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第62話:ローズの好きな人はもしかして…~アデル視点~
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家に帰り、自分の部屋で一息つく。
「ハァ~」
ついため息が出る。
「ローズに好きな人がいたなんて…一体誰の事が好きなんだ?」
今日はショッキングな事がたくさんあった。まず、昨日ローズが僕に嘘を付いて、マイケルと一緒にパフェを食べに言った点だ。確かにマイケルは甘いものが好きみたいだが、どうしてわざわざ僕に内緒にしたのだろう。
その上、マイケルはローズに告白したらしい。そのせいで、今日は朝からローズの様子が変だった。きっとマイケルを意識しているから、馬車のドアでおでこを打つ怪我をしたんだ。とにかく、マイケルとローズを会わせたくなくて、お昼も我先にローズの教室に向かった。
案の定、マイケルに絡まれていた。すぐに連れ出そうとしたが、なんだかんだでうまく丸め込まれ、結局皆で食事をする事になったのだ。
動揺しつつも、マイケルに笑顔を向けるローズ。さらにマイケルが教室に戻る寸前。
「マイケル様、放課後、少し時間を頂いて宜しいでしょうか?」
と、ローズの方からマイケルを呼び出したのだ。いてもたっても入れられなくて、放課後2人の間に割って入った。
そんな僕を、邪険に扱うマイケル。ローズまでも“マイケル様と2人で話がしたいので”なんて言われてしまった。
頭を鈍器で殴られたようなショックに襲われる。呆然と2人の後ろ姿を見送る事しかできなかった。
そんな僕に声を掛けてきたのは、兄上だ。
「アデル、大丈夫か?2人は校舎裏に行くと言っていたぞ。後を付けよう」
そう言うと、僕を連れて歩き出した。
「ちょっとグラス、いくら何でも、2人の話を盗み聞きする何て良くないわよ。今朝だって、ローズ様との大切な話を盗み聞きしていたし。さすがに見過ごせないわ!」
そんな僕たちの前に立ちはだかって来たのは、ティーナだ。いつも兄上を立て、ほとんど意見しないティーナだが、ローズの事になると別の様だ。必死に兄上と僕の前に立ちふさがり、行く手を阻んでいる。
「ティーナ、これはアデルの為なんだ。君だって、アデルには幸せになって欲しいだろう?」
「それはそうだけれど。でも私は、それ以上にローズ様には幸せになって欲しいし、ローズ様を裏切る様な事はしたくないの!」
一切引こうとしないティーナ。この子、こんなに頑固だったかな?そう思うくらい、必死に行く手を阻んでいる。
「アデル、時間がない。急ごう。ごめんね、ティーナ。僕たちは急ぐから」
そう言うと、ティーナの脇をスルリト抜け、猛スピードで兄上が走り出した。僕も後に続く。
「ちょっと、2人とも待って」
ティーナが急いで追いかけてくるが、残念な事に、ティーナは足が遅い。あっという間に突き放してしまった。
僕たちが校舎裏に来た時は、ちょうどローズがマイケルに気持ちを伝えているところだった。どうやらローズは、マイケルの事を友達としか思っていない様だ。ただ、なぜか全く引き下がらないマイケル。
そんなマイケルに、ローズは自分には好きな人がいる!と言い放ったのだ。その人物の名前を告げようとした時、マイケルが邪魔をした。
マイケルめ、なんで邪魔をするんだ!いいや…もしローズの好きな人物の名前を聞いたら、僕は立ち直れないかもしれない。これでよかったのかもしれないな。
そんな事を考えていると
「その方は、私がいくら思っても、決して振り向いてもらえない相手です。それでも私は、彼の事を愛しております。たとえ一生、気持ちが伝わらなかったとしても…」
そうローズが、悲しそうな顔をして呟いたのだ。決して振り向いてくれない人?それって…
もっと詳しく話しが聞きたくて、つい兄上を押してしまった。それがいけなかったのだろう。僕たちが盗み聞きをしている姿を、あろう事かローズに見られてしまったのだ。
必死にごまかしたが、やっと追いついたティーナが、僕たちが盗み聞きをしていたことを謝罪した。そのせいで、言い逃れが出来なくなってしまった。
呆れ顔のローズを見ていたら、どうしようもない気持ちになった。
馬車の中でも、ティーナから説教をくらうし。本当に散々だ。
そして、今に至る。
「決して振り向いてもらえない相手って…もしかして…兄上?」
いいや、そんな事はない。だってローズは、兄上の嫉妬深さにドン引きしていた。でも…決して振り向いてもらえない相手と言われれば、ティーナと婚約している兄上くらいしか思いつかない。
それに僕もティーナが好きだった時、ローズと同じ感情をいだいていた。だから、分かる。ローズはきっと!
そう考えたら、言いようのない怒りがこみ上げてきた。どうして兄上は、いつもいつも僕が欲しいものを持って行くんだ!そういえば子供の頃、大切にしていた騎士の模型も兄上に取られた事があったな!
考えれば考えるほど、怒りがこみ上げてくる。
その時だった。
「アデル、今日は悪かったな。大丈夫かい?」
僕の元にやって来たのは、兄上だ。兄上め、よくもローズを!
「ハァ~」
ついため息が出る。
「ローズに好きな人がいたなんて…一体誰の事が好きなんだ?」
今日はショッキングな事がたくさんあった。まず、昨日ローズが僕に嘘を付いて、マイケルと一緒にパフェを食べに言った点だ。確かにマイケルは甘いものが好きみたいだが、どうしてわざわざ僕に内緒にしたのだろう。
その上、マイケルはローズに告白したらしい。そのせいで、今日は朝からローズの様子が変だった。きっとマイケルを意識しているから、馬車のドアでおでこを打つ怪我をしたんだ。とにかく、マイケルとローズを会わせたくなくて、お昼も我先にローズの教室に向かった。
案の定、マイケルに絡まれていた。すぐに連れ出そうとしたが、なんだかんだでうまく丸め込まれ、結局皆で食事をする事になったのだ。
動揺しつつも、マイケルに笑顔を向けるローズ。さらにマイケルが教室に戻る寸前。
「マイケル様、放課後、少し時間を頂いて宜しいでしょうか?」
と、ローズの方からマイケルを呼び出したのだ。いてもたっても入れられなくて、放課後2人の間に割って入った。
そんな僕を、邪険に扱うマイケル。ローズまでも“マイケル様と2人で話がしたいので”なんて言われてしまった。
頭を鈍器で殴られたようなショックに襲われる。呆然と2人の後ろ姿を見送る事しかできなかった。
そんな僕に声を掛けてきたのは、兄上だ。
「アデル、大丈夫か?2人は校舎裏に行くと言っていたぞ。後を付けよう」
そう言うと、僕を連れて歩き出した。
「ちょっとグラス、いくら何でも、2人の話を盗み聞きする何て良くないわよ。今朝だって、ローズ様との大切な話を盗み聞きしていたし。さすがに見過ごせないわ!」
そんな僕たちの前に立ちはだかって来たのは、ティーナだ。いつも兄上を立て、ほとんど意見しないティーナだが、ローズの事になると別の様だ。必死に兄上と僕の前に立ちふさがり、行く手を阻んでいる。
「ティーナ、これはアデルの為なんだ。君だって、アデルには幸せになって欲しいだろう?」
「それはそうだけれど。でも私は、それ以上にローズ様には幸せになって欲しいし、ローズ様を裏切る様な事はしたくないの!」
一切引こうとしないティーナ。この子、こんなに頑固だったかな?そう思うくらい、必死に行く手を阻んでいる。
「アデル、時間がない。急ごう。ごめんね、ティーナ。僕たちは急ぐから」
そう言うと、ティーナの脇をスルリト抜け、猛スピードで兄上が走り出した。僕も後に続く。
「ちょっと、2人とも待って」
ティーナが急いで追いかけてくるが、残念な事に、ティーナは足が遅い。あっという間に突き放してしまった。
僕たちが校舎裏に来た時は、ちょうどローズがマイケルに気持ちを伝えているところだった。どうやらローズは、マイケルの事を友達としか思っていない様だ。ただ、なぜか全く引き下がらないマイケル。
そんなマイケルに、ローズは自分には好きな人がいる!と言い放ったのだ。その人物の名前を告げようとした時、マイケルが邪魔をした。
マイケルめ、なんで邪魔をするんだ!いいや…もしローズの好きな人物の名前を聞いたら、僕は立ち直れないかもしれない。これでよかったのかもしれないな。
そんな事を考えていると
「その方は、私がいくら思っても、決して振り向いてもらえない相手です。それでも私は、彼の事を愛しております。たとえ一生、気持ちが伝わらなかったとしても…」
そうローズが、悲しそうな顔をして呟いたのだ。決して振り向いてくれない人?それって…
もっと詳しく話しが聞きたくて、つい兄上を押してしまった。それがいけなかったのだろう。僕たちが盗み聞きをしている姿を、あろう事かローズに見られてしまったのだ。
必死にごまかしたが、やっと追いついたティーナが、僕たちが盗み聞きをしていたことを謝罪した。そのせいで、言い逃れが出来なくなってしまった。
呆れ顔のローズを見ていたら、どうしようもない気持ちになった。
馬車の中でも、ティーナから説教をくらうし。本当に散々だ。
そして、今に至る。
「決して振り向いてもらえない相手って…もしかして…兄上?」
いいや、そんな事はない。だってローズは、兄上の嫉妬深さにドン引きしていた。でも…決して振り向いてもらえない相手と言われれば、ティーナと婚約している兄上くらいしか思いつかない。
それに僕もティーナが好きだった時、ローズと同じ感情をいだいていた。だから、分かる。ローズはきっと!
そう考えたら、言いようのない怒りがこみ上げてきた。どうして兄上は、いつもいつも僕が欲しいものを持って行くんだ!そういえば子供の頃、大切にしていた騎士の模型も兄上に取られた事があったな!
考えれば考えるほど、怒りがこみ上げてくる。
その時だった。
「アデル、今日は悪かったな。大丈夫かい?」
僕の元にやって来たのは、兄上だ。兄上め、よくもローズを!
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