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第1話:前世の記憶が蘇りました
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“結局最後までイザベルは、リリアナに濡れ衣を着せ続けたのね。イザベルのせいで、リリアナは処刑されたか…イザベルとクリス殿下は、このまま結ばれるのかしら?”
“何言っているのよ!何の罪もないリリアナが殺されて、腹黒性悪イザベルがこのまま幸せになるだなんて、私は納得できないわ!”
“確かにそうよね。どう見てもイザベルは、悪役令嬢ですものね。さすがにこのままイザベルとクリス殿下が結ばれたら、読者の怒りは半端ないわ。それじゃあ、皆バッドエンドで終わるのかしら?”
ん?腹黒性悪イザベル?バッドエンド?
「…様、起きて下さい…お嬢様!!」
パチリと目を覚ますと、見覚えのある天井が。ここは…
「お嬢様、随分と酷い汗をかいていらっしゃいますが、大丈夫ですか?今日は王太子殿下主催の、大切なお茶会の日です。体調を崩されたら大変ですわ。すぐに湯あみを」
メイドたちが大慌てで、私を浴槽に連れて行く。さっきのは、夢?
鏡に映る自分が、目に飛び込んできた。
この令嬢は…
「悲劇の公爵令嬢、リリアナだわ…」
そうだ、間違いない。私が前世で好きだった漫画に出てくる悲劇の公爵令嬢、リリアナだ!そうよ、私は日本という国で生まれ育ち、そしてこの漫画に出会った。
この作品は、私たちの想像をはるかに超える展開を繰り広げていく事から、皆夢中になって読んでいた作品だ。
正直私は、主人公でもある侯爵令嬢、イザベルが大嫌いだった。元々体が弱く、ずっと侯爵領で暮していたイザベル。そんなイザベルも、13歳になると同時に、貴族学院に入学する。
そこで出会ったのが、この国の王太子でもある、クリス殿下だ。次期王妃になりたいイザベルは、クリス殿下に猛烈アプローチをかけた。しかしクリス殿下には、既に公爵令嬢のリリアナという婚約者がいたのだ。
リリアナを蹴落とすため、リリアナに関する悪い噂を流したり、リリアナに酷い事をされたと泣いて皆に訴えるイザベル。
最初はリリアナがそんな事をする子ではないと信じていたクリス殿下だったが、周りからもリリアナの悪い噂を耳にする事が増えていく。
そこでクリス殿下は、一番信頼を寄せている幼馴染で侯爵令息のマーデンに、リリアナの調査を依頼する。すると、イザベルが言っていた事と、ほぼ同じ内容の調査結果が上がって来たのだ。
ショックを受けるクリス殿下に、優しく寄り添うイザベル。いつしかクリス殿下も、イザベルに惹かれ始める。
そんな中、リリアナがイザベルを毒殺しようとする事件が起こってしまう。幸い未遂に終わったのだが…多数の目撃情報や証言、さらにイザベル側が提示した証拠から、リリアナは有罪判決を受け、イザベルに飲ませようとした毒を、自ら飲む羽目になってしまった。
という話なのだ。生憎その後のストーリーを読む前に、私は命を落としてしまったため、エンディングが分からない。
正直私は、どうしても納得いかないのだ。漫画を読んだ限り、リリアナは特に悪女と言う印象を受けなかった。それどころか、少しお節介なところはあるが、優しい令嬢だった。
どちらかというと、イザベルの腹黒くてずるがしっこい性格が、私は大嫌いだった。現に読者の間でも、イザベルは非常に不人気で、リリアナは人気が高かったのだ。
そのせいか、リリアナは悲劇の公爵令嬢と、読者の間では言われていたくらいだ。ちなみに私は、断然リリアナ推しだった。だからこそ、イザベルが憎くてたまらない。
もちろん、腹黒イザベルにまんまと騙されたクリス殿下も、マーデンも大嫌いだ。現に読者の間でも、腹黒イザベルに騙された愚かな王太子として、イザベル同様嫌われてはいた。
ただ…
最後、リリアナが毒を飲み、命を落とした後、クリス殿下がリリアナから貰った思い出の品を見ながら、悲しそうな顔をしている姿が印象的だった…もしかしたらクリス殿下なりに、リリアナを愛していたのかもしれない…
そう思ったら、なんだか胸が苦しくなったのよね。
私はラストを読んでいないからわからないが、クリス殿下はその後、幸せにはなれなかったのではないかと思っている。もちろん、イザベルやクリス殿下を騙したマーデンも、みんなみんな、不幸になったのかもしれない。
私はそう信じているのだ。そうで無かったら、リリアナが報われないもの。
そして今、私はその悲劇の公爵令嬢、リリアナに転生してしまったのだ。さて、これからどうしようかしら?このままいったら、私はイザベルに嵌められ、殺される運命。
もちろん、このまま殺されるだなんて御免だ。
腕を組んで考える。
正直私は殺されたくはない、でも、何の罪もないリリアナの事を考えると、彼女の無念を晴らしてあげたい。となると、やっぱりイザベルと対決するべき?でも、もし失敗したら、私は殺されるかもしれない。
でも…
暗い地下牢に閉じ込められ、絶望の中死んでいったリリアナの姿が、脳裏に浮かんだ。きっと無念だっただろう。彼女の気持ちを考えたら、胸が張り裂けそうになる。
やっぱり私は、彼女の無念を晴らしてあげたい。そうよ、私が腹黒イザベルを成敗して、今度こそリリアナ(私)を幸せに導いて見せる!
~あとがき~
新連載始めました。
この作品は、ヒロインのリリアナが奮闘するというよりは、2度目の生を生きているクリスと彼女の友人が奮闘するという要素が強い作品です。
どうぞよろしくお願いしますm(__)m
“何言っているのよ!何の罪もないリリアナが殺されて、腹黒性悪イザベルがこのまま幸せになるだなんて、私は納得できないわ!”
“確かにそうよね。どう見てもイザベルは、悪役令嬢ですものね。さすがにこのままイザベルとクリス殿下が結ばれたら、読者の怒りは半端ないわ。それじゃあ、皆バッドエンドで終わるのかしら?”
ん?腹黒性悪イザベル?バッドエンド?
「…様、起きて下さい…お嬢様!!」
パチリと目を覚ますと、見覚えのある天井が。ここは…
「お嬢様、随分と酷い汗をかいていらっしゃいますが、大丈夫ですか?今日は王太子殿下主催の、大切なお茶会の日です。体調を崩されたら大変ですわ。すぐに湯あみを」
メイドたちが大慌てで、私を浴槽に連れて行く。さっきのは、夢?
鏡に映る自分が、目に飛び込んできた。
この令嬢は…
「悲劇の公爵令嬢、リリアナだわ…」
そうだ、間違いない。私が前世で好きだった漫画に出てくる悲劇の公爵令嬢、リリアナだ!そうよ、私は日本という国で生まれ育ち、そしてこの漫画に出会った。
この作品は、私たちの想像をはるかに超える展開を繰り広げていく事から、皆夢中になって読んでいた作品だ。
正直私は、主人公でもある侯爵令嬢、イザベルが大嫌いだった。元々体が弱く、ずっと侯爵領で暮していたイザベル。そんなイザベルも、13歳になると同時に、貴族学院に入学する。
そこで出会ったのが、この国の王太子でもある、クリス殿下だ。次期王妃になりたいイザベルは、クリス殿下に猛烈アプローチをかけた。しかしクリス殿下には、既に公爵令嬢のリリアナという婚約者がいたのだ。
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最初はリリアナがそんな事をする子ではないと信じていたクリス殿下だったが、周りからもリリアナの悪い噂を耳にする事が増えていく。
そこでクリス殿下は、一番信頼を寄せている幼馴染で侯爵令息のマーデンに、リリアナの調査を依頼する。すると、イザベルが言っていた事と、ほぼ同じ内容の調査結果が上がって来たのだ。
ショックを受けるクリス殿下に、優しく寄り添うイザベル。いつしかクリス殿下も、イザベルに惹かれ始める。
そんな中、リリアナがイザベルを毒殺しようとする事件が起こってしまう。幸い未遂に終わったのだが…多数の目撃情報や証言、さらにイザベル側が提示した証拠から、リリアナは有罪判決を受け、イザベルに飲ませようとした毒を、自ら飲む羽目になってしまった。
という話なのだ。生憎その後のストーリーを読む前に、私は命を落としてしまったため、エンディングが分からない。
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どちらかというと、イザベルの腹黒くてずるがしっこい性格が、私は大嫌いだった。現に読者の間でも、イザベルは非常に不人気で、リリアナは人気が高かったのだ。
そのせいか、リリアナは悲劇の公爵令嬢と、読者の間では言われていたくらいだ。ちなみに私は、断然リリアナ推しだった。だからこそ、イザベルが憎くてたまらない。
もちろん、腹黒イザベルにまんまと騙されたクリス殿下も、マーデンも大嫌いだ。現に読者の間でも、腹黒イザベルに騙された愚かな王太子として、イザベル同様嫌われてはいた。
ただ…
最後、リリアナが毒を飲み、命を落とした後、クリス殿下がリリアナから貰った思い出の品を見ながら、悲しそうな顔をしている姿が印象的だった…もしかしたらクリス殿下なりに、リリアナを愛していたのかもしれない…
そう思ったら、なんだか胸が苦しくなったのよね。
私はラストを読んでいないからわからないが、クリス殿下はその後、幸せにはなれなかったのではないかと思っている。もちろん、イザベルやクリス殿下を騙したマーデンも、みんなみんな、不幸になったのかもしれない。
私はそう信じているのだ。そうで無かったら、リリアナが報われないもの。
そして今、私はその悲劇の公爵令嬢、リリアナに転生してしまったのだ。さて、これからどうしようかしら?このままいったら、私はイザベルに嵌められ、殺される運命。
もちろん、このまま殺されるだなんて御免だ。
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正直私は殺されたくはない、でも、何の罪もないリリアナの事を考えると、彼女の無念を晴らしてあげたい。となると、やっぱりイザベルと対決するべき?でも、もし失敗したら、私は殺されるかもしれない。
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~あとがき~
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この作品は、ヒロインのリリアナが奮闘するというよりは、2度目の生を生きているクリスと彼女の友人が奮闘するという要素が強い作品です。
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