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第5話:黙っていられません
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「で…でも、これ以上リリアナ様に、ご迷惑をおかけする訳にはいきませんわ」
悲しそうに俯くカーラの姿に、なぜか胸が苦しくなる。
「カーラ様はお怪我をしているのですから、お送りするのは当然ですわ。それに、ドレスも髪も乱れておりますでしょう?ご家族にも何が起こったのか、しっかり説明する義務が私にはあると思いますの。あなた、すぐにミュースト侯爵家に向かって頂戴」
御者に指示を出すと、そのまま馬車が走り出した。
ふとカーラの方を見ると、小刻みに震えていた。漫画ではいつも不敵な笑みを浮かべ、イザベルの言う通りに動いていたカーラ。でも今のカーラは、何かに怯えた幼い少女の様に見える。
まるで漫画のカーラとは別人のように…
「カーラ様、大丈夫ですか?震えていらっしゃるようですが。私がしっかりとご両親に事情を説明いたしますから、どうかご安心ください」
彼女の背中をゆっくりと撫で続けた。
そして、ミュースト侯爵家に到着した。
「カーラ様、私も一緒に参りますから」
そう伝えたのだが…
「これ以上リリアナ様に、ご迷惑をおかけする訳にはいきませんわ。送って頂き、ありがとうございました。私に優しくして頂いた事、一生忘れませんわ」
ペコリと頭を下げると、そのまま馬車から降りて行ってしまったのだ。
「待って…」
そう声を掛けたのだが、彼女が振り向く事はなかった。
本当に1人で大丈夫なのかしら?
ふとさっきまで小刻みに震えていたカーラの姿が、脳裏によぎった。いいえ、大丈夫な訳がないわ。
「私、やっぱりカーラ様が心配だから、ちょっと行ってくるわね」
「お待ちください、お嬢様」
どうしてもカーラの事が気になる。そんな思いで、カーラの後を追った。門番にも事情を話し、そのまま入れてもらった。
すると…
「カーラ、カルロスから聞いたぞ!お前は一体何を考えているのだ!リリアナ嬢に無礼を働いたそうじゃないか?」
「どうして王宮のお茶会に参加して、そんなにドレスが汚れているの?髪だって乱れているし…本当にあなたは、どうしようもない子ね!」
玄関の外では、両親から責められているカーラの姿が。両親の隣では、にやにやと笑っている男が。そう、あの男こそ、カーラ様を蹴り倒していた張本人、彼女の兄のカルロスだ。
おのれカルロスめ!きっとあることない事両親に話したのね。
当のカーラ様は、何も言い返さず、ただ俯いているだけ。
「父上、だから言ったでしょう。カーラを王宮のお茶会に連れて行くのはよした方がよいと。もしかしたらリリアナ嬢の家から、抗議文が届くかもしれませんよ。まさかリリアナ嬢に、無礼を働くだなんて。本当にどうしようもない奴だ」
どうしようもないのは、あなたでしょう!さすがにもう我慢できない。
「カルロスの言う通り、お前は本当にどうしようもない娘の様だ!王太子殿下に近づく事すら出来ないどころか、殿下の婚約者有力候補のリリアナ嬢を怒らせるだなんて!どこまで我が家を落とせば気が済むのだ!お前はもう、しばらくお茶会には参加させない。もちろん、しばらく部屋から出る事を禁じる。狭い部屋で、反省を…」
「お取込み中、申し訳ございません。急に押しかけて、ごめんなさい。少し宜しいでしょうか?」
極力穏やかな表情で、彼らに近づいた。そして、すっとカーラ様の隣に並んだ。
「リリアナ嬢、本日は我が娘が無礼を働き、本当に申し訳ございませんでした。娘にはきつく言い聞かせておきます。ですので、どうか穏便に…」
必死にミュースト侯爵が、私に訴えかけて来た。
「ミュースト侯爵様、頭をお上げください。何か誤解をされている様ですが、カーラ様からは何も無礼な事などされておりませんわ。そちらにいらっしゃるカルロス様からは、非常に不快な思いをさせられましたが」
にっこりとカルロス様の方を向いた。
「どういうことですか?」
「どうもこうもありませんわ。私が王宮の中庭の奥を散歩しておりましたら、あろう事か令息3人が令嬢を取り囲み、寄ってたかって殴る蹴るなどの暴行を加えているではありませんか。まさか、王太子殿下主催のお茶会で、その様な有るまじき行為を行うだなんて。ちなみに、暴行を加えていたのが、カルロス様含めた令息3人、暴行を受けていたのが、カーラ様ですわ」
私は少し大げさなくらい、身振り手振りを交えて話をしたのだった。
悲しそうに俯くカーラの姿に、なぜか胸が苦しくなる。
「カーラ様はお怪我をしているのですから、お送りするのは当然ですわ。それに、ドレスも髪も乱れておりますでしょう?ご家族にも何が起こったのか、しっかり説明する義務が私にはあると思いますの。あなた、すぐにミュースト侯爵家に向かって頂戴」
御者に指示を出すと、そのまま馬車が走り出した。
ふとカーラの方を見ると、小刻みに震えていた。漫画ではいつも不敵な笑みを浮かべ、イザベルの言う通りに動いていたカーラ。でも今のカーラは、何かに怯えた幼い少女の様に見える。
まるで漫画のカーラとは別人のように…
「カーラ様、大丈夫ですか?震えていらっしゃるようですが。私がしっかりとご両親に事情を説明いたしますから、どうかご安心ください」
彼女の背中をゆっくりと撫で続けた。
そして、ミュースト侯爵家に到着した。
「カーラ様、私も一緒に参りますから」
そう伝えたのだが…
「これ以上リリアナ様に、ご迷惑をおかけする訳にはいきませんわ。送って頂き、ありがとうございました。私に優しくして頂いた事、一生忘れませんわ」
ペコリと頭を下げると、そのまま馬車から降りて行ってしまったのだ。
「待って…」
そう声を掛けたのだが、彼女が振り向く事はなかった。
本当に1人で大丈夫なのかしら?
ふとさっきまで小刻みに震えていたカーラの姿が、脳裏によぎった。いいえ、大丈夫な訳がないわ。
「私、やっぱりカーラ様が心配だから、ちょっと行ってくるわね」
「お待ちください、お嬢様」
どうしてもカーラの事が気になる。そんな思いで、カーラの後を追った。門番にも事情を話し、そのまま入れてもらった。
すると…
「カーラ、カルロスから聞いたぞ!お前は一体何を考えているのだ!リリアナ嬢に無礼を働いたそうじゃないか?」
「どうして王宮のお茶会に参加して、そんなにドレスが汚れているの?髪だって乱れているし…本当にあなたは、どうしようもない子ね!」
玄関の外では、両親から責められているカーラの姿が。両親の隣では、にやにやと笑っている男が。そう、あの男こそ、カーラ様を蹴り倒していた張本人、彼女の兄のカルロスだ。
おのれカルロスめ!きっとあることない事両親に話したのね。
当のカーラ様は、何も言い返さず、ただ俯いているだけ。
「父上、だから言ったでしょう。カーラを王宮のお茶会に連れて行くのはよした方がよいと。もしかしたらリリアナ嬢の家から、抗議文が届くかもしれませんよ。まさかリリアナ嬢に、無礼を働くだなんて。本当にどうしようもない奴だ」
どうしようもないのは、あなたでしょう!さすがにもう我慢できない。
「カルロスの言う通り、お前は本当にどうしようもない娘の様だ!王太子殿下に近づく事すら出来ないどころか、殿下の婚約者有力候補のリリアナ嬢を怒らせるだなんて!どこまで我が家を落とせば気が済むのだ!お前はもう、しばらくお茶会には参加させない。もちろん、しばらく部屋から出る事を禁じる。狭い部屋で、反省を…」
「お取込み中、申し訳ございません。急に押しかけて、ごめんなさい。少し宜しいでしょうか?」
極力穏やかな表情で、彼らに近づいた。そして、すっとカーラ様の隣に並んだ。
「リリアナ嬢、本日は我が娘が無礼を働き、本当に申し訳ございませんでした。娘にはきつく言い聞かせておきます。ですので、どうか穏便に…」
必死にミュースト侯爵が、私に訴えかけて来た。
「ミュースト侯爵様、頭をお上げください。何か誤解をされている様ですが、カーラ様からは何も無礼な事などされておりませんわ。そちらにいらっしゃるカルロス様からは、非常に不快な思いをさせられましたが」
にっこりとカルロス様の方を向いた。
「どういうことですか?」
「どうもこうもありませんわ。私が王宮の中庭の奥を散歩しておりましたら、あろう事か令息3人が令嬢を取り囲み、寄ってたかって殴る蹴るなどの暴行を加えているではありませんか。まさか、王太子殿下主催のお茶会で、その様な有るまじき行為を行うだなんて。ちなみに、暴行を加えていたのが、カルロス様含めた令息3人、暴行を受けていたのが、カーラ様ですわ」
私は少し大げさなくらい、身振り手振りを交えて話をしたのだった。
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