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第2話:お茶会に向かいます
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「お嬢様、そろそろお茶会の準備を始めましょう。今日は王太子殿下の婚約者を決める、大切なお茶会です。とはいえ、既にお嬢様に決まっている様なものですから」
そう、今日はクリス殿下主催のお茶会という名の、婚約者を正式に決めるための最終チェックの日なのだ。今までに、何回もお茶会が開かれてきた。そのたびに、クリス殿下を沢山の令嬢たちが囲んでいた。
私はあまり人混みが好きではなかったので、彼らの輪に加わる事はなかった。それでも何度かクリス殿下とお話をしたことがある。物腰柔らかで、とても優しい方だった。
前世の記憶が戻ったからといて、今までリリアナとして生きて来た記憶が消える訳ではない。正直クリス殿下には、良いイメージを持っていた。私もクリス殿下と婚約出来たらいいな、そう思うようになっていた。
陛下や王妃殿下、お父様も私とクリス殿下を婚約させたがっている。その為、世間では私とクリス殿下が婚約する事は既に決まった事、そう言われているくらいだ。現に物語でも、回想シーンで10歳の時に2人は婚約したと紹介されていたし。
今私もクリス殿下も、ちょうど10歳だ。きっと近いうちに、婚約を結ぶのだろう。でも、このまま本当に婚約を結んでも、よいのかしら?私がクリス殿下と婚約を結ばなければ、イザベルに目を付けられることはない。
私が断罪されるという事は、家族にも甚大な被害が行くという事だ。その事を考えると、どうしても二の足を踏んでしまう。
…いいえ、私はクリス殿下と婚約を結ぶべきだわ。あの腹黒性悪女、イザベルが万が一王妃になんてなったら、きっと国が滅茶苦茶になる。たくさんの貴族が、そして平民たちが苦労を強いられるかもしれない。
私だって、あのにっくき女、イザベルに媚を売りながらへこへこして生きていくのは御免だ。私は公爵令嬢なのだ。自分のプライドを捨てて、嫌いな女にペコペコするくらいなら、最後まで戦いたい!
それにリリアナだって、クリス殿下と幸せになりたかったはず…
よし、考えは纏まったわ。このままクリス殿下と婚約を結ぼう。とはいえ…私はこれからどうすればよいのかしら?物語は、イザベルが貴族学院に入院する13歳から話しが始まっていた。
その為私とクリス殿下が、過去にどのように過ごしていたかの詳細は分からない。ただ、リリアナが殺される前、“貴族学院に入るまでは、クリス殿下との関係も良好だった”と言っていたから、きっと仲は悪くはなかったのだろう。
考えてもわからないし、今まで通り過ごすしかないわね。
よし!
着替えも終わり、準備が整った。さあ、王宮に向かおう。
屋敷の外に出ると、既にお母様が待ってくれていた。
「リリアナ、そのドレス、とてもよく似合っているわ。さすが私の娘ね。今日はクリス殿下の婚約者を決めるための大切なお茶会よ。とはいえ、既にあなたに決まっているから、気楽に行きなさい」
「ええ、分かっておりますわ。それでは、行って参ります」
笑顔のお母様に手を振り、そのまま馬車へと乗り込んだ。色々と考えてしまったが、今日もいつも通り過ごそう。過去の記憶が戻ったからといって、急に態度を変えるのも変だものね。
そんな事を考えながら、王宮を目指す。
しばらく進むと、王宮が見えて来た。いつも通り過ごせばいいのよ、そう、いつも通りに!そう何度も自分に言い聞かせる。
王宮に着くと、いつも通り背筋を伸ばし、今日の会場でもある王宮の中庭へと向かった。既にたくさんの令嬢や令息たちが集まっていた。お茶会には、令嬢だけではなく、毎回令息も呼ばれているのだ。
あら?あの方は!
他の令息と楽しそうに話しをしている人物に目が留まる。間違いない、あの男はイザベルの虜になり、親友でもあるクリス殿下を裏切った、侯爵令息のマーデンだわ!
優しそうな雰囲気を醸し出しているあの男だが、裏ではちゃっかり人を裏切り、リリアナに無実の罪を着せる手助けをした男。人の命などなんとも思っていない、冷酷非道なこの男にも、制裁を加えてやりたい!
「リリアナ様、ごきげんよう。その様な恐ろしいお顔をされて、どうされたのですか?」
「ご…ごきげんよう。いえ、何でもありませんわ。少々嫌な事を思い出してしまいまして…」
突然令嬢に話し掛けられたのだ。オホホホホ、と言わんばかりに、扇子で口元を隠した。いけない、私は公爵令嬢なのだ。いくらあの男が最低最悪のクズ男だったとしても、今の時点では私に何もしていないのだから。
とにかく、落ち着かないと。
「皆様、お待たせいたしました。ただ今より、クリス殿下がご入場されます」
そう、今日はクリス殿下主催のお茶会という名の、婚約者を正式に決めるための最終チェックの日なのだ。今までに、何回もお茶会が開かれてきた。そのたびに、クリス殿下を沢山の令嬢たちが囲んでいた。
私はあまり人混みが好きではなかったので、彼らの輪に加わる事はなかった。それでも何度かクリス殿下とお話をしたことがある。物腰柔らかで、とても優しい方だった。
前世の記憶が戻ったからといて、今までリリアナとして生きて来た記憶が消える訳ではない。正直クリス殿下には、良いイメージを持っていた。私もクリス殿下と婚約出来たらいいな、そう思うようになっていた。
陛下や王妃殿下、お父様も私とクリス殿下を婚約させたがっている。その為、世間では私とクリス殿下が婚約する事は既に決まった事、そう言われているくらいだ。現に物語でも、回想シーンで10歳の時に2人は婚約したと紹介されていたし。
今私もクリス殿下も、ちょうど10歳だ。きっと近いうちに、婚約を結ぶのだろう。でも、このまま本当に婚約を結んでも、よいのかしら?私がクリス殿下と婚約を結ばなければ、イザベルに目を付けられることはない。
私が断罪されるという事は、家族にも甚大な被害が行くという事だ。その事を考えると、どうしても二の足を踏んでしまう。
…いいえ、私はクリス殿下と婚約を結ぶべきだわ。あの腹黒性悪女、イザベルが万が一王妃になんてなったら、きっと国が滅茶苦茶になる。たくさんの貴族が、そして平民たちが苦労を強いられるかもしれない。
私だって、あのにっくき女、イザベルに媚を売りながらへこへこして生きていくのは御免だ。私は公爵令嬢なのだ。自分のプライドを捨てて、嫌いな女にペコペコするくらいなら、最後まで戦いたい!
それにリリアナだって、クリス殿下と幸せになりたかったはず…
よし、考えは纏まったわ。このままクリス殿下と婚約を結ぼう。とはいえ…私はこれからどうすればよいのかしら?物語は、イザベルが貴族学院に入院する13歳から話しが始まっていた。
その為私とクリス殿下が、過去にどのように過ごしていたかの詳細は分からない。ただ、リリアナが殺される前、“貴族学院に入るまでは、クリス殿下との関係も良好だった”と言っていたから、きっと仲は悪くはなかったのだろう。
考えてもわからないし、今まで通り過ごすしかないわね。
よし!
着替えも終わり、準備が整った。さあ、王宮に向かおう。
屋敷の外に出ると、既にお母様が待ってくれていた。
「リリアナ、そのドレス、とてもよく似合っているわ。さすが私の娘ね。今日はクリス殿下の婚約者を決めるための大切なお茶会よ。とはいえ、既にあなたに決まっているから、気楽に行きなさい」
「ええ、分かっておりますわ。それでは、行って参ります」
笑顔のお母様に手を振り、そのまま馬車へと乗り込んだ。色々と考えてしまったが、今日もいつも通り過ごそう。過去の記憶が戻ったからといって、急に態度を変えるのも変だものね。
そんな事を考えながら、王宮を目指す。
しばらく進むと、王宮が見えて来た。いつも通り過ごせばいいのよ、そう、いつも通りに!そう何度も自分に言い聞かせる。
王宮に着くと、いつも通り背筋を伸ばし、今日の会場でもある王宮の中庭へと向かった。既にたくさんの令嬢や令息たちが集まっていた。お茶会には、令嬢だけではなく、毎回令息も呼ばれているのだ。
あら?あの方は!
他の令息と楽しそうに話しをしている人物に目が留まる。間違いない、あの男はイザベルの虜になり、親友でもあるクリス殿下を裏切った、侯爵令息のマーデンだわ!
優しそうな雰囲気を醸し出しているあの男だが、裏ではちゃっかり人を裏切り、リリアナに無実の罪を着せる手助けをした男。人の命などなんとも思っていない、冷酷非道なこの男にも、制裁を加えてやりたい!
「リリアナ様、ごきげんよう。その様な恐ろしいお顔をされて、どうされたのですか?」
「ご…ごきげんよう。いえ、何でもありませんわ。少々嫌な事を思い出してしまいまして…」
突然令嬢に話し掛けられたのだ。オホホホホ、と言わんばかりに、扇子で口元を隠した。いけない、私は公爵令嬢なのだ。いくらあの男が最低最悪のクズ男だったとしても、今の時点では私に何もしていないのだから。
とにかく、落ち着かないと。
「皆様、お待たせいたしました。ただ今より、クリス殿下がご入場されます」
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