2 / 49
第2話:お妃候補を辞めてもいいですか?
しおりを挟む
頭が真っ白になって、何も考えられない私とは裏腹に、令嬢たちは嬉しそうだ。
「もちろんですわ、ジェーン様。実は私も、厳しい王妃教育に耐えて来たのに、万が一婚約者に選ばれなかったらどうしようと思っていたのです。もちろん、共に戦った仲間たちが選ばれず、落胆する姿も見たくありませんわ。殿下は皆が幸せになる道を考えて下さったのですね。素晴らしいですわ」
「私もそう思いますわ。ただ、気になる点があるのですが、ジェーン様が17歳の誕生日を迎えた時点でお妃候補に残っていた令嬢は、皆ジェーン様の妻にして頂けるという事でよろしいのでしょうか?」
「ああ、もちろんだ。君たちには平等に僕の子供、つまり次期王太子を生むチャンスがあるんだよ。素晴らしいだろう?」
「それは本当ですか?なんて素晴らしい法案なのかでしょう」
皆が絶賛している。
「あなた達のご両親も、とても喜んでおりましたわ。ただ…シャレティヌ公爵だけは、最後まで反対しておりましたわね。せっかく皆が幸せになれる法案なのに…公爵は何を考えているのだか…」
王妃様がため息を付いている。
「王妃殿下、きっとシャレティヌ公爵様は、ご自分の娘だけに権力を握らせたかったのですわ。卑しいお方ですわね」
そう言って他の令嬢が笑っている。
違う!お父様は、私が“たった1人の人だけに愛されたい、その人と一生添い遂げたい“という気持ちを知っているから、反対したのよ。お父様は決して卑しい人間じゃないわ!
悔しくて涙が込みあげてきた。
「とにかく僕は、皆を平等に愛するつもりだから、そのつもりで。フランソア、これはもう決定事項だから。公爵の様に文句を言わないでくれよ」
なぜか名指しで私にそう言ったジェーン様。周りの令嬢たちも、こちらを見てクスクスと笑っている。
そうか…ジェーン様は本当は私と結婚するのが嫌だったのね。だからこんな法案を考えたのだわ。
それなのに私ったら、本当にバカね…
今まであれほど熱を上げていたジェーン様への気持ちが、スッと冷めていくのを感じた。
「承知いたしました。既に決まった事を、私がとやかく言うつもりはございませんので、ご安心ください」
そう言って頭を下げた。
「よかった、皆が了承してくれて!僕も嬉しいよ」
そう言ってほほ笑んでいるジェーン様。
「それでは私は、これで失礼いたします」
皆に頭を下げ、その場を後にする。部屋から出た瞬間、涙が溢れ出すのを必死に堪える。王妃になる者、人前で涙を流してはいけない!そう厳しく教えられたのだ。
必死に平常心を装い、自室へと向かう。でも、部屋に入った瞬間、一気に涙が溢れ出した。
「お嬢様、どうされたのですか?大丈夫ですか?」
泣き崩れる私を見たカルアが、私の元に飛んできた。
「カルア…実はね、ジェーン様が複数の妻をめとる事に決まったのですって…今まで私だけを愛していると言っていたのは、嘘だったの…」
この5年、私がどんな気持ちで過ごしていたか。あの男は、私の心を弄んだのだ。もう私はあの男に関する愛情のかけらもなぜか残っていない。それでも、涙が止まらないのだ。
「そんな…一体どういう事ですか?そんな滅茶苦茶な話…」
「フランソア様、シャレティヌ公爵様がお見えです」
「お父様が?すぐに通して頂戴」
すぐにお父様に部屋に入ってもらう様に依頼した。
「お父様!」
「フランソア、すまない…私の力が及ばなかったばかりに。今陛下から、殿下が複数の妻を娶る事が決まった事を、お妃候補たちに報告したと聞いて、急いでフランソアに会いに来たんだ」
「お父様…私の為に1人反対してくださったのですよね。ありがとうございます。そのせいでお父様が悪く言われてしまい、申し訳ございませんでした」
「フランソアが謝る事はない。それでフランソアは、どうしたい?ずっとフランソアは、たった1人の男性を愛し愛されたいと言っていたよね。ただ、フランソアはこの5年、必死に努力してきたことも知っている。だからフランソアの気持ちが聞きたくてね」
「私は…」
ジェーン様の本心を知った今、もう彼との結婚なんて考えられない。後半年我慢すれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる、そう思って今まで必死に耐えてきたのだ。それなのに、一生ジェーン様を他の令嬢と共有するだなんて。
そもそも私、ジェーン様の事を本当に好きだったのかしら?これほどまでに愛情が冷めてしまった今、彼の為に争いごとに参加するなんて無理だ。
「私は、お妃候補を辞退したいです…もうこれ以上、我慢を強いた生活したくはないです。お父様、我が儘を言って申し訳ございません。でも…もう限界なのです。令嬢たちに嫌味を言わ嫌がらせをされるのも、ジェーン様が他の令嬢と楽しく過ごしているのを見るのも…」
さすがにもう疲れてしまった。
「分かったよ、すぐに王宮を出よう。カルア、悪いがフランソアの荷物を至急整えてくれ。フランソア、これがお妃候補辞退の書類だ。この書類にサインをしてくれるかい?」
これがお妃候補辞退の書類…
この紙にサインをすれば、私は楽になれる…
そう思った瞬間、何のためらいもなくサラサラとサインをした。近くではカルアが慌ただしそうに荷物をまとめている。
「カルア、ある程度の荷物をまとめてくれたらいい。後は明日、公爵家の使用人たちに片づける様に指示を出すから。それじゃあフランソア、私は至急この書類を陛下に提出してくる。カルア、フランソアを公爵家の馬車に乗せてくれ。とにかく一刻も早く、王宮から出よう」
「かしこまりました、さあ、お嬢様。参りましょう」
「もちろんですわ、ジェーン様。実は私も、厳しい王妃教育に耐えて来たのに、万が一婚約者に選ばれなかったらどうしようと思っていたのです。もちろん、共に戦った仲間たちが選ばれず、落胆する姿も見たくありませんわ。殿下は皆が幸せになる道を考えて下さったのですね。素晴らしいですわ」
「私もそう思いますわ。ただ、気になる点があるのですが、ジェーン様が17歳の誕生日を迎えた時点でお妃候補に残っていた令嬢は、皆ジェーン様の妻にして頂けるという事でよろしいのでしょうか?」
「ああ、もちろんだ。君たちには平等に僕の子供、つまり次期王太子を生むチャンスがあるんだよ。素晴らしいだろう?」
「それは本当ですか?なんて素晴らしい法案なのかでしょう」
皆が絶賛している。
「あなた達のご両親も、とても喜んでおりましたわ。ただ…シャレティヌ公爵だけは、最後まで反対しておりましたわね。せっかく皆が幸せになれる法案なのに…公爵は何を考えているのだか…」
王妃様がため息を付いている。
「王妃殿下、きっとシャレティヌ公爵様は、ご自分の娘だけに権力を握らせたかったのですわ。卑しいお方ですわね」
そう言って他の令嬢が笑っている。
違う!お父様は、私が“たった1人の人だけに愛されたい、その人と一生添い遂げたい“という気持ちを知っているから、反対したのよ。お父様は決して卑しい人間じゃないわ!
悔しくて涙が込みあげてきた。
「とにかく僕は、皆を平等に愛するつもりだから、そのつもりで。フランソア、これはもう決定事項だから。公爵の様に文句を言わないでくれよ」
なぜか名指しで私にそう言ったジェーン様。周りの令嬢たちも、こちらを見てクスクスと笑っている。
そうか…ジェーン様は本当は私と結婚するのが嫌だったのね。だからこんな法案を考えたのだわ。
それなのに私ったら、本当にバカね…
今まであれほど熱を上げていたジェーン様への気持ちが、スッと冷めていくのを感じた。
「承知いたしました。既に決まった事を、私がとやかく言うつもりはございませんので、ご安心ください」
そう言って頭を下げた。
「よかった、皆が了承してくれて!僕も嬉しいよ」
そう言ってほほ笑んでいるジェーン様。
「それでは私は、これで失礼いたします」
皆に頭を下げ、その場を後にする。部屋から出た瞬間、涙が溢れ出すのを必死に堪える。王妃になる者、人前で涙を流してはいけない!そう厳しく教えられたのだ。
必死に平常心を装い、自室へと向かう。でも、部屋に入った瞬間、一気に涙が溢れ出した。
「お嬢様、どうされたのですか?大丈夫ですか?」
泣き崩れる私を見たカルアが、私の元に飛んできた。
「カルア…実はね、ジェーン様が複数の妻をめとる事に決まったのですって…今まで私だけを愛していると言っていたのは、嘘だったの…」
この5年、私がどんな気持ちで過ごしていたか。あの男は、私の心を弄んだのだ。もう私はあの男に関する愛情のかけらもなぜか残っていない。それでも、涙が止まらないのだ。
「そんな…一体どういう事ですか?そんな滅茶苦茶な話…」
「フランソア様、シャレティヌ公爵様がお見えです」
「お父様が?すぐに通して頂戴」
すぐにお父様に部屋に入ってもらう様に依頼した。
「お父様!」
「フランソア、すまない…私の力が及ばなかったばかりに。今陛下から、殿下が複数の妻を娶る事が決まった事を、お妃候補たちに報告したと聞いて、急いでフランソアに会いに来たんだ」
「お父様…私の為に1人反対してくださったのですよね。ありがとうございます。そのせいでお父様が悪く言われてしまい、申し訳ございませんでした」
「フランソアが謝る事はない。それでフランソアは、どうしたい?ずっとフランソアは、たった1人の男性を愛し愛されたいと言っていたよね。ただ、フランソアはこの5年、必死に努力してきたことも知っている。だからフランソアの気持ちが聞きたくてね」
「私は…」
ジェーン様の本心を知った今、もう彼との結婚なんて考えられない。後半年我慢すれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる、そう思って今まで必死に耐えてきたのだ。それなのに、一生ジェーン様を他の令嬢と共有するだなんて。
そもそも私、ジェーン様の事を本当に好きだったのかしら?これほどまでに愛情が冷めてしまった今、彼の為に争いごとに参加するなんて無理だ。
「私は、お妃候補を辞退したいです…もうこれ以上、我慢を強いた生活したくはないです。お父様、我が儘を言って申し訳ございません。でも…もう限界なのです。令嬢たちに嫌味を言わ嫌がらせをされるのも、ジェーン様が他の令嬢と楽しく過ごしているのを見るのも…」
さすがにもう疲れてしまった。
「分かったよ、すぐに王宮を出よう。カルア、悪いがフランソアの荷物を至急整えてくれ。フランソア、これがお妃候補辞退の書類だ。この書類にサインをしてくれるかい?」
これがお妃候補辞退の書類…
この紙にサインをすれば、私は楽になれる…
そう思った瞬間、何のためらいもなくサラサラとサインをした。近くではカルアが慌ただしそうに荷物をまとめている。
「カルア、ある程度の荷物をまとめてくれたらいい。後は明日、公爵家の使用人たちに片づける様に指示を出すから。それじゃあフランソア、私は至急この書類を陛下に提出してくる。カルア、フランソアを公爵家の馬車に乗せてくれ。とにかく一刻も早く、王宮から出よう」
「かしこまりました、さあ、お嬢様。参りましょう」
43
お気に入りに追加
5,379
あなたにおすすめの小説
【完結】殿下は私を溺愛してくれますが、あなたの“真実の愛”の相手は私ではありません
Rohdea
恋愛
──私は“彼女”の身代わり。
彼が今も愛しているのは亡くなった元婚約者の王女様だけだから──……
公爵令嬢のユディットは、王太子バーナードの婚約者。
しかし、それは殿下の婚約者だった隣国の王女が亡くなってしまい、
国内の令嬢の中から一番身分が高い……それだけの理由で新たに選ばれただけ。
バーナード殿下はユディットの事をいつも優しく、大切にしてくれる。
だけど、その度にユディットの心は苦しくなっていく。
こんな自分が彼の婚約者でいていいのか。
自分のような理由で互いの気持ちを無視して決められた婚約者は、
バーナードが再び心惹かれる“真実の愛”の相手を見つける邪魔になっているだけなのでは?
そんな心揺れる日々の中、
二人の前に、亡くなった王女とそっくりの女性が現れる。
実は、王女は襲撃の日、こっそり逃がされていて実は生きている……
なんて噂もあって────
不憫な侯爵令嬢は、王子様に溺愛される。
猫宮乾
恋愛
再婚した父の元、継母に幽閉じみた生活を強いられていたマリーローズ(私)は、父が没した事を契機に、結婚して出ていくように迫られる。皆よりも遅く夜会デビューし、結婚相手を探していると、第一王子のフェンネル殿下が政略結婚の話を持ちかけてくる。他に行く場所もない上、自分の未来を切り開くべく、同意したマリーローズは、その後後宮入りし、正妃になるまでは婚約者として過ごす事に。その内に、フェンネルの優しさに触れ、溺愛され、幸せを見つけていく。※pixivにも掲載しております(あちらで完結済み)。
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
嫌われ者の側妃はのんびり暮らしたい
風見ゆうみ
恋愛
「オレのタイプじゃないんだよ。地味過ぎて顔も見たくない。だから、お前は側妃だ」
顔だけは良い皇帝陛下は、自らが正妃にしたいと希望した私を側妃にして別宮に送り、正妃は私の妹にすると言う。
裏表のあるの妹のお世話はもううんざり!
側妃は私以外にもいるし、面倒なことは任せて、私はのんびり自由に暮らすわ!
そう思っていたのに、別宮には皇帝陛下の腹違いの弟や、他の側妃とのトラブルはあるし、それだけでなく皇帝陛下は私を妹の毒見役に指定してきて――
それって側妃がやることじゃないでしょう!?
※のんびり暮らしたかった側妃がなんだかんだあって、のんびりできなかったけれど幸せにはなるお話です。
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
婚約者に見殺しにされた愚かな傀儡令嬢、時を逆行する
蓮恭
恋愛
父親が自分を呼ぶ声が聞こえたその刹那、熱いものが全身を巡ったような、そんな感覚に陥った令嬢レティシアは、短く唸って冷たい石造りの床へと平伏した。
視界は徐々に赤く染まり、せっかく身を挺して庇った侯爵も、次の瞬間にはリュシアンによって屠られるのを見た。
「リュシ……アン……さ、ま」
せめて愛するリュシアンへと手を伸ばそうとするが、無情にも嘲笑を浮かべた女騎士イリナによって叩き落とされる。
「安心して死になさい。愚かな傀儡令嬢レティシア。これから殿下の事は私がお支えするから心配いらなくてよ」
お願い、最後に一目だけ、リュシアンの表情が見たいとレティシアは願った。
けれどそれは自分を見下ろすイリナによって阻まれる。しかし自分がこうなってもリュシアンが駆け寄ってくる気配すらない事から、本当に嫌われていたのだと実感し、痛みと悲しみで次々に涙を零した。
両親から「愚かであれ、傀儡として役立て」と育てられた侯爵令嬢レティシアは、徐々に最愛の婚約者、皇太子リュシアンの愛を失っていく。
民の信頼を失いつつある帝国の改革のため立ち上がった皇太子は、女騎士イリナと共に謀反を起こした。
その時レティシアはイリナによって刺殺される。
悲しみに包まれたレティシアは何らかの力によって時を越え、まだリュシアンと仲が良かった幼い頃に逆行し、やり直しの機会を与えられる。
二度目の人生では傀儡令嬢であったレティシアがどのように生きていくのか?
婚約者リュシアンとの仲は?
二度目の人生で出会う人物達との交流でレティシアが得たものとは……?
※逆行、回帰、婚約破棄、悪役令嬢、やり直し、愛人、暴力的な描写、死産、シリアス、の要素があります。
ヒーローについて……読者様からの感想を見ていただくと分かる通り、完璧なヒーローをお求めの方にはかなりヤキモキさせてしまうと思います。
どこか人間味があって、空回りしたり、過ちも犯す、そんなヒーローを支えていく不憫で健気なヒロインを応援していただければ、作者としては嬉しい限りです。
必ずヒロインにとってハッピーエンドになるよう書き切る予定ですので、宜しければどうか最後までお付き合いくださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる