彼の幸せを願っていたら、いつの間にか私も幸せになりました

Karamimi

文字の大きさ
上 下
62 / 87

第62話:ローズの好きな人はもしかして…~アデル視点~

しおりを挟む
家に帰り、自分の部屋で一息つく。

「ハァ~」

ついため息が出る。

「ローズに好きな人がいたなんて…一体誰の事が好きなんだ?」

今日はショッキングな事がたくさんあった。まず、昨日ローズが僕に嘘を付いて、マイケルと一緒にパフェを食べに言った点だ。確かにマイケルは甘いものが好きみたいだが、どうしてわざわざ僕に内緒にしたのだろう。

その上、マイケルはローズに告白したらしい。そのせいで、今日は朝からローズの様子が変だった。きっとマイケルを意識しているから、馬車のドアでおでこを打つ怪我をしたんだ。とにかく、マイケルとローズを会わせたくなくて、お昼も我先にローズの教室に向かった。

案の定、マイケルに絡まれていた。すぐに連れ出そうとしたが、なんだかんだでうまく丸め込まれ、結局皆で食事をする事になったのだ。

動揺しつつも、マイケルに笑顔を向けるローズ。さらにマイケルが教室に戻る寸前。

「マイケル様、放課後、少し時間を頂いて宜しいでしょうか?」

と、ローズの方からマイケルを呼び出したのだ。いてもたっても入れられなくて、放課後2人の間に割って入った。

そんな僕を、邪険に扱うマイケル。ローズまでも“マイケル様と2人で話がしたいので”なんて言われてしまった。

頭を鈍器で殴られたようなショックに襲われる。呆然と2人の後ろ姿を見送る事しかできなかった。

そんな僕に声を掛けてきたのは、兄上だ。

「アデル、大丈夫か?2人は校舎裏に行くと言っていたぞ。後を付けよう」

そう言うと、僕を連れて歩き出した。

「ちょっとグラス、いくら何でも、2人の話を盗み聞きする何て良くないわよ。今朝だって、ローズ様との大切な話を盗み聞きしていたし。さすがに見過ごせないわ!」

そんな僕たちの前に立ちはだかって来たのは、ティーナだ。いつも兄上を立て、ほとんど意見しないティーナだが、ローズの事になると別の様だ。必死に兄上と僕の前に立ちふさがり、行く手を阻んでいる。

「ティーナ、これはアデルの為なんだ。君だって、アデルには幸せになって欲しいだろう?」

「それはそうだけれど。でも私は、それ以上にローズ様には幸せになって欲しいし、ローズ様を裏切る様な事はしたくないの!」

一切引こうとしないティーナ。この子、こんなに頑固だったかな?そう思うくらい、必死に行く手を阻んでいる。

「アデル、時間がない。急ごう。ごめんね、ティーナ。僕たちは急ぐから」

そう言うと、ティーナの脇をスルリト抜け、猛スピードで兄上が走り出した。僕も後に続く。

「ちょっと、2人とも待って」

ティーナが急いで追いかけてくるが、残念な事に、ティーナは足が遅い。あっという間に突き放してしまった。

僕たちが校舎裏に来た時は、ちょうどローズがマイケルに気持ちを伝えているところだった。どうやらローズは、マイケルの事を友達としか思っていない様だ。ただ、なぜか全く引き下がらないマイケル。

そんなマイケルに、ローズは自分には好きな人がいる!と言い放ったのだ。その人物の名前を告げようとした時、マイケルが邪魔をした。

マイケルめ、なんで邪魔をするんだ!いいや…もしローズの好きな人物の名前を聞いたら、僕は立ち直れないかもしれない。これでよかったのかもしれないな。

そんな事を考えていると

「その方は、私がいくら思っても、決して振り向いてもらえない相手です。それでも私は、彼の事を愛しております。たとえ一生、気持ちが伝わらなかったとしても…」

そうローズが、悲しそうな顔をして呟いたのだ。決して振り向いてくれない人?それって…

もっと詳しく話しが聞きたくて、つい兄上を押してしまった。それがいけなかったのだろう。僕たちが盗み聞きをしている姿を、あろう事かローズに見られてしまったのだ。

必死にごまかしたが、やっと追いついたティーナが、僕たちが盗み聞きをしていたことを謝罪した。そのせいで、言い逃れが出来なくなってしまった。

呆れ顔のローズを見ていたら、どうしようもない気持ちになった。

馬車の中でも、ティーナから説教をくらうし。本当に散々だ。

そして、今に至る。

「決して振り向いてもらえない相手って…もしかして…兄上?」

いいや、そんな事はない。だってローズは、兄上の嫉妬深さにドン引きしていた。でも…決して振り向いてもらえない相手と言われれば、ティーナと婚約している兄上くらいしか思いつかない。

それに僕もティーナが好きだった時、ローズと同じ感情をいだいていた。だから、分かる。ローズはきっと!

そう考えたら、言いようのない怒りがこみ上げてきた。どうして兄上は、いつもいつも僕が欲しいものを持って行くんだ!そういえば子供の頃、大切にしていた騎士の模型も兄上に取られた事があったな!

考えれば考えるほど、怒りがこみ上げてくる。

その時だった。

「アデル、今日は悪かったな。大丈夫かい?」

僕の元にやって来たのは、兄上だ。兄上め、よくもローズを!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

魔力無しの黒色持ちの私だけど、(色んな意味で)きっちりお返しさせていただきます。

みん
恋愛
魔力無しの上に不吉な黒色を持って生まれたアンバーは、記憶を失った状態で倒れていたところを伯爵に拾われたが、そこでは虐げられる日々を過ごしていた。そんな日々を送るある日、危ないところを助けてくれた人達と出会ってから、アンバーの日常は変わっていく事になる。 アンバーの失った記憶とは…? 記憶を取り戻した後のアンバーは…? ❋他視点の話もあります ❋独自設定あり ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付き次第訂正します。すみません

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...