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第49話:初恋の彼と未来に向かって

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運命の夜会から、2ヶ月が過ぎた。1ヶ月ほど前、元王妃様とジェーン元殿下の処罰が決まった。どうやら元王妃様は、亡くなった元王妃殿下の暗殺及び、ラファエル殿下の暗殺未遂の罪まで明るみに出た様で、極刑に処された。

ただジェーン元殿下は廃嫡され、この国の最北端にある街でひっそりと暮らすことが決まったらしい。既に王都を出たと聞いた。きっと今頃最北端の街で、限られた使用人と予算の中で、不自由な生活を送っているのだろう。

今まで散々贅沢をして生きて来た人だ。彼にはかなりいい薬になったのではないかと私は思っている。それにもう二度と、王都に戻ってくることもないらしい。

そして元王妃様とジェーン元殿下が王宮を去ったことで、正式にラファエル殿下が王太子殿下に就任した。といっても、正式な就任式は来月行われることになっている。

ちなみにラファエル殿下の強い希望で、ジェーン元殿下が推し進めた一夫多妻制は廃止。ずっと彼を支えていたシャーレス侯爵家のミラ様が婚約者に内定している。

きっと彼らなら、より良い国を作って行ってくれるだろう。

ちなみにジェーン元殿下のお妃候補たちだが、私に暴言を吐いたという事で、デイズ様から各家にかなり厳しい抗議が行ったらしい。私の胸に付いていた録音機に、しっかり証拠が残っていたらしい。その為彼女たちは、皆修道院に送られたそうだ。

彼女たちからは散々嫌味を言われてきた身としては、もう夜会やお茶会などで会わなくてもいいと思うと、正直ほっとしている。

本当の意味で、全てが解決した。ただ…

「フランソア、ここにいたのだね。僕は部屋で待っていてくれと言ったのだよ。勝手に中庭に出ているだなんて、悪い子だ!」

「ごめんなさい。でも、今日はこんなにいい天気なのに、外に出ないなんてもったいないですわ。それにお花を摘んだらすぐに戻るつもりでしたの」

「だからといって、勝手に庭に出るのは良くないよ!本当にフランソアは、僕の言う事をちっとも聞かないのだから」

すかさずデイズ様に怒られてしまった。そう…なぜか全てが解決した今の方が、デイズ様の監視が厳しくなったのだ。

夜会の時につけて行ったいつでも居場所が分かる器具も、ずっと付けさせられている為、どこにいるのかすぐにバレてしまうのだ。それにおばあ様から貰ったこのブローチも、デイズ様に言われてずっと付けているし…

「デイズ様、この居場所が分かる器具と、録音機能があるブローチ、もう外しても大丈夫ですよね?」

私が誘拐されることも、録音しなければいけない会話もなかったため、結局この機械たちは、そこまで役に立つ事はなかった。あえて言うなら、録音機能の付いたブローチだけは、ちょこちょこ役に立っていたが。

「確かにすべて解決したが、まだ付けておいてくれ!僕は君がそれらを付けていると安心するのだよ。それに万が一、また第二第三のジェーン元殿下の様な人間が現れるか分からないしね」

そう言って笑っているデイズ様。さすがにもう、ジェーン元殿下の様な人間は現れないだろう。百歩譲って現れたとしても、きっとデイズ様が私には近づけさせることはない。

「ねえ、知っているかい?もし君があのままお妃候補を辞退していなければ、今日君は、正式にジェーン元殿下の婚約者になっていたのだよ…」

ボソリと私の耳元で呟くデイズ様。それで朝から少しご機嫌が悪かったのね。

デイズ様がおっしゃった通り、もし私がお妃候補を辞退していなければ、今日正式にジェーン元殿下の婚約者になっていただろう。

たとえ一夫多妻制ではなかったとしても、好きではない男性の婚約者になっていたと思うと、なんだかぞっとした。

ある意味、ジェーン元殿下が一夫多妻制を推してくれてよかった。あのお陰で、私の惚れ薬の効果も消えた様だし。

そうそう、惚れ薬は、どうしようもないくらい相手の事が嫌になる出来事があった時、効果が消えると教えてもらったのだ。私にとっては、一夫多妻制が、どうしても相手の事が嫌になる出来事だったのだろう。

「フランソア、さっきから黙っているけれど、まさかジェーン元殿下の事を考えているのではないよね?」

恐ろしいほど低い声が、耳元から聞こえる。

「ええ、考えておりましたわ。ジェーン元殿下が、一夫多妻制を推してくれてよかったって。だってあれがなかったから、私が正気に戻る事もなかったでしょう?惚れ薬の効果が切れたおかげで、私は大好きなデイズ様とずっと一緒に居られるのですもの。私ね、デイズ様が初恋の相手ですのよ」

「それは奇遇だな。僕もフランソアが初恋の相手だ!フランソア、随分遠回りをしてしまったけれど、僕の元に戻って来てくれてありがとう。これからもずっとずっと一緒だよ」

「私こそ、ずっと待っていて下さって、ありがとうございます。私、デイズ様と婚約出来て幸せですわ。これからもっともっと、幸せになりましょうね」

私は惚れ薬という恐ろしい薬で、一時は自分の心を奪われてしまった。でも…こうやって再び自分の心を取り戻すことが出来た。正直王宮で過ごした5年は、辛くて辛くてたまらなかった。でも…あの時の経験があるから、今が本当に幸せに感じるのだろう。

そっとデイズ様の手を握った。温かくて落ち着く手。

もう二度と私は誰にも心を支配されない。私の意志で、デイズ様だけを愛していきたい。この命が尽きるまで、ずっと…


おしまい


~あとがき~
これにて完結です。
短編にする予定が、いつの間にか長編になっておりました汗
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
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