3 / 55
第3話:愚かな令息どもを追い払って差し上げました
しおりを挟む
皆が一斉に、入り口の方に目をやる。すると王妃殿下と一緒に、穏やかな表情を浮かべたクリス殿下がやって来たのだ。金色の美しい髪に真っ青な瞳、彼はかなりの美少年だ。
改めてクリス殿下を見たが、彼は美しい。さすがヒーローね。
次の瞬間、バッチリと目が合った。一応ほほ笑んでおく。すると、一瞬目を大きく見開いたクリス殿下が、今にも泣きそうな顔をしたのだ。一体どうしたというのかしら?私の顔を見て、あの様な表情をするだなんて。
「皆様、今日は僕の為にお集まりいただき、ありがとうございます。どうか楽しんでいってください」
さっきとはうって変わって、穏やかな表情で挨拶をするクリス殿下。さっきの顔は、私の気のせいだったのかもしれないわね。
クリス殿下の挨拶で、お茶会スタートだ。お茶会と言っても参加者が多いため、一応お茶を楽しめるテーブルとイス、お菓子やお茶などは準備されているが、皆イスに座ってお茶を楽しむというよりは、好き勝手移動して、色々な人と話をしている事の方が多いのだ。
ただ、私はイスに座って美しい中庭を見つめながら、ゆっくりお茶を楽しむのが好きなのだ。今日もイスに座り、お茶とお菓子を楽しむ。そう、前世の記憶が戻っても、私はいつも通り過ごすことにした。
「リリアナ様、お隣よろしいですか?」
「ええ、もちろんですわ」
いつもの様に、令嬢たちが私の隣にやって来たのだ。
「殿下の周りには、令嬢が群がっておられますね。既にリリアナ様とご婚約されることが決まっていらっしゃるのに…愚かね」
「まだ正式に発表されておりませんので、ご自分にもチャンスがあると思っていらっしゃっているのでしょう…」
「貴族令嬢たるもの、時間は有効に使わないといけませんのに」
令嬢たちが口元に扇子を当て、クリス殿下に群がる令嬢たちを残念そうに見つめている。要するに彼女たちは、婚約者がほぼ決まっている殿下に近づくよりも、ほぼ婚約者に内定している私に近づいた方が、後々優位に立てると踏んでいるのだろう。
貴族社会はいつも、駆け引きが行われている。子供たちの間でも同じだ。正直日本人の記憶を取り戻した私は、心から信頼できる友人が欲しいところだが、この世界では無理そうね。
現にクリス殿下は、信頼していた親友にあっさり裏切られているし…
いくらぜいたくな暮らしが出来ても、心から信頼できる友人がいない世界。いつも誰かを疑わなければいけない世界で生きていかないといけないというのも、辛い事よね…
「皆様、私は少し中庭を散歩して参りますわ。それでは、ごきげんよう」
なんだか少し疲れた。気分転換に、中庭の奥に進んでいく。やはり王宮の中庭は、とても綺麗だ。でも、随分と奥に来てしまったわね。そろそろ戻らないと…
その時だった。
「お前、なに王宮でお菓子をぼりぼり貪っているのだよ!本当に俺は、お前の様な妹を持って恥ずかしい」
「ごめんなさい、お兄様」
「お前の妹、本当にブスでデブでみっともないよな。豚だな、豚」
「本当だな」
ん?この声は?
声の方に向かうと、令息3人が令嬢を真ん中に囲み、殴るけるの暴行を加えていたのだ。なんて酷い事をしているのかしら?か弱い令嬢を囲んで、暴力をふるうだなんて。
クズの極みどもめ!私が成敗してやるわ!
ドレスをまくり上げ、がに股で男たちに近づく…が、私はこれでも公爵令嬢だ。近くまで来ると、ドレスを元に戻し、笑顔を作った。そして…
「あなた達、一体何をなさっているのですか?」
満面の笑みで、話し掛けたのだ。びくっと肩を震わせ、ゆっくりこっちを見た男ども。
「どうしてここに、リリアナ嬢が…」
「私が王宮のお庭を散歩していては、いけませんか?それよりもあなた達、1人の令嬢を寄ってたかって3人で虐めるだなんて!それもこんな人気のないところで。恥ずかしくはないのですか?この外道共が!」
感情が高ぶり、つい声を荒げてしまった。
「あら、失礼いたしました。まさか令嬢1人に対し、令息が3人で虐めているだなんて。我が目を疑うあり得ない現場を目撃してしまいましたので、感情が高ぶってしまいましたわ。それにしても、本当に最低な人たちですわね」
扇子で口元を隠し、心底軽蔑の眼差しを向ける。
「あの…違うのです。リリアナ嬢、これには理由が…」
「どんな理由であれ、大勢の令息が1人の令嬢を虐めてよい訳がありませんわ。今回の件、私は見たままを、あなた達のお家に報告させていただきますから、そのつもりで」
にっこりとほほ笑んで、そう告げてやった。本当にゲスの極みどもめ!
「さあ、話しはもう終わりです。目障りですので、さっさと私の前から立ち去ってください」
真っ青な顔をしている令息たちを、シッシッと追い払う。どんな理由があろうと、令嬢を虐めるゲスどもを許すつもりはない。そもそも王族主催のお茶会で、よくこの様なはしたない真似が出来たものだ。
その件も、彼らの家にはしっかり報告しないと!
「あの…申し訳ございませんでした。ですが…」
「私の言った事が聞こえなかったのですか?目障りなので、さっさと消えて下さいませ」
目を大きく見開きながら、彼らを見つめた。口元は扇子で隠しているが、かなりの迫力だろう。これ以上公爵令嬢でもある私を怒らせるのは良くないと思ったのだろう。不満そうな顔で去っていく男たち。
おとといきやがれですわ!
改めてクリス殿下を見たが、彼は美しい。さすがヒーローね。
次の瞬間、バッチリと目が合った。一応ほほ笑んでおく。すると、一瞬目を大きく見開いたクリス殿下が、今にも泣きそうな顔をしたのだ。一体どうしたというのかしら?私の顔を見て、あの様な表情をするだなんて。
「皆様、今日は僕の為にお集まりいただき、ありがとうございます。どうか楽しんでいってください」
さっきとはうって変わって、穏やかな表情で挨拶をするクリス殿下。さっきの顔は、私の気のせいだったのかもしれないわね。
クリス殿下の挨拶で、お茶会スタートだ。お茶会と言っても参加者が多いため、一応お茶を楽しめるテーブルとイス、お菓子やお茶などは準備されているが、皆イスに座ってお茶を楽しむというよりは、好き勝手移動して、色々な人と話をしている事の方が多いのだ。
ただ、私はイスに座って美しい中庭を見つめながら、ゆっくりお茶を楽しむのが好きなのだ。今日もイスに座り、お茶とお菓子を楽しむ。そう、前世の記憶が戻っても、私はいつも通り過ごすことにした。
「リリアナ様、お隣よろしいですか?」
「ええ、もちろんですわ」
いつもの様に、令嬢たちが私の隣にやって来たのだ。
「殿下の周りには、令嬢が群がっておられますね。既にリリアナ様とご婚約されることが決まっていらっしゃるのに…愚かね」
「まだ正式に発表されておりませんので、ご自分にもチャンスがあると思っていらっしゃっているのでしょう…」
「貴族令嬢たるもの、時間は有効に使わないといけませんのに」
令嬢たちが口元に扇子を当て、クリス殿下に群がる令嬢たちを残念そうに見つめている。要するに彼女たちは、婚約者がほぼ決まっている殿下に近づくよりも、ほぼ婚約者に内定している私に近づいた方が、後々優位に立てると踏んでいるのだろう。
貴族社会はいつも、駆け引きが行われている。子供たちの間でも同じだ。正直日本人の記憶を取り戻した私は、心から信頼できる友人が欲しいところだが、この世界では無理そうね。
現にクリス殿下は、信頼していた親友にあっさり裏切られているし…
いくらぜいたくな暮らしが出来ても、心から信頼できる友人がいない世界。いつも誰かを疑わなければいけない世界で生きていかないといけないというのも、辛い事よね…
「皆様、私は少し中庭を散歩して参りますわ。それでは、ごきげんよう」
なんだか少し疲れた。気分転換に、中庭の奥に進んでいく。やはり王宮の中庭は、とても綺麗だ。でも、随分と奥に来てしまったわね。そろそろ戻らないと…
その時だった。
「お前、なに王宮でお菓子をぼりぼり貪っているのだよ!本当に俺は、お前の様な妹を持って恥ずかしい」
「ごめんなさい、お兄様」
「お前の妹、本当にブスでデブでみっともないよな。豚だな、豚」
「本当だな」
ん?この声は?
声の方に向かうと、令息3人が令嬢を真ん中に囲み、殴るけるの暴行を加えていたのだ。なんて酷い事をしているのかしら?か弱い令嬢を囲んで、暴力をふるうだなんて。
クズの極みどもめ!私が成敗してやるわ!
ドレスをまくり上げ、がに股で男たちに近づく…が、私はこれでも公爵令嬢だ。近くまで来ると、ドレスを元に戻し、笑顔を作った。そして…
「あなた達、一体何をなさっているのですか?」
満面の笑みで、話し掛けたのだ。びくっと肩を震わせ、ゆっくりこっちを見た男ども。
「どうしてここに、リリアナ嬢が…」
「私が王宮のお庭を散歩していては、いけませんか?それよりもあなた達、1人の令嬢を寄ってたかって3人で虐めるだなんて!それもこんな人気のないところで。恥ずかしくはないのですか?この外道共が!」
感情が高ぶり、つい声を荒げてしまった。
「あら、失礼いたしました。まさか令嬢1人に対し、令息が3人で虐めているだなんて。我が目を疑うあり得ない現場を目撃してしまいましたので、感情が高ぶってしまいましたわ。それにしても、本当に最低な人たちですわね」
扇子で口元を隠し、心底軽蔑の眼差しを向ける。
「あの…違うのです。リリアナ嬢、これには理由が…」
「どんな理由であれ、大勢の令息が1人の令嬢を虐めてよい訳がありませんわ。今回の件、私は見たままを、あなた達のお家に報告させていただきますから、そのつもりで」
にっこりとほほ笑んで、そう告げてやった。本当にゲスの極みどもめ!
「さあ、話しはもう終わりです。目障りですので、さっさと私の前から立ち去ってください」
真っ青な顔をしている令息たちを、シッシッと追い払う。どんな理由があろうと、令嬢を虐めるゲスどもを許すつもりはない。そもそも王族主催のお茶会で、よくこの様なはしたない真似が出来たものだ。
その件も、彼らの家にはしっかり報告しないと!
「あの…申し訳ございませんでした。ですが…」
「私の言った事が聞こえなかったのですか?目障りなので、さっさと消えて下さいませ」
目を大きく見開きながら、彼らを見つめた。口元は扇子で隠しているが、かなりの迫力だろう。これ以上公爵令嬢でもある私を怒らせるのは良くないと思ったのだろう。不満そうな顔で去っていく男たち。
おとといきやがれですわ!
1,002
お気に入りに追加
2,391
あなたにおすすめの小説


至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる