誰にでも優しく、王宮の使用人たちともすぐに仲良くなった。もちろん僕も、リリアナとの時間を大切にした。そう、僕にとってリリアナとの時間は、本当に楽しくて幸せな時間だった。
でも、その幸せは長くは続かなかったのだ。僕たちは13歳になると、2年間貴族学院という場所に通う。貴族学院は、貴族や王族は必ず通う様義務付けられている場所だ。
僕たちも当たり前の様に、貴族学院に入った。そこで出ったのが、侯爵令嬢のイザベルだった。桃色の髪に水色の瞳をした可愛らしい令嬢だ。彼女は体が弱く、ずっと領地で暮していたとの事。
人懐っこくて距離が近いイザベル。僕にもニコニコしながら話しかけてきたのだ。危なっかしくて、どこか目が離せないそんなイザベルに、僕もつい世話を焼いてしまった。
ただ、そんなイザベルを、リリアナは快く思っていなかった様で…
「イザベル様、婚約者のいらっしゃる殿方に、むやみやたらに触れるものではありませんわ」
そう言って、よく注意をしていた。ずっと領地で生活をしていたイザベルは、少し世間知らずなところがあるから、親切なリリアナが教えてあげているのだろう、そう僕は思っていた。
しかしある日、顔が真っ赤に腫れ上がったイザベルが、泣きながら僕の元にやって来たのだ。一体どうしたというのだろう。話を聞くと
「リリアナ様にやられましたの。私がクリス様と仲良くしていることが、気に入らない様で…“クリス様に二度と近づかないで。もしまた近づいたら、この程度では済ませないわよ”そう言われてしまって…」
そう言って泣き崩れてしまったのだ。あり得ない、リリアナがそんな酷い事をするだなんて。でも、実際イザベルの顔は腫れあがっている。
その後もイザベルは、リリアナから階段から突き落とされたと訴えたり、水を掛けられたと訴えたりしてきたのだ。さすがにこれは酷い、そう思い、僕は幼馴染でもある、侯爵令息のマーデンに調査を依頼した。
彼は非常に優秀で、将来僕の右腕として期待されている人物だ。マーデンには絶大な信頼を寄せているのだ。早速マーデンが調査を開始してくれた。
「悪いがお説教なら後で聞くよ。今は、1人にしてくれるかい?」
「クリス殿下!話はまだ…」
怒り狂う執事を部屋から追い出した。そして、ソファに座った。
「リリアナ…僕の大切なリリアナ。あんなに素敵な令嬢を、僕は…」
昨日のお茶会で、リリアナとろくに話が出来なかった僕は、居てもたってもいられず、今日貴族の掟を破り、リリアナに会いに行った。
もしリリアナに拒まれたら…その事も覚悟していた。でも彼女は、僕を受け入れてくれたのだ。
今度こそ僕の手で、リリアナを幸せにしたい。もう二度と、リリアナを苦しませたくはない。もう二度と、あんな思いはしたくない。もう二度と、僕は過ちを繰り返さない。絶対に!
そんな思いで僕は、2度目の生を生きているのだ。そう、僕には1度目の生の時の記憶がある。あの頃の僕は、本当に愚かだった。そのせいで、大切なリリアナを殺してしまったのだから…
~1度目の生の時の記憶~
10歳で僕は、リリアナと婚約を結んだ。周りからは政略結婚と言われていたが、僕は密かにリリアナに恋心を抱いていた。リリアナは昔から、一歩引いた性格で、あえて僕のところに来たりしない。
彼女はいつも、テーブルでお菓子とお茶を楽しんでいるマイペースな子だった。初めて彼女に会った時も、皆がおしゃべりをしている中、1人イスに座り、優雅にお茶を楽しんでいたのだ。
その姿が逆に目立っていて、僕は彼女に興味を抱き、話しかけた。すると
「殿下もお茶をどうぞ。お茶会なのに、皆おしゃべりに夢中で、ちっともお茶を楽しまないのですよ。せっかく使用人たちが一生懸命準備してくださったのに。こんなに美味しいお茶とお菓子を楽しまないなんて、おかしいですわよね」
そう言って笑ったのだ。その笑顔が、とても可愛らしくて、僕の鼓動が一気に早くなるのを感じた。それと同時に、彼女は本来の目的を遂行するべく、こうやってお茶を楽しんでいた様だ。
準備してくれた使用人たちの事も考えられる、優しい子。それがリリアナだ。そんなリリアナに興味を持った僕は、頻繁に色々な催しを開催した。時には皆でピクニックにも行った。
令嬢たちが
“野蛮な動物がいる”だの、“虫が近くにいて気持ち悪い”だの騒いでいる中、リリアナは1人、嬉しそうに野山を見て回っていた。綺麗な花を見つけては微笑、小動物を見ては笑顔になる。しまいには怪我をしていた子ウサギを見つけ、手当てまでしていた。
そんなリリアナに、僕はどんどん惹かれていった。そして僕たちが10歳の時、僕の念願叶い、晴れて婚約者同士になったのだ。僕の婚約者になったリリアナは、毎日王宮に通い、厳しい王妃教育も文句ひとつ言わずにこなしていった。
リリアナは誰にでも優しく、王宮の使用人たちともすぐに仲良くなった。もちろん僕も、リリアナとの時間を大切にした。そう、僕にとってリリアナとの時間は、本当に楽しくて幸せな時間だった。
でも、その幸せは長くは続かなかったのだ。僕たちは13歳になると、2年間貴族学院という場所に通う。貴族学院は、貴族や王族は必ず通う様義務付けられている場所だ。
僕たちも当たり前の様に、貴族学院に入った。そこで出ったのが、侯爵令嬢のイザベルだった。桃色の髪に水色の瞳をした可愛らしい令嬢だ。彼女は体が弱く、ずっと領地で暮していたとの事。
人懐っこくて距離が近いイザベル。僕にもニコニコしながら話しかけてきたのだ。危なっかしくて、どこか目が離せないそんなイザベルに、僕もつい世話を焼いてしまった。
ただ、そんなイザベルを、リリアナは快く思っていなかった様で…
「イザベル様、婚約者のいらっしゃる殿方に、むやみやたらに触れるものではありませんわ」
そう言って、よく注意をしていた。ずっと領地で生活をしていたイザベルは、少し世間知らずなところがあるから、親切なリリアナが教えてあげているのだろう、そう僕は思っていた。
しかしある日、顔が真っ赤に腫れ上がったイザベルが、泣きながら僕の元にやって来たのだ。一体どうしたというのだろう。話を聞くと
「リリアナ様にやられましたの。私がクリス様と仲良くしていることが、気に入らない様で…“クリス様に二度と近づかないで。もしまた近づいたら、この程度では済ませないわよ”そう言われてしまって…」
そう言って泣き崩れてしまったのだ。あり得ない、リリアナがそんな酷い事をするだなんて。でも、実際イザベルの顔は腫れあがっている。
その後もイザベルは、リリアナから階段から突き落とされたと訴えたり、水を掛けられたと訴えたりしてきたのだ。さすがにこれは酷い、そう思い、僕は幼馴染でもある、侯爵令息のマーデンに調査を依頼した。
彼は非常に優秀で、将来僕の右腕として期待されている人物だ。マーデンには絶大な信頼を寄せているのだ。早速マーデンが調査を開始してくれた。
858
お気に入りに追加
2,390
あなたにおすすめの小説

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました
神村 月子
恋愛
貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。
彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。
「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。
登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。
※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる