家族の為に嫁いだのですが…いつの間にか旦那様に溺愛されていました

Karamimi

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第19話:もう我慢できない~アレグサンダー視点~

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 アンネリア嬢がさっきまで座っていたイスを見つめる。そして、その椅子に座った。まだアンネリア嬢の温もりが残っている。

 アンネリア嬢、ほんの少しの時間しか話が出来なかったが、僕が思った通り、素敵な女性だった。もっとアンネリア嬢の事が知りたい、あの笑顔を見ていたい、もっと僕にも興味を持って欲しい。

 そんな感情が、溢れ出そうになる。あんな魅力的な令嬢には、もう二度と出会えないだろう。そう思うほど、アンネリア嬢は素敵な令嬢なのだ。

 今さっき別れたばかりなのに、またアンネリア嬢に会いたくなってしまった。きっと今頃、着替えをしている頃だろう。彼女の事だ、この後また仕事をするだろう。今日も壺を磨くのかな?そんな事はしなくてもいいのに。

 キャサリンを追い出した暁には、もうその様な事はしなくてもよいと、しっかり伝えないと。出来ればこれからも、ずっとこの屋敷で暮して欲しい。その件も、しっかり話し合わないと。

 スッと席を立ち、アンネリア嬢に会うため、いつも彼女が夜掃除をしている場所へと向かった。

 すると、ガチャンという大きな音が聞こえたのだ。急いで音の方に行くと…

「あなたのせいで、大切な壺が割れてしまったじゃない。この壺は、アレグサンダーが海外から取り寄せた、非常に高価な壺なのよ。それを割るだなんて!クビだけで済むと思ったら、大間違いよ!」

「申し訳ございません、奥様。ですがその壺は、奥様が…」


 やはりキャサリンだ。またメイドを怒鳴りつけている。

「あなたがそんなところに立っていたから悪いのでしょう?あなたがそこにいたせいで壺を割ったのだから、あなたのせいよ。一生をかけて弁償をする事ね。もちろん、メイドの仕事は辞めてもらうから」

「そんな…」

 よくわからないが、またキャサリンが言いがかりをつけている様だ。本当にあの女は…

 その時だった。

「奥様、私は先ほどの様子を見ておりましたが、奥様がマーサに気が付かずにぶつかったせいで、壺が割れてしまったように見受けられました。奥様が持っていらした壺を落とされて、割れてしまったのです。それをマーサのせいにするのは、さすがによくないのでは…」

 メイドとキャサリンの間に入って来たのは、メイド姿のアンネリア嬢だ。すっとメイドを庇う様に立つと、キャサリンに向かって恐る恐る話しかけている。

「何ですって!居候の分際で、私に意見するというの?ふざけないで!この女のせいで壺が割れたのだから、この女が弁償するのが当然でしょう?いい、この家は私の言う事が絶対なの。私に逆らう様な人間は、この家にはいらないのよ!そんなに不満なら、今度こそあなたが出て行きなさいよ。そうしたら、この女を見逃してあげるわ」

 あの女、アンネリア嬢になんて酷い言いがかりをしているのだ!体中から怒りが沸き上がって来た。

「…分かりました。私がこの家を出て行けばよろしいのですね。私が家を出れば、マーサに壺の弁償とクビは取り消していただけるのですよね?」

「ええ、もちろんよ。ずっと目障りだったのよ。あなたさえ出て行けば、領地からアレグサンダーの母親も来なくなるし。さっさと荷物をまとめて出て行って頂戴」

「分かりました、すぐに出ていきます」

「アンネリア!」

「マーサ、私の事は気にしないで。あなたがクビになったら、病気のお母さんと幼い弟妹はどうなるの?私は大丈夫だから」

「アンネリア…」

 今にも泣きだしそうなメイド。どうやらメイドには、病気の母と幼い弟妹がいる様だ。そういえば、聞いたことがあるぞ。貴族の家で働いている使用人たちは、貧しい家の人間も多く、家族の為に働いていると。

 そうか、アンネリア嬢はその事を知っているから、こうやってメイドたちを守っていたのか。彼女たちが路頭に迷えば、その家族も路頭に迷う。その事を分かっているから、アンネリア嬢は、彼女たちを必死に守ろうとするのだな。

 そんな優しいアンネリア嬢に、この女は!

「さあ、もうあなたの顔なんて見たくないわ。さっさと出て行きなさい」

「出ていくのは君の方だよ、キャサリン」

 我慢できなくなった僕は、そのまま3人の元に駆けつけた。そしてアンネリア嬢とメイドを庇う様に立ったのだ。

「アレグサンダー、どうしてあなたがここに?いつ帰ってきたの?」

「ずっと前に帰って来ていたよ。そして2週間くらい前から、屋敷での君の様子も見てきた。よくも僕の屋敷で、好き勝手な振る舞いをしてくれたね。僕が傲慢で我が儘な女が大嫌いな事を知っているよね。君はまさに、僕の嫌いな女性そのものだ!」

 感情が高ぶり、キャサリンを怒鳴りつけた。

「そんな…私はあなたがいない間、侯爵家を必死に守って来たのに…」

 ウルウルと目を潤ませ、上目使いで見つめているキャサリン。

「その目、僕が大嫌いな貴族令嬢にそっくりだ。あいつらは、陰では傲慢な態度を取り、僕の前ではそうやって甘えてくるのだよ。本当に虫唾が走る!ただ、こんな君に惚れた僕は、本当に愚かだったよ。でもこれ以上、君の好き勝手にはさせない。一生生活に困らないだけの金を渡すから、さっさと出て行ってくれ!」

「どうして?どうしてそんな酷い事を言うの?いやよ、私、ここでの生活が気に入っているのよ。私は出ていかないから」

「そうか、分かった。それなら、無理やりつまみ出すまでだ。金を受け取って素直に出ていくか、護衛たちに無一文でつまみ出されるか、選ぶんだ」
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