悪役令嬢は退散したいのに…まずい方向に進んでいます

Karamimi

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第43話:病んだ王太子と共に生きていきます

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「デイジー、準備は出来たかい?」

「はい、出来ましたわ」

クラウディオ様と婚約を結んでから早1年。今日は私達の結婚式だ。真っ白なウエディングドレスに身を包んだ私は、王家に伝わるティアラを頭に乗せている。このティアラは、王妃様から譲り受けたものだ。

そして私の首には、エメラルドで出来た立派なネックレスが。このネックレス、亡くなったお母様が自身の結婚式の時に、身に付けていたものだそうだ。お母様自らデザインして作った、思い出の品。それをお父様が私にと、譲ってくれた宝物だ。

「デイジー、足元には十分気を付けるのだよ。やっぱり結婚式は、この子が生まれてからにすればよかったね。身重な体では、結婚式は大変だろう。とにかく、無理はしてはいけないよ。体調が少しでも悪いと思ったら、すぐに部屋に戻ろう」

心配そうに私に話し掛けてくるのは、クラウディオ様だ。私のお腹には今、クラウディオ様との子供がいる。既に妊娠6ヶ月で、お腹も少しポッコリしているのだ。

「何をおっしゃっているのですか?今日の為に、他国の王族たちもいらしているのですよ」

「分かっている。ジャックも来ているし。いいかい、デイジー、僕から絶対に離れてはいけないよ。分かったね」

どうやらまだ私がジャック様に好意を抱いていたことを、未だに根に持っている様だ。さすがにもうジャック様の事は、何とも思っていないのに…

「クラウディオ様、もうジャック様の事は何とも思っておりませんわ。それに私のお腹には、あなた様の子供までいるのですよ…」

「分かっているよ。でも、やっぱり心配なんだ。さあ、そろそろ控室に向かおうか」

クラウディオ様と一緒に、控室へと向かう。

「デイジーちゃん、ウエディングドレス姿、本当によく似合っているわ。本当に亡くなったあなたのお母様、シャリーにそっくりよ」

「ありがとうございます、王妃様」

「あぁ、私の可愛いデイジー。本当によく似合っている。それにしても、結婚前に私の可愛いデイジーに手を出すだなんて。殿下は何を考えているのですか!」

私のお腹を撫でながら、お父様がクラウディオ様に文句を言っている。

「人聞きの悪い事を言わないでください。それに、いくら父親でも気安くデイジーのお腹に触れるのはいかがなものかと!」

お父様の手を振り払うクラウディオ様。お父様とクラウディオ殿下が、お互いいがみ合っている。相変わらずね。

「さあ、そろそろ結婚式が始まるわ。行きましょう」

いよいよ結婚式が始まる。おっとその前に。

「お父様、お母様が亡くなってから、男で一つで私を大事に育てていただき、ありがとうございます。私はお父様の子供に生まれて来た事、本当に幸せに思いますわ。きっと天国のお母様も、今日この日を喜んでいる事でしょう。お父様、どうかお体を大切にして下さいね。私はお父様が、大好きですわ」

「あぁ…デイジー。ありがとう、シャリーが亡くなってから、デイジーだけが私の生きがいだった。デイジー、もし殿下の傍にいるのが嫌になったら、いつでも帰って来なさい。君の帰る家は公爵家なのだから」

「ありがとうございます、お父様」

「公爵、僕が嫌になったらとは、どういう意味ですか?デイジーも、同意しなくてもいい」

「殿下、親子の大切な時間を、邪魔しないで下さい!」

もう、クラウディオ様ったら。それでもお父様に挨拶が出来た事、本当によかったわ。ちなみに公爵家は、お父様の代で終わる事になったらしい。お父様とお母様の血を引く人間に、どうしても公爵家を継いでほしい、それが無理なら、自分の代でおしまいにしたいという、お父様の強い願いからだ。

もし今後、私が沢山子供を産んだら、その時は子供の誰かをクレスティン公爵家に養子に出すらしい。

この件は、お父様とクラウディオ様で話し合って決まったそうだ。私は公爵家を継ぐことが出来なかったけれど、いつか私の子供が継いでくれたら、私も嬉しいと思っている。

「さあ、デイジー、教会へ向かおうか。いいかい、くれぐれも足元には気を付けるのだよ」

クラウディオ様と一緒に、教会の入口へとやって来た。この国では、新郎新婦が共に入場する事になっているのだ。

ゆっくり扉が開き、2人で歩き出す。するとそこには、沢山の人が私たちを見守っている。あら?あれはジャック様ね。ジャック様が私にほほ笑んでくれている。

他にも、ミーナ様やグリムズ様、それにルイーダ様の姿もあるわ。グリズム様とルイーダ様も、近々結婚すると聞いている。幸せそうに肩を寄せ合う2人を見たら、私も幸せな気分になった。

式が終わると、そのままバルコニーへとやって来た。そこには沢山の民が、私たちを待っていた。私達が姿を現すと、大きな歓声が上がる。

「デイジー、こんなにも沢山の人たちが、僕たちを祝福してくれているね。ただ…さっきジャックとほほ笑み合っていたね…やっぱりまだジャックに未練があるのかい?」

笑顔で手を振りながらも、私の耳元でそんな事を呟くクラウディオ様。相変わらず、嫉妬深さは健在だ。

「もう、クラウディオ様ったら。私のお腹には、あなた様の子供がいるのですよ。いい加減、変な嫉妬をするのはお止めください」

「そうだね…でも、やっぱり僕は心配なんだ。こんな沢山の人の前に、君を出した事を…そうだ、今から予定している結婚披露パーティーは中止にして、すぐに部屋に戻って2人きりで過ごそう。やっぱり僕は、君と2人きりの時間が一番幸せだからね」

「またおバカな事を…パーティーが終われば、ずっと2人で過ごせますでしょう。あっ、でもお腹に赤ちゃんがおりますので、正式には3人ですわね」

そう言って笑った。
それにしても、こうやってクラウディオ様の言葉を笑って聞き流せるようになるだなんて…

思い返してみれば記憶が戻ってから、早2年半。本当に色々な事があった。漫画の強制力に怯え、毎日眠れぬ夜を過ごした事もあった。お父様と一緒に、本気で隣国に亡命しようとした事も…

それでもクラウディオ様の気持ちを知り、監禁されながらも一緒に過ごすうちに、彼の事を誰よりも大切に思う様になった。

相変わらず嫉妬深くて、すぐに私を閉じ込めようとするクラウディオ様だけれど、私はこれからも、彼と共に歩んでいきたい。この命が尽きるまで、ずっと…



おしまい


~あとがき~
これにて完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m
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