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第10話:あの人、あんなキャラだったかしら?
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「クリス殿下、あの…さっきからおっしゃっていることが、私にはよくわからないのですが…」
訳の分からない事を言っているクリス殿下。一体彼の身に何が起きたのだろう、そう思ってしまうほど、言動がおかしいのだ。
「すまない、何でもないよ!リリアナが僕を嫌っていないなら、よかった。リリアナ、公爵から話しはある程度聞いているかとは思うが、僕はリリアナの事を、心から愛している。僕は愚かで、人間を見る目がないところがある。大切な人を失って、初めて自分の愚かさに気が付くような、ろくでもない人間だ。でも…今度こそ僕は、君を幸せにしたい。どうか…どうか僕の婚約者になってください」
真っすぐ私を見つめるクリス殿下。その瞳は、不安そうだ。
ん?ちょっと待って!今私、クリス殿下にプロポーズされた?嘘でしょ、この世界は基本的に、政略結婚だ。確か漫画の世界でも、クリス殿下とリリアナは政略結婚だったはず…
通常政略結婚の場合、この様なプロポーズは行わないのが一般的だ。それなのに、どうして?
というよりも、前世の生から考えても、プロポーズなんてされたのは生まれて初めてだわ。こんな風に私の事を思ってくれているだなんて…
ただ…プロポーズの内容が、少しおかしい様な…て、その点はまあいいか。
既に私とクリス殿下は、お父様と陛下、王妃殿下との話し合いで婚約をする事が決まっていたはず。それなのに、改めてプロポーズしてくれるだなんて、嬉しいわ。
「クリス殿下、素敵なプロポーズ、ありがとうございます。あなた様は愚かでもろくでもない人間でもありませんわ。お優しくてとても魅力的な方です。私でよろしければ、どうぞよろしくお願いします」
どう転んでも、私とクリス殿下は婚約を結ぶことは決まっている。私がクリス殿下の婚約者になった時点で、もうイザベルと直接対決は避けられない。もしかしたら、私は漫画通りの道を歩むかも…
いいえ、私は悲劇の公爵令嬢になんて、なるつもりはない。大丈夫よ、私は漫画を何度も読んでいる。イザベルの手口も把握している。それに何よりも、今回はイザベルの右腕でもある、カーラは私の手の中にあるし。きっと大丈夫なはずだ。
ただ…
クリス殿下と正式に婚約を結ぶという事は、もう逃げられないという事。そう考えると、やはり恐怖心が湧いてくる。
「リリアナ、不安そうな顔をしてどうしたのだい?僕と婚約するのが、嫌なのかい?僕が必ず君を守るよ。たとえこの命に代えても!だからどうか、そんな顔をしないで欲しい」
切なそうに、私を見つめるクリス殿下。
「ごめんなさい、少し考え事をしていただけですわ。私はクリス殿下との婚約が、決して嫌という訳ではございません。どうかよろしくお願いします」
前世の記憶が戻った時点で、私はイザベルと戦う道を選んだのだ。今更何を怖がっているのだろう。この戦いに必ず勝利して、リリアナを、私自身を幸せにして見せる。
それが、私が転生した意味だと思っているから。
「ありがとう、リリアナ。君の気持ちが知れてよかったよ。後で公爵から話しがあると思うけれど、明日両家の人間が集まり、僕とリリアナが婚約を結ぶことが正式に決まるはずだ。明日中には、貴族中に僕たちの婚約が発表されることになっている。ただ、その前にどうしてもリリアナに会っておきたくて」
「そうだったのですね。わざわざ私の為に足を運んでくださり、ありがとうございました」
クリス殿下って、こんなタイプの男性だったかしら?もっと消極的な男性のイメージを持っていた。とはいえ、私が知っているクリス殿下は、貴族学院に入学した後の13歳からだものね。
彼はまだ10歳だから、印象も違うのかもしれない。
「それじゃあ僕は、そろそろ帰るよ。急に押しかけてごめんね。それから、明日には僕たちは正式に婚約者になるのだから、どうか僕の事を殿下と呼ばないで欲しいな。殿下と呼ばれると、距離がある感じがして、悲しいんだ」
「分かりましたわ、では、クリス様とお呼びさせていただきますね」
私がそう伝えると、それは嬉しそうに笑ったのだ。名前で呼ばれることが、そんなに嬉しい事なのかしら?
よくわからないが、クリス様を見送るため、門までやって来た。
「見送りに来てくれてありがとう。それじゃあ、明日王宮で待っているよ。リリアナ…今日君に会えて、本当によかった。それじゃあ、また明日」
「こちらこそ、わざわざ足を運んでくださり、ありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい。それでは、また明日」
笑顔で馬車に向かって手を振る。すると何を思ったのか、クリス様が窓を開け、身を乗り出して手を振っているではないか。さすがに危ない。必死に止める様に叫んだが、聞こえていないのか、姿が見えなくなるまでずっと手を振り続けていた。
あの人、あんなキャラだったかしら?そう思うほど、漫画の中のクリス様と今日のクリス様の印象が違うのだ。というよりも、以前までのクリス様はもう少し大人しかった。でも、今日のクリス様は…
過去の記憶をたどっても、やっぱり今日のクリス様は少し変だった気がする。とはいえ、いよいよ明日、私は彼と婚約する。婚約を結んでしまえば、もう私は逃げられない。
気を引き締めていかないと。
そして翌日、ストーリー通り、私とクリス様は正式に婚約を結んだのだった。
※次回、クリス視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
訳の分からない事を言っているクリス殿下。一体彼の身に何が起きたのだろう、そう思ってしまうほど、言動がおかしいのだ。
「すまない、何でもないよ!リリアナが僕を嫌っていないなら、よかった。リリアナ、公爵から話しはある程度聞いているかとは思うが、僕はリリアナの事を、心から愛している。僕は愚かで、人間を見る目がないところがある。大切な人を失って、初めて自分の愚かさに気が付くような、ろくでもない人間だ。でも…今度こそ僕は、君を幸せにしたい。どうか…どうか僕の婚約者になってください」
真っすぐ私を見つめるクリス殿下。その瞳は、不安そうだ。
ん?ちょっと待って!今私、クリス殿下にプロポーズされた?嘘でしょ、この世界は基本的に、政略結婚だ。確か漫画の世界でも、クリス殿下とリリアナは政略結婚だったはず…
通常政略結婚の場合、この様なプロポーズは行わないのが一般的だ。それなのに、どうして?
というよりも、前世の生から考えても、プロポーズなんてされたのは生まれて初めてだわ。こんな風に私の事を思ってくれているだなんて…
ただ…プロポーズの内容が、少しおかしい様な…て、その点はまあいいか。
既に私とクリス殿下は、お父様と陛下、王妃殿下との話し合いで婚約をする事が決まっていたはず。それなのに、改めてプロポーズしてくれるだなんて、嬉しいわ。
「クリス殿下、素敵なプロポーズ、ありがとうございます。あなた様は愚かでもろくでもない人間でもありませんわ。お優しくてとても魅力的な方です。私でよろしければ、どうぞよろしくお願いします」
どう転んでも、私とクリス殿下は婚約を結ぶことは決まっている。私がクリス殿下の婚約者になった時点で、もうイザベルと直接対決は避けられない。もしかしたら、私は漫画通りの道を歩むかも…
いいえ、私は悲劇の公爵令嬢になんて、なるつもりはない。大丈夫よ、私は漫画を何度も読んでいる。イザベルの手口も把握している。それに何よりも、今回はイザベルの右腕でもある、カーラは私の手の中にあるし。きっと大丈夫なはずだ。
ただ…
クリス殿下と正式に婚約を結ぶという事は、もう逃げられないという事。そう考えると、やはり恐怖心が湧いてくる。
「リリアナ、不安そうな顔をしてどうしたのだい?僕と婚約するのが、嫌なのかい?僕が必ず君を守るよ。たとえこの命に代えても!だからどうか、そんな顔をしないで欲しい」
切なそうに、私を見つめるクリス殿下。
「ごめんなさい、少し考え事をしていただけですわ。私はクリス殿下との婚約が、決して嫌という訳ではございません。どうかよろしくお願いします」
前世の記憶が戻った時点で、私はイザベルと戦う道を選んだのだ。今更何を怖がっているのだろう。この戦いに必ず勝利して、リリアナを、私自身を幸せにして見せる。
それが、私が転生した意味だと思っているから。
「ありがとう、リリアナ。君の気持ちが知れてよかったよ。後で公爵から話しがあると思うけれど、明日両家の人間が集まり、僕とリリアナが婚約を結ぶことが正式に決まるはずだ。明日中には、貴族中に僕たちの婚約が発表されることになっている。ただ、その前にどうしてもリリアナに会っておきたくて」
「そうだったのですね。わざわざ私の為に足を運んでくださり、ありがとうございました」
クリス殿下って、こんなタイプの男性だったかしら?もっと消極的な男性のイメージを持っていた。とはいえ、私が知っているクリス殿下は、貴族学院に入学した後の13歳からだものね。
彼はまだ10歳だから、印象も違うのかもしれない。
「それじゃあ僕は、そろそろ帰るよ。急に押しかけてごめんね。それから、明日には僕たちは正式に婚約者になるのだから、どうか僕の事を殿下と呼ばないで欲しいな。殿下と呼ばれると、距離がある感じがして、悲しいんだ」
「分かりましたわ、では、クリス様とお呼びさせていただきますね」
私がそう伝えると、それは嬉しそうに笑ったのだ。名前で呼ばれることが、そんなに嬉しい事なのかしら?
よくわからないが、クリス様を見送るため、門までやって来た。
「見送りに来てくれてありがとう。それじゃあ、明日王宮で待っているよ。リリアナ…今日君に会えて、本当によかった。それじゃあ、また明日」
「こちらこそ、わざわざ足を運んでくださり、ありがとうございました。お気をつけてお帰り下さい。それでは、また明日」
笑顔で馬車に向かって手を振る。すると何を思ったのか、クリス様が窓を開け、身を乗り出して手を振っているではないか。さすがに危ない。必死に止める様に叫んだが、聞こえていないのか、姿が見えなくなるまでずっと手を振り続けていた。
あの人、あんなキャラだったかしら?そう思うほど、漫画の中のクリス様と今日のクリス様の印象が違うのだ。というよりも、以前までのクリス様はもう少し大人しかった。でも、今日のクリス様は…
過去の記憶をたどっても、やっぱり今日のクリス様は少し変だった気がする。とはいえ、いよいよ明日、私は彼と婚約する。婚約を結んでしまえば、もう私は逃げられない。
気を引き締めていかないと。
そして翌日、ストーリー通り、私とクリス様は正式に婚約を結んだのだった。
※次回、クリス視点です。
よろしくお願いしますm(__)m
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