悪役令嬢は退散したいのに…まずい方向に進んでいます

Karamimi

文字の大きさ
上 下
40 / 43

第40話:クラウディオ様が看病してくれました

しおりを挟む
「クラウディオ、一体何事だ。貴族中央病院から医師や機材を持ち込ませて」

「父上、母上、クレスティン公爵、勝手にこの部屋に入らないで下さい。デイジーの部屋は、絶対に入らないでくれと約束したでしょう」

やって来たのは、陛下と王妃様、さらにお父様だ。お父様、元気そうでよかったわ。クラウディオ様の静止を振り切り、3人が入ってくる。

「デイジー、あぁ、私の可愛い娘。可哀そうに、熱が出たのかい?」

すかさず私を抱きしめてくれるお父様。1ヶ月ぶりのお父様、懐かしくて私もお父様に抱き着いた。


「随分と熱が高い様だ!殿下、どういう事ですか、こんな高熱になるまで放っておくだなんて」

「お父様…さっき急に熱が上がり出して…クラウディオ様は、放置などしておりませんわ。むしろ、すぐに飛んできてくださいました…」

そう、ずっと監視していましたと言わんばかりに、本当にすぐに来てくれたのだ。

「デイジーの言う通りだ。公爵にはデイジーの件はちゃんと許可を取っているでしょう。ここに契約書もある」

「確かに私はデイジーを守るために、あなた様の言う通りにするとサインをしました。でも、デイジーがこんなに苦しんでいる姿を見たら話は別だ。シャリーを助けるために無断で薬物を密輸したことを裁きたいなら、どうぞ裁いてくれ!」

「どういう事だ、クラウディオ。まさか公爵の薬物密輸を理由に、公爵に脅しをかけたのか?」

「クラウディオ、あなたはなんて事をするの?あれはシャリーを守るため、苦肉の策だったのよ。申請には時間が掛かるから、私達王族もあえて黙認したのに。あなたって子は…」

なんと!陛下も王妃様も、お父様が薬物を密輸したことを黙認していただなんて…

「今はそんな事、どうでもいいでしょう。デイジーは疲れが出てしまった様です。念のため、精密検査も行いましたが、異常は見当たりませんでした。とにかく、デイジーを休ませたいたので、出て行ってください」

「おい、クラウディオ、話は…」

陛下たちが何かを叫んでいたが、あっという間に追い出し、部屋に鍵を掛けるクラウディオ様。

「デイジー、うるさくしてごめんね。さあ、ゆっくり休んで。その前に薬を飲まないとね。食べやすい食事を準備させたから、僕が食べさせてあげるね」

「クラウディオ様…今はまだ食欲がなくて…それになんだかまだ寒気もするので、少し休みますわ」

「まだ寒いのかい?可哀そうに。そうだ、僕が温めてあげる」

そう言うと、クラウディオ様がベッドに入り込んできた。

「いけませんわ、万が一あなた様に病気が移ったら…」

「デイジーの病気なら、僕は大歓迎だ。むしろ僕に移して、早く元気になって。君が辛そうにしていると、僕は胸が張り裂けそうになるんだ」

「クラウディオ様…」

「さあ、お休み」

私をギュッと抱きしめてくれるクラウディオ様の温もりが、温かくて落ち着く。それに、寒さも少し和らいだ。

温もりに包まれた私は、そのまま眠りについた。そして次に目覚めた時は、体が熱くてたまらなかった。

「デイジー目が覚めたんだね。今は顔が真っ赤だ。可哀そうに、熱いんだね。すぐに氷枕を準備させよう。それから、汗も拭かないと」

メイドから氷枕を受け取ると、私の頭の下に敷いてくれた。そして、汗も拭きとってくれる。さらに

「デイジー、野菜スープを持ってきたよ。少しでもいいから、食べて欲しい」

今度は私に野菜スープを食べさせてくれた。さらに、薬も準備してくれる。薬、苦くて苦手なのよね。

「デイジーは薬が苦手なのかい?」

薬をもって固まっている私に、クラウディオ様が話しかけてくれた。

「はい…でも、飲みますわ。もう子供ではありませんから」

さすがに薬なんて飲みたくない!と、駄々をこねる年齢ではない。意を決して飲もうとしたのだが、なぜかクラウディオ様が私から薬を奪い取ると、そのまま自分の口に含んだ。

そしてそのまま、口移しで薬を流し込んだのだ。

「この薬、確かに苦いね。デイジーだけにこんな苦い思いをさせたくなくて…次薬を飲む時は、苦くない様にゼリーなどに混ぜさせて飲めるようにしよう」

「クラウディオ様…私の為に、ありがとうございます」

その後も甲斐甲斐しくお世話をしてくれるクラウディオ様。お陰様で、2日後にはすっかり元気になったのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

勝手にしなさいよ

恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

処理中です...