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第67話:気持ちが通じ合いました
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「ローズ?」
私が固まって動かない為、不安そうに私の名前を呼ぶアデル様。
「あの…アデル様、本当に私の事がお好きなのですか?また私と付き合えば、ティーナ様が喜ぶとかではなくって?」
「ティーナは関係ないよ。そもそも、ローズは鈍すぎる。あれほどアピールしていたのに、本当に僕の気持ちに気が付いていなかったのかい?」
アピール…
確かに怪我の後、ものすごく構ってくれるようになったのは事実だ。でも、まさか私の事を好きでいてくれるなんて。あのアデル様が、私を…
「アデル様、私もあなた様をお慕いしております。アデル様が私を助けて下さったあの日から、ずっと…」
気が付くと瞳から涙が溢れていた。決して届く事のない私の思い。5年半以上思い続けたこの思いが、ついに報われたのだ。こんな奇跡が起こっていいのかしら?
「ローズ、それは本当かい?」
「はい、もちろんです。でもアデル様はティーナ様の事を愛していらっしゃったので、それならせめてアデル様の力になりたいと思い、行動しておりました。もちろん、ティーナ様は大切なお友達ではありますが」
「そうだったのか…それじゃあ、兄上を好きというのは?」
えっ?グラス様を?
「なぜグラス様を、私が好きにならないといけないのですか?グラス様はどちらかと言うと、ティーナ様を束縛し、2人で会う事すら嫌がる面倒な男という感じですわ。あっ、でも最近は、随分と丸くなってきましたわね」
そもそもグラス様は、ティーナ様の婚約者だ。さすがに人の婚約者を好きになるほど、私は浅はかな人間ではない。
「それでは、なぜマイケルに“決して振り向いてもらえない相手”と言ったんだい?だから僕は、てっきり婚約者のいる兄上の事かと…」
「それはアデル様が私と契約で付き合う時に“僕はティーナ以外の女性を愛するつもりはない。だから、どうか僕の事を好きにならないでくれ”とおっしゃられたからです。それって“私の事は絶対に好きにならない”という事でしょう?ですから私は、自分の気持ちに蓋をしたのです」
そう言えば、そんな事も言ったな…と、言わんばかりに口を押えているアデル様。
「すまない、そう言った事をすっかり忘れていた。でも僕は、本当にローズが好きなんだ。今はティーナの事なんて、口うるさい女だとしか思っていないよ」
ティーナ様を口うるさい女だなんて…アデル様って意外とお口が悪いのね。
「とにかく、ローズも僕が好きだという事は、また僕と付き合ってくれるという事だよね?」
「ええ、もちろんですわ。でも、私は明日からグラシュ国に向かわないといけないので、いきなり離れ離れになってしまいますね」
「そうだね…でも、心が通じ合っているだけで、僕は幸せだよ。今日勇気を出して気持ちを伝えてよかった。ローズ、愛しているよ。離れていても、心は1つだ」
そう言うと、アデル様に抱きしめられた。初めて感じる、アデル様の温もり…華奢だと思っていたけれど、意外としっかりしているのね。まさかアデル様と付き合う事になる何て。
それでも明日には、グラシュ国に向かわないといけない。アデル様の温もりを、しっかり覚えておきたい。そんな思いから、アデル様にギューッと抱き付いた。
でも、次の瞬間、引き離された。そしてゆっくり近づいてきて…
お互いの唇が重なった。温かくて柔らかい…初めての感触に、どうしていいか分からない。ただ、1つ言えるのは、心が満たされる様な、幸せな気持ちになったという事だ。
その後も何度も唇を重ねた。残された時間を惜しむかのように…
「随分と冷えてきたね。明日は朝早くに出発するのだろう?そろそろ帰ろう」
「はい、名残惜しいですが、仕方がないですね…」
どちらともなく手を繋ぎ、そのまま馬車へと乗り込む。ここでもアデル様が隣に座っている。私の肩を抱き、時折おでこに口づけをするアデル様。
「随分と傷は薄くなったけれど、まだ目立っているね。ごめんね。僕が行動を間違えなければこんな事にはならなかったのに…」
「もう気にしないで下さいと、何度も言いましたよね。私は大丈夫ですから」
「どうしても気になってしまって。そうだ、マイケルには僕から話をするよ。ローズはしばらくグラシュ国に向かう事になっているし」
「ありがとうございます。でも…明日の朝一にでも、報告がてら挨拶に行きますわ。それが真剣に私に気持ちを伝えてくれたマイケル様に対する、私のせめてもの誠意ですわ」
いくら明日の朝忙しいと言っても、やはりこのままグラシュ国に行く事は出来ない。きちんとマイケル様に報告してから行かないと!
「まさか僕という恋人がいるにもかかわらず、他の男と2人で会う気かい?さすがにそれは、認められないな」
アデル様、笑顔だが明らかに目が笑っていない。この瞳、よくグラス様がティーナ様に見せる瞳によく似ている。これはきっと、怒っているのだろう。
「あの、アデル様、ごめんなさい。執事も連れていきますので」
「は~、どうしてそういう発想になるのかな?僕も行くよ。君1人でマイケルには会わせられないからね。いいかい、絶対に1人で行ってはダメだからね、分かったね」
「…はい、分かりましたわ」
あまりの迫力に、嫌だなんて言えない雰囲気だった。とにかく、これ以上アデル様を怒らせてはいけない気がした。
「分かればいいんだよ。あぁ、もうローズの家についてしまったね。それじゃあローズ、また明日」
「はい、明日、よろしくお願いいたします」
一旦私と一緒に馬車を降りると、私に口づけをし、そのまま馬車に乗り込んだアデル様。窓から身を乗り出し、こちらに向かって手を振ってくれる。
まさかアデル様と心が通じ合うなんて。
なんだかまだ信じられなくて、馬車が見えなくなってからもしばらく動く事が出来なかった。
私が固まって動かない為、不安そうに私の名前を呼ぶアデル様。
「あの…アデル様、本当に私の事がお好きなのですか?また私と付き合えば、ティーナ様が喜ぶとかではなくって?」
「ティーナは関係ないよ。そもそも、ローズは鈍すぎる。あれほどアピールしていたのに、本当に僕の気持ちに気が付いていなかったのかい?」
アピール…
確かに怪我の後、ものすごく構ってくれるようになったのは事実だ。でも、まさか私の事を好きでいてくれるなんて。あのアデル様が、私を…
「アデル様、私もあなた様をお慕いしております。アデル様が私を助けて下さったあの日から、ずっと…」
気が付くと瞳から涙が溢れていた。決して届く事のない私の思い。5年半以上思い続けたこの思いが、ついに報われたのだ。こんな奇跡が起こっていいのかしら?
「ローズ、それは本当かい?」
「はい、もちろんです。でもアデル様はティーナ様の事を愛していらっしゃったので、それならせめてアデル様の力になりたいと思い、行動しておりました。もちろん、ティーナ様は大切なお友達ではありますが」
「そうだったのか…それじゃあ、兄上を好きというのは?」
えっ?グラス様を?
「なぜグラス様を、私が好きにならないといけないのですか?グラス様はどちらかと言うと、ティーナ様を束縛し、2人で会う事すら嫌がる面倒な男という感じですわ。あっ、でも最近は、随分と丸くなってきましたわね」
そもそもグラス様は、ティーナ様の婚約者だ。さすがに人の婚約者を好きになるほど、私は浅はかな人間ではない。
「それでは、なぜマイケルに“決して振り向いてもらえない相手”と言ったんだい?だから僕は、てっきり婚約者のいる兄上の事かと…」
「それはアデル様が私と契約で付き合う時に“僕はティーナ以外の女性を愛するつもりはない。だから、どうか僕の事を好きにならないでくれ”とおっしゃられたからです。それって“私の事は絶対に好きにならない”という事でしょう?ですから私は、自分の気持ちに蓋をしたのです」
そう言えば、そんな事も言ったな…と、言わんばかりに口を押えているアデル様。
「すまない、そう言った事をすっかり忘れていた。でも僕は、本当にローズが好きなんだ。今はティーナの事なんて、口うるさい女だとしか思っていないよ」
ティーナ様を口うるさい女だなんて…アデル様って意外とお口が悪いのね。
「とにかく、ローズも僕が好きだという事は、また僕と付き合ってくれるという事だよね?」
「ええ、もちろんですわ。でも、私は明日からグラシュ国に向かわないといけないので、いきなり離れ離れになってしまいますね」
「そうだね…でも、心が通じ合っているだけで、僕は幸せだよ。今日勇気を出して気持ちを伝えてよかった。ローズ、愛しているよ。離れていても、心は1つだ」
そう言うと、アデル様に抱きしめられた。初めて感じる、アデル様の温もり…華奢だと思っていたけれど、意外としっかりしているのね。まさかアデル様と付き合う事になる何て。
それでも明日には、グラシュ国に向かわないといけない。アデル様の温もりを、しっかり覚えておきたい。そんな思いから、アデル様にギューッと抱き付いた。
でも、次の瞬間、引き離された。そしてゆっくり近づいてきて…
お互いの唇が重なった。温かくて柔らかい…初めての感触に、どうしていいか分からない。ただ、1つ言えるのは、心が満たされる様な、幸せな気持ちになったという事だ。
その後も何度も唇を重ねた。残された時間を惜しむかのように…
「随分と冷えてきたね。明日は朝早くに出発するのだろう?そろそろ帰ろう」
「はい、名残惜しいですが、仕方がないですね…」
どちらともなく手を繋ぎ、そのまま馬車へと乗り込む。ここでもアデル様が隣に座っている。私の肩を抱き、時折おでこに口づけをするアデル様。
「随分と傷は薄くなったけれど、まだ目立っているね。ごめんね。僕が行動を間違えなければこんな事にはならなかったのに…」
「もう気にしないで下さいと、何度も言いましたよね。私は大丈夫ですから」
「どうしても気になってしまって。そうだ、マイケルには僕から話をするよ。ローズはしばらくグラシュ国に向かう事になっているし」
「ありがとうございます。でも…明日の朝一にでも、報告がてら挨拶に行きますわ。それが真剣に私に気持ちを伝えてくれたマイケル様に対する、私のせめてもの誠意ですわ」
いくら明日の朝忙しいと言っても、やはりこのままグラシュ国に行く事は出来ない。きちんとマイケル様に報告してから行かないと!
「まさか僕という恋人がいるにもかかわらず、他の男と2人で会う気かい?さすがにそれは、認められないな」
アデル様、笑顔だが明らかに目が笑っていない。この瞳、よくグラス様がティーナ様に見せる瞳によく似ている。これはきっと、怒っているのだろう。
「あの、アデル様、ごめんなさい。執事も連れていきますので」
「は~、どうしてそういう発想になるのかな?僕も行くよ。君1人でマイケルには会わせられないからね。いいかい、絶対に1人で行ってはダメだからね、分かったね」
「…はい、分かりましたわ」
あまりの迫力に、嫌だなんて言えない雰囲気だった。とにかく、これ以上アデル様を怒らせてはいけない気がした。
「分かればいいんだよ。あぁ、もうローズの家についてしまったね。それじゃあローズ、また明日」
「はい、明日、よろしくお願いいたします」
一旦私と一緒に馬車を降りると、私に口づけをし、そのまま馬車に乗り込んだアデル様。窓から身を乗り出し、こちらに向かって手を振ってくれる。
まさかアデル様と心が通じ合うなんて。
なんだかまだ信じられなくて、馬車が見えなくなってからもしばらく動く事が出来なかった。
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