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第42話:私は…
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「デイジー、ピッピが羨ましいかい?」
隣にいたクラウディオ様が、ぽつりとつぶやいた。びっくりしてクラウディオ様の方を見ると、悲しそうな瞳をしていた。
「そうですね。私もピッピの様に、行きたいところに自由に生き、自分の意思で生きられたら、そう思う事もあります。でも…自由に生きるという事は、それだけ責任も伴いますから。それに私は公爵令嬢で、クラウディオ様の婚約者です。私は私の人生を生きるまでです」
「私の人生を生きる…か。デイジー、僕は…」
「殿下、デイジー様、こちらにいらしたのですね。陛下がお呼びです」
陛下がわざわざ私たちを呼びだすだなんて。一体どうしたのかしら?
なぜか拳を強く握りしめ、下を向いているクラウディオ様。どうしたのかしら?そっとクラウディオ様の手を握る。すると、ゆっくりと顔を上げ、悲しそうに微笑んだのだ。一体どうしたというのだろう。
よくわからないが、とりあえず陛下の待つ部屋へと向かった。部屋に入ると、陛下と王妃様、さらにお父様も待っていた。
「クラウディオ、デイジー殿、急に呼び出してすまないな。今日呼んだのは他でもない。クラウディオがデイジー殿と結婚したいばかりに、公爵を脅して無理やり言う事を聞くように仕向けたことについて、話をしようと思ってな」
「父上、その話はもう済んだはずです。確かに僕は公爵を脅しましたが、それでも公爵自身が僕とデイジーとの婚約を認めたのです。とにかく僕は、デイジーを誰にも渡しません!」
私を強く抱きしめ、そう叫んだクラウディオ様。そんなクラウディオ様は、小刻みに震えている。
「クラウディオ殿下、あなた様が私を脅していた証拠は、ここにあります。私はあの時の話を、録音しておりましたので。私は本当に愚かでした。もっと早く陛下に相談しておけばよかったものを。それにデイジーを絶対に大切にすると言いながら、デイジーを監禁して。とにかくデイジーは返してもらいます!」
「公爵、今更そんな事を言われても困ります。デイジーは絶対に渡しません。もしデイジーと結婚できなかったら、僕は…」
大変、せっかく最近病みが落ち着いて来たのに、また病んでしまうわ。それにもし今、婚約を解消したとしても、きっとクラウディオ様はどんな手を使っても、取り返しに来るだろう。この人は、そういう人だ。
それに私は、クラウディオ様と過ごすうちに、彼の事を大切に思う様になった。だから…
「お待ちください。確かにクラウディオ様はお父様を脅し、無理やり私との婚約を結んだかもしれません。でも私は、クラウディオ様と過ごしていくうちに、私をどれだけ大切にしてくれているのかよくわかりました。少し行き過ぎた行動はありますが、それも私への愛情だと受け取っております。私はこれからも、クラウディオ様と生きていきたいですわ」
いつも私の事を考えてくれている彼を、支えて行きたい。いつの間にかそんな感情が私の中に芽生えたのだ。そもそも私は、クラウディオ様の事が、前世から嫌いではなかったし…
「デイジー、君って子は!ありがとう、デイジー。僕も君と共に未来を歩んでいきたいと思っている。これからも今まで以上に大切にしていくよ。だから、どうか僕の傍にずっといて欲しい」
美しい水色の瞳から、涙を流すクラウディオ様。こんな風に涙を流す姿、初めて見たわ。
そんなクラウディオ様を、ギュッと抱きしめた。
「デイジー…君って子は。デイジーがクラウディオ殿下の傍にいたいというのなら、私は何も言いません」
「公爵、デイジー嬢、ありがとう。クラウディオ、よかったな。ただ、いくらデイジー嬢を手に入れたかったとしても、お前の行いは良くなかった。その点は反省する様に」
「はい、申し訳ございませんでした」
「それから、デイジー嬢はお前を受け入れたのだから、もう少し自由にしてあげなさい。王妃教育も明日から家庭教師を付けようと思っている。いいな」
「でも父上、デイジーは…」
「デイジーちゃんは次期王妃になる子なのよ。いつまでもクラウディオが独り占めしていてはいけないの。あなただってわかっているでしょう?早速今日から、皆で食事をしましょう」
「王妃教育の件は承知しました。ただし、デイジーの部屋で必ず行ってください。もちろん、僕が監視します。それから皆で食事はしません。全く母上は、すぐにデイジーに近づこうとするのだから。とにかくデイジーは僕の婚約者です。結婚するまでは、デイジーをこれ以上自由にするつもりはありませんから。それでは失礼いたします」
私を抱き上げ、そのまま部屋から出ていくクラウディオ様。
部屋に戻ると、すぐに私の方を向き直した。
「デイジー、僕を受け入れてくれてありがとう。僕はもう、君がいないと生きていけない。もしあの時、君を失っていたら。僕はきっと…」
久しぶりに不気味な笑みを浮かべるクラウディオ様。
「私はもう、クラウディオ様から逃げたりしませんわ。それでも心配でしたら、今のままの生活でも構いません。ですからどうか、心穏やかに過ごしてくださいね」
「ありがとう、デイジー。君が傍にいてくれるだけで、僕は心穏やかに過ごせるよ。さあ、ピッピもいなくなったことだし、今日から僕だけを見てね」
「もう、クラウディオ様ったら」
まさかピッピにまで嫉妬していただなんて、クラウディオ様らしいわね。
※次回最終話です。
隣にいたクラウディオ様が、ぽつりとつぶやいた。びっくりしてクラウディオ様の方を見ると、悲しそうな瞳をしていた。
「そうですね。私もピッピの様に、行きたいところに自由に生き、自分の意思で生きられたら、そう思う事もあります。でも…自由に生きるという事は、それだけ責任も伴いますから。それに私は公爵令嬢で、クラウディオ様の婚約者です。私は私の人生を生きるまでです」
「私の人生を生きる…か。デイジー、僕は…」
「殿下、デイジー様、こちらにいらしたのですね。陛下がお呼びです」
陛下がわざわざ私たちを呼びだすだなんて。一体どうしたのかしら?
なぜか拳を強く握りしめ、下を向いているクラウディオ様。どうしたのかしら?そっとクラウディオ様の手を握る。すると、ゆっくりと顔を上げ、悲しそうに微笑んだのだ。一体どうしたというのだろう。
よくわからないが、とりあえず陛下の待つ部屋へと向かった。部屋に入ると、陛下と王妃様、さらにお父様も待っていた。
「クラウディオ、デイジー殿、急に呼び出してすまないな。今日呼んだのは他でもない。クラウディオがデイジー殿と結婚したいばかりに、公爵を脅して無理やり言う事を聞くように仕向けたことについて、話をしようと思ってな」
「父上、その話はもう済んだはずです。確かに僕は公爵を脅しましたが、それでも公爵自身が僕とデイジーとの婚約を認めたのです。とにかく僕は、デイジーを誰にも渡しません!」
私を強く抱きしめ、そう叫んだクラウディオ様。そんなクラウディオ様は、小刻みに震えている。
「クラウディオ殿下、あなた様が私を脅していた証拠は、ここにあります。私はあの時の話を、録音しておりましたので。私は本当に愚かでした。もっと早く陛下に相談しておけばよかったものを。それにデイジーを絶対に大切にすると言いながら、デイジーを監禁して。とにかくデイジーは返してもらいます!」
「公爵、今更そんな事を言われても困ります。デイジーは絶対に渡しません。もしデイジーと結婚できなかったら、僕は…」
大変、せっかく最近病みが落ち着いて来たのに、また病んでしまうわ。それにもし今、婚約を解消したとしても、きっとクラウディオ様はどんな手を使っても、取り返しに来るだろう。この人は、そういう人だ。
それに私は、クラウディオ様と過ごすうちに、彼の事を大切に思う様になった。だから…
「お待ちください。確かにクラウディオ様はお父様を脅し、無理やり私との婚約を結んだかもしれません。でも私は、クラウディオ様と過ごしていくうちに、私をどれだけ大切にしてくれているのかよくわかりました。少し行き過ぎた行動はありますが、それも私への愛情だと受け取っております。私はこれからも、クラウディオ様と生きていきたいですわ」
いつも私の事を考えてくれている彼を、支えて行きたい。いつの間にかそんな感情が私の中に芽生えたのだ。そもそも私は、クラウディオ様の事が、前世から嫌いではなかったし…
「デイジー、君って子は!ありがとう、デイジー。僕も君と共に未来を歩んでいきたいと思っている。これからも今まで以上に大切にしていくよ。だから、どうか僕の傍にずっといて欲しい」
美しい水色の瞳から、涙を流すクラウディオ様。こんな風に涙を流す姿、初めて見たわ。
そんなクラウディオ様を、ギュッと抱きしめた。
「デイジー…君って子は。デイジーがクラウディオ殿下の傍にいたいというのなら、私は何も言いません」
「公爵、デイジー嬢、ありがとう。クラウディオ、よかったな。ただ、いくらデイジー嬢を手に入れたかったとしても、お前の行いは良くなかった。その点は反省する様に」
「はい、申し訳ございませんでした」
「それから、デイジー嬢はお前を受け入れたのだから、もう少し自由にしてあげなさい。王妃教育も明日から家庭教師を付けようと思っている。いいな」
「でも父上、デイジーは…」
「デイジーちゃんは次期王妃になる子なのよ。いつまでもクラウディオが独り占めしていてはいけないの。あなただってわかっているでしょう?早速今日から、皆で食事をしましょう」
「王妃教育の件は承知しました。ただし、デイジーの部屋で必ず行ってください。もちろん、僕が監視します。それから皆で食事はしません。全く母上は、すぐにデイジーに近づこうとするのだから。とにかくデイジーは僕の婚約者です。結婚するまでは、デイジーをこれ以上自由にするつもりはありませんから。それでは失礼いたします」
私を抱き上げ、そのまま部屋から出ていくクラウディオ様。
部屋に戻ると、すぐに私の方を向き直した。
「デイジー、僕を受け入れてくれてありがとう。僕はもう、君がいないと生きていけない。もしあの時、君を失っていたら。僕はきっと…」
久しぶりに不気味な笑みを浮かべるクラウディオ様。
「私はもう、クラウディオ様から逃げたりしませんわ。それでも心配でしたら、今のままの生活でも構いません。ですからどうか、心穏やかに過ごしてくださいね」
「ありがとう、デイジー。君が傍にいてくれるだけで、僕は心穏やかに過ごせるよ。さあ、ピッピもいなくなったことだし、今日から僕だけを見てね」
「もう、クラウディオ様ったら」
まさかピッピにまで嫉妬していただなんて、クラウディオ様らしいわね。
※次回最終話です。
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