悪役令嬢は退散したいのに…まずい方向に進んでいます

Karamimi

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第36話:再びクラウディオ様と婚約を結びました

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馬車を走らせること約10分、王宮が見えて来た。王宮にはクラウディオ殿下との婚約を解消したいと申し出た時以来来ていない。もちろん、王妃様にもあれ以来会っていないのだ。

王宮に着くと、当たり前の様に私を抱きかかえるクラウディオ殿下。どうやら私は、歩く事すら許されないらしい。

ルイーダ様は、王宮に着いた時は普通に自分で歩かせてもらえていたのに…と、ついルイーダ様と比べてしまう。

「デイジー、君はやっぱりかなり賢い様だね。僕が抱きかかえても抵抗しない。抵抗しても、自分に不利になるとしっかり理解しているのだね」

そう言って不気味な笑みを浮かべている。お願い、その笑いは止めて。背筋がゾクッとするのよ。

「あの…殿下、私は…」

「デイジー、僕たちは今から婚約者に戻るのだよ。殿下呼びは、今すぐやめてくれるかい?僕は君から“殿下”と呼ばれると、とても悲しくなるんだよ」

「申し訳ございません、クラウディオ様。あの…私はあなた様を避けていたのは、あなた様を嫌っていたわけではないのです。私は散々あなた様の前で醜態を晒してまいりましたので、きっと嫌われているだろう。いつか捨てられるのなら、自分から距離を取ろうと考えたのです。ですから…」

「もっともらしい事を言って、僕の怒りを鎮めようとしているのだね。でも、今更もう遅いよ。君は僕をずっと拒み続けた。そして、僕から逃げようとした。その事実は変わらないからね」

私を抱きしめる力が、明らかに強くなった。これは相当怒っている様だ。今はこれ以上、何も言わない方がいいだろう。

しばらく進むと、私たちが婚約破棄を申し出た部屋へと通された。そこには、王妃様の姿も。

「デイジーちゃん、久しぶりね。会いたかったわ」

私を見ると、嬉しそうにこちらにやってくる王妃様。私を抱きしめようとしたところで、すっとクラウディオ様にかわされた。

「母上、いくら女同士でも、デイジーに抱き着くのはお止めください。今は誰にも触られたくはないので、たとえ母上でも許せないのです」

「クラウディオ、何を言っているの?デイジーちゃんは…」

「母上は黙っていてください!とにかく、しばらくはデイジーに会わせませんから。さあ、早く今後の話をしてしまいましょう」

「…ああ、そうだな。それじゃあ、まずはクラウディオとデイジー嬢の婚約届からだ。デイジー嬢、この紙にサインしてくれるかい?後は君がサインするだけなんだ」

陛下が取り出したのは、どうやら婚約届の様だ。初めてクラウディオ様と婚約を結んだのは、3歳の時だったので全く覚えていないが、こんな紙なのね。て、あまりゆっくりしていると、きっとクラウディオ様に怒られるわ。

急いでサインをした。

「それじゃあ、この紙を提出すれば、正式にクラウディオとデイジー嬢は、婚約者同士になる。それから結婚なのだが、クラウディオの強い希望で、1年後に行われることになった。王妃教育もあるだろうから、かなり忙しくなるが、どうかよろしく頼む。それからデイジー嬢には、王宮で生活してもらう事になった。既に公爵家からデイジー嬢の私物は届いているから、今日から王宮で生活をしてもらう。いいかな?」

「はい、大丈夫ですわ」

というより、私にはもう選択肢はない。なぜなら隣で、物凄い圧を掛けている男がいるからだ。たとえ私がここで泣いて“嫌です。公爵家で暮らしたいです”と言ったところで、きっとこの病んだ男に丸め込まれ、強制的に王宮に住まわされるだろう。

それなら最初から素直に受け入れておいた方が、今後の自分の為にはいいだろう。

「ありがとう、デイジー嬢。公爵はほぼ毎日王宮に来るから、会いたかったらいつでも会えるからね。クラウディオ、あまりデイジー嬢を縛り付けてはいけないよ」

「…検討いたします」

クラウディオ様、いくら何でも“検討します”はないでしょう。そこは嘘でも、分かりましたと言っておいた方がいいのではないか。現に陛下は苦笑いしているし、王妃様とお父様は心配そうな顔をしている。

「話はこれで終わりですよね?デイジーには僕からゆっくりと今後の話をしますので。それでは失礼いたします」

私を抱きかかえると、部屋から出て行こうとするクラウディオ様。

「待って、クラウディオ。今日の夕食は、デイジーちゃんが王宮に来てくれたお祝いの宴を開きましょう。クレスティン公爵も参加してくれるわよね?」

王妃様が必死にクラウディオ様に訴えている。でも…

「母上、何を訳の分からない事を言っているのですか?デイジーは僕と2人っきりで、部屋で食事を済ませますので。宴なら僕たち抜きで行ってください。それでは失礼します」

そう言うと、足早に部屋から出ていくクラウディオ様。いよいよ私は、監禁部屋に連れて行かれるのね…
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